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■春芽(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-10-06
 
青葉は2017年9月に《霊界探偵・金沢ドイル》と称して、金沢市内で出没していた“タクシーただ乗り幽霊”の事件を解決し、この経過が金沢〒〒テレビで放送された。
 
この“霊界探偵”シリーズはその後、3ヶ月単位の特番として組まれることになった。
 
2017年12月には石川県内某所にあった“幽霊ホテル”の除霊をすることになったが、こういうのは青葉はあまり得意ではないので、千里姉(千里2)に電話したら「いいよー」と言って、1日で処理してくれた!そこは番組制作後解体されてショッピングモールが建設され始めた。実際廃業したホテルを放置していたら、一度除霊しても、また変なのが集まってきてしまうので、解体するのが良いのである。
 
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2017年12月には、お墓関連の小ネタを4件扱った(放送は3月)。
 
お墓を移転したいという人の相談に乗り、お寺さん関係の調整、役場への届出などの指導をしたが、この件は実際には〒〒テレビAD(バイト)でもある水泳部の先輩・幸花さんが実務的なことは処理してくれた。
 
2番目の相談は、戒名が無い人の納骨の件だった。
 
「実は故人はいわゆるニューハーフでして、絶対に○○居士とか○○信士とかいう戒名は嫌だと生前言っていたんです。しかしお寺さんからは男性なのに大姉とか信女とかいう戒名をつける訳にはいかないと言われまして」
 
それで結局戒名を付けないままになってしまったので、そこのお寺にある墓に納骨することができずにいるということだった。
 
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(葬儀は一応このお寺でやってくれたが位牌は無しで行った。遺影は女性の姿の物を使用した:実際問題として男装の写真が存在しなかった)
 
青葉は全然他人事ではないので、この件、そのお寺さん、そしてご遺族と、結構な話し合いを持った。そして最終的にお寺さんは折れてくれた。ただ1点だけ頼まれたのは「寺の名前を出さない」「寺も映さない」という点だった。それで結局故人は亡くなってから2年も経ってから「○○大姉」の戒名をもらい、無事三回忌の法要と合わせて納骨することができたのである。
 

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続いて相談を受けたのは台風で倒れた墓の処置であった。
 
昨年の台風で墓石が倒れたのを直そうとしたら「13ヶ月ある年に墓をいじるものではない」と知人に言われたのでそのままにしているという人の相談に乗る。
 
2017年は閏五月があって13ヶ月であった。
 
「13ヶ月ある年に墓をいじるなというのは江戸時代の話なんですよ」
と青葉は説明する。
 
「昔のお侍さんは年俸制だったんです。だから12ヶ月の年も13ヶ月の年も、もらえるお給料は同じです。ですから13ヶ月ある年は12ヶ月の年より節約して生活しなければならなかった。お墓をいじるのはどうしてもお金が掛かるので、そういう年にそんなお金の掛かることはするな、という意味だったんです」
 
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「そうだったんですか!」
「今ではみんな月給制だから、いついじってもいいんですよ」
「なるほどー」
 
しかしそういう訳で、この人はお寺さんとも相談の上、すぐに墓石を直すことにしたが、最終的には作業は年明けにずれこんだ。
 
もう1件あったのは散骨をしたいという人の相談であった。これは青葉自身はあまり関与せず、霊的には何も問題無いことを説明しただけで、実際の散骨は幸花が主導して、散骨を支援している団体とも相談しながら、とにかく違法にならない形で作業を進めた。
 

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2018年4月には、県内の某食品会社に連れて行かれ、ここ数年業績が落ちているのと、社員の間に幽霊の目撃談が多いのに関連がないかと尋ねられた。青葉はその幽霊を多く見るという最新の第三工場に連れて行ってもらった。
 
「何度もお祓いしてもらったのですが一向に改善が見られなくて」
と年配の社長さんは言っていた。
 
「この工場を作られたのはいつですか?」
「5年前なのですが、やはりこの工場に問題ありますか?」
「工場よりも、ここに来る道に問題があります」
「え〜〜!?」
 
青葉は県道からこの工場に入ってくる道が古くからの神仏の領域を侵していることを地図上で説明した。
 
「神様を怒らせているから、お祓いとかすると、更に怒らせます」
「ひゃー」
「道をこのように付け替えられますか?」
と青葉は地図上に線を引いた。
 
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「すぐやります!」
と言って、社長はすぐに土木工事会社に依頼。わずか3日で道のルートを変更した。旧道の方は車が通れないようにした上で小さな祠を建てた。
 
すると怪異はピタリと出なくなったのである。
 
この経緯は2018年6月に放送された。
 

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青葉は7月6日に信次の通夜に出た後、日本代表に合流し7月7日にスペインに渡航。シェラネバダで高地合宿をした。この合宿は7月14日で終わり、先行して高地合宿をしていたジャネたちと一緒に帰国する。
 
7/15(Sun)GRX 7:00-8:00 MAD
7/15(Sun)MAD 13:05-7/16 9:25 NRT (13'20)
 
成田空港で解散式があり、青葉はその日の内に新幹線で高岡に戻った。
 
7月17日(火)。青葉は帰国したばかりではあるが、〒〒テレビの“霊界探偵”の取材・撮影に担ぎ出された(学校に行けない!)。
 
この日は、怪談雑誌でも何度か取り上げられたことのある、幽霊が出るというトンネルに連れていかれた。
 
「試験前というのに済みません。でも予定をお聞きしたら、この後、全く空きがないようでしたので」
「そうなんですよね。来月上旬にパンパシフィックがあって、そのあと9月頭にはインカレがありますし」
 
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テレビ局のエスティマは最初は快適な高速道路を走っていたが、やがてそこから降りて山越えの“国道”に入る。この国道が最初からむしろ“町道か私道だろ?”と思うほど道幅が狭かった。やがてその細い国道からも分かれて県道に入る。
 
「ここは国道は凄く狭い道なんですが、県道は戦後整備されたんでわりと広いんですよ」
と運転手さんは言っていたのだが、その“わりと広い”県道が、かなり狭かった!
 
車は狭い山道を登っていく。20分ほど行った所に小さなトンネルがあった。
 
「どうもここが目的地のようです」
 
それで全員降りた。
 

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青葉はそのトンネルを眺めた。
 
「金沢ドイルさんどうですか?」
 
青葉は慎重に周囲を見回してから言った。
 
「何もありません」
 
「幽霊とかいないんですか?」
「幽霊も妖怪もいませんよ。だいたいここって生活道路なのでは?」
 
リサーチャーさんがまとめてくれた過去の雑誌やネットの投稿を見ると、ここの旧道側にある古いトンネルに幽霊が出るという話が書かれているのだが、地図上でもGoogle Mapで見た航空写真でも、「旧道」らしきものが存在しないことが分かる。
 
またその投稿記事や投稿を元に雑誌に掲載された漫画などを見ても、その描写が実際のトンネルの様子と大きく異なっているもの、そもそも明らかに場所が違うものもある。だいたいそこに書かれている内容が「一緒に行った友人が発狂した」とか「車のエンジンが勝手に止まった」とか「自分たち以外に足音が聞こえた」とか“ありがち”な話ばかりである。
 
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つまり投稿の多くが「作り物」である可能性が高かった。
 

現地の村人たちにインタビューしても
 
「旧道なんてありません。むしろ新道を造って欲しいです」
ということで、やはりこの集落を通る道はこれ1本のみのようである。
 
「普通に毎日通っているけど」
「幽霊の噂は聞いたことありません」
「その幽霊の噂で暴走族みたいな人が夜中に来て迷惑してるんですけどね」
 
などという声などもあった。更には
 
「台風が近づいてた夜に俺が畑の見回りするのにここ通ろうとしたら、向こうできゃーという悲鳴が聞こえて、走って行く足音が聞こえた」
などという証言!?まであった。
 
そういう訳でこのトンネルに幽霊が出るという話はガセであると判定した。
 
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ここが空振りしてしまったので、翌8月18日に、やはり以前1度怪談雑誌に取り上げられたことのある別のトンネルに行ってみることになった。
 
昨日の集落に行く道も凄かったが、まだあちらは「細い」というだけだった。ところがこちらは命の危険を感じた!
 
行く道が高い崖の途中の道であり、幅がほんとに狭いので脱輪するとそのまま谷底に転落しそうである。使用しているのが車幅のあるエスティマなので、ドライバーもかなり神経を使って運転していた。途中湧き水があったので休憩したが、そばにお地蔵さんがあるのに気付く。青葉は五百円玉を供えて、そのお地蔵さんに安全祈願をした。青葉が五百円玉を置いたので、神谷内さんも五百円玉を供えて合掌していた。幸花も百円玉を置いて合掌していた。
 
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あとで幸花は「落ちるんじゃないかとヒヤヒヤしていた」と言ったが青葉も同感であった。
 

やがて目的地の集落に到達するが、事前にリサーチャーさんがこの集落出身の人に取材したのでは現地は車での進入は無理ということだったので、途中の神社の前に駐め、その神社にもお参りしてから、歩いて行く。
 
10年ほど前の雑誌に投稿されていた、古い案内図の写真だけを頼りに、薮の中の、どこが道なのか判然としないような所を通り抜け、岩の角を曲がったら、その地点から約2mのところにそのトンネルの入口があった。
 
青葉はギョッとして、みんなを停めた。
 
「ここから先には進まないで下さい」
と言う。
 
「やばいですか?」
「物凄くやばいです。ここ現地の人も誰も通らないのでは?ここまでも人が最近通ったような痕跡が全然無かったですよ」
 
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それで撮影もトンネルの遠景を撮るに留めた。
 
「しかしトンネルを向こうから抜けてすぐにこの曲がり角でしょ?転落しますよね?」
と荷物持ちの青山さんが言う。
 
「落ちた人たくさんいるでしょうね」
 
下は100mか200mくらいの切り立った崖である。手摺りとかも無い。雨の日や夜間には転落した人がきっとたくさん居たであろう。
 

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現地の町内会長さんに取材したのだが、
「変な奴らが来て事故起こして死なれると遺体回収も大変だから、放送しないで欲しい」
 
と言った。スタッフで話し合った上で、ここがどこなのか、場所のヒントになるようなものを一切映さないことにして、町内会長さんの了承を得た。村人にインタビューするが、顔も映さないし声も変形して放送することにする。
 
「あのトンネルは戦前までは使っていたらしい」
「トンネルというより洞門に近いんだよね」
 
「車は通行できないよ。歩いて通らないといけないし、背の高い人は屈まないと天井にぶつかると祖父さんが言ってた」
「あのトンネルができる前は、崖沿いの幅10cmくらいの道を鎖に捉まって通るか、山越えしないと向こうに行けなかったんだよ。崖沿いの道は毎年誰か転落してたらしい」
 
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「戦後まもなくバイクや小型車程度なら通れる**トンネルができて、更に1980年代には大型車も通れて、2車線ですれ違いもできる新**トンネルができたから、みんな今はそちらを通るからね」
 
「幽霊の噂はあるけど、誰も行かないから確認できない」
 
それで1日掛けて取材して金沢に戻ってきたのだが、撮影したはずのトンネルの遠景が全く映っていなかった。ビデオの方もデジカメ、それに神谷内さんが念のためと言って撮影していたスマホのカメラにも写っていなかった。
 
それどころか神谷内ディレクターのスマホから写真が大量に蒸発していて、彼は悲鳴をあげていた。
 
「クラウドに上げていたものまで消えるなんて信じられない」
 
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「まああの映像は流さない方がいいでしょうね」
と青葉は言った。
 
しかしどうもこちらは本物のようだということで、無事だった画像やインタビューなどを中心にまとめて9月に放送しようということになった。
 

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