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■春対(12)

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「でも修学旅行の温泉で見た時はまだまだおっぱい小さかったけど、あれからけっこう成長したよね。それEカップくらいない?」
 
「授乳しているから膨らんでいるんだよ。授乳が終了したらたぶんCカップくらいに戻ると思う」
 
「授乳?」
「お乳出るよ」
 
と言って千里は乳首をつまんでお乳を出してみせる。出したお乳は掌で受けて自分で舐めてしまう。自分で舐めても美味しくないが、これが多分京平には美味しく感じられるのだろう。
 
「うっそー!? なんでお乳が出る?」
「赤ちゃん産んだから」
 
花野子は少し考えていた。
 
「まさか、細川君の子供って千里が産んだ訳?」
 
「あの場も混乱していてさ、何がどうなったのかよく分からなかったんだけどね。とにかく京平が産まれた後、阿倍子さんはあの付近の傷がほとんど残っていなかったのに対して私は1ヶ月くらいドーナツ座布団を使わざるを得なかった。そして阿倍子さんは全くお乳が出ないのに対して私はこんな感じでお乳が出る。実は私が毎日数本ボトルに搾乳したのを、阿倍子さんちに持ち込んで、それを京平は飲んでいる。ここだけの話」
 
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「だったらそれは間違いなく産んだのは千里だ」
 
「そんな気がするんだよね〜。そもそもあの子を作った卵子は私から採卵したし」
「採卵できたんだ!?」
 
「なりゆきで採卵台に寝せられてさ。私に卵巣がある訳無いし採卵できる訳無いと思っていたのに、ちゃんと卵子が採れたの見て、うっそー!と思ったんだけどね。そして私の身体から取った卵子に貴司の精子を受精させて、それが育ったのが京平だよ」
 
「じゃ千里の卵子で千里が妊娠して千里が出産したということ?」
「妊娠していたのは間違いなく阿倍子さんだと思う。だって妊娠中にユニバーシアードの合宿なんてできないよ」
「それは確かだ」
「だから私は採卵と出産だけして、妊娠していたのが阿倍子さんだと思うんだよね」
 
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「何か不思議な話だけど、でもやはり採卵できたということは千里は本当は生まれながらの女だってことでOK?」
 
「まさか。私は少なくとも小学校の3〜4年生までは間違いなく男の子だったよ」
 
「だったら、女性半陰陽だったのでは?」
「それも無いと思う。実際私は2007年から2009年に掛けて何度も性別検査を受けさせられて、陰茎や睾丸が無く、膣が存在していること。でも卵巣や子宮も無いことを確認されている。卵巣が無いというのは重要でさ。もし卵巣が存在していたら、それは私ではなく誰か身代わりの天然女性が受診している可能性があるから」
 
「なるほどー」
 
「実際この付近のこと考えて行くと自分でもさっぱり訳が分からなくなっていくんだよねー」
 
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「うーん・・・」
 
「まあ今の話は冗談ととっておいて」
 
「冗談と取るのはいいが、冗談であった場合、千里からお乳が出ることを説明できん」
 
「うん、それだけが困っている」
と千里は本当に困っているような顔で言った。
 

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「ところで結局細川君とはどうなってるわけ?」
と花野子は少し小さい声で訊いた。
 
「あいつといちばん長く会っていなかったのは、婚約破棄された2012年7月からその年の12月までの5ヶ月間」
 
「ほほお」
「その後はだいたい月に1度は会っている」
「へー!」
 
「最初の内はレストランとか体育館とか、人が周囲にいる所でしか会ってなかったんだよね」
「ふむふむ」
 
「あいつが結婚する半月くらい前に初めてホテルの一室で一晩一緒に過ごした」
「結婚する半月前!?」
「うん」
「なんつー大胆な」
 
「でもその時はほんとに一緒に過ごしただけでお互いの身体にタッチもしてないんだよ」
「一晩ホテルで一緒に過ごして何もしてない訳?」
「ずっとおしゃべりしてたよ。あとベッドに並んで寝たけど、お互いの身体には触らない約束で」
 
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「なんか中学生みたいだ」
「うん。中学生頃に戻ってみたいな気がした。でも次に会って以降は毎回ちょっとだけHなことするようになった」
「それってABCのB?」
 
「そうそう。Bの範囲。結局婚約破棄されて以降、セックスは1度もしてないんだよ(ということにしておこう)」
 
「ほんとに中高生の交際みたいだ。って、いや待て。千里たち高校生の頃にはセックスしてたよね?」
「してたよ」
 
「確か大会中に体育館の裏でしてたの見つかって厳重注意されたんだっけ?」
「あれは別人だったんだよ。私たちは抱き合ってキスしてただけで」
「それでも大胆だ」
「さすがにその後はそういうのは控えるようになった」
 
「当然。でも今は、結局細川君とはセックスしてないんだ?」
「してない。あいつが結婚している限り、こちらは許さない」
 
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「妙に道徳的だ」
「でも別の友だちに言われたんだよね。それだけの頻度で会ってHなことをしているのなら、私は今でも貴司の奥さんだって」
 
花野子は少し考えるようにしたが言った。
「私もその意見に賛成」
 
「だから私は貴司の妻、京平の母としての自覚を持つことにした。11月に貴司のお母さんと偶然会ってさ。話している内にそういうこと言ったら賛成してくれた。実はお母さんはいまだに阿倍子さんをお嫁さんとして認めてないんだよ」
 
「そのあたり、蓮菜からもちょっと聞いたけど、ややこしくなってるみたいね」
 
「それでそのあたりの気持ちの整理がついたら、凄くすっきりしちゃって」
 
「その心情を書いたのが『門出』か」
と花野子が言う。
 
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「うん、実はそうなんだよ。花野子に歌ってもらおうかなとも思ったんだけど」
 
「あの曲は音域が広すぎて私には無理。私2オクターブ半しか出ないもん」
 
「実はその広い声域を花野子と梨乃で分担して歌うスコアもいったん書いたんだけどね。ただその場合、音域を私の頭の中にあった音より下げないといけない。でもやはりF6の音を使いたいなと思ってさ。それで結局冬子の所に持ち込んだ」
 
「そういう経緯だったのか」
「カラオケ屋さんの音源は最高音をD6まで下げてるね」
「それがふつうの人の限度だもん。私もD#6までしか出ない。その音でもオクターブ下げてしか歌えない人が多いと思う」
 
「でも結局、去年鴨乃清見の名前で作ったのは、津島瑤子に渡した『白い足跡』、『吊り橋を渡って』とこの『門出』の3曲のみ」
 
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「寡作だね」
 
「大西典香が2013年末に引退して。でも私もあの時期からずっと貴司とのことで悩んでいたから、色々なものがパワーダウンしていた。でもまた頑張れると思ったから、ケイに私の歌を歌ってくれる歌手募集なんて話をしてもらったんだよ。実はまだ作品の形にはまとめてない書き掛けの曲も15-16曲ある」
 
「それは凄い」
 
「歌手募集の話には既に100通くらい写真と履歴書の応募があったらしい。デモ音源送ってきた子もいる。写真と履歴書だけの子にも、みなデモ音源を送ってくるように指示している」
 
「本格的なオーディションだね」
「うん。大西典香クラスの歌唱力がある子が欲しいんだよ」
 
「大西典香も千里が見い出たんでしょ?」
 
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「見い出したというかね。履歴書が大量にテーブルの上にばらまかれている所に連れて行かれて、この中から有望な子を選んでと言われたんだよ。それで私が選んだ履歴書が大西典香の履歴書だったらしい。彼女の履歴書はアピールポイントが少なくて、普通なら書類選考の時点で落選していたというんだよね」
 
「じゃ、今度もそういうのやるの?」
「鈴木さん(花野子たちが属している∞∞プロの社長)からはそう言われてる」
 
「ちょっと楽しみにしておこう。私たちや丸山アイとかを脅かすような子に出てきて欲しいよ」
 
「いいの?同じ事務所内にそういう強力な子が出てきても?」
と千里は訊いてみる。
 
「平気平気。私たちは楽しんで音楽しているだけだから、もし契約切られたらインディーズに戻るだけのことだし」
と花野子は明るい笑顔で答えた。
 
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「そういえば結局ソフト会社はどうしてる訳?」
とも花野子は訊いた。
 
「花野子だから言うけど、実はほとんど出社してない」
と千里は正直に答える。
 
「やはりねー」
「私は4月以降、音楽活動とバスケしかしてないよ」
「だと思った」
 
「何度も退職願い出してるんだけど、受け取ってもらえない」
「退職願いじゃなくて、退職届け出しちゃえばいいんだよ。必要なら内容証明で送りつければいい。そしたら民法の規定で2週間後には自動的に退職になる」
 
「最後の手段はそれだけどね。でもあまり強引なことすると後輩に悪いから」
 
「千里は時々優しすぎるな」
 

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花野子とけっこう長話してしまったので、お風呂を出たのは既に6時半くらいである。起きてきた梨乃・京子と4人で朝御飯に行った。蓮菜はまだ寝ているということであった。
 
「やはり研修医の仕事、無茶苦茶ハードみたいね」
「だろうね。でもそれを乗り越えないと一人立ちさせてもらえないし」
「コネを作る期間でもあるしね」
「そうそう。医者はコネを持たないとお仕事できない」
「医者同士のネットワークが無いと、難しい病気や怪我に対処できないもんね」
 
「そういえば千里は朝一番の新幹線で東京に戻るとか言ってなかった?」
「起きたらもう5時だったんだよね。伊香保温泉に来て温泉に入らずに帰るのもしゃくだから、開き直った」
「なるほどー」
 
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朝一番の新幹線で帰るには渋川5:43-6:08高崎6:17-7:16東京の連絡になるが伊香保温泉から渋川駅まで約8kmあり、タクシーで15分くらい見ておく必要があるので旅館を5時過ぎに出る必要があった。
 
「インターハイで泊まったんでしょ?」
と京子が言う。
「そうそう。別の旅館だけどね。あの時は毎日あの長い階段を登り降りしてたよ。暢子がやるぞーと言って」
 
「へー。あれ360段だっけ?」
「現在は365段。でも当時は315段だった」
 
「どっちみち凄い階段だ」
「私なら途中10回くらい休憩しないと無理」
 
「じゃ千里はその階段を往復してから東京に帰るといい」
と京子が言い出す。
 
「試合前にはやりたくない」
と千里。
 
「試合は何時から?」
 
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「13:40。だから高崎駅10:50のには乗らないと。それで東京に11:40に着く。それに乗るには渋川駅9:37発(10:02高崎着)には乗らないとまずい」
 
「でもそんなにギリギリで帰ったら試合前に練習する時間が無いのでは?」
「うん、それは仕方ない」
「じゃ、やはり練習を兼ねて365段の階段を往復で」
「え〜〜!?」
 

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花野子と梨乃が付き合うよと言って365段の階段を(休み休み)一緒に登り、伊香保神社にお参りした。お正月なので初詣客も結構いる。おみくじを引いたら大吉であった。
 
「心を硬くして対処せよか。気持ちをぐらつかせるなってことだよね」
と言っていたら、花野子が覗き込んでくる。
 
「縁談は悪しだね」
「これ以上恋人が現れても困るもん」
「それは言えてる」
 
「花野子は?」
「私は中吉。私も縁談は悪し。売買は利ありだから、お仕事は順調ということかな」
「たぶんゴールデンシックスは今年あたりが勝負の年だと思うよ。頑張ろう」
 
「梨乃は?」
「私は末吉。縁談悪しだから、ボーイフレンドは望めないな。まあ今あまり恋愛するつもりもないけどね。売買は遅く利ありだから後半勝負かなぁ。神仏に帰依せよなんて書いてある。芸能関係の神仏って何だろう?」
 
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「仏様なら弁天様でしょ。琵琶持ってるもん」
「あっ、そうか!」
「神様なら、天宇受売神(あめのうずめのかみ)だよ。天岩戸の前で踊ったんだから」
「ほほお」
 
「ちなみにうちの妹の青葉が設置した千葉の玉依姫神社も弦楽器の神様」
「おお、それは行かねば」
 
「あそこの神様は、お参りしてきた子が気に入ったら、神様直々にお稽古を付けてくれるらしいよ」
「それは楽しみなような、怖いような」
 
その時千里は青葉の後ろに普段は常駐している《ゆう姫》がこちらをチラッと見たような気がした。
 

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階段を降りてから旅館に戻ると、蓮菜も降りてきていて一応朝御飯を食べたと言っていたので、5人で一緒に旅館を出た。旅館の送迎バスで渋川駅まで送ってもらい、渋川8:58-9:26高崎9:38-10:32東京という連絡で帰還した。
 
千里はそのまま大手町駅から半蔵門線−東急という「いつもの」電車に乗り、いつも乗り降りしている用賀よりずっと手前、駒沢大学前で下車する。但し大手町で乗車する時から、《きーちゃん》を分離しており、楽器・楽譜・パソコン、お土産にもらった温泉饅頭などの荷物は《きーちゃん》に用賀のアパートまで持っていってもらい、身軽になった。
 
千里本人は駒澤大学前駅から会場まで1kmほどの道をジョギングして会場入りした。
 
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いよいよ2016年オールジャパン(皇后杯・全日本総合バスケットボール選手権大会)の開幕である。
 
 
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