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■Les amies 結婚式は最高!(12)

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火曜日は晃が美容院が休みなので、日中ずっと晃がみなみのお世話をする。そんな話をバストの遠隔ヒーリングをしてもらいながら青葉と電話で話していたら
「ね、あきらさん、おっぱいあげたい?」
などと言われた。
「へ?おっぱい出るようになるの?」
「なるよ」
 
などと言われたので調整してもらったら、本当におっぱいが出るようになった。
 
「待て待て、飲んでも安全かどうか、私が試飲して確かめる」
と言って小夜子は、晃の乳首から出てくるお乳を飲んでみたが
「あ、私のお乳とほとんど同じ味だ!」
と言って、晃が授乳することを認めた。
 
実際みなみは、それまでもしばしば晃の乳房にも吸い付いていたのだが、お乳が出るように調整してもらった後は、嬉しそうに乳首からお乳を吸っていた。どうも小夜子のお乳より晃のお乳の味の方がみなみの好みのようであったが、泣いたりしている時は、母親の安心感の方を選ぶのか、小夜子のお乳に吸い付いていた。
 
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「みなみに吸われる感想は?」
「ちょっと痛い」
「この子、吸い付く力が強いもんね〜」
「ああ、でも何だか幸せな気分」
「チチのチチにはチチがある(父の乳には乳がある)だね。でも吸われてると凄く幸せだよね」
 
「ほんとほんと。こんな感覚をサーヤと共有できるとは思わなかった」
「じゃ、次の赤ちゃんはアッキーに産んでもらおう」
「えー!? 産みたいけど、どうやれば産めるの?」
「なかなか難しいね」
 
1月初めの時点で晃のバストはCカップだったのだが、授乳を始めるとDカップになってしまった。更にふだんでも少し乳が漏れてくるので、母乳パッドを付けておくことが必要になってしまった!
 
するとその匂いを美容室でお客さんに気付かれることがあった。
「あら? もしかして赤ちゃんおられるんですか?」
「あ、はい。9月に産まれたんです」
「わあ、浜田さん、ママなんですね!」
などと言われた。
 
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晃は「奥さん」と呼ばれるのには最近少し慣れてきはじめていたのだが、「ママ」とか「お母さん」呼ばれるのは、まだ結構気恥ずかしい気分だった。
 
「自分で産んだ訳でもないのに『お母さん』と呼ばれるのは何だかむずかゆい感じで」
とそのあたりの心情を自宅で夕食中に言ったら
「あら、そしたら次はあきらさんが産めばいいのよ」
と五十鈴にまで言われてしまった。
 

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そして3月23日(金曜日・仏滅)の午後1時。東京都内の小さな神社で、寿子は結婚式を挙げた。神社に払った挙式料は3万円、寿子が着たウェディングドレスはヤフオクで3000円!で落としたもの。彼氏が着たタキシードは、会社の社長からの借物であった。
 
わざわざ平日の仏滅に挙げたのは、もちろん安くすませるためである。破産手続きが終わったばかりの彼氏には、借金も無いが現金も絶望的に無い。平日の仏滅は披露宴の会場自体を安く借りられるし、平日なので申し訳無いということで招待客を絞る言い訳にも使える。
 
ふたりは全ての費用を20万円以内で済ませようと計画を立てた。エンゲージリング、マリッジリングも無しとした。寿子は「エンゲージは1度はもらったから、それでいいよ」などと言っていた。
 
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式を挙げてくれた神主さんは「仏滅は神社とは関係ありません。いつ式を挙げても神様はちゃんと祝福してくれます」などと言ってくれた。
 
結婚式の出席者は彼氏のお母さん、横浜に住んでいるお父さんの弟夫婦、寿子の両親と兄、都内に住んでいるお母さんの姉夫婦、の親族8人。それに彼氏の親友2人、寿子の高校時代からの親友と小夜子が出た。親族や友人などはあまり呼ばずに結婚を報告するハガキを送るということにしていた。
 
記念写真も特にプロには頼まないと言っていたので、小夜子は会社備品のLUMIXと自分のコンデジ、念のため携帯ででもふたりが並んでいるところ、親族が並んでいるところを撮影した。彼氏のお友だちや親戚の幾人かも同様の構図で撮影してあげていた。
 
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結婚式が終わるとホテルに移動し、午後3時から披露宴をした。一番空いている時間帯(=不便な時間帯)である。
 
披露宴に出たのは、結婚式の出席者の他は彼氏の会社の社長夫妻と課長、こちらの会社の社長と専務、それに晃で、新郎新婦を含めて20人である。これをホテルの宴会プランでプライペートダイニングを借りたが20人セットで10万円という低予算。1人3000円の会費制ということにした。新郎新婦の手出しは予算の半分ほどになる。但し小夜子や社長・専務などは強引に1万円渡した。他にも何人か多めに渡した人がいたようであった。
 
宴会プランなので派手な演出は無い。全員席に着いてから始まる。新郎新婦も最初から席に着いている。
 
司会は約束通り小夜子が務めた。その日みなみは五十鈴がお世話をしてくれていた。小夜子は今日は控えめな薄紫色のプリンタ染めの色留袖を着ている。
 
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「司会を務めさせて頂きます、新婦の友人、濱田小夜子です。私は昨年の1月に結婚して、その時新婦が司会をしてくれました。そしてすぐに新婦も結婚式を挙げる予定だったので、その時は私が司会をする約束だったのですが、震災で吹き飛んでしまいました。新婦自身、津波に飲み込まれたものの、近くの人に助け上げてもらうという九死に一生を得る体験をしています。その後、いったん婚約解消などということになり、どうなることかと思ったのですが、無事復縁し再度愛を暖め、今日の挙式となりましたこと、本当に嬉しい思いです。それでは、まず新婦の上司、秋山専務より新郎新婦の紹介をお願いします」
 
専務が新郎新婦の簡単な略歴を紹介、あわせて祝辞を述べる。その後、彼氏の会社の社長の音頭で乾杯となった。
 
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小夜子たちの披露宴も花嫁2人の変則ウェディングということで確実に理解してくれる人だけにするため少ない人数でこじんまりとしたものだったが、こちらも低予算ということでほんとに、ちょっとした集まりという感じ。アトホームな雰囲気である。
 
大きなテーブルの左側に新郎の親族・友人、右側に新婦の親族・友人が着いているので、左右交互に指名して祝辞または芸を披露してもらった。彼のお母さんなどはスピーチの途中で感極まって泣き出してしまったが、隣に座っていた叔母さんに手を握ってもらい最後まで話し終えた。彼の上司の課長さんはテーブルマジックを披露して場を盛り上げた。彼氏の友人などは歌を歌ってくれた。音を大きく外した歌い方がかえって場の雰囲気をやわらげる。
 
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晃は指名されると頭に手を当てながら立ち上がる。晃は青い色留袖を着ている。
「私がここに呼ばれたのはあれかなと思うんですけどね。震災直後にふたりが婚約解消なんてことになっていた時、私はボランティアで宮城に行ってて偶然新郎と遭遇しまして。その時、婚約解消したというのに、盛んに寿子さんの様子とか私に聞くんですよね。それで、そんなに気になるなら、自分の気持ちを直接本人に言いに行ったらどうです?と煽ったんです。その後まもなく縒りを戻したようだったので、少しはお役に立てたかな、と思いました」
 
みんなが祝辞や余興をしてくれている間に新郎と新婦は一緒にビールの瓶を持ちテーブルを廻ってお酌をしながら、ひとりひとりと言葉を交わした。
 
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そしてちょうど全員にスピーチ・芸がまわったところでほどよい時間になる。そこで小夜子が祝電を披露する。祝電・祝FAXはかなり来ていて、小夜子は時計を見ながら読み、最後の方はお名前だけ読んで文章は省略させてもらった。
 
そして新郎新婦からそれぞれの親への感謝のことばが読み上げられる。その言葉を書いた紙とともに花束贈呈。それに対して彼氏の母、寿子の父が感謝の言葉を述べて、披露宴の進行は完了する。
 
「それでは宴もたけなわですが、ここでいったんお開きとしたいと思います。最後に新郎新婦の熱いキスで締めてください」
と小夜子が言うと、拍手や歓声が広がる。
 
ふたりは照れながらもしっかりとキス。
また拍手が起きて、披露宴はお開きになった。
 
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披露宴終了後、そのまま全員寿子のアパートになだれこんで二次会をした。6畳の部屋とダイニングにまたがって折り畳みテーブルを並べたが20人も入るとギュウギュウ詰めである。しかしそれもまた気安い雰囲気で良い。
 
「100人とか招待してやる大規模な披露宴とかも悪くないけど、こういう質素な披露宴というのも、また味があっていいですね」
などと彼氏の友人が言う。
 
「何年も交流の無かった親戚とか、大して親しくもない同僚を義理だけで呼んだりしなくてもいいでしょうしね」
「大企業に勤めている友人の結婚式で祝辞を読んだ部長さんが新郎の名前を読み違えたことあります。大企業の部長ともなると雲の上の人だから、たかが平社員の名前まで覚えてないんでしょうけどね」
 
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今まで寿子はひとりで、彼氏はお母さんと一緒に各々都内のアパートに住んでいたのだが、結婚後はふたりで寿子のアパートに同居することになっている。つまりここが新居である。
 
二次会の料理は前日までに寿子と小夜子が作っておくか、すぐ仕上げられるように仕込んでおいたのを小夜子と、寿子の友人のふたりで仕上げてあげた。お酒なども出してくる。そして小夜子たちが料理を仕上げている間に晃は奥の部屋で寿子に振袖を着付けしてあげた。小夜子の持っている京友禅で、自分自身北海道でのお披露目の時に着た『雁楽』である。
 
寿子が豪華な振袖姿で奥の部屋から出てくると拍手がわき起こる。彼氏の方はふつうのスーツを着ている。
 
そしてふたりはまず、ケーキ入刀をした。みんなのカメラのフラッシュが焚かれる。披露宴会場を宴会プランで借りたので食品の持ち込みができず、披露宴での実行を諦めたものである。ケーキは入刀したものは寿子が作ったものだが小夜子も2個作って持ち込んでいたので、適当に切り分け、来てくれた人たちに配った。
 
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ここで、彼氏の会社の社長夫妻とこちらの社長の3人が会社に戻るために抜けるが残りの17人で、なごやかに宴は進んでいく。
 
「新婚旅行はどうするんですか?」と晃が訊くと
「青春18きっぷを2枚取ってます」という返事。
「ひゃー」
「取り敢えず今夜のムーンライトながらに、小田原から乗ります」
 
青春18きっぷは1日単位の普通列車乗り放題切符なので、ながらを23:10発の東京からではなく、日付の変わる0:31発の小田原から使う人も多いのである。
 
「初夜は?」
「今夜はお預け」
「さすがに、ムーンライトながらじゃHできないね」
「2日目に広島の格安ホテルに泊まる予定だから、それが初夜ね。1泊4000円」
「それはまた凄い」
 
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「3日目は宮島にお参りしてから、その日の夜は博多から対馬行きフェリーの二等船室」
「またHできないじゃん」
 
「4日目は対馬と壱岐を見て博多に戻りレンタカーを借りて車中泊」
「まあ車中泊ならHできるか」
「翌朝小倉でレンタカーを返してから18切符の3枚目を使って宮崎まで行き格安ホテルに泊まる」
 
「待て。レンタカーって夜借りて翌朝返すの?」
「そう。12時間借りる。借り賃は会員割引で3800円くらい。同一県内だから乗り捨て料金無し」
「それって、レンタカーをホテル代わりにするのか!」
「まあ、そうとも言う。でも夜の唐津と西海橋を見てくる予定」
「頑張るなあ。実際には寝る時間無いじゃん」
 
「6日目は18切符の4枚目を使って小倉に戻り、阪九フェリーで神戸へ。阪九フェリーは個室だからHできる」
「頑張ってね」
「あれ?阪九フェリーって門司からでしょ?小倉じゃなくて門司駅まで行けばいいのでは?」
「門司駅からはタクシーで2000円かかる。小倉からなら無料の送迎バスがある」
「なるほど」
 
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「そして7日目は18切符の最後を使って東京に戻る」
 
「なんか、お疲れ様ですって感じの旅だわ」
「6泊の旅でホテルに泊まるのは2回。列車内泊1,フェリー内泊2,自動車内泊1」
「体力が無いとできない旅ね」
 
「旅費は18切符とフェリー代であわせて6万。ホテル代とレンタカー代が1万円ちょっと。食費も入れて10万くらいという予算」
「安くあげようと頑張ったこと自体が楽しい旅だね、それ」
「そうそう!そうなのよ」
 
「なんか、ただひたすら移動するだけで観光してない気もするが」
「別に観光地なんて、どこも似たようなものだから問題なし」
「まあ、新婚さんにはまわりの景色なんてどうでもいいよね」
「ああ」
 
「寿子ってけっこう鉄道マニアだったよね」
「ううん。私は時刻表マニア」
「そのあたりの違いはよく分からん」
 
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二次会が終わって軽装でバッグも1個ずつという身軽な装備で小田急小田原線に乗るふたりを新宿駅で見送り、晃と小夜子は思わず手を握って微笑んだ。
 
「さて、帰って、みなみにおっぱいあげなきゃ」と晃が言う。
「おっぱいあげるのが楽しみになっちゃったね」と小夜子。
「もう『母の歓び』を実感してるよ」
「そろそろ、女の身体になりたくなってきてるでしょ?」
「うーん。ちょっとだけね」
「精液の冷凍保存して去勢する?」
「いや、たぶんあと2年くらいは我慢できると思うよ」
「きっと1年しかもたないと思うな」
といって小夜子は素早く晃にキスをした。
 
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