広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■春風(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-26

 
2013年4月1日。青葉は朝からT高校に呼び出され、一緒に呼び出された日香理・美由紀、そして清原空帆という子と一緒に、校長から、呉羽を女子生徒に準じる形で学校に受け入れることになったので、色々協力して欲しいと要請され了承した。
 
それでまだ女の子の格好をした呉羽を空帆が見たことがないというので15時にショッピングモールのフードコートで待ち合わせることになった。
 
4人がジュースや烏龍茶を飲みながら待っていると、T高校の女子制服を着た呉羽が恥ずかしそうな顔をしてやってきた。
 
「わぁ、可愛い!」と空帆が言う。
「あ、うっちゃん!」
「久しぶり〜、ヒロちゃん」
「ちょっと恥ずかしい」などと言って呉羽は真っ赤になっている。
 
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「おお、恥ずかしがるところがまた可愛い」
などと美由紀まで言っている。
 

美由紀がお腹が空いてきたと言うので、マクドナルドのセットを買って来て、食べながらおしゃべりする。
 
「ね、ね、ヒロちゃん、その胸に触らせてよ」と空帆。
「うん」
と言って、また呉羽は恥ずかしそうにしている。
 
「凄いリアル。まさか本物?」
「うん」
と言って、またまた真っ赤になっている。
 
「すごーい。おっぱい大きくしちゃったんだ? ね、ね、下は付いてるの?」
「えっと、それは・・・」
とまた恥ずかしそうにしている。
 
「ね、ね、ヒロちゃん下は手術してるの?」
と青葉たちに向かって訊く。
 
「うーん。どうなんだろうね。私たちもよく分からないんだよね」と美由紀。
「青葉の場合は医学的に物凄く特殊な例ということでアメリカの病院でも検査された上で、最終的には国内で性転換手術してもらったみたいだけど、ふつうは去勢手術でも中学生にはしてくれないよね」と日香理。
 
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「じゃ、まだ付いてるの?」
「よく分からないけど、付いてたとしてもずっとホルモン飲んでて機能は既に停止してると思う」
 
「ふーん、だったら付いてないのと同じようなものか」
「そそ。私たちもそう思ってるよ」
 

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「あ、そうそう。それでさ、今日は私たち4人、学校に呼び出されて呉羽と仲良くしてあげてと言われたんだけど、私たち元々仲良しだから、特に何もしないけど、いいよね」
 
「あ、ありがとう」
「体育の時の柔軟体操とかは、私か美由紀か青葉と組んで」と日香理。
「うん」
 
「あ、私とでもいいよ」と空帆が付け加える。
「同じクラスになるのは私だけだから、休み時間は私とおしゃべりしてようよ。席も取り敢えず一学期は私と前後になるみたいだから」
「うん。うっちゃんとなら話しやすいかな。小学校の頃も何度か前後になったね」
「そそ。清原と呉羽だからね。私が後ろ向くとそのまま話せる」
 

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4月8日。高校の入学式がある。青葉がT高校の制服を着て
「行って来まーす」
と言って出かけようとしたら、1階の自分の部屋に居た朋子が呼び止める。
 
「待って、待って。今着替えてるからあと5分待って。一緒に出ようよ」
 
「お母ちゃん、その着物は・・・」
「やはり入学式だから、こんな色がいいかなと思ってね」
 
朋子は桜色の色無地を着て、今帯を締めようとしていた所だった。
 
「もしかして私と一緒に行くの?」
「もちろん。だって娘の入学式なんだから」
 
それを聞いて青葉は涙が出てきてしまった。
 
「どうしたの?」
「だって・・・・」
「そうか。青葉、お前入学式に親が来てくれたことなかったのね?」
「うん」
 
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と言ったまま青葉は涙が止まらない。
 
「ほらほら、おめでたい入学式に泣いちゃダメだよ。女の子は笑顔でいなくちゃ」
「うん」
 
と言って青葉は笑顔を作ろうとするも、涙は止まらない。
 
「やれやれ、青葉の泣き上戸も随分治ったかと思ったのにね」
「ごめーん」
 
などと言っている内に朋子は帯を締め終わる。
 
「さあさ、一緒に出よう。ほら、これで涙拭いて」
 
朋子が渡してくれたハンカチで涙を拭くと、やっと青葉は笑顔で頷いた。
 

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保護者は体育館に直接入るが、新入生はいったん各々の教室に入る。青葉は美由紀・日香理とハグしあった。
 
「へー、お母ちゃんが来てくれたの? 良かったね」と日香理。
「青葉、泣いたでしょ?」と美由紀。
「えー? どうして分かるの?」と青葉。
 
「やはりねぇ」
「日香理や美由紀はお母さんは?」
「うん、来てるよ」「来てるよ」
「わあ、いいなあ」
「いいなあ、って青葉も来てくれたんじゃん」
「えへへ」
 
やがて担任の先生が入ってくるので、各自自分の名前のシールが貼られた席につく。担任が自分の名前を黒板に大きく「音頭調子」と書く。
 
「えー、おんど・ちょうこです。名前だけ見たら、すっごく音楽ができそうに見える名前なんですけど、私は絶望的な音痴ですから」
 
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と自己紹介すると、教室が爆笑になる。
 
「ちなみに音楽の先生にならないかと言われたけど、無理〜と言って、数学の先生をしてます。部活では囲碁部の顧問をしています」
 
クラスが和やかな雰囲気になった所で出席を取る。この学校は男女混合名簿である。
 
「明石誠也君」、「石井美由紀さん」、「江藤和洋君」、「大谷日香理さん」、と呼ばれた後「川上青葉さん」と呼ばれて、青葉は元気に「はい」と返事した。
 
名前を呼ばれた生徒は全員返事をした。つまり欠席者はゼロである。先生から簡単な注意、そして入学式の進行について説明があった。
 

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やがて時間になり、クラス単位で式場の体育館に向かう。隣の理数科の呉羽と目が合ったので青葉が手を振ると、女子制服に身を包んだ呉羽は、また恥ずかしそうにして、軽く会釈した。
 
やがて新入生全員が入場を終え、入学式が始まる。開会の辞の後、在校生の女子がひとりピアノの所に行き、彼女の伴奏で『君が代』を全員で斉唱する。その後、校長が壇に上がり、入学許可授与になる。新入生の名前が各クラス担任から読み上げられる。320名全員の名前が呼ばれた後「新入生代表・理数科・山下絢子」
と呼ばれ、その生徒が壇上に上がる。青葉はその生徒を推薦入試の時に見た覚えがあった。強いオーラが印象的だった。多分天才型。成績一番の子なのかな?
 
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校長が入学許可証を読み上げ、代表として山下さんに渡した。その後、山下さんは壇を降り、校長が祝辞を述べる。その後「新入生の決意」ということで再び山下さんが壇上に上がって、決意の文を朗読した。その後、在校生代表の祝辞、更にPTA会長・同窓会会長・来賓などの祝辞が続く。その後、校歌の紹介となる。
 
コーラス部の部長さん(後で茶山敏子さんと知る)が壇上に上がり、別の生徒(同じコーラス部の2年生ピアノ担当:椿原康江さん)がピアノを弾いて、校歌を歌った。
 
「それでは皆さん、一緒に歌いましょう」と茶山さんが言い、椿原さんのピアノに合わせて、みんなで歌う。青葉は茶山さんの声がきれいだなあ、と思いながら唱和した。
 
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この校歌斉唱の後、閉会の辞があり、入学式は終了した。
 

各自の教室に戻る。体育館を出た後はもうクラスも入り乱れバラバラになる。青葉は取り敢えず理数科の呉羽の所に寄って行きハグした。
 
「わっ」などと呉羽が声を上げるので
「女の子同士普通のことだよ、これ」
と言うと、
「そうだよね」
などと言いつつも、少し恥ずかしそうな顔をしていた。
 
「川上〜、俺ともハグしない?」
などと同じ理数科に入った元同級生・吉田君から言われる。
 
「ハグするのは女の子同士だけね。吉田君も女の子になる?」
「いや、ならん、ならん。でも呉羽が女になってたんで、びっくりしたぞ」
 
「いや、私たち女子もびっくりだったのよ」
 
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その日はあらためて担任と副担任の紹介があった後、時間割が配られたり、進路などの調査票の類いが配られ翌々日までに提出するよう言われたり、様々な説明が行われたりで終始した。
 
今日は教室の後ろに保護者が並んでいる状態なので、どちらかというと親子で聞いておいて欲しいような話が多かった。入学者説明会の時にも一応説明があった校則の要点、それに進学に関する話なども行われた。理数科は既に何年も前から設置されていて国立医学部や旧帝大の理学部・工学部などへの充分な合格実績があるものの、社文科は青葉たちが2期目で、まだ実績が無いので、その分逆に先生も気合いが入っている感じであった。
 
1学年上の社文科(20名)の場合は、東大文1・慶應法学部の志望者が各1名、他に旧帝大の法学部・経済学部の志望者が7名いるということが紹介されていた。ちなみに青葉たちのクラスは30名で上の学年より人数が増えている。
 
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学校が終わってから、美由紀母子、日香理母子、青葉母子の6人で何となく、お茶でもという話になり、高校から少し離れた所にあるマクドナルドに入った。
 
「いや何だか話聞いてたら、うちの娘ギリギリ一杯のスレスレ合格だったみたいで」と美由紀の母。
「併願していた私立の入学金払わなかったから、冷や汗ものでした」
 
「トップだろうとビリだろうと、合格したら同じですよ。卒業する時にトップになればいいんですよ」
と青葉は言うが
「いや、トップ卒業はどう考えても無理」
と美由紀は言う。
 
「高校出たら専門学校にでも行かせるかなと思ってたんですけど、本人どうも大学に行く気になってるみたいですし。でもうちの娘みたいなのが入れる大学なんてあるのかしら?」
 
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「名前さえ書けば入るような所もありますけどね。でも美由紀ちゃん、頑張れば国立でも行けると思いますよ」と日香理。
 
「社文科や理数科は無茶苦茶鍛えられるみたいですしね」と青葉。
「元々の授業数が多い上に、補習もたっぷりあるみたいだもんね」と日香理。
 
「青葉は名大法学部狙ってるんだっけ?」と美由紀。
「ああ、あれはここ受ける段階で大きく書いとけと言われてたんで書いてただけで実際は、金大の法学コース狙い」
 
「日香理ちゃんは東京外大でしたっけ?」と青葉の母が訊くが
「それ、今お母ちゃんと協議中なんですよ〜」と日香理。
 
「私は富山大か金沢大でもいいじゃんと言うんですけどね〜」と日香理の母。
「まあ、3年生の夏か秋までに結論を出せばいいし、ゆっくり話し合えばいいですよ」
「ええ」
 
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そんな話をしていたら、お店に呉羽母子が入ってくるのが見えた。日香理が手を振ると、向こうも気付いて、こちらに寄ってくる。
 
「呉羽、お母さんといっしょだったんだ」
「うん」
と答える呉羽は嬉しそうな顔をしている。
 
「いや、考えてみたら私、この子の入学式にしても授業参観にしても、全然出たこと無かったなと思って少し反省して今日は会社休んで出てきました」
と呉羽の母。
 
「呉羽は泣かなかった?」と美由紀が訊く。
「え?」
「青葉は泣いちゃったらしいよ。青葉も入学式にお母さんが来てくれたのなんて初めてだったらしいから」
 
「えへへ。やはり中学の時の入学式との落差が激しいなと思って。中学の入学式は、私、制服も買ってもらえなくて私服で出たから」
「卒業したお姉さんの制服は、お母さんがブルセラショップに売っちゃったと言ってたね」
「うん、まあね」
 
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「それは酷い親だ」と呉羽の母が憤慨している。
 
「でも今となっては全てを許していい気がしてるよ」と青葉。
「あんたもこの2年間で成長したんだね」と青葉の母は言う。
 

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