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■夏の日の想い出・振袖の勧め(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-01-30
 
そのようにして、急遽作られ12月23日に発売されたのが『振袖』であった。
 
東堂先生からは「この曲はタイトル曲にはしないこと」という指示があったので、代わりに私がタイトル曲として使うことにしたのは、高校1年生の時に書いた『振袖』という曲である。
 
これは高校1年の1月に、私が1月2日から8日まで7日間連続で振袖を着た時に書いた曲である。かなり長い時間、譜面は行方不明になっていたのが、割と最近若葉が「その曲の譜面ならコピーしたの持ってる」と言って持って来てくれて、それに政子が新たな歌詞を付けてくれたものである。
 
この曲は和楽器を多用した曲である。それでとにかくも親族に声を掛け無理を言って集まってもらった。
 
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取り敢えず近くに住んでいる今田一家には協力してもらう。母の友見(私の従姉)に箏、長女の三千花(槇原愛)に三味線、次女の小都花(篠崎マイ)に太鼓、三女の七美花に笙を頼む。七美花は管楽器全般が得意だが笙も凄いのである。名古屋から風帆伯母に来てもらって琵琶を弾いてもらう。風帆の長女・恵麻に尺八、次女・美耶に胡弓を頼む。
 
そしてこの曲を書いた時から、私は龍笛を頼む人を決めていた。それは実は8年前この曲を書いた時にその場に居た鮎川ゆまが推薦してくれた人で、大裳こと千里である。
 
彼女はちょうど全日本社会人選手権(10.31-11.01)が終わった所で、彼女が参加する40 minutesは美事にオールジャパンの出場権を獲得したのだが
 
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「まだオールジャパンまで時間あるよね? 2−3日でいいから付き合ってよ」
と言って千里を呼び出し、この演奏に参加してもらった。
 
千里の龍笛と七美花の笙が合奏されると凄まじかった。
 
龍笛は龍を呼び、笙は鳳凰を呼ぶ。彼女たちが演奏していた時、私は思わず天井を見上げてしまった。
 
「なんか来てるよね?」
と政子が言い、私も頷いた。
 

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この楽曲は最初にコアとなる和楽器セクションを収録し、その後今度はリズムセクションの収録をしたが、ここはスターキッズの出番である。近藤/鷹野/酒向の3人が和楽器の音を聞きながら、それに合うようにギター・ベース・ドラムスを入れてくれた。
 
そしてここにアスカに頼んで揃えてもらったヴァイオリン奏者8人+私と鷹野さんの合計10人によるストリングサウンドを付加する。
 
そして最後に月丘さんのキーボードと七星さんのサックスを加えてほぼ完了である。マリが「私何かの楽器で参加できないかと思ったけどみんなハイレベルすぎて無理だった」と言っていた。
 
これに私とマリの歌を乗せたが、ここまでの収録がかなりスムーズに行ったにもかかわらず全部で5日かかった。近藤さんからは「スケジュールが厳しい時にこういう難曲を入れるというのはケイは鬼だ」などと言っていたが、東堂先生の作品が凄いので、それに負けない曲を入れる必要があったのである。
 
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『振袖』のCDに一緒に入れた曲は、東堂先生から頂いた『トップランナー』、音源制作・PV制作も終わったまま、前回のシングルから外され、アルバムに収録する予定がそこからも外れて4月にあらためて出すつもりだった『内なる敵』、2014年9月に私と政子・雨宮先生と千里の4人で話していた時にできた曲『灯台もと暗し』、そして鴨乃清見!から頂いた『門出』である。
 
ここで鴨乃清見の作品が入っていたことは、多くの音楽関係者に驚かれた。
 
鴨乃清見は2007年5月大西典香のデビューアルバムの作曲者として名前が出てきた作曲家で、過去に多くの賞を受賞している。間違いなく一流作曲家ではあるものの、極端に露出の無いことでも知られている。様々な賞の授賞式にも出てきたことがないし、プロフィールは不明、写真さえもない。年齢も性別も不詳だ。
 
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寡作で主として津島瑤子と大西典香にだけ楽曲を提供していたし、大西典香のアルバムは大半が鴨乃清見の作品だったので、実は大西典香の変名ではないかという噂も昔からくすぶっているものの、本人は否定している。
 
「私よりお若い方なんですよ」
と大西は言っていた。
 
しかし2007年に20歳でデビューした大西典香が自分より若い人と言うということは当時まだ10代だったということになる。
 
そしてその大西典香が2013年12月に引退した後は、鴨乃清見は津島瑤子にだけ曲を提供していたので、2014年も2015年も発表した楽曲は2曲ずつである。
 
それが突然ローズ+リリーのシングルに名前が出てきたので驚かれたのである。
 

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12月23日当日におこなった発売記者会見でも、私たちはその点を聞かれた。
 
「鴨乃清見さんとはお会いになりました?」
「はい、よく知っています。実を言うと、鴨乃さんが2007年に大西典香の曲の作曲者として名前を出して間もない頃、私は鴨乃さんとお会いしているんですよ」
 
私と千里の初の直接遭遇は2007年7月28日・唐津である。大西典香のデビューは2007年5月15日。そして私と千里のライバル意識を煽っていた雨宮先生と私が出会ったのは2007年6月22日で、この時期に運命的な出会いが続けて起きている。私と政子が初の共同作品『あの夏の日』を書いたのも2007年8月4日である。
 
「鴨乃さんって男性ですか?女性ですか?」
と記者が質問するが
 
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「非公開なので、申し訳ありませんがお答えできません」
と私は答える。
 
「今回曲を提供してくださった経緯は?」
 
「鴨乃さんは本業の方がこの夏までひじょうに多忙だったんです。それで秋になって『ちょっと暇になったから書いてみた。大西典香も引退しちゃって発表できる場がないし、ケイちゃんたち良かったら歌って』とおっしゃったので頂きました」
 
「では鴨乃さんは、今少しお暇なんですか?」
「そうみたいですよ。年末年始はちょっと忙しいですが、その後3月頃までは時間的な余裕があるようです。春から夏に掛けてはまたお忙しくなるようです。でも鴨乃さんの歌を歌わせてという歌手志望者の方がおられましたら、∞∞プロに自分のデモ音源など送ってみられてはいかがでしょうか?」
 
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と私は答えたが、その後、本当に送って来た歌手・歌手の卵が200人ほどいたらしい。そしてその中から翌年秋、女子高生歌手・山森水絵が鴨乃清見の曲でデビューすることになるし、他にも数人(他の作曲家の曲で)デビューに至る歌手が誕生した。
 

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さて今回の記者会見ではスターキッズ+6人編成のヴァイオリン隊との伴奏で今回のシングルに入っている曲5曲をショートバージョンながらも全部歌った。但し『振袖』の和楽器セクションだけは音源で流した。
 
今回のヴァイオリン隊に参加してくれたのは、蘭若アスカ・凜藤更紗・鈴木真知子・伊藤ソナタ・桂城由佳菜・前田恵里奈というメンツで、『振袖』の音源制作に参加してくれた人の一部である。アスカ人脈だが、ハイ・クォリティなヴァイオリン隊に耳の良い記者たちからどよめきが漏れていた。
 
今回急遽発売された経緯についても尋ねられたが、東堂千一夜先生からすぐに出してと言われたのでと私が答えると、記者たちの中から笑い声が出ていた。
 
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今回のPVは雨宮先生が監修しただけあって、どれも凝ったものとなっていた。『内なる敵』に関しても雨宮先生は撮り直しを指示し、私がKARIONの制作で時間があまり取れない中、演技力のある若手俳優さんたちを多く起用して撮影された。
 
タイトル曲『振袖』では、最初1人の女性が振袖を着付けしてもらっている所から画像は始まる。この人は『ときめき病院物語』にほとんどセリフの無い看護師役で出ていた日吉ツバキさんという人だが、雨宮先生は注目していたらしい。
 
「あんた男の娘だよね?」
と先生はいきなり彼女に訊いたらしいが
「私、よくそれ言われるんですけど、天然女です、すみません」
とツバキ。
「じゃ女の息子かレスビアン?」
「それもよく言われるんですけど、私は男装はしませんし男の人が好きです」
 
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ということで、雨宮先生は彼女の性的傾向をかなり疑っていたようだが、少なくとも本人は普通の女性を主張していた。しかし本当に演技のうまい人で、この人のおかげでこのPVがひじょうに引き締まったものになっていた。
 
ビデオでは日吉さんが着付けの終わった振袖を着て、街を歩いて行くうちに、1人、2人と同様の振袖を着ている女性が増えて行く。日吉さんが着ているのは水色の振袖なのだが、最初に加わるのは黄色い振袖の人で、この人は以前大手劇団の研究生をしていたものの、チケット売りのノルマに疲れて!退団し、現在はコンビニのバイトをしながら写真モデルをしているという間枝星恵さんである。雨宮先生はどこからこんな子を見つけてきたのだろうと私は疑問に思ったが、この子もひじょうに上手い子であった。
 
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続けて薄紫の振袖を着た人が2人、薄緑の振袖を着た人が4人加わって8人になる。そこで曲はサビに突入するのだが、振袖女性は一気に32人に増える。あとから加わった24人は全員ピンクの振袖を着ている。
 
そしてこの32名で、振袖を着たままダンスをする。中央に位置する日吉さんはその中で赤い毛氈の敷かれた長椅子に腰掛け、日吉さんが茶釜でお茶を沸かし、入れたお茶を間枝さんがのんびりと飲み、ふたりで楽しく歓談するというシーンに進んでいく。
 
その間も他の30人はずっと踊っている。ややシュールな雰囲気で映像はまとめられている。この30人は実は都内の女子高のバレエ部のメンバーである。
 
なおここで使用した茶器は雨宮先生が個人的に所有していたもので、800万円する品らしい。撮影が終わってからそれを聞いた日吉さんと間枝さんが悲鳴をあげていた。
 
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「良かったぁ、割らなくて」
とホッと胸をなで下ろしている日吉さんに
 
「割っていたら800万円弁償してもらうか、私と一晩付き合ってもらう所だったけど」
などと雨宮先生が言うので
 
「先生、そういうセクハラ・パワハラ発言をしていると、その内訴えられますよ」
 
と雨宮先生の「お目付役」として来ていた田船美玲さんが釘を刺していたらしい。
 

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『門出』のビデオにもこの日吉さんと間枝さんのコンビに出てもらった。
 
今度はふたりは女子高生の制服を着ている。実際の年齢は日吉さんが19歳、間枝さんが21歳なので、まだ何とか高校生の制服もいける。
 
卒業式のようなシーンから顔の映っていない男の子に第2ボタンをねだり、それをもらって嬉しそうに胸に抱きしめるようにする日吉さんの顔が物凄く可愛い。私はこのビデオの試写を見た時、これ日吉さんけっこう人気が出るのでは?と思った。
 
そこに間枝さんと、もうひとりの女子が来て、誘っている。そして3人で行った先は羽田空港である。沿線の風景が3人が楽しそうにおしゃべりしている様子の背景に流れる。
 
そして空港では教師風の男性が旅立とうとしている。3人はそこに駆け寄り、ひとりずつその教師と握手をしてもらい涙を流している。教師は笑顔で3人に1個ずつ、掌に載るような小さな航空バッグを渡した。そして教師が手荷物検査場に消えて行くのを見送った後、3人は思い直したように笑顔になり、各々その航空バッグを自分の掌に乗せたまま、希望にあふれるような顔をしていた。
 
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さて、ここで日吉さんと間枝さんの他にもうひとり出てきた「女の子」は実は2015年度の§§プロ「第2回ロックギャルコンテスト」で特別賞をもらった子で、西宮ネオン君という男子高校生!である。
 
「いや、参りました。初仕事が女装とは思わなかった」
と彼は頭を掻いていた。
 
「でもロックギャルコンテストって女の子のコンテストだよね。それに応募したのなら、女装は慣れているということは?」
 
「姉貴にハメられたんですよ。女の子のコンテストとは全然知らなくて。会場でミニスカート穿いてと言われてぶっ飛びました」
 
結局スカートは勘弁してもらってショートパンツで審査を受け最後まで行ったらしい。足の毛は剃られた上でハイソックスまで履かされたらしいが。
 
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(昨年のコンテストではアクアはスカート穿いてと言われて素直にスカートを穿いている。これがノーマルな男の子と少し?変わった男の子の違いか)
 
彼は歌も聴かせてもらったが、かなりうまい。魅力的なバリトンボイスである。ただ身長は165cmと低く、のど仏が目立たないし、肩もまだ張ってないので、女の子の中にも埋没してしまう。「ギャルコンテスト」で三次審査を通過しただけあって美形だし、充分人気が出る可能性があると思った。
 
「僕はアクア先輩のような男の娘路線はやりたくないですから、とハッキリ秋風社長に言いましたし、社長も『うん。それでいい』と言ってくださったので契約しましたから。今回のはまあ愛嬌で」
などと彼は言っていた。
 
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「アクアって男の娘なんだっけ?」
「違うんですか?」
「本人は普通の男の子だと主張しているけど」
と私が言うと
「うーん・・・・」
と言ってなんだか悩んでいた。
 

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■夏の日の想い出・振袖の勧め(5)

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