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■Les amies 結婚式は最高!(8)

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29日は朝から車で熊野那智大社へ行き、お参りした後で道に沿って並んでいる食堂のひとつに入り、昨夜遭遇した女の子たちから勧められた「めはり寿司」
を頼んで食べる。
 
「ちょっと面白いね、これ」
「うん。なんてことないおにぎりだとは思うけど」
「まあ、名物ってそんなものよね」
「だけど美味しいよ」
「うんうん」
 
その後坂道を降りて行き、森の中に入って行く道を歩いて那智の滝まで行く。
 
「よくさ、ここの飛瀧神社を那智大社と思い込んで、向こうに行かずに帰っちゃう人いるらしいね」
「わあ、もったいない。でもバス停で降りたら、目の前にここに来る道があるから、那智大社の方には気付かないっての、あるかもね」
「やっぱり旅は事前調査が大事だね」
「なんか徒然草に似た話があったね。男山八幡で麓の摂社だけ見て帰っちゃったって話」
「まあ、知らないとそんなものかもね。情報は大事だよ」
 
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やがて大滝が見えてくる。食堂の付近からも遠景で見えていたのだが、間近で見ると迫力が違う。ふたりは思わず息を呑んで立ち止まった。
 
「滝って、何かを飲み込んでいくようだと思うことよくあるけど、ここも凄いね」
「なんかパワーが凄まじいよね。アッキーも雑念を捨てよう」
「ところでさ、これ、あれに見えない?」
「うん。見える。ここは間違いなく女神様だね」
「良かった。これ雑念じゃないよね」
「うん。純粋な発想だと思うよ。女神様のお膝元だから、アッキーも自分の中の女らしさを強めてもらおう」
「そうだね・・・・」
 
「ん?」
「ボクさ・・・もしかしたら1年後にはおっぱい大きくしてるかも」
「ああ、それは多分してると思うよ」
「そんなことしちゃったらごめんね」
「生殖能力さえ維持してくれていれば無問題」
「ということはホルモン使わずにシリコンかなあ・・・」
 
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お参りしてから記念写真を撮ろうとしたら、カメラの電池が切れてる。
「そんな馬鹿な・・・今朝入れたのに」
「まあ切れたのはしょうがない。新しいの持ってる?」
「うん。持ってる」
と言って晃は電池を交換してから記念写真を撮った。
近くの人がふたりが並んだ記念写真も撮ってくれた。
 
那智大社を出た後、ふたりは車でいったん勝浦まで戻ったあと国道42号で新宮まで行き、国道168号に入る。途中大きな滝があったので車を停めて見物し、記念写真を撮る。あとで調べたら「葵の滝」別名「那智の裏滝」というものだと分かった。那智の滝のちょうど裏手くらいの位置になるらしい。
 
更に車を進めて30分ほどで熊野本宮大社に到着した。神社前の道の駅に車を駐めお参りする。ここでお参りしてから記念写真を撮ろうとしたら・・・また電池が切れてる!
 
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「絶対変だよ」
「まあ切れたものは仕方ない。新しいの持ってる?」
「うん。持ってる」
と言って晃は電池を交換してから記念写真を撮った。
 
お参りした後、旧社地の方へも歩いて行く。
「新宮(熊野速玉大社)ではすんなり撮れたのにね」
「まあ、いろいろあるんだよ。気にしない気にしない」
 
旧社地でお参りした後は道の駅でしばし休憩する。それからまた168号で新宮に出て、国道42号を南下、串本まで行き、更に国道を走って夕方、南紀白浜に到着した。
 

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今朝ネットで予約しておいたホテルにチェックインする。2日続けてのホテル泊だが、たぶんこれがこの旅最後のホテル泊である。
 
「目的地定めずに埼玉を出たつもりだったけど、結局ここに来ちゃったね」
「まあ、私たちにとっての記念の場所だもんね」
 
荷物を置き、お茶を飲んでから、ふたりは「思い出の場所」を探しながら散歩した。そこはすぐに見つかった。
 
「あの時と全然変わってない」
「田舎って、時の経過がゆっくりしてるからね。東京はめまぐるしく変わっていくのに」
「そこの岩だよね」
「うん。ここで座ってお話したよね」
 
「そしてそこの木の陰」
「うん。この木もあの時のまま」
 
ふたりはその木の陰に行き、熱い口付けをした。
 
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実は以前この木の陰でふたりは初めてのキスをしたのである。
 
冬の冷たい風が容赦なくふたりに吹き付ける。しかしふたりはしばし時間を忘れるかのように、お互いをしっかり抱きしめ、キスを続けた。
 
10分近くしてからやっと唇を離す。
「寒いね、さすがに」
「冬だもんね」
「海水浴はできないね」
「それは無理だね」
 
ふたりは微笑んで、ゆっくりとホテルの方に帰り始める。
 
「あの時、なんか可愛い女の子がいるなあ、と思って眺めてたら、アッキーであることに気付いたんだよね」
「別にボク女装はしてなかったと思うけど」
「うん。女装はしてなかったけど、女の子にしか見えなかった。でもあの当時から、アッキーってしばしば女装してたんでしょ?」
 
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「してないけどなあ」
「アッキーって、去年の12月頃まで、これは女装ではない、なんて主張してたよね」
「うーん。さすがにそう主張するのは疲れた」
「じゃ、女装だと認めるのね?」
 
「えっとね。11月頃までは単にファッションとして女物の服を着ていたから、女装じゃなかったと思うんだよね。でも先月くらいからは自分の意識が女にシフトしてきたから、女が女の服を着るのは女装ではないという意味で、やはり今は女装してないよ」
「意味が分からん!」
 

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30日はひたすら帰ることにする。白浜を出て少し走ったところで南紀田辺ICから阪和自動車道に入った。
 
「勝浦も南紀勝浦と言ってたよね。白浜も南紀白浜、ここも南紀田辺。南紀って南紀州、和歌山県南部ってこと?」と小夜子。
「あ、それよく誤解されるけど、南紀は南海道の紀州って意味。だから南紀は和歌山県全体」
「えー!?」
「正確には紀州全体だけどね。紀州の南半分という場合は南紀ではなくて紀南」
「なるほど」
「もともとの紀州は今の和歌山県より広いんだよね。今は三重県になっちゃってる紀伊長島のあたりまでが紀州だけど、和歌山県側は田辺付近から南、三重県側は熊野市付近から南が紀南で、それより北が紀北。でも紀南も紀北も南紀」
 
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「なるほど。でも廃藩置県の時に、ぶん取られちゃったんだ」
「明治の頃って境界がけっこう揺らいでるよね」
 
「アッキーの性別も揺らいでる?」
「うん。揺らいでる。でもわりと女の方に振れて来たかなあ・・・」
 

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この日は白浜から岸和田SAまでを晃、そこから天理PAまでを小夜子が運転してそこでお昼を食べてしばし休憩する(阪和・西名阪)。
 
晃が運転して午後2時頃天理を出発し、名阪・東名阪・伊勢湾岸道と走って、夕方湾岸長島PAで休憩する。仮眠して起きたら6時過ぎだったので夕食を取る。そのあと小夜子が運転して豊田JCTを直進して東海環状道に入り、土岐JCTから中央道に分岐。小黒川PAで車中泊した。
 
31日は朝起きてから小夜子が運転して岡谷JCTを長野道に分岐して梓川SAまで行って、朝ご飯を食べる。そのあと晃が運転して更埴JCTから上信越道に分岐。甘楽PAで休憩する。
 
「今回は軽井沢は通過だったね。また下道で行こうよ」
「碓氷峠だよね。でも赤ちゃん産まれた後だよ。妊婦をあそこに連れて行きたくない」
「うん。それは言えるね。でも今度碓氷峠行く時は全線私に運転させて」
「いいよ」
と晃は少し投げやりに言う。碓氷峠はドライバーの方が助手席より楽である。
 
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ゆっくり休憩の後、お昼を食べ、小夜子の運転で藤岡JCTから関越を南下し、所沢ICで降りて、あとは下道を走って自宅に帰還した。
 
「こんなに走って料金1000円って凄いね」
「本来なら9000円くらいの料金だよね」
 
「だけどさ。なんかここはもっとスピードを出せるのに!と思うような区間はたいていアッキーが運転してた」
「新婚旅行中に切符切られたくないからね」
「う・・・・わざとか」
 
「1万2千円もあれば、美味しい御飯が食べられるからね〜」
「ああん、あれ取られると悔しいよね」
 
「でもアッキー、旅行中はタックをずっとしたままだったね」
「なんか女の子でいたい気分だったんだよね」
「今夜も女の子?」
「どちらでもお好みで」
「じゃ、女の子のままでよろしく」
 
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しかしその日はさすがに疲れが溜まっていたので1回セックスしただけで眠ってしまった。そして翌2月1日はHもせずに、ひたすら寝ていた。
 

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ふたりは2月2日の水曜日から仕事に復帰した。
 
小夜子の予定日が9月10日ということで、約1ヶ月前の8月から半年後の3月まで約8ヶ月間休職することで、会社とは話がまとまった。また体力的に無理させないようにということで、4月から7月までは原則内勤で緊急時以外は残業無しにすることになった。また、ルート営業は小夜子の部下の子たちに基本的に任せ、大事な商談にだけ出て行くようにすることにした。
(小夜子は営業部長の肩書きを持ち、部下の営業部員が3人いる)
 
小夜子も晃も仕事が終わるとそそくさと帰るので、周囲からけっこう冷やかされる。
 

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小夜子の同僚で3月12日に挙式を挙げる予定の寿子は2月いっぱいで退職した。結婚式まで、彼氏の住んでいる宮城県のN市で過ごす。2月28日は職場のみんなで送別会をした。
 
「これで経営陣以外では私がいちばんの古株になっちゃう」と小夜子。「そろそろ常務くらいにしてもらいなよ」と寿子。
 
この会社は今の社長と専務のふたりで始めた会社で、もうひとりの役員は社長の妹さんが実質名前だけ貸している状態で運営されている。一応、社長と専務という肩書きではあるが、ふたりはどちらも代表権を持っていて権限も対等である。基本的には社長が営業面と管理面、専務が技術面・運用(オペレーション)面を担当している。小夜子は営業部長、寿子は運用部長の肩書きになっている。寿子が辞めた後、当面は運用部長は空席にするらしい。
 
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「いや、役員は拒否する。そもそも社長と専務のツーカー感には割り込めないよ」
と小夜子。
 
「私、入社した時、社長と専務って恋人なのかと思った」と小夜子の部下の藤咲さん。「私はレズじゃないよ」と専務が笑って答える。
「ちゃんと男の人と結婚しましたもんね」
 
専務は2年前に結婚しているが、結婚してもバリバリ仕事をこなしている。出産の時も一週間前まで仕事をし、出産後2ヶ月で赤ちゃん連れで!仕事に復帰した。この時、オフィスの一角に仕切りを設置して授乳室を作った。実際には女ばかりの職場の気安さで、専務はけっこう平気で仕事しながらおっぱいを露出して授乳していた。この授乳室はふだんは通常の休憩室として使っている。
 
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「私もレズじゃ無いよ」と社長。
「男性の恋人が5人でしたっけ?」
「いや私は7人いて曜日ごとに別の家に帰るんだと聞いた」
「そんなにいたら面倒だよ。今は3人だよ」と社長。
「すごーい。嫉妬されないんですか?」
「たっぷり愛してあげてるから大丈夫」
「わあ」
 
「嫉妬って自分への愛が無くなるのではという不安だからさ。日々たくさん愛してあげれば問題無いんだよ。あと3人という数も大事。2人だと対抗心持たれる」
「へー、覚えておこう」と若い社員。
「ただの開き直りだよ」と専務が言う。
 
「運用部長の彼氏って、お仕事は何しておられるんですか?」
と別の若い社員から質問が出たが
「旅館でしたよね」
と別の子が答える。
 
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「うん。一昨年までは東京で倉庫会社に勤めてたんだけど、お父さんの体調が悪くて、去年から実家に戻って実質切り盛りしてるんだよね。だから私は3月からは若女将ということで。正直、私みたいな無愛想な人間に客商売が務まるか不安なんだけどね」
 
「海の近くだって言ってたね」と専務。
「ええ。近くに海水浴場もあって夏にはけっこう人が来るんですよ。今の時期はシーズンオフで、客が少ないのよね。そのあたりが経営上の課題っぽい。戦後間もない頃に建てた古い旅館だからなあ。結局は建て直さないといけないんじゃないかって、彼は悩んでる」
「建て替えるとすると、建設費用以上にその間の収入が途絶えるのが辛いね」
「そうなんだよね。結構累積赤字が凄いみたいだし」
 
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翌3月1日の朝、小夜子と社長・専務、寿子の部下の川島さんの4人で東京駅で新幹線に乗り宮城に行く寿子を見送った。
 
彼氏の家が旅館なので、披露宴もそこでやるし、こちらから行くメンバーの宿泊もそこになる。小夜子たちは11日の夕方の新幹線で仙台に行き、その旅館に泊まることにしていた。
 
「しかしトシちゃん居なくなるのは寂しいね」と社長。
「まあ、騒がしい子だったしね」と小夜子。
「でも、部長のあの性格に、私随分助けられました。どうしよう?って時もいつも元気だったから」と川島さん。
「まあ、何とかみんなで頑張っていこう」と専務。
 
その時はみんなまさか10日後に、あんなことが起きるとは思ってもいなかった。
 
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