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起きたら18時だったので、またまたトイレに行ってからフードコートで食事をし、そのまましばらくPA内でおしゃべりをしてから7時頃に出発した。
今度は小夜子が運転する。海老名SAも足柄SAも富士川SAも停まらずに日本平PAまで行く。まだまだ交通量が多いので、小夜子にしては珍しく流れに合わせた比較的上品な走り方をして20時半頃到着した。
「ここコンビニもあっていいね。このまま今夜はここで泊まろうか?」
「うん。やっぱり式で疲れが溜まってるしね」
窓に目隠し代わりの日除けとカーテンを貼る。前の座席を一番前まで押し出す。大きなバランスボールを3個出して来て空気を適度に入れ、後部座席の足を置く部分に並べる。バランスボールと座席にまたがるようにプラダンの板(通常は折りたたんで収納)を渡し、その上に敷布団を置きシーツを掛ける。ウィングロードの場合、前の座席を一番前まで押しておけば、ここに普通のシングルサイズの敷布団を敷くことができた。枕と毛布、掛布団も出す。ふたりとも裸になり、汗拭きシートで身体を拭いてから布団の中に潜り込んだ。
「タック外さなくてもいい?」
「モーマンタイ。ビアン・ソン・ビアン(Biennes sont bien:レスビアンは素敵)」
フラット化しているので、さきほどの休憩ポイントで、単純に座席の上で愛し合ったのに比べるとスペースにゆとりがあるものの、それでも晃は小夜子のお腹を圧迫したりしないように、体位に気を配った。最初にシックスナインをした後、側位でしたところで小夜子が寝てしまう。そっと唇にキスして晃も寝た。
晃が起きたのは27日午前2時だった。だいたい予定通りだなと思う。
小夜子にトイレに行ってくるよう促し、その間に寝具を片付け、フラットを解除し、前座席を元の位置に戻す。小夜子が戻ってきたら後部座席に座らせシートベルトを付けて毛布を掛けてあげると、また眠ってしまう。晃は自分もトイレに行ってきてから車をスタートさせた。
1時間半運転して岡崎市の美合PAでいったん休憩。小夜子はまだ寝ているがシートベルトを外して横にしてあげる。晃は前座席で横になり少し寝た。
4時すぎに起きだして小夜子をまた座らせシートベルトを掛けてから出発。豊田JCTで伊勢湾岸道に分岐する。そのまま名古屋都市圏の港湾部を走る。四日市JCTから東名阪に入り、御在所SAで短い休憩をした後、紀伊半島の東岸に沿って南下していく。伊勢関ICからは伊勢自動車道になる。
多気PAに6時に到着した。ここで小夜子を起こし、一緒にトイレに行く。
「まだ夜が明けてないじゃん」と小夜子。
「だから神宮で夜が明けるんだよ」と晃。
小夜子も助手席に来て出発。伊勢ICで降りて、外宮(げくう)の駐車場に入れた。
車の中でふたりとも黒いフォーマルドレスに着替える。靴もパンプスを履く。(玉砂利の上を歩くことになるので)ヒールのほとんど無いタイプである。
「晃が男の子だったら、ブラックスーツだよね」
「そんな服着て、神様の所に行きたくない。神様の前では真の自分を晒さなきゃ」
「そうだね。晃の真の姿は、女の人の姿だろうからね」
「うん、それはそうだと思う」
一緒に境内を歩き、お札などを売っているところで特別参拝の手続きをする。そのまま正宮へ行き、ふつうにお参りをしてから、黄色い参宮章を提示して神職さんに案内され玉垣の中に入る。まだ薄暗い中、素朴な神殿が美しい。
神職さんの指示に従い一緒に二拝二拍手一拝でお参りをした。
退出してから小夜子が大きく息をつく。
「ここ、凄いところだね!」
「うん。ボクも思った。この場所の空気に圧倒された」
「私、赤ちゃんの無事を祈るつもりだったけど、ここでお願い事なんて、できないよ」
「ここはお願いする場所じゃ無いね。ただ純粋な祈りを捧げる場所だよ」
「ここが無事である限り、日本は何が起きても無事だね」
「うん。そう思った」
小夜子にあまり階段は登らせたくなかったので多賀宮はパスさせてもらい、風宮・土宮だけお参りして駐車場に戻る。そのまま内宮(ないくう)へ行く。車を駐車場に駐め、宇治橋を渡ろうとしたところで日の出となった。
「おお、明るくなった」
「でも空気が清々しい」
日の出の写真を撮ろうとカメラをスタンバイさせている人たちを横目に橋を渡り、参道を行く。
「参道が長いよ−」
「きつかったら休む?」
「そこまで辛い訳じゃない」
正宮に行くには階段を登らなければならない。晃は小夜子に自分の前を歩かせた。何かあったら後ろから晃が支えるつもりである。しかし無事何も起きずに参拝する場所まで辿り着く。ここでも普通にお参りした後、神職さんに黄色い参宮章を提示して中に入る。外宮と同じように玉垣の外を歩いて横の門から入り、神殿の前でふたり一緒に二拝二拍手一拝でお参りをした。
そして帰りは、外宮では来た道を戻ったのだが内宮ではそのまま前面の門を通って宿衛屋の所に戻った。あ、楽でいいなと思う。小夜子に玉砂利の上を歩かせるのはかなりヒヤヒヤなのである。特別参拝したあと、1〜2分少し身体を休めてから、脇の階段を降りた。
例によって荒祭宮へは階段が大変そうなのでパス。風日祈宮も橋が滑りやすそうな気がしたのでパスして坂を登ったところにある子安神社に参拝してから出口に向かう。内宮に入ってきた時はまだお日様の光量がそれほどでもなかったのが、戻る時はかなり明るくなっている。宇治橋を渡って外に出ると、太陽が宇治橋の右手すぐの方向に見え、きれいな構図だった。ふたりはしばらく見とれていた。
車内で小夜子を休ませておいて晃はおはらい町を歩き、赤福の本店まで行く。赤福を1箱買って車に戻り、一緒に食べた。一休みしてから二見浦に行く。
「きれいな場所だね」
「倭姫があまりの美しさに二度振り返って見たという場所だからね」
その日の午後は鳥羽水族館を見学し、そのあと鳥羽市内でのんびりと夕食を取ったあと瀧原の道の駅へ移動して車中泊する。
翌28日は朝、日出少し前に車を降りて瀧原宮・瀧原竝宮まで歩いて行った。ちょうど聖域に入るあたりで日の出となる。小夜子は思わず歩みを停めて、日の出とともに変化して行く空気を楽しんだ。
「ここ空気が物凄くきれい」
「物理的な意味でと霊的な意味でとだよね」
「そうそう」
昨日、外宮・内宮で体験した澄み切った空気の感覚を、ここ瀧原で再度味わうことができた。そして何と言っても町中にある外宮・内宮に比べて、山の中の瀧原は物理的に空気が美味しい。ここが伊勢の原点だと言っていた人がいたのに納得する思いだった。
その日は国道42号をゆっくりと南下。午後から新宮で熊野速玉大社に寄った後、(神倉神社は階段なのでパスして)那智勝浦の温泉旅館に泊まった。この旅で最初のホテル泊である。
「この旅館で忘帰洞に入りに行くチケット買えるみたいよ」
「あ、行こう行こう」
忘帰洞は、天然の洞窟に作られた温泉で、湯に入りながら外の景色を見ることができる。
「うん。じゃチケット買ってくるからサーヤ行っておいでよ」
「アッキーも一緒に行こうよ」
「いや、だってボクはちょっと・・・・」
「ああ・・・今女の子仕様になってるのか」
「そもそもこの格好で脱衣場に入った時点で追い出されそうな気がする」
「うーん。。。男湯の脱衣場からは追い出されるだろうけど、女湯なら問題無いんじゃない?」
「えー!? それは大いに問題ありだと思うけど」
「じゃ、アッキーがその格好で入口を尋ねたら、男湯の脱衣場を案内されると思う?女湯の脱衣場を案内されると思う?」
「女湯の脱衣場だろうね。ボクってトイレの場所訊いたら絶対女子トイレの場所教えられるもん」
「で、アッキーが服を脱いだら男と思われる?女と思われる?」
「まず女と思われると思うけど」
「じゃ、女湯に入れるじゃん」
「うっ・・・」
「一緒に入ろうよ。チケット2枚買って来てよ」
「うん・・・・」
晃は旅館の帳場でチケットを2枚買ってきた。メイクを落としマリッジリングを外してからお風呂セットを持ち、桟橋から船に乗って5分ほどでホテル浦島に着く。今夜は那智勝浦の温泉に入ろうと今朝瀧原で決めてネットで予約した時、実はこのホテル自体に泊まることも考えたのだが、1泊2万3千円という料金にビビったのである。しかし他のホテルに泊まっても入りに行けるというのは知らなかった。温泉だけ入りに行くのなら1人1000円である。
手をつないで一緒に忘帰洞の方へ行く。入口を入って手前に「女湯」、奥に「男湯」の看板が掛かっている。女湯の脱衣場に上がる階段の前で小夜子はチラっと晃の顔を見た。ああ、不安がってる、不安がってる、面白ーい。小夜子はこれは強引に女湯に連れ込まねばと思った。
「さ、入ろう」と手を取って言う。
「う、うん」
晃もこんなところで躊躇ったり抵抗したりしたら不自然だと思ったようである。脱衣場の中に入り、服を脱いで棚に置いて行く。晃も少し躊躇ったようだが、脱がないのも変だと思ったようで脱ぎ始める。小夜子が先に裸になってしまったが、晃もブラを外し、ショーツを脱いで全裸になる。うん。ふつうに女性の裸に見えるよね〜。ああ、この不安げな顔がたまらない。押し倒したいくらい!
「中に行こう」
「うん」
ふたりは裸になり、タオルだけ持って浴室に入った。
「わあ、きれい」
浴室の向こう側に熊野灘が見えている。ふたりはつい端の方まで行って景色を眺めてしまった。それから掛け湯をし、身体を簡単に洗ってから湯船につかる。さすがにここまで来ると、晃も開き直ったようである。
「こういうところでお風呂に入るのって気持ちいいね」
「開放的な気分だよね」
「ここ、夕日見えるのかなあ」
「あ、ここは朝日が見えるので有名だからね。東を向いているはずだから夕日は無理」
「うーん。残念」
「でも充分きれいだよ」
などという会話をしていたら、近くで湯船に浸かっていたおばちゃんが
「遙峰の湯からなら、夕日が見えるよ」
と言う。
「わあ、ありがとうございます。ここからどのくらいかかるかご存じですか?」
「10分くらいだよ。あんたたち若いから7〜8分で行くかもね」
「よし、アッキー、行こう」
ふたりはおばさんにお礼を言ってから浴室を出て脱衣場に戻り服を着ていったん本館に戻ってから名物の150mある大エスカレータで山上館に行く。そしてそこの遙峰の湯まで行った。
脱衣場で服を脱ぎ、中に入る。晃もさすがに今度は2度目なので、もう躊躇わずに脱衣場に入り服を脱いだ。
ここはお風呂自体は普通のお風呂だが、紀州の山の方を向いている。着いた時はもう夕日が山陰に落ちていくところだった。ふたりはその景色をギリギリで見ることが出来た。
そのあと、ふたりは女性専用のハマユウの湯に入ったあと、もうひとつの洞窟温泉である玄武洞にも行ってみた。もうすっかり日が落ちて暗くなっている。
「ここはまた別の趣があるね」
「ここも雰囲気いいね」
「でもすっかり女湯に慣れたでしょ?」と小夜子は小声で訊く。
「慣れた訳じゃ無いけど、今日はもう完全に開き直り」
「だけど一緒に温泉に入れるって、私、アッキーと結婚して良かったな」
「まあ新婚旅行で一緒に温泉に入れるカップルってレアだよね」
ふたりは小声で会話をして、微笑み合った。
外来の入浴は19時までなので、ふたりはこの玄武洞で入浴を切り上げ、自分たちの旅館に戻った。入浴の記念に絵ハガキももらった。旅館では夕飯の時刻を微妙に過ぎていたようであったが待ってくれていたので広間に行き食べる。同様に遅めの夕食になったグループが2組あったようで、あまり気がとがめなくて済んだ。
「なんか豪華な夕食だね〜」
「うん。とっても美味しい」
海の幸をふんだんに使った料理が素晴らしかった。隣の女性3人のグループとなんとなく会話が成立してしまう。向こうはこちらを女性2人の友人同士の旅と思っているようである。
「ああ、そちらは今日熊野三山を巡ってきたんですか?」
「ええ。良かったですよ。特に那智の滝が素晴らしかった」
「わあ。私たちは今日新宮に行って、明日那智と本宮に行くんですよ」
「那智ではめはり寿司食べてくださいね。美味しいですから」
「めはり寿司?」
「高菜でくるんだおにぎりなんですけどね。那智の食堂で食べられますから」
彼女たちとの話ははずんだ。
「ねぇ、お聞きしていい? ふたりって凄く仲良い感じだけど・・・」
「へへへ。実は恋人、というより夫婦なの」
「きゃー、ビアンカップル? あ、じゃそのマリッジリングも」
「うん。実は3日前に結婚式を挙げたのよね」
「わあ、素敵〜!」
「女の子同士でも結婚式挙げちゃうんだ?」
「どちらがタチですか?」
「あ、私たちは結構リバ。途中で交替したりもするし」
「へー」
その夜は車中泊を2日続けた後だったこともあり、夕食時に彼女たちにたくさん祝福され少々煽られた(キスまでさせられた)こともあり、ふたりともかなり燃えて、熱いセックスになった。晃はずっとタックしたままでレスビアンモードなので明確な終わりの無いまま長時間プレイが続いていく。ただ、あまり防音性のよくない日本旅館だから声は出せないしあまり音も立てられない。しかし声を出せないことが、更に燃え上がらせる感じだった。
結局その夜は休憩をはさみながら3時間ほど楽しんで12時すぎに寝た。旅の疲れとセックスの満足感で、ふたりとも熟睡した。
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Les amies 結婚式は最高!(7)