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■春芽(4)

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青葉は彪志のアパートで1泊すると翌日朝1番の新幹線で金沢に戻った。
 
大宮9/11 6:42-8:46金沢
 
そして〒〒テレビに行き、神谷内ディレクターに面会を求めた。
 
「おはよう、金沢ドイルさん。実は霊界探偵の件だけど・・・」
と神谷内が応接室に入ってきて、言いかけた所で青葉は“珠”の作用で彼に憑いていたものを一気に浄化してしまった。
 
それは悪霊というより、霊的な被覆のようなものであった。溶解した妖怪?が全体を覆ってしまい感覚を遮断してしまう。悪霊自体の作用以前に、ものごとに気付きにくくなり、イージーミスも起こしやすいし、空気を読めなくなって人と衝突しやすい。
 
「あれ!?」
と言って彼は自分の身体を見ている。
 
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「何か凄くスッキリしたような気がする」
 
「神谷内さん、例の**村のトンネル。あそこに行った時にやられたんですよ」
 
「え〜〜〜!?」
 
「申し訳ありません。私自身がどうも真っ先にやられてしまって、他の人を守れなかったようです。考えてみると、あの時、私が先頭に立っていたんですよね。不意打ちをくらったみたいで。その悪霊の作用で、人と衝突しやすくなるんです。私も実は婚約者と喧嘩して、一時はもう別れるなんて話になっていたんですよ」
 
「マジ!?」
 
「私の姉が気付いて、私の除霊をしてくれました。それで婚約者とも和解したのですが、いつやられたものか特定するのに時間が掛かりました。昨日やっと**村に行った時だということに気付いて、きっとあの時居た人がみんなやられていると思って、まずは神谷内さんの所に来たんです」
 
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「わぁ」
 
「だから神谷内さんが上司の方と衝突したのも、そのせいですよ」
「うっ・・・」
 
「あの時一緒に取材に行った人全員の除霊をする必要があります。あの時居た人全員と会わせてください」
 
「分かった!」
 

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カメラマンさんは社員で、局内に居たのですぐ会うことができ、すぐ除霊した。
 
「悪霊のせいだったんですか! 実はあの後、7月下旬に通行帯違反で切符切られたんですよ」
「注意力が落ちますからありえます。すみません。私もすぐ気がつかなくて。その反則金、私が出しますよ。経歴は消せないですけど、せめてものお詫びに」
と青葉は言ったが
 
「いや、そういうことであれば番組の製作費から出していいと思う」
と神谷内さんは言っている。
 
「これ後から再現ドラマやるから、今のやりとり覚えてて」
「はい!」
 
助手の人とドライバーの人は外部委託の人だということで呼び出す。またADの幸花も今日は出社していなかったので呼び出した。
 
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最初に幸花が到着したので除霊した。
 
「凄く身体が軽くなったような気分」
「余分なものを憑けて動いていたからね」
「なるほど」
 
「たぶん就職内定してたのを落とされたのはそのせい」
「うっそー!?」
「幸花さん、もういっそこのままこの局で働き続けたら」
「もうそれでもいいかなあ」
「僕の首がつながったら、待遇は少し考えてあげるよ」
と神谷内さんは言っている。
 
少し遅れてドライバーさんがやってきた。すぐに除霊する。
 
「なんか凄くスッキリした気分です」
「みんなそう言いますね。あの取材に行った後、8月とかに何か変なことはありませんでしたか?」
 
「あ、ひょっとして・・・大阪に行っている娘と成人式の着物のことで喧嘩してしまったのですが、それとか」
「あり得ます。必要でしたら、私が悪霊のせいだったことを説明しますから、娘さんの所に行って和解してきてください。大阪までの交通費も私が出しますよ」
 
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「いやむしろ番組の製作費から出すからさ。それ娘さんと和解できたら、それも再現ドラマやらせてよ」
「はい、それは構いません」
 

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お昼近くになってから撮影助手の青山さんがやってきたので除霊する。彼に最近変なことが無かったか尋ねると、
 
「凄く奇妙な体験をしたんですけど、こういうのも関係ありますかね?」
と彼は尋ねた。
 
「どんなこと?」
「お盆の間に集中してできるバイトを探していたんですよ。それでバイト探しのサイト見てて8月14-16日の3日間のみ、経験不問、軽作業、清掃・抜根・除草・荷運びなどって書かれていたんですよ」
 
「建築現場とかの補助作業かな」
「それで電話したら、取り敢えず来てみてと言われて行ったら飲食店で」
「へ!?」
「それで面接受けたら、いきなり『あんた合格』って言われて」
「へー!」
 
「それで時給2000円、1日7時間勤務。休憩1時間。取り敢えず8月10日から12日までの3日間、というのでいいか?と訊かれて、日程はサイトで見たのと違うけど、凄い高給だから、放送局のバイトと重なってないのを確認して『はい。いいです』と答えたのですが」
 
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「なんか変な仕事だった?」
「オカマバーだったんです」
 
「え〜〜〜!?」
 
「あら、あなたこういうの初めて?とか言われて、足の毛と脇の毛を剃られて、眉毛とかも細く切られて、女物の下着着せられて。この時、あそこは立たないようにがっちりとガードルで押さえられました」
 
「なるほど」
「それでドレス着せられてロングヘアのウィッグかぶせられて、お化粧もされたら、何か鏡見て美しいんですよ」
 
「美人になると一瞬で分かったから高給を払ってくれたんだな」
 
「でも鏡見ていたら変な気分になっちゃって」
「ああ」
 
「もしかして『除草』は『女装』の変換ミスだったのだろうかとか考えました」
と青山さんが言うと
 
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「『清掃』は『精巣』の変換ミスだったりして」
とドライバーさん。
 
「『抜根』は『抜男根』の脱字だったりして。ひとつ前の精巣と合わせて、精巣と男根を抜く、と」
と言ったのは幸花である。
 
「ひぇー!まだ僕男を辞めたくないです」
 
「でもその3日間女になったんだ?」
「そうなんですよ。なんか僕気に入られたみたいで、お客さんから次はいつ入るの?指名するよとか言われて焦りました」
 
「いっそそういう仕事に転職する?」
「勘弁してください。ほんとに玉取られちゃいそう」
 
「でもいいバイトになったでしょ?」
「お客さんに凄い好評だったから色つけておくねと言われて、結局6万円ももらいました」
「実質4日分か」
「そうなんですよ!こちらのバイトの1ヶ月分より多いからびっくりして」
 
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「安い給料で済まん。青山君、いっそ女装で助手する?」
 
「・・・。待って下さい。今一瞬悩んじゃいましたよ」
 
結局はサイトのリストを見ていた時、どうも1行間違ってクリックしてしまったようだということであった。
 
「その手の単純ミスが起きやすいんですよ」
と青葉はコメントしておいたが、彼の話は青葉としてもかなり笑ってしまった。
 

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青葉はあの時取材に使用したエスティマ、そしてカメラ類もチェックした。ビデオカメラは最近トラブルが多いが高価なもの(購入価格800万円)なのでどうしようと言っていたらしい。青葉は浄化した上で
「これでまだトラブルが起きるようなら物理的な問題ですね」
と言った。
 
一方あの時持って行ったスティルカメラ(Nikon Z7 購入価格40万円)は調子が悪すぎて廃棄してしまったらしい。
 
「じゃそれは追えませんね」
「うん。処分を依頼した業者がちゃんと処分してくれたことを祈るだけだね」
「中古として横流ししていたら、それを買った人に影響出ますよね?」
「あり得るけど、追及不能ですね」
「それもしシリアル番号とか分かれば放送で流す手もあると思います」
「よし、それはしよう。もしその型番のを持っていたら放送局で買い取るとか」
「出てくる可能性ありますね」
 
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エスティマはやはり変なものがこびりついていたので、青葉が浄化した。
 
「仕上げに洗車機にでも入れると完全にきれいになりますよ」
「僕たちもお風呂とかに入った方がいい?」
「入る時は、家族の最後に入って、お湯は流して浴槽の掃除もして下さい」
「分かった!」
 

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ここまで済んだ段階で神谷内は、衝突してしまった石崎制作部長の所に行き、改めて先日の件を謝罪し、その上で実は7月中旬に取材に行った所で取り憑かれた悪霊のせいで自分が他人と衝突しやすくなっていたことを説明した。
 
石崎さんが仰天するが、そのせいで、金沢ドイル自身も婚約者と喧嘩して破局寸前まで行ったこと、助手は変なバイトをするハメになり、ADはほぼ内定していた就職先から断られたこと、ドライバーは娘さんと喧嘩し、カメラマンは交通違反切符を切られたことを話すと、部長は腕を組んで聞いていた。
 
「全員、今日金沢ドイルさんに除霊してもらったら、スッキリした気分になりまして」
 
石崎部長は金沢ドイルにも話を聞きたいということだったので、青葉は自分の不手際であるとして陳謝した上で、状況を説明した。
 
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「ということはそのトンネルはとんでもない危険スポットということか」
「ええ。ですから、その場所が特定できない、あるいはわざとミスリードするような形で番組は編集した方がいいと思います」
 
「そのあたりは編集で何とかなるよね?」
と神谷内さんに訊く。
「はい。それはちゃんとします。更に悪霊に取り憑かれる人が出ては困りますから」
 
「しかし金沢ドイルさんも、それよく気がついたね」
「姉が私に変なのが憑いているのに気付いて除霊してくれたんですよ」
「お姉さんも霊能者なの?」
 
「姉は中学の時から大学院の時まで12年間神社の巫女をしていたという人で」
「それは凄い」
「実は私が元々仏教系で姉は神社系なので、お互い補える所がありまして」
「ああ、それは最強の組み合わせかも知れない」
 
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「昨年、私が登場した第1回の番組で取り上げた、タクシーただ乗り幽霊の処理の時に、霊の回収車の運転手を姉が務めてくれたんです。霊的防御が出来るし車の運転も巧いので。実は国際C級ライセンスも持っているんですよ」
 
「面白そうな人だね。今も巫女をしているの?」
 
「あ、いえ。今はバスケット選手で、今もバスケット日本代表になって下旬にカナリヤ諸島で行われるワールドカップに出る予定です」
「なんか多才な人だね!」
 
「この金沢ドイルさんも、実は水泳の日本代表になって先日はパンパシフィック選手権、環太平洋の大会で金メダルを取ったんですよ」
 
「スポーツ姉妹か!」
 
「そしてこれは、いずれバレてしまうとは思うのですが、大宮万葉という名前で作曲家もしていて、アクアちゃんの楽曲をかなり書いているんですよ」
 
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「おぉ!そんな凄い人だったとは」
 
と言って石崎部長はニコニコ顔である。
 

そういうことで、結局石崎制作部長は神谷内さんに
 
「できたら、退職しないで、まだうちの放送局の番組を作って欲しい」
 
と要請。神谷内さんもあらためて謝罪した上で承諾。ふたりは握手をした。
 
そして、このスタッフ全員やられてしまい、それで各々が様々なトラブルを起こしたこと。そして除霊が済むとスッキリしたことまで番組として編集することになった。
 
娘さんとトラブルを起こした運転手さんはその日の内にサンダーバードで大阪に行き、娘さんも悪霊のせいだったという説明に驚いたものの、成人式の服装について娘さんの主張を取り入れる形で和解した。
 
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それであらためて
「顔出ししませんから、ぜひ再現ドラマに協力を」
と神谷内さんが言って、娘さんも承諾した。
 
それでその日の内にふたりが和解したシーンの再現ドラマを撮影した。
 

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翌9月12日の午前中に、スタッフ全員の除霊シーンを再現ドラマで撮影する。
 
そしてあの取材の後、神谷内さん本人が制作部長と衝突して退職寸前まで行っていて番組も打ち切りの危機にあったこと、バイトADの幸花は決まっていた就職先が唐突に不合格になり、結局4月以降も〒〒テレビでADのバイトを続けることになったことを神谷内さんがカメラの前で説明した。
 
カメラマンが切符を切られたのもバイクに乗れるADさんが白バイ警官に扮して再現ドラマを作った。なお反則金は結局、神谷内ディレクターが個人で補償してあげた。
 
青山がオカマバーのバイトをするハメになった所は、そのオカマバーに打診したら大笑いで撮影に協力してくれたので、これも再現ドラマを作った。おかげで青山は再度女装することになった!
 
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更に金沢ドイル本人まで婚約者と喧嘩して破談寸前だった件も、再現ドラマを作ることになり!9月13日に神谷内さん、カメラマンさん、青葉の3人で大宮まで行き、彪志にも出演(顔は隠す)してもらって再現ドラマを撮影した。喧嘩の経緯については神谷内さんが書いたシナリオに沿うことにした。それで喧嘩した所、和解した所を撮影した。
 
(実際の放送ではこの部分が助手のオカマバー体験記と並んで反響があった)
 
なお青葉が千里に除霊されたシーンは、越谷F神社の後輩巫女・泉堂深耶が代役をしてくれて巫女衣裳を着て再現ドラマの撮影をした。これも大宮での撮影とあわせて撮影をした。なお、この部分では
 
《金沢ドイルのお姉さんが現在海外出張中のため、ご友人に代役で出演して頂きました》
 
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というテロップを入れている。
 

そういう訳で今回の事件は、最初に有名なトンネルの方を10分やった後、問題のトンネルに関する取材を5分ほどでやり、残り30分ほどをこの、スタッフが全員やられました!という話で編集したのである(1時間番組の正味は45分くらいである)。最後に金沢ドイル自身がカメラの前で
 
「今回は私の不覚でみなさんにご迷惑お掛けしてすみませんでした」
 
と謝るシーン、そして神谷内ディレクターが
 
「そういう訳で僕も首にならなかったので、この番組はこの後も続きます」
と言うシーンで終了した。
 
番組は9月下旬に放送され、物凄い反響を呼んだ。
 
問題のトンネルが実際にはどこなのかというのもネットでかなり議論されたがいくつかの候補が出たものの、決め手に欠くようであった。(実際の場所はこの候補の中には出ていなかった)
 
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