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■春風(7)
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「青葉、女の子水着は小学2年の時から着てたと言ってたよね?」
「うんまあ」
「本当はその頃から、女湯にも入ってたんじゃないの?」
「えーっと・・・」
「青葉って真顔で嘘つくからなあ」
「ああ、結構騙されるよね」
「あはは」
「でも女の子の身体になってから9ヶ月? やはり色々変わった?」
「変わった。やはり今まで自分の周囲で滞ってたものが全部スムーズに流れるようになった感じ」
「ああ、青葉って物凄くパワーアップした感じだよね」
「私あまり良く分からないんだけど、オーラがかなり大きくなってない?今までがビジネスジェットくらいだったのが、ジャンボジェットになった感じ」
「うん、確かにそのくらい強くなった気はする」
「へー」
「サイコキネシスで物を動かしたりできるようになる日も遠くないんじゃない?」
「そんな。私は超能力者じゃないよぉ」
「青葉って超能力者かと思ってた」
「ただの霊能者だよ」
「そこいら辺の違いって、よく分からん」
「霊能者と霊感体質ってのも違うよね?」
「違う。霊感体質の人は霊的なものに対する感覚が発達してるけど、霊的な操作はできない」
「それって、霊感体質の人が訓練したら、霊能者になれるもの?」
「まず無理だと思う。傾向が違いすぎるんだよ。霊感体質は看護婦さん、霊能者はお医者さんみたいなものだから、必要な素質も修めるべき修行も違いすぎる」
「青葉って小さい頃から修行してたんだ?」
「物心付く前から山野を走り回って滝行したりしてたよ」
「すごー」
「でも霊能者とか超能力者って偽物も多いよね」
「うん。超能力者はほぼ100%偽物。本物は凄まじくレア。霊能者も多分9割は偽物だよ。本人もそれに気付いてない。しばしばタヌキやキツネの類いに騙されてんだよ」
「青葉は本物なの?」
「さあ、偽物かもよ」
と言って青葉は微笑む。
「でも私、青葉に貧血直してもらったしなあ」
「私も生理不順直してもらった」
「取り敢えず、青葉は本物かも、って線でいいと思う」
「うん、そのくらいで考えてもらってた方がいい」
と言って青葉は楽しそうな顔をした。
「でも呉羽、実際問題として、どのくらい女の子になってるんだろう?」
「去勢は済んでるんだっけ?」
「え。えっと」
青葉や日香理たちは本人の口から既に睾丸は無いことを聞いているが、ここでは敢えてそれについては触れない。
「もしかしておちんちんも無かったりして?」
「ど、どうかな?」
「まあ、呉羽は女の子の身体なのかも、って線でいいと思う」
「そうだね〜」
「呉羽、次にみんなでお風呂に入りに来る時までには、偽装で構わないから、みんなにお股を公開できるようにしておこう」
「うん、ちょっと頑張ろうかな・・・って、またお風呂に来るの?」
「当然」
「次はいつ頃にする?」
「高校に入ってみんな忙しそうだし、次は夏かなあ」
「ヒロミ、タックの仕方って分かるよね?」
と青葉は訊いた。
「うん。修学旅行の時に実際にしてもらって感激したから勉強した」
「練習した?」
「したけど、なかなかうまく行かなくて」
「頑張って練習してれば、できるようになるよ。私もちゃんとできるようになるのに数ヶ月掛かったよ」
「わあ」
「まあ、おちんちんが既に無いのなら、今更タックを覚える必要もないけどね」
「ああ、その付近は謎だね〜」
そんな話をしていた時に携帯の着信音が鳴る。
「ん?」
という反応があるが、青葉は浴槽の縁に置いていた携帯を取って
「おはようございます、冬子さん」
と返事した。
「おはよう。って、別に『こんばんは』でいいよ」と冬子は笑って答える。時刻は18時半である。
「何かお仕事ですか?」と青葉。
「察しがいいね。青葉、高校在学中は仕事をセーブすることにしたというのに申し訳無いんだけど、近々東京にちょっと出てこられない?」
「いつくらいがいいですか?」
「本当はそちらは土日がいいんだろうけど、今こちらは土日は例の作業で埋まってしまっているのよ」
「ああ。内容によっては平日に行ってもいいですけど」
「秘密のプロジェクトなんで、ここでは詳しいことは言えないけど、どうしても青葉の力が必要なんだ。報酬は最低でも300万払う」
「その報酬がとっても怖いんですけど」と青葉は苦笑いする。
「危険な作業ですか?」
「危険性は無いよ。ヒーリング系。可能だったら、今月中に来られない?」
「今週末はどうしても外せない用事で奈良に行くんですよ。来週だったらいいです」
「じゃ、申し訳ないけど、23日か25日に来られない?」
「冬子さん、今仙台の準備もしてますよね?」
「うん。連日それに向けての練習してる」
「じゃ、遅くなるほど、そちらが大変だろうから、23日に行きましょうか?」
「助かる。御免ね」
「いえいえ」
電話を切ると質問される。
「青葉って、いつもお風呂の中まで携帯持ってくるの?」
それには日香理が代わって答えた。
「電話が掛かってくるって分かってたから、持ち込んだんだよね」
「うん」
と青葉は笑顔で答える。
「青葉は特に親しい人からの電話なら、掛かってくる1時間くらい前から分かるみたい」
と日香理が解説する。
「へー!!」
「すごっ」
「やはり、青葉って超能力者なのでは?」
「今の、もしかしてローズ+リリーのケイさん? 青葉、『冬子さん』とか言ってたし、この時間帯に『おはようございます』とか芸能関係の人だよね?」
とミーハーな明日香が訊く。
「ごめーん。クライアントに関する質問には答えられません」
「あ、そうか。守備義務ってやつだっけ?」
「守秘義務だよお」
「でもそれじゃ、青葉、来週東京に行くんだ?」
「うん。重要な案件みたいだし、行ってくる。学校多分火水と休むことになりそう」
「あ、じゃお土産は東京ばな奈で」
「了解〜」
「あ、私たちにもお土産ちょうだいよ」
と奈々美。
「じゃ、取りに来てくれれば」
「よし。各校代表1名、25日にT高校まで取りに行けばいいね」
「各校代表って誰だろう?」
「C高校は奈々美、M高校は燿子、J高校は水輝、L高校は美希絵、K高校は小浪、S高校は比呂奈、R高校は由希菜、H高校は望都世、D高校は莉緒奈。T高校まで来るのは大変だろうから、K高校・R高校・D高校・L高校は中川駅で、他の高校は高岡駅で渡そう」
と明日香。
「それが青葉鑑賞会の連絡網か」
「そそ」
「まあ、メーリングリスト作ってるからね」と由希菜。
「へー。それで明日香がT高校代表で幹事なんだ?」
「えっと幹事は奈々美かな」と明日香。
「いや、明日香でよい」と奈々美。
「まあそのあたりは適当に話し合ってもらって」
「まあでもK高校は代表といっても私ひとりだけだけどね」と小浪。
「誰か勧誘して参加させるとか?」
「ああ、しばらくは呉羽をおもちゃにできそうだから楽しいよ」
お風呂から上がって服を着る時は、合宿の時と同様にみんな呉羽に背中を向けてあげたので、呉羽もその間に急いで下着を身につけていた。
お風呂の後、いったんまたひとつの部屋に全員入っておしゃべりしていたら夕食の案内があったので、ぞろぞろと食堂になっている大部屋に行く。中2の時は毎月のように来ていたので、その度に食事もいろいろなバリエーションを組んでもらっていたのだが、今回は久しぶりだったので、旅館の典型的な料理になっている。しかし料理は好評だった。
「わあ、美味しそう」
「その鰤カマ、かなり食べ甲斐がありそう」
「鰤も春先にはいったん味が落ちるけど、今くらいからまた味が戻ってくるよね」
「ああ、寒鰤の反動がちょっとあるよね」
「だけどお風呂の後で食事という順序は重要だよね」
「そそ。先に食事だったら、食べた後の裸体を晒すことになるから、安心して食べられないもん」
とても美味しそうな料理なので携帯で写真を撮っている子も何人もいた。
翌日も学校があるので、あまり遅くならない内に寝ようということになる。部屋割は事前に明日香と奈々美が話し合って決めていたので、その組合せで各自の部屋に入る。
青葉は呉羽、美由紀・日香理と同室になっていた。
「まあ自然な組合せだね、これ」
「うん。ヒロミは青葉とセットにした方が処理しやすい。青葉がいると私と日香理はくっついてくる」
「ヒロミもこのメンツなら、合宿の時より寝やすいのでは?」
「うん。わりとリラックスできるかな」
「でも合宿ではこれと同じ程度の広さの部屋に8人寝たね」
「結構布団が重なり合ってた」
「隣に寝てた空帆が寝相悪くて、上に乗られてた」
「じゃ、寝よう」
「おやすみー」
と言って灯りを消し、各自布団に入る。
「ヒロミ、眠れなかったらオナニーするといいよ。振動を感じても黙ってるから」
「しないよぉ」
「ヒロミってオナニーする時は、ふつうにアレ握ってやるの?」
「えっと・・・・指で押さえてグリグリかな」
「ああ、女の子式なんだね」
「う、うん」
「じゃ、それしていいよ」
「しないよぉ」
「じゃ、おやすみー」
「おやすみー」
4月20日土曜日。青葉は朝一番のサンダーバードに乗り、大阪に移動した。新大阪駅で菊枝の車に拾ってもらい、更に瞬高さんも拾って3人で高野山の奥、★★院まで行く。
既に弟子筆頭の瞬嶺や、同じく高弟の瞬法、瞬海なども来ていた。
「お前たち5人だけで師匠を送ったってずるい。俺にも声掛けてくれたら良かったのに」
と瞬法は言うが、
「瞬法ちゃん、足が悪いから、冬山の決死行は無理だと思ったんだよ」
と瞬嶺。
「いや、あれは本当に命懸けで雪山突破した感じでした」
と★★院次席の瞬醒が言う(首席は瞬嶽であった。一周忌に継承予定)。
「若くて活きの良いそこのふたりを連れてったから、何とかなったね」
と言って青葉と菊枝の方に手を向ける。
「ああ、僕たち年寄りだけでは途中でギブアップしてたよ」
と瞬高。
「このふたり、女の子だけど、パワーが凄いから」
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