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■Les amies 結婚式は最高!(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-07-07
 
小夜子と晃は高校の同級生で、その頃は正式に交際していた訳ではないものの、かなり良い雰囲気の「ボーイフレンド・ガールフレンド」の関係であった。
 
お互い1度も「好き」と告白したことは無かったので、デートしたこともなければ、お互いの携帯にも登録されていなくて自宅に電話したり、携帯で話したりしたこともなかった。そしてふたりは高校を卒業し別の大学に進学したのを機に自然と疎遠になり(そもそも連絡手段も作っていなかった)、大学では各々新しい恋もした。
 
ふたりが再会したのは大学を出た後だった。小夜子は大学を出た後都内の商社に入ったが、補助的な仕事ばかりさせられるし男女差別も激しかったので、そこを半年で辞めて、企業システムのアウトソーシングをしている会社に入り直した。
 
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営業要員として採用されたのだが、忙しい時は結構プログラミングやオペレーションにも駆り出された。小夜子は秒7文字打てたのでかなり重宝されていた。ここは給料も安いし残業も多かったが精神的には充実していた。何より営業で人と話をするのは小夜子は好きだった。
 
小夜子が入った会社は社長以下社員が全員女性という会社で、それを売りにしていたが、ソフト関係の会社はそもそも身なりを気にしない女子が多く、更に男の視線が無いということで、みんな社内ではパンツルックだし、スッピン、髪もまとめただけ、などという状態。手入れが楽なようにショートカットにしている子がほとんどである。
 
小夜子は髪はセミロングだったが、普段はお化粧もせずにズボラにしていた。営業で外回りをする時もせいぜい髪にブラシを入れて口紅を塗る程度だったが、新規の顧客を訪問する時はさすがにスカートを穿いてちゃんとお化粧もしていた。しかし、ふだんあまりやってないのでメイクが適当すぎるとしばしば社長(35歳独身・彼氏複数あり)から注意されたりしていた。
 
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「あなたね、少し髪もちゃんとセットしようか。パーマでも掛けてきたら?」
 
ふだんは1000円カットの店でちゃちゃっと切っているだけだったが、その日は明日、大きな会社に営業に行くというので、たまにはパーマでも掛けてみるかと思い、会社が終わってから、適当に目に付いた美容室に飛び込んだ。2月も下旬の頃だった。
 
何だか凄くおしゃれな雰囲気。広いフロアに多数の美容師さんが動き回っている。入口にマックナイトのシリアルナンバー入りの版画が掛かっていて洋楽のBGMが流れている。たくさんある椅子は全て埋まっていて、待っているお客さんも10人近くいたが、みんなおしゃれな服を着ている。私、イオンで買った上下合わせて5000円の服なのに!小夜子はここに入ったことを瞬間的に後悔した。
 
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しかしすぐに受付の女の子が寄ってきて笑顔で
「こちら初めてですか?」と訊かれる。
「ええ、初めてです」と答える。
 
「ではカルテを作りますので、お名前と生年月日よろしいですか?」
というので、カルテの入力用紙に『松阪小夜子、1984年10月9日生』と記入し、性別は女に○をする。書きながら半ば帰りたい気分だったが、その時、
「あれ、サーヤ?」
という声がした。
 
自分をサーヤと呼ぶ人は数人しかいない(普通はサヨちゃん・割と親しい子でもサヨリン)。びっくりしてそちらを見る。椅子に座ったお客さんにパーマのスティックを巻きながら、長身の女性がこちらを見ている。えっと誰だっけ?と小夜子は10秒くらい考えてから
「まさかアッキー?」
と言った。
 
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ちょうど晃はその時対応していたお客さんが終わった後のお客さんはアサインされていないということだったので、晃を指名してカットとパーマをしてもらうことにした。
 
晃は「シニアアシスタント」という肩書きで、まだスタイリストではなく見習いなので、通常はパーマやカラーを担当しているらしいのだが、特に指名があればカットもさせてもらえるらしい。
 
最初に新人っぽい女の子にバックシャンプー台でシャンプーをしてもらい、その後、少し待ってから鏡の前の椅子に案内され、晃が来てカットを始める。
 
「さて、年齢鯖読みさん、どんな感じのヘアスタイルにしましょう?」
「あのくらいの鯖はデフォルトよ。お任せするから可愛くして」
「了解」
 
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建前上、見習いがカットする場合はスタイリストがそばに付いていることになっているらしいのだが、晃の技術が高いのでスタイリストの人は隣の客のカットをしながら時々見るだけであった。
 
「でも、こういうシステマティックな美容室って私、初めて」
と小夜子は言う。
「うん。都会ではこういう美容室が多くなったね。まあ美容師側としては少しずつ仕事を覚えていける利点はあるけど」
と晃。
 
「でも、見違えたなあ。。。。いつもそんな格好してるの?」
晃は女物のカットソーを着て膝丈のスカートも穿いている。眉は細くしていてお化粧もしている。お化粧うまいじゃん。私が習いたい、と小夜子は思った。髪もロングで、毛先に軽くパーマを掛けて内側にカールさせたおしゃれな雰囲気。
 
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「いや、美容室ってお客さんの大半が女性でしょ。女性のファッションを理解してないとヘアスタイルも理解できないと思って、最初色々女性の服を買って眺めてたんだけど、着てみないと分からないかなと思って、着て出歩くようになったんだよね」
「へー。勉強のためなんだ。でも恥ずかしくない?」
「うーん。恥ずかしかったのは最初の頃だけ。今はすっかり慣れちゃった」
「声も女の子の声だし」
「あ、だいぶ練習したんだよ。出せるようになったら面白くて、最近こちらの声ばかり使ってる」
 
「髪も長いよね」
「うん。大学に入ったらロングヘアにしようと思ってたんだよね。高校3年の12月に切った後は、ずっと伸ばして、この長さになったのは大学4年の時だよ。でもロングヘアのお手入れって大変なんだよね。シャンプーも手間が掛かるし。トリートメントもしっかり。枝毛はマメに切ってるし。パーマは最低限にしてカラーリングもせずに、とにかく髪を傷めないようにしてる」
「うん。すごくきれいな髪だって思った。さらさらしてるし」
「ありがとう」
 
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「でも美容師になってるとは思わなかったなあ」
「大学に通いながらバイトしなきゃと思って、最初の頃はファミレスのフロア係してたんだけどね。だけどシフトが複雑で生活が不規則になって体力がもたなくなったもんで、そんな時同級生のお姉さんから土日だけ美容室のアシスタントしない?って誘われて、最初の内はお客さんにお茶を出すのとシャンプー・お流しばかりひたすらしてた。でも美容院での仕事が何だか楽しくなっちゃって、大学卒業してから都内の美容師学校に入ったんだよね」
「それはまた・・・・」
 
「今、美容師学校で勉強しながら、協力関係にあるこの美容室で夕方からと土日に見習いをしてる。ここは閉店が夜11時だから、夕方からでもたっぷりお仕事があるんだよね。それで、前の大学の近くにあった美容室で土日と夏休みや春休み限定だけど3年間アシスタントやってて、実はけっこうカットとかパーマもさせてもらってたから、充分腕があるというので、ここでは最初からシニア・アシスタントにしてもらった。学校卒業して国家試験に通ったらスタイリストにしてあげるよって言われてる」
「へー。凄いね」
 
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「アキちゃんは経験7年の私よりカットうまいよ」と隣の席のスタイリストさんから笑顔で声が掛かった。
「おお、凄い」
 

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これがきっかけで小夜子は晃とメール交換をするようになった。小夜子の仕事が忙しいし、お互いの休みの曜日が違うこともあり、なかなかメール交換というレベルから先に進まなかったのだが、メール交換が3ヶ月ほど続いた頃(その間に2度晃の美容室にも行った)、とうとうデートの約束をする。
 
しばらく休みも全然無い状態で仕事をしていたので、ちょうど区切りのいい所で有給休暇を消化してと言われて、火曜日に休みを取る。そしてちょっと気合いを入れてローラ・アシュレイの可愛い花柄のワンピースを着て待ち合わせ場所に行ったのだが。。。。。そこで先に来て待っていた晃を見て絶句する。
 
「なんで晃、今日も女装なのよ?」
晃はアニエスベーのモノトーンなブラウスと膝上スカートを穿いている。髪はまとめて可愛いお花のバレッタで留めているし、メイクもバッチリメイクだ。睫毛が長い! 小夜子はお化粧は15分で仕上げて出てきたのに!
 
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「え?別に女装はしてないけど」
「男がスカート穿いたら女装だよ」
「そんなことないと思うよ。男性のスカートルックは最近けっこういるよ。秋葉原とかでは普通に見るし」
「あそこは特殊だよ! それにお化粧もしてるし」
「このくらい普通だと思うけどなあ」
「うーん」
 
小夜子は取り敢えず気を取り直して一緒に散歩する。会話をしていると楽しい。ああ、やっぱり自分は晃とは相性いいよなあと小夜子は思った。思えば大学時代に2人、就職してからも1人の男性と交際したが、どうにもフィーリングが合わずに短期間で別れてしまった。
 
午前中街を散歩してアクセサリーのお店を覗いてみる。このイヤリング可愛い!なんて言っていたら晃が「買ってあげようか?」というので、買ってもらった。早速付けると。何だか幸せな気分になってきた。
 
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お昼はデパートの食堂街にあるイタリアンレストランでランチのコースメニューを頼む。晃は食べ方が美しい。高校時代から思ってたけど。小さい頃の躾が厳しかったのかなあ。
 
晃がトイレで中座する。小夜子はコーヒーを飲みながらぼんやりとして待っていた。今日・・・・私たちどこまで行っちゃうんだろ・・・・・。やがて晃が戻った時、ふと思って訊いてみる。
 
「ねぇ、アッキー、そういう格好している時、トイレはどちら使うの?」
「どちらって?」
「やっぱり女子トイレ?」
「まさか。僕は男だもん。男子トイレだよ」
「へー。やっぱり男なんだ?」
「女に見える?」
「充分見えるけど」
「そうかな?」
「ねえ、本当に男なのか、確かめさせて」
「え?」
 
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ふたりは食事の後、何となく雰囲気で坂を上り、ラブホテル街へ行く。途中のコンビニでおやつと飲み物、それに避妊具を買った。
 
ホテル街まで来ると、何だか派手な外装のホテルが並んでいる。ふたりは「わあ」
などと言いながら見とれていたが、やがて「あ、ここ何となく好きかも」と小夜子が言ったホテルに入った。
 
「ウォーターベッドだ。気持ちいい!」
と言って小夜子はベッドに乗ってはしゃぐ。晃はそれを微笑ましそうに見ていた。
 
「こういうホテルって1度来てみたかったのよねぇ。晃は何度か来たことある?」
「ううん。僕も初めて」
 
「ふふふ。じゃ、脱いでもらおうかなあ。裸になって男なのか女なのか確認させて」
 
晃はポリポリと頭を掻き、カットソーを脱ぐ。下にライトイエローのキャミソールを着ている。へー、という感じで小夜子は見ている。スカートを脱ぐ。
「ガードル付けてたのか」
「付けてないと、アレが立っちゃった時に、やばい構図になる」
「ああ、それは凄くやばいかもね」
 
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キャミソールを脱ぐと下にブラジャーを付けている! ストラップレスだったのでキャミ姿を見た時は気付かなかった。
 
「うっそー。ブラまで付けてるの?」
「いや、何となく」
「やっぱり女装じゃん」
「そうかな。最近はブラ付けてる男性もけっこう多いらしいよ。メンズブラというんだよ」
 
「そんな馬鹿な。男がブラ付けてたら変態かオカマだよ。ちなみにブラのサイズは?」
「A75だけど」
「まあ、Eカップとか付けても仕方ないよね。でも可愛いブラだな」
「Aカップ買おうとするとジュニア向けっぽいのが多くて」
 
ガードルを脱ぐ。小夜子も予想していたが女物のショーツを穿いている。しかしあるはずの膨らみが確認できない。
「膨らみが無い。やっぱりおちんちん無いの?私、この際無くてもいいよ」
「いや、下向けてるから」
と言って晃がショーツも脱ぐと、まごうかたなき男性器が姿を現した。
 
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「ふーん。付いてたんだ」
「付いてるよ。前にも見てるくせに」
 
ふたりは高校を卒業した日、1度だけHなことをした。但し入れる所まではしなかった。小夜子は入れていいよと言ったのだが、恋人でもないのにそんなことできないと言って晃はしなかった。「恋人でもない」という晃の言葉が耳に残った。
 
「でもあれから5年たってるからね。無くなっていても不思議じゃないし」
「そんな、無くなるもの?」
「最近そういう人多いしね。ほら歌にもあるじゃん。『あの****よ、どこ行った〜』って。あれっていつの間にか消えちゃったんだよね?」
「僕もあの歌の歌詞は謎だ」
「よし、アッキーが取り敢えず男のようだというのを確認した所でシャワー浴びてくる。裸のまま待ってて」
「うん」
 
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