広告:まりあ†ほりっく 第4巻 [DVD]
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■春望(12)

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12時すぎに彪志と一緒に部屋に入る。「一応」布団はふたつ敷いてある。
 
何だか彪志がそわそわしている。こういう感じの彪志を見るのは、青葉は好きだ。
 
「ね、青葉、体調はどう?」と聞く彪志の顔は明らかにそのことを考えている。
 
「えっとね。こないだ修学旅行に行く前に、温泉に入っていいか確認してもらうのに検診受けたんだけど、その診断で温泉・プールはもうOK。セックスは1ヶ月後くらいなら、ふつうの体位でする分には、そう続けて何度もしたりしなければOKと言われた」
 
「1ヶ月後か・・・・まだ、その時から1ヶ月経ってないんだっけ?」
「検診受けたのは14日だよ。半月前」
「じゃ、今日はまだだめか・・・・」
 
「ふふふ。今夜はどちらにする? 素股で行く? お口でするのが好き?」
「な、悩むな・・・・」
 
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翌日は朝から彪志に大船渡まで送ってもらう。むろん車の中でもデートという感じである。慶子の家の駐車場(一応慶子の車も含めて最大4台駐められる)に駐め、彪志にはそこで休んでいてもらって、慶子の車で依頼主の所に行く。その日は、大船渡・陸前高田で、健康相談系のものを合計7件こなした。
 
震災の影響でPTSDを起こして、健康不調からなかなか回復できない人が多く、青葉は主として対話により心の中の「詰まっている部分」を少しずつ解放するとともに、内臓系やリンパ系にヒーリングをすることで身体に出ている影響を緩和していった。
 
こういう人たちには継続的な治療が必要な人も多く、今回巡回したクライアントの内4人は以前からの相談者で、内2人は青葉がこちらに来られなかった間も電話でいろいろ話を聞いてあげていたのである。
 
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また初めて健康相談をする人たちには病院で血液検査を受けてもらうようにしていた。その検査結果表を見て、血糖値やコレステロール値に異常がある人たちには食事の指導などもした。けっこう自分では気づいていないが血糖値の高い人というのは、いるし、血糖値改善方法については世の中にあまりにも誤った方法が流布しているので、正しい方法を教えるのがまた大変なのである。青葉が話していて相手の反応から、この人は改善する気無いなと思った人もいた。本人に改善の意志が無いケースはどうにもならない。
 
また、今回の相談者の中で1人、内臓付近の気の乱れ方と、血液検査の数値から、内臓疾患の疑いを持った人がいたので大きな病院で検査してもらうよう言った。
 
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「何かもう、お医者さんと組んで巡回したい気分だったよ」と青葉。
 
夕方、慶子の家に戻り、彪志と一緒に3人で夕食を食べながら青葉は言った。
 
「でも、祈祷師と医者が並んで診察してる図は怪しすぎる」と彪志。
「そうなんだよねー。だからこちらとしては医者に行けと言うしかないけど、行かないだろうなあ」
「そこには根本的な医療不信があるんだけどね」
「まあ、藪医者も多いからね」
 

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その日は大船渡市内の旅館に彪志とふたりで泊まった。慶子は、うちに泊まればいいのに。別にHしてもいいよ、とは言っていたが、さすがに遠慮した。
 
「彪志、今日はとっても気持ちいいことしてあげる」
と青葉は悪戯っぽい目で言った。
 
「え?」という彪志は何かを期待するかのような顔。
 
「裸になって、お布団で寝て」
「うん」
そそくさと服を脱ぎ、布団の中に入る。青葉も裸になったが、すぐには布団に入らず、横でお姉さん座りをする。
 
「ふふふ。ヒーリングしてあげるね」
「え?」
「彪志、かなり無理してバイトしてるでしょ」
「あ。。。えっと」
「疲れが凄く溜まってるよ。今晩ずっと癒やしてあげる」
「えっとセックスは?」
「セックスより気持ちいいよ」
「俺、セックスしたい」
「たまには、こんな夜もいいものよ」
と言って青葉は布団の中に入り、彪志を抱きしめた。青葉のオーラが彪志を包み込む。
 
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「なんか気持ちいい・・・・」
「眠っていいよ」
「俺実は今日の日中ずっと寝てた」
「ほんとに疲れてるもん。彪志に倒れられたら私困るから」
「なんか眠くなってきた」
「おやすみ」
と言って青葉は彪志にキスした。彪志は深い眠りの中に落ち込んでいった。
 

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翌日は朝慶子に迎えに来てもらい、彪志の車と一緒に2台で気仙沼まで行く。気仙沼までは青葉は彪志の車に乗っていたのだが、そこから慶子の車に移り、彪志には休んでもらっていて、青葉は慶子と一緒に南三陸町に入る。
 
2件が健康相談、1件は家相に関する相談だった。お昼過ぎに気仙沼に移動し、昼食を彪志と一緒に3人で食べた後、気仙沼市内でまた4件の相談を受けた。3件目の相談が終わった時、時計を見ると15時半だったので、これはひょっとして次のがさっと片付くと一ノ関18時の新幹線に間に合ったりして・・・・と淡い期待をしたのだが、相談者の家の玄関に立った時点で、潔く諦めた。
 
「何じゃ〜、この家は。よく人が住んでる!」と思うような化物屋敷だ。霊感のそう強くない慶子でさえ、小さく「わっ」と叫び、青葉と顔を見合わせた。
 
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ふたりとも霊鎧をしっかりまとってから中に入る。居間の中で青葉は慶子に『座っても良い場所』を目で示した。変なところに座ると、幽霊をお持ち帰りする羽目になる。
 
「えっと健康か何かのご相談でしょうか?」と青葉。
「健康もですが、ここ数年何だか運気が悪い感じで」
 
そりゃ、こんな家に住んでいたら運気も落ちるだろう。
 
「こちらは借家ですか?」
「いえ。5年前に退職金で買いました」
「運気が落ちたのは、ここに来てからでは?」
「そうなんです。やはり家相が悪いのでしょうか? 東京に住んでる妹がここを買う時、随分反対したのですが、妹はずっと賃貸暮らしなので嫉妬でもされたかと思って、構わず買ってしまったのですが」
 
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「妹さんが正解ですね。買ってしまったものは今更どうしようもないですが、もし命が惜しいと思うようでしたら、引っ越しをお勧めします。ここにいたらまずいですよ」
「そんなに家相が悪いのでしょうか?」
「家相以前の問題ですね」
「はあ」
 
それからの2時間は、この頑固な老人を説得するための2時間であった。奥さんの方は「やっぱり」と言い、青葉が「出ません?」と聞くと「もう慣れっこになりました」と言う。誰もいないはずの部屋で人の声がしたり、階段を上り下りする音、玄関のベルが鳴ったので開けても誰もいない、そんなのが日常茶飯事らしい。どうも、この奥さんは視覚的なものでは見ないものの、音を聞いたり雰囲気を感じたりはするタイプのようである。
 
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奥さん、青葉、慶子の3人で御主人を説得した結果、17時半くらいになって、ようやく「ここ売って引っ越そうか」と言い出した。
 
「しかし震災の影響で今はなかなか不動産が売れないみたいで」
「逆に買うのは安く買えますよ。この家土地を担保に銀行からお金を借りる手もありますし」
と言うと、「ああ確かに」と言う。
 
株をやっているらしいが、5年前にここに越してきた時は3000万円あった金融資産が半分以下の1200万になってしまったなどと言う。
 
「今は株は持っている分には下がって行きやすいのですが、変動が割とあるから、売買益は出しやすいですよ。この家にいる間はあまり取引なさらない方が良いですが、新しい家に引っ越したら、少し積極的に売り買いなさいませんか?」
と勧めてみると「そうだな。それもいいな」と本人も少しやる気を出したようであった。
 
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この家を結局18時すぎに辞した。そのままではとても帰られないので、近くの神社に寄らせてもらい、青葉自身、慶子、そして車を霊的に洗浄させてもらった。それから、彪志に連絡を取り落ち合うと、青葉は慶子に別れを告げ、彪志の車で一ノ関に向かう。いったん彪志の家に寄り、御両親を乗せて駅まで行く。4人で駅前のラーメン屋さんに入って取り敢えず一緒にラーメンを食べながら、あれこれ話した。
 

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「彪志、何か凄く元気になってる」とお母さん。
「ああ、この2日間、俺ひたすら寝てたから」と彪志。
「私がずっとお仕事だったので、申し訳無かったです」と青葉。
「昨日は佐竹さんちでひたすら寝て、ゆうべは旅館でHもせずにひたすら寝て、今日も車の中でひたすら寝てた」と彪志。
 
「それだけ寝たらね」とお母さん。
「彪志さん、かなり疲れが溜まっていたようでした」と青葉。
「それを昨夜は青葉にヒーリングしてもらったんだ」
「ああ、なるほど、それでそんなに元気になったんだ」
 
「夜間のバイトだから、昼間少し仮眠したりしても、どうしても睡眠不足が続いていくんですよね」と青葉は言う。
「彪志、そこやめて他のバイト探す?」と心配してお母さんが言うが
「今時楽なバイトなんて無いから。でも学業に影響が出ると思ったら辞めるよ」
と彪志は言う。
 
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「うん。勉強するのが本業だしね。なによりも健康を損ねたら、病院代で1〜2年分のバイト代はすぐ吹っ飛ぶよ」
「無理はしないよ」
 
「何なら私の助手のバイトでもする?」などと青葉が言うと
「いや、青葉の助手なんて、どう考えてもピザの配達より重労働だ」
と彪志は言った。
「ちょっと、そこの幽霊片付けといてとか、結界張っといてとか、呪いの人形処分しといてとか、頼まれそうだし。たぶん身が持たない」
 
「うーん。読まれてるな」
と言って青葉は笑った。
 

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駅の改札口で御両親と別れ、彪志とふたりで21:15の新幹線に乗る。仙台まであれこれおしゃべりしながら、また近くに他の客がいないのをいいことに少しHなことなども、こっそりやりながら30分ほどの旅を楽しんだ。
 
仙台駅で青葉が降りて高速バスに乗り換える。彪志はそのまま東京まで乗る。彪志は今朝青葉が「ちょっとだけね」と言ってしてくれたフェラの快感を思い起こしながら、またすやすやと眠りの世界に入って行った。
 
青葉は駅前のコンビニで低血糖に陥った時の用心にパンを買うと高速バスに乗り、ヒーリングの波動で自分を包み込んで眠りに就いた。ああ、今日は私も疲れたから夢の中で彪志と会えないや、と思った。
 

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今回はやはり相談件数が多く、30分単位のハードスケジュールで動いたこともあり、疲れがたまって熟睡していたようであった。ふだんなら朝4時に目が覚めるのに目が覚めたのは朝5時。バスは越中境PAに到着。乗降は取り扱わないが開放休憩ポイントである。
 
頭をすっきりさせようと車を降りてトイレに行く。ゆっくりと用を達し手洗所で手を洗おうとした時、隣の蛇口のところにいた自分と同じくらいの年齢の女の子がビクッとする様子。へ?と思って見ると、何だか見た記憶のある顔だが、すぐには思い出せない。その子は明らかに逃げようとした。青葉は反射的に彼女の首に抱きつくように飛びついた。
 
「わっ」と彼女が小さい声をあげるが男声だ!
「ね、もしかして呉羽〜?」青葉。
「見逃して〜」と小さい声。
「可愛いよ!」
呉羽は花柄の刺繍があるピンクのトレーナーに、白いプリーツスカートを穿いていた。髪はウィッグだろう。女学生らしいセミロングの髪にしている。
 
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ふたりで外に出て話す。青葉は少し低血糖ぎみになっていたので缶コーヒーを2本買って、1本呉羽にあげた。開けて飲みながら尋ねる。
 
「そちらの出発時刻は?」
「5:10」
「じゃ、こちらと同じだね」
「みんなには内緒にしててくれない?」
「いいよ。でもみんな言ってるよ、呉羽君、絶対普段から女装してんじゃないかって」
「そ、そう?」
「カムアウトしちゃいなよ。女の子たちともっと親しくできるよ」
「うーん。。。。」
 
「どこ行ってきたの?」
「東京。親戚の法事に出たんだけど、ひとりで行ったのをいいことに往復の行程ではこの格好で。実は女名前で予約したら女性専用車になってて。法事では学生服を着ていたけど、向こうでこの格好で池袋の街を少し歩いた。川上は?」
 
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「私は岩手。仙台からのバス。女性専用車じゃ、学生服では乗れないね。しかしこんな所で遭遇するなんて凄い偶然。でも見た感じが自然。ふつうに女子中学生に見えるけど、よく女装してるの?」
「自分の部屋の中では時々してるけど、女装で外を出歩いたのは今度の旅行が初めて」
「こないだの水着女装でなんかブレイクしちゃった?」
「したかも」
「家族にはカムアウトしてんの?」
「ううん」と首を振る仕草が女の子っぽい。
この子、たぶん小さい頃から女装してたな、と青葉は思った。
 
「じゃ、服とか隠すの大変でしょ?」
「うん。洗濯とかもけっこう苦労してる」
「何なら洗うのとか服を置いとくのとか協力してもいいよ」
「わあ・・・頼むかも」
などと言って、両手で少し口を押さえる仕草もまた女の子っぽい。こういう仕草、私にもできんぞ!と青葉は思った。
 
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「そろそろ、パスに戻らないといけないね。また話そう」
「うん」
「あ、そうそうチアガールの件、紡希に呉羽君がやりたがってるって言ったら、ぜひ頼むって言ってたから明日からって、もう今日か、一緒にチア練習しようね」
「えー!?」
 
青葉は呉羽に手を振って、バスに戻ったが、とっても楽しい気分になった。
 
 
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