■Les amies 振袖は最高!(8)

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やがて、港の船が放つ「ボー」とい汽笛が新年の訪れを告げた。
たくさんの汽笛が鳴り響く。
 
五十鈴が部屋から出てきた。
「明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます」
「おめでとう」
 
しばらくテレビの中継など見たあと、小夜子と晃は部屋に入り、振袖の着付けをはじめた。まずは小夜子が晃に『春花』を着付け、そのあとで晃が小夜子に『雅の鳥』を着付けする。自分も振袖を着たまま、振袖の着付けをするというのは何か不思議な感覚だった。純粋に豪華な加賀友禅と、静かに美しい京友禅が並ぶと、これがまた素敵な様になった。
 
五十鈴もできあがったふたりの友禅の競艶を見て、思わずうなった。
「お母さん、記念写真お願い」
「うんうん。ほんとに素敵ね。これを見たかったんだわ、私は。
晃さん、このまま私の娘になってね」「はい、そのつもりです」
 
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五十鈴の運転で神社まで行く。道が混んでいたので着いたのは2時半だった。しかしおかげで神社の参拝客は少ない。
「駐車場がいっぱいだから、お母さんそのあたりをぐるっと回ってくるわ。1時間後にここに戻ってくるわね」「ありがとうございます」
「ありがとう」
 
ふたりで手をつないで参道を行く。
友禅を着たふたりが歩いていると、いやでも目立つので、周囲の視線が集まる。その視線を心地よく感じながら、ふたりは拝殿への道を歩いた。
 
前の人のお参りが終わるのを待ち、神前に進んでお賽銭をふたり同時に入れ、二礼二拍一礼する。特に合図とかはしなかったが、自然にふたりの拍が揃った。軽くおじぎをして神前から下がる。
 
「おみくじ引こうね」
「うんうん」
 
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晃が引いたのは「十八番吉」だった。
暗きを離れて明るきに出る時、麻衣は禄衣に変じる 旧き憂いは終いに是退く 禄に遇いて応さに輝きと交わる
「要するに暗い運気が終わって、明るい運気がやってくるし、憂いも消えてしまう。心も服も着替えよう、ということかな」「うんうん。もう男はやめて女一筋にすればいいのよ」
「あはは。あ、婿取り・嫁取り吉と書いてある。あたしたちは嫁同士か」
「うんうん」
「サーヤのは?」
 
小夜子が引いたのは「四十三番吉」だった。
月桂まさに相い満つ。鹿を追いて山渓に映る。貴人乗りて遠き矢をす。 好き事始まり相祝う
「絶好調ということかな。鹿を追って矢を撃って、獲物を得たんだよね。獲物はサーヤかな?」「あはは」
「それとも・・・・・あ、子供は女の子だって」
 
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「・・・・・ちょっと待って。サーヤ妊娠した?」
「まさか。ちゃんと付けてやってるじゃない。私は生でもいいと言ったのにアッキーったら結婚するまではちゃんと付けると言い張るし」「はじめての日は、サーヤがちゃんと用意してたしね」
「無いからできないとは言わせないための用意」と小夜子は笑いをかみしめる。「実は自信も無かった。もう長いことしたことなかったし」
「でもちゃんと最後までできたね。で、生理が遅れてるのよね」
「遅れてる?」
「たぶん、久しぶりのHでリズムが乱れてるだけだと思う。あと一週間くらいしても来なかったら、念のため妊娠検査薬使ってみるけど」「うん」
小夜子はあれが特製の『ニードルワーク』済みのものであったことは黙っていた。(だってタンポポの種は飛んでいく前に採取しておかないと・・・・)
 
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「それでさ、アッキー、お願い」
「なに?」
「私、こども2人くらい欲しい。だから、もし去勢したいとか女性ホルモン使いたいとか思っても、2人目の子供ができるまでは待ってくれない?」「いいよ。というか、当面そういうのするつもりは無いけど」
 
ふたりが破魔矢を求めたり、絵馬を書いたりしていたら、大きなカメラを持った女性が声を掛けてきた。
「すみません。○△という雑誌の記者なんですが、お写真撮らせてもらえませんか?」
「ええ、いいですよ」
と小夜子がにこやかに答える。
「あちらの拝殿そばの街灯の近くが明るいので、あそこで拝殿をバックに撮っていいですか?」「はいはい」
「素敵な振袖ですね。友禅ですよね」
「はい。私のが加賀友禅、この子のが京友禅です」
「お友達?姉妹?」
「姉妹ですよ」
晃はえー!?という顔で小夜子を見たが、確かにフィアンセですと言っても混乱させるだけだろうから、それでもいいだろう。小夜子のお母さんにも私の娘になってねと言われたし、それなら姉妹みたいなものか・・・・・ 
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「下の名前だけでいいのでお名前教えてください。差し支えなかったら年齢も」
「私がサヨコ、この子がアキコ、カタカナにしておいてください。
年は私が27、この子が25です」「ありがとう」
記者さんは満足そうにメモして行った。
 
「年はかなりサバ読んだね」
「まあ、そんなものでしょ。でもアッキーは25で通ると思うよ」
「サーヤだって、そのくらい行けるでしょ」
「私がお姉さんという感じの設定だったしね」
小夜子は楽しそうだった。
 
ふたりは三色団子を買って食べながら、大きな木の下に立って人の流れを眺めていた。「この木、何かいい香りがするね」
「これは楠だね」
「へー。ああ、樟脳とかカンフルとか取る木だよね」
「うん。この木は雌雄同体だよ」
「あら」
「おしべとめしべがひとつの花の中にある」
「あ、そうか。あれ?もしかして植物って雌雄同体が多い?」
「うん、実は被子植物はほとんどが雌雄同体。楠は被子植物だよ。裸子植物には結構雌雄異体がある。銀杏は裸子植物で雌雄異体。でも杉は裸子植物だけど雌雄同体」「む、むずかしい。私にも分かるように言って」
「楠も杉も雌雄同体なんだけど、少しタイプが違うんだよね。楠はひとつの花の中におしべとめしべの両方がある。両性花というんだけど。杉はおしべだけの雄性花と、めしべだけの雌性花が、ひとつの木に両方できる」「うーん。そもそも男か女か分からないタイプと、男っぽい所と女っぽい所の両方を持つ人との違いみたいな」「あはは、そうかも」
「植物は男女両方の性質を持ってて、ちゃんと生殖できるのね。人間は不便ね」
「まあ人間に生まれたんだから仕方ない」
「植物に生まれ変わりたい?」
「ううん。次も人間がいいな」
「男の子?女の子?」
「女の子がいい。振袖着れるから」
「あら、男の子に生まれてもこうやって振袖着れる」
「あはは。でもあたしたちの子供、女の子がいいなあ」
「振袖着せられるから」ふたりは同時にそう言って、笑った。
 
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そろそろ五十鈴が迎えに来る時刻だ。ふたりは仲良く手をつないで鳥居の方へ歩いていった。雅な神楽の音が境内に響き渡っていた。
 
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