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「彼の仕事は今夜中に終わるの?」
「たぶん。11時くらいに終わると思うから終わったらメールすると・・・」
「じゃ、今から大阪に行って、彼に会いに行こうよ」
「実はそれちょっと考えて駅まで来たのですけど、もう大阪行きの最終新幹線には間に合わないと、みどりの窓口の人に言われて。夜行バスだともう着くのが朝になっちゃうし。やはりこれが運命なのかなと思って・・・・」
その時、あきらは目の端で小夜子の車が到着したのを認めた。
「行こう。大阪に連れてってあげる」
「え?」
「運命というのはね、定まっているものじゃないの。自分で動かしていくから運命というんだよ。『運命』の『運』は『運動』の『運』でしょ?」
あきらは彼女を促して席を立つと、一緒に小夜子の車の所に行った。
「サーヤ、予定変更。ホテルはキャンセル。ドライブデートするよ」
「いいけど。え?その女の子は誰よ?」
「説明するからすぐ高速に乗って」
「行き先は?」
「大阪」
「えー!?」
状況を説明すると小夜子も乗り気になった。カーナビで大阪を設定すると、5時間半で着くと出る。「今ちょうど9時半だから、夜中3時には着くよ。彼の泊まるホテルを聞いて、そこに行けばいい」「はい。でも休憩は?5時間も連続して運転するのは」「大丈夫、私たちふたりで交代で運転するから。トイレに行きたい時は、その運転交代する時に急いで行ってきて」「はい」
小夜子はかなりの飛ばし屋である。一応「捕まらない程度・記念写真を撮られない程度」には抑えるが。また彼女は覆面パトカーを見分ける天才でもあった。あきらも小夜子ほどはスピードを出さないものの、あまり遅く運転するタイプではない。カーナビは5時間半と出したものの実際には5時間切るだろう、とあきらは思った。
小夜子が都市高速から自動車道のICへ向かう間、あきらは約1時間交代で運転することを提案し、交代するPAの候補を地図を見ながらリストアップした。「ガソリンはどれだけある?」「ここに来る途中満タンにした」「上出来!」
それなら途中での給油は不要だ。うまい具合に今日の都市高速は空いていた。あきらは細川さんに、着くまで寝ているように言った。
「彼と会った時にねぼけまなこだったらダメだよ」「はい」
最初の交代ポイントに着く。なりゆきで最初スタートした時は後部座席にあきらと細川さんが座り、小夜子が運転席だったのだが、ここであきらが運転席に、小夜子が助手席に座って、眠ってしまった細川さんを後部座席に残した。車内に常備している毛布を掛けてあげる。
車をスタートさせたら助手席の小夜子があきらにキスをした。
「ハッピーバレンタイン」といってチョコの箱を渡す。
「えへへ。一応手作りのハート型チョコだよ」
「ありがとう。でも手がふさがってるから開けられない」
「だいじょうぶ。食べさせてあげるから」
「自分でも少し食べてもいいよ」
「ほんと?ありがとう。じゃ半分こね」
小夜子はチョコを細かくしてはあきらに食べさせていたが、けっこう自分でも食べていた「うーん。わりといい出来だなあ」
「うん。美味しいよ。サーヤ上手じゃん」
車は高速道路を疾走していった。12時頃細川さんの携帯にメールが着信し仕事が終わったということだった。細川さんは彼に電話を掛けて「今から大阪に行く」と言った。向こうはびっくりしているようであったがホテルの名前と住所、それに部屋番号を伝えた。あきらは行き先を設定し直した。
結局ホテルに着いたのは2時半頃であった。連絡をうけて彼氏はホテルの玄関まで出てきていた。細川さんがチョコを渡すと、彼氏は照れている感じであった。しばらくそこで話をしていたが、やがて彼氏に促されてふたりはホテルの中に入っていった。
あきらと小夜子はその様子を少し離れたところで見ていたが、ふたりがホテルに入っていったのを見て安心したように車をスタートさせた。
小夜子が運転席のあきらにキスをする。
「ところで、アッキ〜、私朝9時から仕事なんだけど」
「大丈夫。それまでに戻ればいいんだろう。ドライブデートは続く」
「ひぇー。また1時間交代で運転?」
「そのほうがいいだろう。連続運転でいねむりして事故起こしたらやばい」
「分かった。とりあえず私が先に寝るから『4時間後』に起こして。妊婦特権」
「いいよ」
笑いながらあきらはウィングロードのアクセルを踏んだ。
FMからマイラバの「カラフル」が流れていた。
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Les amies 恋は最高!(4)