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■春対(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-03-04

 
2015年11月3日(祝)。
 
東京に来ていた青葉は千里に煽られて彪志に会いに行くことにした。
 
「自分が男の娘だったということをいつまでも引きずっていたらダメだよ。もっと自信を持たなくちゃ。彪志君は、青葉はふつうの女の子だと思っているよ。今みたいな青葉の態度なら、彪志君の方が青葉との交際に疲れてしまうよ」
千里は青葉にそう言った。
 
「そうだなあ。じゃデートして来ようかな」
と青葉も少しその気になる。
 
しかし千里は青葉が彪志に連絡を取ろうとすると停めて
「びっくりさせるといいよ」
と言い、
「今日1日アテンザ貸してあげるから、ドライブデートしておいで」
と言ってアテンザのスペアキーを渡した。
 
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「ETCは好きに使って。デートが終わったら都内のどこかの駅の近くのTimesの駐車場にでも乗り捨てておいて。場所だけGPS付きのメールをしてもらったら、回収するから。キーはそのまま持ってていい」
と千里は言う。
 
「でもちー姉、この車お友達から借りているものなんでしょ?又貸ししていいの?」
と敢えて訊いてみる。
 
「ああ、平気平気。オーナーは青葉も知っている人だから。青葉なら文句言わないよ」
と千里は言った。
 
青葉が考えるようにすると千里はひとこと悪戯っぽい笑みで付け加えた。
「但し勝手にダッシュボードの中の車検証は見ないこと」
 
青葉は腕を組んで千里を見た。
 

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朝御飯を千里とふたりで食べた後(桃香は熟睡している。休日に桃香が起きるのは昼近いことが多い)、千里から
 
「カーナビセットしといたから、そこに向かって行けば彪志君に会えるよ」
 
と言われて、青葉は若葉マークを前後に貼ったアテンザを発進させた。車は首都高に乗り、やがて首都高湾岸線を走る。そして浦安ICで降りる指示が出るので降りる。やや走った所で1軒のコンビニの前で「目的地に到着しました」という案内が流れるので青葉は大いに戸惑う。
 
いったいここに何があるんだ?と思って取り敢えずそのコンビニの駐車場に入れて、車を降りてみた。その時、コンビニの出入口から出てくる男女の姿があった。
 

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その日の朝、彪志は従妹の愛奈からの電話で起こされた。
 
「久しぶり〜。どうしたの?」
 
子供の頃は屈託なく遊んだ仲ではあるが、この年齢になると従妹とはいえ女の子との会話にはつい緊張してしまう。
 
「実はね、東京ディズニーランドのペア招待券もらって友だちと2人で行こうと思って東京に出てきたんだけどさ、その友だちにドタキャンされちゃって1人分浮いちゃったのよ。それで彪志君、付き合ってくれない?」
 
「えー?そんなの**ちゃんとかは?」
「彼氏とのデートがあると言って断られた」
「俺もデートあるんだけど」
「それ何時から?」
「あ、えっと12時に東京駅で待ち合わせで」
「だったら午前中だけ付き合ってよ。11時には出ればいいじゃん」
「そんなのもったいなくない?」
「だって1人分まるごとよりはマシだよ」
 
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従兄妹というのは何とも微妙な存在だ。基本的に恋愛対象ではないという意識はあるものの、法的には結婚可能なので、変に意識してしまいがちだ。しかし午前中限定なら、まあいいかなという気もした。
 
「うーん。じゃ、午前中だけ付き合おうか」
 
それで彪志は舞浜駅で落ち合う約束をして。出かける準備をした。
 

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電話を切った愛奈も実は少しホッとした。親戚関係の集まりでは何度も会っているし、特に小さい頃はけっこう仲良くしていた相手だ。しかしふたりきりで会うなんて初めてである。愛奈は高校時代、部活の先輩の男の子と商店街を散歩したり、一緒にミスドで話したりしたことはあるものの、その彼とは手を握ったりすることもないまま、彼の卒業とともに関係は消滅した。卒業式の時に制服の第2ボタンはもらったものの、半年もしない内にどこにしまったか分からなくなってしまった!
 
実は男の子とのデート(?)なんてそれ以来である。正直何を話していいか分からない気がしていたので、取り敢えず会うのが午前中限定、開園する8時から彪志が彼女に会いに行くという11時までの3時間くらいなら、何とか時間が持たせられるかもという気がしたのである。
 
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「バイト代3万円・交通費宿泊費別なんてのが魅力的で飛び付いちゃったけど、やっぱり断れば良かったなあ」
などとつぶやきながら、愛奈は京葉線ホームに向かった。
 

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彪志は割と適当な服を着て西千葉駅に行くと、総武線に乗り、西船橋で乗り換えて舞浜駅まで行った。白地に赤や黄色の花柄のワンピースを着た愛奈を見て彪志はドキッとした。以前親戚の集まりで見た、セーラー服の少女ではない。可愛い笑顔で横向きに首を曲げる《女の子式会釈?》をする彼女に、もはや成熟した「女」を見て、彪志はここに来たことを後悔した。
 
しかし放置して帰る訳にもいかない。
 
「朝御飯食べた?」
「実はまだなんだよねー」
「コンビニでおにぎりか何か買ってく?」
「あ、そうしようかな」
「たぶん入場を待つ間に食べちゃうよ」
「なるほどー」
 
それで近くのコンビニに入る。彪志も朝御飯を食べていなかったので、ハムカツサンドとカレーパンを買う。愛奈はシーチキンおにぎりを1個買っていた。
 
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「寒いしコーヒーでも買って行こうよ」
と言ってドリップコーヒーを2つ注文する。彪志はブラックにしたが愛奈はミルクと砂糖をたっぷり入れていた。
 
そしてコンビニの出口を出た所で、彪志はこちらを見つめる青葉を見て驚愕した。
 

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「おはよう、彪志」
と青葉が笑顔で言う。
 
「おはよう。お仕事終わったの?」
と彪志は青葉に訊いた。
 
「うん、終わった。連絡しなくてごめんね。それでちょうど少し気分転換にドライブしてたら彪志の姿を見た気がして」
「よく見つけたね!」
「彪志を愛しているからね」
と青葉は言う。愛奈に視線はやらないものの、かなり意識しての発言だ。
 
「あ、愛奈ちゃん、こちら俺のフィアンセの川上青葉。青葉、こちら俺の従妹で小比類巻愛奈」
 
「初めまして。彪志さんにお世話になってます」
と青葉が初めて愛奈を見て笑顔で挨拶する。
「あ、初めまして、よろしくです」
と愛奈は緊張して答える。
 
「愛奈さん、どこか行く予定があったら車で送りますよ」
と青葉が言う。
 
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あからさまに「邪魔だから帰ってよ」という発言である。
 
すると彪志が説明した。
 
「あ、えっと、愛奈ちゃんがディズニーランドのペアチケットもらっちゃったらしくてさ。友だちと一緒に行くつもりでこちらに出てきたら、友だちがドタキャンしちゃったらしいんだよ。それで俺が午前中だけでもいいから付き合ってくれないかと言われてさ。午後からは俺、青葉と会う予定だったから」
 
彪志は何だか焦ったような顔である。
 
青葉は午後から彪志と会う約束などしていなかったものの、デートを時間限定にするための言い訳だなというのを察してこう言った。
 
「チケットは日付指定されてるの?」
「いえ、オープンです」
「それ有効期限は1年だよね?」
「ええ」
「だったら、また今度来た時に使えばいいよ。1人じゃ詰まらないだろうし」
と青葉は言う。
 
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ディズニーランドに行くつもりなら1人で行きなよ、という発言だ。
 
「でもせっかく東京に出てきたんならめったに見られないもの見せてあげようか」
と青葉は笑顔で言った。
 
「えーっと・・・」
「取り敢えず、2人とも車に乗らない?」
と言って青葉はアテンザの方に歩み寄る。
 
彪志は一瞬愛奈と視線を交わしたものの、結局青葉に続いて車の所に行く。青葉はさっさと運転席に座るので、彪志は愛奈に後部座席を勧めて自分は助手席に乗り込んだ。
 

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「まだ早いから少しドライブしよう」
と言って青葉は車をさっき降りた浦安ICに向ける。
 
「どこ行くの?」
と彪志が訊くと
「東京湾一周」
と青葉は言った。
 
「なるほどー」
 
それで青葉が運転する車は首都高からそのまま東関東道を進み、宮野木JCTで京葉道路の館山方面に進み、そのまま館山自動車道を南下する。
 
「この車は千里お姉さんから借りてきたの?」
と彪志が訊く。
「そうそう。又借りだけどね」
と青葉。
「ちー姉がカーナビをセットして貸してくれてさ。それでそのカーナビの通り進んだら、あのコンビニの前に辿り着いたから、何があるんだ?と思ったけど、まさかそこでデート中の彪志と遭遇するとは思わなかったなあ」
 
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と青葉の言葉はチクリと痛い。が取り敢えず黙殺して言う。
 
「千里さん凄いね!」
「まあ、ちー姉なら普通のことだよ」
 
「青葉さんのお姉さんって占い師さんか何かなんですか?」
と愛奈が尋ねる。
 
「うーん。私もよく分からないんですけどねー。ちー姉が今日は傘を持って行きなさいと言った日は、朝どんなに晴れていても、天気予報が晴れでも絶対雨が降るんですよ」
と青葉。
 
「すごーい」
 
「本職はバスケット選手なんだよ。今年はユニバーシアードとA代表のアジア選手権に出て、ユニバーシアードは世界4位でスリーポイント女王、アジア選手権は優勝してスリーポイント数2位」
と彪志が説明すると
 
「そんなに凄い選手なんだ!」
と愛奈は驚いている。
 
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「でも結局、ソフト会社の方はどうなってるんだっけ?」
と彪志は訊く。
「それもどうにも実態が見えないんだけどねー」
と青葉は本気でよく分からないのでそう前提を置く。
「たぶん会社にはほとんど出てないと思う」
 
「忙しすぎるもんね」
 

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やがて車はアクアブリッジを渡り、青葉は《海ほたる》に車を駐める。
 
「一休みしてお茶でも飲もう」
と言って車を降りる。一緒にカフェに入り、窓際の席に座る。
 
「青葉1時間以上運転していて疲れたろ?この先はしばらく俺が運転するよ」
と彪志が言う。
 
「うん。彪志MT大丈夫だったっけ?」
「しばらく運転してないから、出発前に少しだけ操作教えて」
「了解了解」
 
「でも凄く運転うまかった。もう運転歴長いんですか? 私青葉さんの年齢がよく分からない」
 
「18歳ですよ。免許は9月に取ったばかり」
「嘘!?」
「でも運転歴はたぶん6年くらいだよね?」
「それは言わない約束よ」
 
「18歳なら大学1年生?」
「高校3年生ですよー」
「凄い大人びて見える。私より上かなと思ってた」
「私、小学1−2年生の頃から、あんたと話してると大人と話してるみたいだと言われてました」
 
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「家庭に色々問題があったみたいでさ。それで早く自立せざるを得なかったんだよな、この子は。小学2年生の頃から、自分の食い扶持は自分で稼いでいたって子だし」
 
「何して稼ぐの?」
「この子、霊能者なんだよ。だから失せ物捜しとか、病気治療とかを随分やってる。もっとも田舎だから、御礼は大根1箱とか、お魚1袋なんてことも多かったみたいだけどね」
「そういう食料が助かるんだよ。お金だとお母さんが使い込んじゃったりするから」
 
「何か複雑そうですね。あ、でもそれじゃそのバスケしてるお姉さんと姉妹で凄いのね?」
と愛奈。
 
「うん、やはりこういうの遺伝なんだろうね。この子のひいおばあさんがまた凄い大霊能者だったんだよ」
と彪志は言っておいた。
 
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