広告:放浪息子(9)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春風(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-27
 
月曜日は朝1時間目のホームルームで、各種委員が選出された。実際には特に立候補者がいなければ担任から指名する、ということで、ほぼ全員担任の氏名となり、学級委員には江藤君と佐伯徳代さんが選ばれた。
 
委員が学級委員・生活委員・保健委員・美化委員・図書委員・体育委員と6種類で男女1名ずつの指名であるが、青葉たちのクラスは男子12名・女子18名の30名なので、男子は2分の1の確率、女子は3分の1の確率で委員になったようである。しかし青葉も美由紀も日香理も委員には指名されなかった。どうも部活との兼ね合いを考えて、部活をする予定の子をできるだけ外したようであった。
 
なお、理数科の方では絢子が予想通り学級委員に指名されたが、呉羽が保健委員に指名されたと聞き、美由紀も日香理も
「大丈夫か?」
と少し心配した。
 
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「あのさぁ、保健委員って、授業中に気分が悪くなった子がいたら、保健室に連れて行ったりするわけだが・・・・」
「うん。頑張る」
 
「女の子を支えて連れて行ったりすることもあるわけだが。ヒロミ、女の子の身体に平気で触れる? ヒロミが緊張すると、相手も緊張するよ」
「う・・・・頑張る」
 
「んじゃ、練習、練習。私を支えて歩いてご覧よ」
と美由紀が言うので、呉羽はおそるおそる美由紀に肩を貸すようにして歩いてみるが、美由紀の身体と直接接するので、真っ赤になってる。
 
「力抜くなよ。倒れるから」
「うん、頑張る」
 
「よし、次は私を支えてみて」
と青葉が言うので、青葉を支えて歩き出すが、数歩歩いた所で転んでしまう。
 
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「大丈夫?」
「ごめん、ごめん」
 
「青葉何かしたの?」
「あ、私の方がちょっと力を抜いてみただけ」
「ああ、でもそれは気分の悪くなった子ならあり得る事態だから頑張ろう」
 
ということで、呉羽は美由紀・青葉・日香理を交替で支えて歩く練習をさせられていた。
 
しかし翌日空帆が「私先生に言って保健委員、私に交替させてもらった」と言っていた。確かに、その方が無難という気もした。
 

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月曜日の放課後は、新入生の部活動開始の日であった。青葉は日香理、美津穂、そして呉羽も連れて、コーラス部に行き、入部手続きをした。
 
「川上青葉、ソプラノです」
「上野美津穂、メゾソプラノです」
「大谷日香理、アルトです」
「呉羽ヒロミ、アルトです」
 
「おっ、ヒロミちゃんすごっく低音ボイスだね。低い声しっかり出せる子は少ないから頼もしい」
などと顧問の今鏡先生が言っていた。
 
青葉たちを見て、手を振る女の子がいる。
 
「こんにちは〜、杉本さん。よろしく〜」と青葉が挨拶する。
「こんこん。川上さん。こちらこそ、よろ〜」と彼女。
 
それは中学の時、他の学校でソプラノソロを歌っていた子であった。
 
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他にその杉本さんと同じ中学から来たアルトの沢田さん。また中学時代は名前までは知らなかったものの、やはり大会で見たことのあった、他の中学から来た、メゾソプラノの竹下さんとも握手をした。
 
「1年生の新入部員はこの7人だけかな」
「ちょっと寂しいね」
 
「今日は2〜3年生はお休みですか?」
 
新入生以外には、入学式の時に校歌を歌った3年生で部長の茶山さんとピアノを弾いた2年生の椿原さん、それとあと2人、2年生らしき人がいるだけである。
 
「いや、これで全員」
「は?」
 
「うん。去年の秋に1つ上の学年の人たちが退部した後は、この4人だけでやってきていた」と茶山部長。
 
「いや、1年生が7人も入って嬉しい」と2年生の菅野さん。
 
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「4人で合唱になってたんですか?」
 
「ああ、康江ちゃん(椿原さん)がピアノ弾くから、私のソプラノ、都美子ちゃん(菅野さん)のアルト、真琴ちゃん(川瀬さん)のメゾソプラノで三重唱でやってた」
 
あはははは。青葉は杉本さんと顔を見合わせて溜息を付いた。
 

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「いや〜、参った参った」と言ったのは空帆であった。
 
「須美ちゃんと一緒に軽音部に入りに行ったんだけどさ、新入生の部員は私たち以外に2人で4人だけ。少ないね、なんて言ってたら、先輩が居ないのよ。3年は0人、2年生が3人で、結局新入生を入れても7人。これじゃまともなバンドにならない」
 
「ロックバンドなら組めるのでは?」
と日香理が言う。
 
「私たちが入るまで、2年生の3人はギター2人、ベース1人の構成で活動してたらしい。ドラムスは打てる人がいなかったって。確かにロックバンドなら何とかだけど、私はジャスバンドやりたかったんだよね〜」
 
「ジャズバンドって何人くらい必要なの?」
「最低でも10人くらいかなあ。できたら17〜18人くらい欲しい」
「それは厳しいね」
 
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「やはり進学校だから、部活やる人少ないのかなあ」
「うん、それはあるだろうけどね。コーラス部は?」
「新入生7人。でも先輩は4人。ひとりはピアノ弾くから、実質10人」
「その人数ではコーラスにならない気がする」
「うん、ならない。AKBの選抜チームより少ない。せめて20人くらいにしないと」
 
「いっそ、軽音部とコーラス部、合同で大会に出たりしてね」
と話を聞いていた美由紀が言う。
 
「ん?」
青葉と空帆は顔を見合わせた。
 

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青葉と空帆の提案に、双方の部長は興味を持ってくれた。取り敢えず4人で話し合いを持った。
 
「軽音の大会は?」
「9月22日。コーラス部の大会は?」
「9月15日」
「良かった!ずれてるんだ。実は吹奏楽部に多少の応援を求められないかというのも考えたんだけど。吹奏楽部の大会は軽音の大会と同じ日なんだよ。場所もこちらは氷見市、向こうは黒部市で」
「そりゃ両方は無理だね」
 
「軽音部のメンバーは全員女子だし、ほとんどの子が歌えると思うから、女声合唱に参加できるだろうけど、コーラス部のメンバーは楽器どうだろう?」
 
「何かの楽器ができる子は多いと思うよ。ただ、軽音部でやるような楽器が使えるかどうかは何とも未知数だね」
 
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それで、両方の部のメンバー合同の打ち合わせを持った。
 
軽音部の部員は全員、あまり練習が辛くない範囲であれば、女声合唱に参加してもいいと言ってくれた。
 
コーラス部の部員も軽音には興味を持ってくれた。
 
「じゃ毎日、1時間コーラスの練習して、1時間楽器の練習しようよ」
という提案で了承された。
 
「でも楽器はみんなどうなんだろう?」
「それぞれできる楽器、やったことのある楽器を言ってみよう」と青葉。
「多分リコーダーとかハーモニカとか木琴とかはみんなできるだろうから、それ以外ね」
 
「取り敢えず、私はピアノとフルート、龍笛、法螺貝」と青葉。
「法螺貝?」
「面白いもの吹けるね」
「いや、出羽山の修験者の人から直伝で」
「すごっ」
 
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「私はピアノ、ギター」と日香理。
「ピアノ、エレクトーン、クラリネット」と美津穂。
「ギター、トランペット」と呉羽。
 
「おお、トランペットが吹けるって心強い」
「でも小学校の吹奏楽部以来吹いてないから、出るかどうか自信無い」
「やってたのなら短期間で思い出すよ」
 
「ピアノ、ヴァイオリン」と美滝(杉本さん)。
「エレクトーン、ギター、ウィンドシンセ」と立花(沢田さん)。
 
「おお、ウィンドシンセが吹けるならサックス吹けるよね?」
「それは吹いたことない」
「いや、音の出し方はほとんど同じハズ」
「うん、練習すればすぐ行けるよ」
 
「ピアノ、ホルン」と公子(竹下さん)。
「わあ、ホルン吹きさんがいた!」
「ホルンが吹けるなら、大抵の金管楽器は行けるよね?」
「いや、吹いたこと無い」
「だって、ホルンは金管楽器の中ではいちばん難しい部類だもん」
 
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「ピアノ、三味線、尺八」と康江(椿原)さん。
「民謡系?」
「うん。うちのお母ちゃん、民謡の先生だから」
「へー!」
「尺八吹けるなら、サックス行けそう」
「触ったことないよう」
 
「ギターくらい」と都美子(菅野)さん。
「ピアノ、ギター。小学校の吹奏楽部ではオーボエ吹いてたけど、もう4年やってないから音が出るかどうか」と真琴(川瀬)さん。
「オーボエできるなら、木管はどれでも行ける」
 
「私はエレクトーン、ギターかな。クラリネットも一時期吹いてたけど、もう忘れてそう」と敏子(茶山)部長。
 

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軽音部のメンバーも自己申告する。
 
「ギター、ベース」と空帆。
「ほとんど何もできなくて申し訳無い。ファイフくらい」と須美。
「ギター、トランペット」と1年生の治美。
「ピアノ、トロンボーン」と1年生の真梨奈。
「ピアノ、ギター」と2年生の郁代部長。
「エレクトーン、ギター」と2年生の朝美。
「ギター、ベース、クラリネット」と2年生の美香。
 
全員の自己申告を書き留めていた青葉が空帆と一緒に行けそうな楽器を当てはめてみた。
 
「トランペット、治美さん、ヒロミさん、公子さん」
「サックス、立花さん、敏子さん、真琴さん、青葉さん」
「トロンボーン、真梨奈さん、朝美さん、都美子さん、日香理さん、美滝さん」
「クラリネット、美津穂さん」
「ピアノ、康江さん」
「ギター、空帆さん、郁代さん」
「ベース、美香さん」
「ドラムス、須美さん」
 
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「こんな感じでどうでしょ?」
 
「私ドラムスなんて触るどころか間近で見たことさえない」と須美。
「いや、須美ちゃん、何もしたことないというから、どれ覚えても同じ」と青葉。
「うむむ、確かに」
 
「木管の経験者をサックスに割り当ててみた。それから、管楽器未経験の人をトロンボーンに入れてみた。トロンボーンって割と楽に音が出るんですよ。音程はスライドで調整できるから、トランペットみたいに吹き方で音程を変えるという技までマスターしなくても何とかなるから」
と空帆は説明する。
 
「フルートも入れたいんだけど、吹けるというのが青葉だけで、サックス担当にしてるから、サックスは最低4人はいないとまずいから諦めるかなと」
 
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「楽器は学校にあるんだっけ?」
「うん。サックス、トランペット、トロンボーンはある。ドラムスもある。だから、みなさん申し訳無いけど、管楽器担当の人はマウスピースとリードだけ自己負担で買ってもらえませんか?1万円程度だと思うのだけど」
 
「うむむ。お母ちゃんに泣きついてみよう」
 
そういう訳で、軽音部とコーラス部が合体して各々の秋の大会を目指すことになったのであった。
 

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