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■Les amies 恋は最高!(1)

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(c)2011.02.14 Eriko Kawaguchi
 
「ただいま」という声に「おかえり」という声が返ってきた。
「もうすぐごはん出来るからね」といって、キスをする。
その様子を小夜子の母はニコニコと微笑みながら見ていた。
 
どこにでもあるような新婚家庭の様子である。ただちょっと違っていたのは、「ただいま」と言ったのが、奥様の小夜子であり、「ごはん出来るから」と言ったのが、今日は火曜日で美容室が休みのため家に居た旦那様のあきらであるということだった。そしてもうひとつふつうの家庭と違うのは、奥様がスカートを穿いているのはふつうとして、夕飯を作っていた旦那様のほうもスカートを穿いているということだった。
 
小夜子の携帯の着メロが鳴る。My Little Loverの「カラフル」だ。会社からの連絡で、上司から明日の打ち合わせに関する連絡であった。通話が終わったあとも小夜子はメロディーを口ずさんでいる。
 
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「サーヤ、最近その曲気に入ってるね」
「うん、いい歌だよね。『違わない人なんて、どこにもいないでしょ』とか」
「まあ、うちは少々違ってるけどね」
「でも、けっこうとんでもない夫婦とかいるからね。みなそれぞれだよ」
 
お正月早々、小夜子の妊娠が分かったので、あきらが強く主張してふたりは1月24日の友引に入籍し、それと同時に同居を始めた。それに先立ち、ふたりは五十鈴を伴って北海道のあきらの実家を訪れ、挨拶をしてきていた。向こうは変態の息子を「もらってくれて」有り難いなどと恐縮していた。
 
「ねえ、バレンタインは忙しい?」
「美容室は大忙し。やはりデートする女の子多いからね」
「そっかぁ。会社で取引先から大帝ホテルの御食事券もらったからバレンタインデーに一緒にと思ったけど」
「翌日の火曜日が美容室休みだし、その日じゃだめ?」
「しょうがないよね〜。火曜日にしようか。でも14日も一応デートしたいから当日仕事が終わったら連絡して」
「きっと9時頃になるよ」
「全然構わない。ホテル予約しといてね」
「了解。あ、チョコは明日買っとくよ。どんな系統のが好き?」と、あきら。「私、生チョコがいいなあ。美味しいのね」と小夜子が答える。
「あら、あきらさんがチョコ買って、小夜子に贈るの?」と五十鈴。
「私がアッキーに贈る分も一緒に買ってもらうの。私、特設売場で女の子たちが大量集結してる雰囲気が苦手でさ」と小夜子は平気な顔で言っていた。
 
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「こんにちは」お昼を食べに出たついでにチョコの物色をしていたあきらは、突然声を掛けられて振り向いた。「あ、こんにちは。細川さんでしたっけ?」
あきらは笑顔で答える。あきらは担当したことがないが、美容室に1年ほど前からよく来て下さっているお客様だ。あきらの頭の中でカルテがめくられる。確か25歳くらいで、髪質が細く若干髪が薄いことを本人は気にしている。商社に勤めていたかな?。
 
「わあ、覚えてくださったんですね。指名したことないのに」と喜んでいる。「彼氏へのプレゼントですか?」とあきらに尋ねる。あっそうか、この人は自分の性別を知らないか・・・・と思いながらあきらは「まあ、愛する人への贈り物ですね」と曖昧な表現をしながら「細川さんもですか?」と尋ねてみる。
 
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「ええ」と答えながら彼女は顔をあからめた。その様子からあきらは片思いかな?と感じる。「実は・・・14日に初デートなんです」「おお、それはおめでとう。しっかりハートをキャッチですよ」「はい」と嬉しそうに答える。「でも男の人って、どんなチョコが好みなんだろうって、全然分からなくて。そうだ!14日はまだ空いてますか?パーマ掛けたいんですが」「あ、ちょっとお待ちください」
とあきらは携帯を取り出して自分の美容室の予約システムのサイトを開いた。
 
「14日は4時以降は完全に埋まっていますが、午前11時と午後2時なら空いていますね」「じゃ11時で予約します」「会社は大丈夫ですか?」「ええ・・・その日は休みにするので」「了解しました。ご指名はありますか?」「えっと特には」
あきらは副管理者特権で彼女の履歴を調べてみて、毎回違う美容師が担当していることを見て取った。そういう客も多い。「じゃ取りあえず指名無しで予約入れておきますね」といって、あきらは携帯を操作する。
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