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■Les amies 結婚式は最高!(4)

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「私、アッキーに謝らなくちゃ」「え?何を?」
「アッキーに性転換しないの?とか、ホルモンしないの?とか、勝手なこと言って」
「言われ慣れてるから気にしないよ」
「私さ、以前恋人として付き合った時より、今回ほんとに女友達同士の感覚ですごした2ヶ月間のほうがずっと楽しかった」
「それはボクも。ボクはやはり普通の男の子みたいには振る舞えないしね」
「それでさ、アッキーがいっそ本当の女の子になってくれたら、ずっと女友達のままでいられるのにとか思って、だから女にならないの?とか言っちゃったのかなと反省して」
「・・・・・」
 
「でもアッキーはアッキーなんだよ。無理にアッキーを男か女かに分類しようとするのが間違い。私とアッキーは仲良く付き合っていける。でも私がアッキーを男として捉えようとしたり、逆に女として捉えようとすると、無理が来ちゃうんじゃないかな。だからもう私、アッキーのこと、男だとか女とかいった分類はせずに、アッキーのあるがままの姿を私は受け入れることにする」
 
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「ありがとう。僕自身、正直なところ性別意識が結構揺れてる。5年前にサーヤと付き合った時は少し男らしくしないといけないかなと思って無理しちゃった所があったかも。逆に最近は何となく職場でもサーヤの前でも女を演じすぎていた所があるかも知れないけど、実際問題として100%女になりきれない自分もあるんだよね。もっとも、心理的には7-8割は女かなという気はするんだけど。電車の定期も女で登録してるし」
 
「でさ」
「うん」
 
「そういう男とか女とかいう枠組み外して、私アッキーのこと好き。男女の恋人として好きとか、女友達として好きとか、そういう枠組みではなくてアッキーという人そのものが好き」
 
「ボクもサーヤのこと好きだよ。自分が男か女かは置いといて」
 
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「じゃ結婚しよう」「え?」
「好きなら結婚できるよね」「・・・・・」
「別に無理に『夫』を演じなくてもいいから。ふつうにしてくれて、ただ一緒にいてくれればいいの」
「ボクもそれしかできないよ」
小夜子は晃に熱いそして長いキスをした。
 
その日、ふたりは5年ぶりのセックスをした。それはお互いの存在と位置付けを確かめ合うかのようなセックスだった。
 
「世の中には七夕カップルとか、オリンピック・カップルとかいるらしいけど、私たちオリンピックより周期長いね」
「でもこれからは、ずっとカップルでいようよ」
「うん。デイリーカップルだよね」
 
翌朝、晃は小夜子の母の前で自分は戸籍上男であることをきちんと言い、また自分の生活スタイルはたぶん変わらないと言った上で、それでも小夜子を愛しているので、できたら結婚させて欲しいと五十鈴に申し入れた。
 
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五十鈴は快諾した。
 
晃はまた実家の母にも電話して、近い内に結婚するつもりであることを言った。母は「おめでとう! 相手は男の人?」などと訊いた。
 
「えっと、女の人だけど」
「あら?アキ、男の振りして騙したの?」
「騙してないよ。ボクはいつものボクだよ」
「それで結婚してくれるなんて、凄い奇特な人だね!大事にしなきゃ」
 
途中で電話を替わった小夜子は
「晃さんの女装癖は承知の上で結婚しますから」
などと言い、母に感激されていた。
 

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クリスマスイブ。小夜子は会社が終わるとケーキを買ってから晃の美容室に行きパーマを掛けてもらった。そしてお店が終わるのを待ってから一緒に遅いディナーを取った。
 
「そうだ。これプレゼント」と言って晃は小夜子にリボンの掛かった箱を渡す。
「わ、何だか重い。それにこの箱ってカルティエ!・・・・開けていい?」
「うん」
「すごーい。豪華なネックレス」
「パリの本店でしか売ってないネックレスだよ。パリに住んでる友人に頼んで買って送ってもらったんだ」
「へー。でも私たち恋人になったの6日前なのに。よく間に合ったね」
小夜子は早速そのネックレスを付けてみた。
 
「実はさ、それ5年前に渡しそこねたの」
「えー!?」
「5年前にサーヤとケンカしちゃったの、サーヤの誕生日直前だったじゃん。誕生日のプレゼントにこれ渡して、それでプロポーズしようと思ってたんだよ。今回リボンは新しいの買ってきて自分で結び直した」
 
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「わあ、私ってなんてもったいないことしたんだろ。どうせなら誕生日過ぎてから別れたら良かった。でも渡しそこねたんなら、郵送してくれても良かったのに」
「それはさすがに押しつけがましすぎる。渡すのに5年掛かっちゃってごめんね」
「ううん、ありがとう」
と言って、小夜子は素早く晃にキスをする。
 
「サーヤも初デートの時に買ったイヤリング付けてきてくれた」
「えへへ。これもありがとう。私買ってもらってばかり」
「ううん。サーヤからはたくさん愛をもらってるからいいんだよ」
「アッキーからもたくさん愛をもらってるよ」
 
「でも以前付き合ってた時はクリスマスを1度も一緒に過ごせなかったね」
「なんかタイミング悪かったよね。高1の時はボクが風邪引いてて、高2の時はサーヤが風邪引いてて」
「高3の時は、アッキーの家が引っ越しの真っ最中」
 
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晃の一家は晃が高校3年の時に北海道に引っ越してしまった。12月24日は突然の辞令を受けて、その引っ越しを大慌てでしている真っ最中だった。晃は大学受験を目の前にしていたので、その後受験まで、高校の先生の家に居候させてもらったのであった。
 
「そして5年前は10月に別れちゃったしね」
「あれは、やっぱり私が悪かったわ」
「ううん。僕の思いきりが悪かったんだよ。もっと早く髪を切ってたら、もう少し男っぽく振る舞えたかも」
「あの、髪切っちゃったあと、どうしたの?」
「半年くらいウィッグ付けてた」
「ショートカットで過ごしたんじゃないんだ?」
「それは恥ずかしいよ」
「やっぱりアッキーはアッキーだな」
と言って小夜子は笑った。
 
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ふたりは3月22日(火曜日)に神社で結婚式を挙げ、小夜子の叔母のビストロで食事会をすることを決めた。
 
招待客は、晃の親族が母・妹・叔母、小夜子の親族は母とビストロのオーナーとその娘さん以外には、父の妹と娘さん、母のもうひとりの妹と娘さんで親族関係は合計10人、晃の美容室の同僚が7人、小夜子の会社の同僚が7人、そして晃と小夜子の高校時代の同級生(女子)3人、で友人関係が合計17人。出席者は新郎新婦を入れて29人となった。
 
出席者は全員女性。ついでに新郎新婦まで女性である。晃は知り合いのニューハーフさんから神奈川県のK神社で同性の結婚式もあげてくれる、と聞き込み、その神社に電話で自分たちの状態を説明して、そういうカップルでも構わないという確認をもらい、結婚式の予約を入れた。3月22日に予約したのは、予約がかなり先まで埋まっていたものの、直前にちょうど1件キャンセルがあったらしく、偶然空いていたためである。火曜日というのも美容室が休みで都合が良かった。
 
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そして小夜子の叔母にもその日の貸し切りをお願いしたのだが・・・・・
 
(晃が)予期せぬ自体が発生した。
 
お正月早々に小夜子の妊娠が発覚したのである。
 

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「ごめんねー。コンちゃんの付け方が悪かったのかなあ」と晃が謝る。
「ううん。どうせ3月には結婚するんだから問題無い」
「だけど3月に結婚式したら、ちょうどつわりのひどい時期だよ。妊娠してしまった以上、すぐにでも入籍しよう」
「えー!?」
 
小夜子は実は確信犯だったので(先月18日は自分の排卵期に当たることを承知でコンドームに針で穴を開けておいた)、落ち着いていたのだが、晃の方はこうなった以上、速やかに入籍しようと言って、1月24日(月曜・友引)に繰上入籍することで、小夜子の母と話を付けてしまった。
 
結婚式についても、3月に予約を入れていた神奈川県のK神社はキャンセルしたので、いったんは神社での式を断念して人前結婚式で挙式しようかとも言っていたのだが、晃が埼玉県内の神社に絨毯爆撃方式でひたすら問い合わせた所、E市のH神社が、男性と女性の式であれば、衣装がふたりとも花嫁衣装でも構いませんよと言ってくれたので、偶然にも入籍予定日の翌日25日(火曜・先負)の午後に空きがあったので、そこで式を挙げることにした。
 
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また晃は小夜子を連れ出して都内の宝石店に行き、ダイヤのエンゲージリング(プラチナ)と、お揃いの18金のマリッジリングを購入した。左手薬指にエンゲージリングを付けた小夜子は、何だか夢でも見ている気分だった。
 
そして、更に晃は早々にアパートを引き払って、小夜子の家に同居し始めたのである。晃の実行力が高いことは小夜子は認識していたつもりだったが、こんなにスピーディーに物事を進めるのには正直驚いた。そして、小夜子があれ?あれ?あれ?などと思っている間に、いつの間にか事実上の新婚生活がスタートしてしまっていて、ふと気付くと、もう来週は入籍の日ということになってしまった。
 
「まだうちの実家に挨拶に行ってなかったでしょ?だから今週北海道まで行って来よう。3人分、チケット取ったから」と晃。
「3人?」
「うん。ボクとサーヤとお母さんと」
「あらあら」と五十鈴は笑っている。
 
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3人は金曜日の朝の飛行機に乗って北海道の晃の実家を訪れた。実家とは言っても実は晃はここで暮らしたことがない。晃は生まれた時から高校時代までずっと埼玉にいた。親の方が高3の時に北海道に転勤で引っ越してしまった。その後、晃はずっとひとり関東に居座っているのである。実家に来たの自体が7年ぶりである。
 
3人が実家を訪れると、晃の母は
「こんな変態息子を『もらってくれて』ありがたい」
などと言っていた。
もう何年も晃と口を聞いていなかった父まで
「いや、わざわざ遠い所済みません。お腹の赤ちゃんは飛行機大丈夫でしたか?」
などと小夜子を気遣う。
 
父は奄美の出身で向こうにはあまり親戚もいないのだが、母は元々北海道の出身なので、こちらには近くに母の親戚がいる。それで、3人が行った翌日は親戚が集まってきて、実質お披露目のような雰囲気になってしまった。晃の妹が手配して仕出しまで頼んである。
 
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その日は晃も小夜子もこの日だけマリッジリングを付けて(小夜子はエンゲージリングと重ねて付けて)持参した京友禅の振袖を着た。小夜子のお気に入りの振袖の中から晃が『月風』、小夜子が『雁楽』という作品である。ふたりの振袖を見た親戚のおばちゃん達は
「凄い豪華な振袖」
「きれーい」
「刺繍が美しい」
などと言った後で
「でもなんでアキちゃんまで振袖着てるの?」
「そうそう。何だか似合ってるけどさ」
などと訊かれる。
 
「済みません。ボク変態なんです」と晃。
「あら、女の子みたいな声になっちゃってるのね。性転換しちゃったの?」
「いえ、性転換はしてないですが、勤め先でもほぼ女扱いで」
「へー。知らなかった。でも最近そういうの多いし、いいんじゃない?」
「こんなに美人になるんなら、それもいいよね」
と、みんな晃の「生態」を受け入れてくれた。みんなからご祝儀も頂いてしまった。
 
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従姉妹たちの中で2人が東京に出てきた時に女装の晃を見たことがあったので
「ますます女らしくなってるね」
などと言われる。
 
「あり・あり・なし?」とひとりの従妹に訊かれる。
「いや、なし・あり・ありだよ」と晃が答えると
「なんだ。つまらん。さっさと手術すればいいのに」などとも言われた。
 
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