広告:まりあ†ほりっく3(MFコミックス)
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■春風(3)

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男女がセックスするシーンがアニメで流される。これにはみんな息を呑んで見ている感じであった。
 
「今のアニメの中でもちゃんとコンちゃん付けてましたが、これは実際にやってみましょう。この中に誰かペニス持ってる子がいたら、サンプルになる?」
などと講師をしている保健室の先生が言う。
 
青葉たちのグループでは一瞬全員の視線が呉羽に集中するが、先生は
 
「誰もいないよね? じゃ代わりにこれを使います」
などと言ってフランクフルト・ソーセージを出してくる。
 
「誰か代表で付けるのやってみよう。あ、君、これやったことある?」
と言って先生が指名したのは、最前列で見ていた紡希だ!
 
「あ、いえ。やったことないです」と紡希。
「じゃ、経験しておこう。付けずにやって妊娠しちゃったら大変だからね」
と先生。
 
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すると紡希は
「ほんとにそうですよね」
 
などと言って笑顔で答え、演壇の所に出てきた。青葉や美由紀・日香理はちょっと顔を見合わせた。紡希は例の件についてその後自分たちにも何も言わなかったが、あの表情を見ると自分で乗り越えたのだろう。やはり、強い子だ。
 
隣にいた生徒にCCDカメラを持たせて映像をスクリーンに投影する。紡希が渡された避妊具を開封する。カメラの前で「こちらが表ですね」などと言いながら、取り出し、そのまま先生が持つフランクフルトの先端にかぶせると、2本の指で押さえるようにして、きれいにくるくると広げていき、全体にかぶせた。
 
「はーい。ご苦労さん。じょうずに出来たね。慣れてないと、表と裏を間違いやすいので気をつけましょう。もし表裏を間違った場合は、必ずそれは捨てて新しいの使ってください。いったんペニスの先端にくっつけてしまった部分を外にして装着したら、確実に精子が付着したところを中に入れてしまうことになるからね」
 
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と先生は注意した。
 
「ところでこのフランクフルト、要る?」と先生。
「あ、じゃ私が後でおやつに食べます。皮を剥いちゃえば問題無さそう」
と紡希。
 
「うん。フェラチオの練習に使ってもいいよ」
と先生が言うと、場内で笑い声が起きるが
 
「はい、それ練習した後で食べます」
と紡希も返して、再度笑いを取っていた。
 
青葉・美由紀・日香理はお互いの顔を見合わせて微笑んだ。
 

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講義が終わった後は、同じ1階にある食堂で夕食となった。この研修館は1階が食堂と小ホール・自習室、2階が大ホール、3階・4階に宿泊可能な和室が20室ずつある。今回の合宿では、3階が男子、4階が女子となっていた。6畳の和室に8名詰め込みである。お風呂は3階・4階にそれぞれあるが、そんなに広くないので、部屋番号5個単位で、30分交替で時間が指定されていた。青葉たちは20:30-21:00という指定であった。
 
部屋割はだいたいクラス単位を基本に行われていたが、青葉たちの部屋は、社文科の青葉・美由紀・日香理、6組の紡希と黒川須美さん、理数科の呉羽・空帆に、新入生代表も務めた山下絢子さんという、組合せになっていた。部屋が一番端で、建前的には人数が半端になったので、6〜8組から生徒を集めたという感じである(理数科は通称7組、社文科は通称8組となっている)。
 
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黒川さんは空帆と同じ中学の出身ということだった。山下さんだけが他の子とのつながりが無かったようであるが、空帆が
 
「多分、山下さん、理数科のクラス委員に指名されそうだから、ヒロミのこと知っててもらおうというので、ここに入れられたんじゃないかな」
などと言っていた。
 
「ごめん、まだ苗字と名前の対応が飲み込めてなくて、ヒロミさんって、呉羽さんかな?」
「そうそう」
 
みんな制服に付けているネームプレートは苗字のみが彫られている。
 
「ヒロミさん、何かあるの?」と山下さん。
「この子、戸籍上は男子だから」と日香理。
「えーー!?」
 
「でも、身体はもうほとんど女の子だよね?」と美由紀。
「えっと、どうだろう」などと本人は恥ずかしそうにしている。
 
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「いや、全然気付かなかった」と山下さん。
 
「学校側では、ヒロミの性別のこと、生徒たちにオープンにすべきか特に何も言わずに知ってる人だけが知ってるということにしようか、かなり議論したみたいだけど、結局何も言わないことにしたみたい」
と空帆。
 
「あ、ちなみにもうひとり、こちらの青葉も戸籍上は男子」と日香理。「はーい。一応今の所そうです」と青葉は手を挙げて言う。
 
「うっそー。青葉さん、声もそんなソプラノボイスなのに」
「この子は小学5年生頃から女性ホルモン優位になってて、声変わりもしてないんだ。それで、もう性転換手術済みだから、肉体的には完全に女の子だよ。ほら、触ってごらん、感触が女の子だから」
と日香理。
「へー」と言って山下さんは青葉の身体に触れて
「ほんとだー。普通に女の子の感触」
などと言っている。
 
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「ヒロミも、既におっぱいはあるし、多分・・・去勢済みだよね?」
 
と日香理は言った。ここ数ヶ月の呉羽の様子や言動から、推測したのだろう。
 
「あ・・・確かに無いかも」
と呉羽は初めてそれを認める発言をした。
 
「へー、そうだったのか。最近急速に女らしくなったと思ってたのはそれか」
と美由紀が感心するように言った。
 
「じゃ、ヒロミさんも青葉さんも普通に女の子ということでいいね?」
と山下さん。
 
「そそ。私たちは普通に女の子の友だちとして接している」
と日香理は言った。
 

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「じゃ、取り敢えず全員あらためて自己紹介しようよ」と空帆が言う。「右回り〜」と言って隣に座っている黒川さんに視線を投げる。
 
「§§中学出身、6組、黒川須美。氷見市生まれ。蠍座」
「◎◎中学、社文科、石井美由紀。高岡市生まれ。水瓶座」
「◎◎中学、理数科、呉羽ヒロミ。新湊市生まれ。乙女座」
「◎◎中学、社文科、川上青葉。埼玉県大宮市生まれ。双子座」
「◎◎中学、社文科、大谷日香理。長野県大町市生まれ。天秤座」
「◎◎中学、6組、田村紡希。福井県小浜市生まれ。牡羊座」
「##中学、理数科、山下絢子、石川県金沢市生まれ。獅子座 」
「§§中学、理数科、清原空帆。石川県輪島市生まれ。魚座」
 
「なんか美事に全員生まれた町が違う」と美由紀。
「高岡生まれは私だけか」
「星座も全員違うんだね」と紡希。
 
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「でもひとつ共通してることがあるね」と青葉。
「何?」
「全員、強烈に個性的」
 
「ああ、確かにみんなあまり友だちが出来なさそうなタイプ」
「でも私たち、個性的な子同士で仲良くできそう」
 
「じゃ、取り敢えずこのメンツ同士では名前で呼び合おうよ」
と日香理が提案する。
「OK、OK」
 

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「ところでこのメンツなら、みんな知ってるよね。合宿明けの明後日は新入生の抜き打ちテストがあること」
と日香理が念のため訊くが、全員頷いている。先輩などから情報を得ていたのだろう。
 
「お勉強しなくちゃ!」
「やはり中学の復習をしといた方がいいよね」
「私、進研ゼミの中学スピード復習の問題集持って来た」
「あ、私も〜」
「私、タブレットのアプリ版で持って来た」
という声が数人から上がる。
 
「じゃ、お風呂上がった後、一緒にやらない?」
「いいね」
 
「みんな部活はどうするの?」
 
「私はコーラス部」と青葉。
「右に同じ」と日香理。
「私は美術部」と美由紀。
 
「私は軽音部」と空帆。
「私どうしようかなあ」と須美が言うので
「私と一緒に軽音部しない?」と空帆が誘う。
「私あまり楽器自信無いけど」
「覚えればいいよ」
「うーん。じゃ、私が出来そうな楽器パートが空いてたら」
 
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「私は部活はパス。勉強に集中したい」と紡希。
「右に同じ」と絢子。
 
「ヒロミはどうするの?」と日香理が訊く。
「あ、えっと。どうしようかな」
「私たちと一緒にコーラス部に来ない?ヒロミ、結構歌うまいし」
「でも私、女の子の声がうまく出せなくて」
 
「だから練習すればいいよ。結構中性っぽい声は時々出てるじゃん。話すのより歌う方が、女の子の声って出やすいからさ。あの声の出し方をもう少し頑張れば、アルト領域は歌えると思うよ」
と青葉。
 
「女の子の声で歌えるようになれば、女の子の声で話せるようになるのも見えてくるよね、多分」
と紡希。
「そそ。女の子の声で歌う方が、女の子の声で話すのより易しいんだよ」
と青葉。
 
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「ソプラノ領域は、さすがに青葉みたいに声変わりをキャンセルできた子しか出ないよね?」
と日香理。
 
「うん。声変わりしてしまったのにソプラノ出る人はたまにいるけど、凄まじくレアだと思う」
と青葉も言う。
 
「ローズ+リリーのケイとか凄い声域持ってるよね?」
と空帆が言う。
 
「あの人は3オクターブ半くらいだよね。滅多に公開しないバリトンボイスまで入れると4オクターブ。歌詞は歌えなくてスキャットだけなら出るトップボイスを入れると5オクターブ近く。その上のホイッスルボイスまで入れると6オクターブ以上あると思う。ホイッスルボイスは本人もどこまで出るのか良く分かってないみたい。体調にもよるみたいだし」
と青葉は《公開情報》だけを使って答えた。
 
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「凄いな」
 
「でもそのケイさんから紹介されて会ったことのあるmap(エムエーピー)のカンナさんは普通に歌える声だけでも5オクターブある。マライア・キャリー並み。生で聴いて衝撃受けた」
 
「あの人、そんなに出るんだ!」
 
「あれ、ケイと知り合いなの?」と空帆。
「お友だちだもんね」と美由紀。
「そそ。MTFつながりで」
「わあ!」
「ひょんなことでお互い知り合ったMTF/MTXのグループがあるんだよ。私たちはクロスロードと呼んでるんだけどね。もう2年近い付き合い」
「へー」
 
「ケイさんと青葉と、もうひとり東京のライブ喫茶の店長してる人とが中核メンバーだって言ってたね」
「うん。私たち3人が何となく、あのグループの運営委員みたいになってる」
「おお」
 
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「ヒロミも今度集まりがあった時に連れてってあげるよ。凄く刺激されると思うよ」
「う、うん」
 
「ライブ喫茶?」
と空帆が訊く。
 
「うん。本来はメイド喫茶なんだよ。でもオーナーの趣味でセミプロクラスの演奏者によるライブ演奏を始めたら、なんかそちらの方が話題になって、結構新人バンドや歌唱ユニットとかの登竜門になっちゃってる感じ。あそこで演奏しててレコード会社から声が掛かってメジャーデビューしたユニットもあるよ」
 
「へー!」
 

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おしゃべりしている内にやがてお風呂の時間になる。みんなで着替えとお風呂セットを持ち、浴場の方に行く。が、ヒロミだけみんなと別れてエレベータの方に行こうとした。
 
「待て」
と言ってまた美由紀に捕まっている。
 
「どこに行く?」
「あ、えっと私、管理室付属のシャワールームを使ってと言われてたから」
 
「青葉。この子、私たちと一緒にお風呂入れていい気がしない?」
「ああ。大丈夫じゃない? だって中学の修学旅行では女湯に入ったしね」
と青葉が言うと
「うっそー!」
と空帆が驚いている。
 
「じゃ、もうそういう身体になってるんだ?」と空帆。
「いや、修学旅行の時は水着を着て入ったから」とヒロミ。
 
「こないだ体育の時間に更衣室で見た感じでは、たぶん水着でなくても行ける」
と日香理も言う。
 
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「まあ、私たちのグループの中にいれば、何とかなるでしょ」
と紡希まで言い出す。
 
「よし、じゃヒロミも私たちと一緒に入ろうね」
と楽しそうに美由紀が言う。
 
「あ、うん・・・」
とヒロミは恥ずかしそうにしているが、美由紀に腕をつかまれて、そのまま浴室の脱衣場に入った。
 

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