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■Les amies 結婚式は最高!(11)

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寿子が戻ってきたのはもう午後3時だった。明るい笑顔をしているので、小夜子にも専務にも、話し合いがうまく行ったことが分かった。
 
「結婚するんでしょ?おめでとう」
「え?何で分かったの?」
「その顔を見たら分かるよ」
「私、5回も殴ったのに、それでも『結婚して』って言うから、まあそこまで言うなら、してあげてもいいかなと思って」
「あらあら」
 
「でも向こうが今破産申請中で。片付くのに1年くらいかかるだろうということで、それが終わってから結婚しようということになった」
「ああ、じゃ、あと1年間、うちに勤めるのね」
「ううん。ずっと勤めるよ。彼も東京で暮らすというから」
「へー」
「宮城じゃ仕事無いから、こちらで仕事探すって」
「確かに仕事無いよね、今」
 
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寿子の彼は幸いにも知人のツテで、運送関係の会社に就職することができた。彼は前勤めていた会社で大型二種免許を取っていたので、バスでも15トン車でも運転することができる。運送関係は今いちばん仕事がある分野でもある。ただし仕事は相当きついし時間が不規則である。結果的に寿子とはまたまたすれ違い生活になってしまったようだが、メールのやりとりで密にコミュニケーションしているようであった。しばしば寿子が就業中にオフィスの隅でメールを打っている姿が見られ、専務が「示しが付かん」と憤慨していた。
 
震災関係の破産申請はかなり集中していたものの、債権者が全く争わなかったため、結局12月には破産手続きが完了。免責も認められて、寿子の彼とお母さんは、新たな借金ができない他は、自由の身となった。破産手続きではいったん購入していた自動車も売却処分を求められ、また寿子がもらっていたエンゲージリングも寿子の側から自主的に返納して売却し、お父さんが亡くなったことで交付された弔慰金も債権者への分配金に組み込んだ。むろん旅館と自宅の土地も売却済みである。亡くなった従業員の遺族には結局、700万円ずつをプラスして渡すことが管財人さんと遺族との話し合いで決まった。
 
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彼のお母さんは50年間暮らした宮城県から出るのを嫌がっていたが、いざ東京に出てきてみると、都会の暮らしがすっかり気に入ってしまい、銀座や渋谷を楽しそうに散歩していた。
「私ねぇ、若い頃東京に行きたくて行きたくて、たまらなかったのよ」
などと寿子に言ったりする始末であった。
 
お母さんも夏にはデパートの呉服売場の販売員の仕事を見つけ働き出した。何十年もずっと働いていたので家の中に引き籠もっているのが性分に合わなかったし、また長年客商売をしていて客対応にそつが無く、笑顔も素敵だったので、デパート側にかなり好感されたようであった。また旅館ではいつも和服で仕事をしていただけあって、和服に関する知識がしっかりしていたのも評価された。
 
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晃たちのグループの美容師ボランティアは4月の中旬でいったん休止していたのだが、6月に現地の事情も改善されたことを受け再度参加者を募って再開された。晃はそれにまた参加した。
 
そして6月中旬、岩手県沿岸の被災地を回っていた時に、晃は唐突にMTFの人と大量遭遇した。現場では混乱していたが後で整理してみると偶然4グループが鉢合わせて、その中に自分も含めて6人のMTF/MTXがいたのである。遭遇したメンツは日を置いて東京で再会し親睦を深めた。その中に川上青葉という中学生のMTFで気功の達人が居た。彼女は女性ホルモンなど飲まずに体内の「気」を操って自分のバストを発達させたと言っていて、実際にBカップサイズのバストを持っていた。彼女は
 
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「あきらさん、男性機能はむしろ活性化させつつ、身体の上半身は女性ホルモン優位にしてバストを発達させるなんてこともできるんだけど」
などと言った。
 
興味を感じてつい
「やってもらおうかしら」
と言ったら、一緒に付いて行っていた小夜子が
「ぜひやってもらおう」
と言い、それで週に3回彼女のヒーリングを受けることになったのである。
 
そしてその結果、晃のバストは7月中にAカップサイズになり、8月末にはBカップのブラジャーが必要な状態になったのであった。
 
当時は小夜子がもう臨月なのでさすがにセックスはしていなかったが、ベッドの中で小夜子は晃の胸を楽しそうに触り、乳首を舐めたりしてせっせと晃の性感帯を開発していた。
 
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「でも、おっぱいができてみて何か意識変わった?」と小夜子は訊く。
「変わった。今までと全然違う。自分の性別意識が物凄く女の方に振れた。今までも7-8割くらい女だと思ってたけど、95%くらい女だという意識になっちゃった。もう男湯には入れないし」
「その身体では無理よね。6月の時も女湯に入ったんでしょ?」
「うん、まぁ・・・」
「性転換したくなった?」
「それ3年後の自分が怖い」
 
「精液を冷凍保存してくれたら、すぐ性転換してもいいよ」
「いやまだ、男を捨てる気にまではならない」
「半年後には分からないね」
といって小夜子はクスクスと笑いながら、今度はお股の棒を刺激する。
 
「ああ、やめて〜。それされると自分が男だというのを思い出す」
「やめてと言われたら、しなくちゃ」
「じゃ、して〜」
「OK。してあげるね」
「ああん」
 
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小夜子は7月まで「原則」内勤限定で仕事を続け、8月から休職した。社長と専務は会社の中核である小夜子と寿子が、相次いで結婚するのはいいとして、寿子は退職し、小夜子も8ヶ月間休職するというので、かなり不安があったようであったが、寿子が「寸止め出戻り」(本人談)してきたおかげで小夜子の休職中も、なんとか会社をうまく動かしていくことができた。
 
そして2011年9月10日。小夜子は予定日ジャストに女の子を出産した。破水から出産まで4時間という超安産であった。名前は「みなみ」と付けた。
 
「なんで《みなみ》なの?」
病院にお見舞いに来てくれた寿子から訊かれる。
 
「あ、思いつき。この子産んだ時に、名前何にしようかなぁと思ったら、《みなみ》って名前が浮かんできたの」
「へー」
「トシちゃんもきっと産んだら思いつくよ」
「でもそれを付けさせてくれるかなあ・・・・」
「出産した人の特権だよ。主張しなきゃ」
「うん、頑張ってみようかな」
 
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「私と晃って高校時代、一度もデートしたことなかったんだけど、一度だけ旅先で偶然遭遇して、1時間ほどふたりだけで散歩したことあるんだよね。そのとき初めてキスしたんだ」
「おぉおぉ」
「その場所が南紀白浜だったってのも少しあるかな」
「ほほお」
 

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10月下旬の土日、6月に遭遇したMTF/MTXのグループで温泉に行くことになった。それぞれの付き添いがいるので全部で12人になる。
 
(青葉・桃香・千里・和実・淳・胡桃・冬子・政子・春奈・あきら・小夜子・みなみ)
 
みなみは皆から「可愛い!」と言われ、アイドルだった。人見知りしない感じで青葉、千里、和実、胡桃、冬子、春奈、に抱っこされてご機嫌である。まだ首が座ってないので、みんな慎重に抱っこしてくれた。桃香や政子は、そんな小さな子を抱く自信が無いといってパスしていた。
 
「でもみなみちゃん以外にも何やら、また人数が増えてない?」と桃香が言った。「はい、新入りの春奈です。みなさん、よろしくです」と春奈が手を挙げて言う。
「ちょうど、出がけにうちに来たから『温泉行くけど一緒に来ない?』と言って連れてきた」と冬子。
「ああ、あなたスリファーズの春奈ちゃんね」と小夜子。
「はい。今月12日に発売された『ラブ・スティーラー』よろしくです」
「ああ、あの曲よく流れてるね」
 
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「ありがとうございます。あつかましく付いてきましたが、車の中でずっとケイ先生とマリ先生がイチャイチャしているのに当てられました」
「ああ、それなら私も桃香姉と千里姉の仲良さに当てられてた」と青葉。「右に同じ」と胡桃。
「何なら、帰り私たちの車に同乗する?」と小夜子。
「いや、きっと同じ目に遭うよ」と胡桃。
 
「でもみなさん、性別を変更しているのにちゃんと恋したり結婚したりしてるんですね。私、自分が女になると決めた日から恋は諦めてしまったのに」
と春奈。
 
「全然諦める必要ない。春奈ちゃんを愛してくれる男の子もきっと現れるよ」
と冬子。
「うーん。頑張ってみようかなあ」
「うん、頑張れ、まだ中学生でしょ? 恋に夢を持たなくちゃ」と和実。
「はい」
 
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「だけど恋愛のタイプも色々だよね」と青葉が言う。
「私は彼氏がいるからMTF-Mの男女型、千里姉と桃香姉はごらんの通りMTF-Fの男女レズ両用型、淳さんと和実さんはMTF同士のレズ型、あきらさんと小夜子さんはMTX-Fの男女レズ両用型、冬子さんと政子さんはMTF-Fのレズ型」
 
「そっか。恋愛対象が男性の人、女性の人、MTFの人っているんですね」と春奈。
「たぶん実際にはバイの人が多いと思う。相手の性別は結果的にそうだったというだけじゃないかな」と和実、
 
「えっと今のペアリングの解説に異議あり」と冬子。
「あ、冬子さんは二股で彼氏もいるからMTF-M男女型の恋もしてるよね」と青葉。
「あのねぇ」
 
「私たちも恋人という訳じゃないんだけど」と千里。
「その異議はあとでゆっくりと聞きます」と青葉。
「あ、私は異議無し」と桃香。
 
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「冬子さんは戸籍上の性別変更は完了したんですか?」
「今月10日に申し立てたんですよ。特に呼び出しとか無いから順調にいってれば、そろそろ結果の通知があると思うんだけどね」
「でも性別が変えられるようになったって大きいよね。まあ私は和実と結婚したいから、性転換手術はしても戸籍の性は変えない予定だけど」と淳。「ほんとに時代が変わりましたね」と晃も言う。
 
「ところで、みなさん胸は本物ですか?」と春奈。
お互いに顔を(胸を)見回す。
 
「みなみちゃん以外は全員本物バストみたいね」と和実。
「本物バストになっちゃいました」と晃・淳。
「あきらさん、それCカップくらい無い?」と淳。
「いや、Bカップですよ」と晃。
「うそ。私もBカップだけど、明らかに私のより大きい」
「まあ、胸の発達の仕方って個人差が大きいからね」と和実。
「和実ちゃんのバストも6月の時より随分大きくなってるよね」と千里。「うん。Dカップのブラジャー付けてるよ」と和実。
「すごーい」
 
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「でも、あきらさんと淳さんは6月に会ったときはまだ身体に何も手を入れてなかったのにね」と桃香。
「いったん手を入れると、たぶん歯止めが無くなるよ」と冬子。
「そんな気がして怖い」
 
「みなさん、お股の方は?」
「まだ付いてる人が6人かな」
「わあ、半分か。外見上は全員完全に女性なのに。みんなタック上手いし自然」
「春奈ちゃんもずっとタックしっぱなしでしょ?毛が伸びてるもん」
「ええ。外すことはめったに無いです」
 
「付いてない人は、天然女性が5人と取っちゃった人がひとりかな。でも私も来年アメリカで手術しちゃうよ」と青葉。
「青葉さんって、私と同い年くらい?」と春奈が訊く。
「春奈さんより1つ下ですよ」
「凄ーい。アメリカだとそれで手術してくれる所あるんだ?」
「病院紹介しましょうか?」
「教えて、教えて」と春奈。
「じゃ、後で病院の名前と住所・URL教えますね」
 
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「私も来年手術するつもりだし、1年後には、おちんちんの本数がかなり減ってるかもね」と千里。
「うん。みんなさっさと手術しちゃおうよ。おちんちん無いのはとってもいい気分だよ」と冬子がまた煽っている。
 

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温泉の女湯を1時間貸し切りにしてもらったのだが、そのあと10畳ほどの小宴会室という感じのところに案内されて食事となる。ふつうの温泉旅館の食事だが、その日の夕食はまぐろ尽くしという感じで、マグロのカマを焼いたものに、マグロの角煮、マグロの天婦羅、マグロの山掛け、などが並んでいて、またお刺身がとても美味しかった。
 
「大間の本マグロ直送品です」
とわざわざ解説に来てくれた板前さんが説明してくれた。
「脂がのってる。シビマグロですよね?」と政子。
政子は食べ物のことについてはうるさい。
 
「はい。そうです。大間は1本釣りなので大物のシビマグロになります。うちの店ではそれを1本まるごと買い付けています」
「凄いですね」
 
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「このお刺身の鯛は地元の金目鯛ですか?」と淳が訊くが
「いえ、済みません。それは花鯛です。地元産ですが」と板前さんが答える。「金目鯛は今は産卵期だよ。12月くらいからが旬ですよね?」と政子。
「はい、その通りです。まだシーズン前なんですよ」
「ああ、じゃ、また冬になってから来たいね」
 
「うーん。みんなのスケジュールの合うタイミングを見つけるのは大変だけど、また頑張ってみるかな」と幹事役の和実が頭を掻いていた。
 

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12月中旬に寿子の彼氏の旅館の破産手続きは終了した。1ヶ月後の1月に確定する。彼氏は確定後すぐに結婚式を挙げたいと言ったが、寿子は「お父さんの一周忌を待とうよ」と言った。寿子としても1年間お預けを食わされたので、あと2ヶ月くらい待つのも構わない気分だった。
 
そこで寿子たちは2012年の3月24日に結婚式を挙げることを決めた。
 
お寺さんが3月11日は忙しすぎるとという問題から、本来の一周忌を1週間くりあげて3月4日に、お父さんの一周忌、そして亡くなった従業員さんの慰霊祭をおこなうことにした。その半月後に結婚式である。
 

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小夜子は本来は3月いっぱいまで休職する予定だったのだが、体調は良かったし、母が「昼間はみなみの面倒見ておいてあげるよ」と言うし晃も「火曜日はボクが面倒見るよ」というので、休職は12月までとし、1月から復職することにした。
 
また社長が「授乳ルームあるし、赤ちゃん連れて来てもいいよ」と言ったので、実際にはけっこう子連れで会社に出て行った。自分もしばしば子連れ出勤している専務も「サヨちゃんが客先に行ってる間は私が面倒見ててあげるよ」などとも言ってくれた。みなみを連れていく日は通勤ラッシュを避けるために、フレックスで10時出勤19時退勤にした。
 

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Les amies 結婚式は最高!(11)

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