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■春望(7)

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「うちの会社も資本参加している所なんだけど、民放FM主催のアナウンススクールがあってね、そこが来年4月に金沢教室を開講するんだけど、興味ある?」
「はい。それは是非受講したいです」
 
「それまでの間は、どこか他の地区の教室に出る? そこからだと、どちらが近いかなあ。大阪と名古屋に今教室があるんだけど」
「大阪と名古屋だと、時間的には大差無いですね。大阪の方が人が多くていいかな」
「じゃ、月に1回くらいでも、大阪の基礎講座に行ってみる?」
「はい。ぜひお願いします」
 
「じゃ、書類送らせるから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 
そういうことで、青葉は取り敢えず来年の3月まで、大阪のアナウンススクールに月1回出席することになったのである。なお、スクールは平日に講義が行われるので、水曜日の夜20時からの講座を受けることにした。その教室が新大阪駅の近くにあるので、中学の授業が終わってからサンダーバードに飛び乗ると、ちょうどレッスンの始まる少し前に新大阪に到着できるのである。
 
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帰りは大阪から富山までの夜行バスを使い、木曜日の朝戻ってくる方式にした。
 

春奈たちを富山空港で見送り、希美と希美のお母さんと3人で空港の玄関を出る。その時、青葉は何かを感じて立ち止まった。
 
何気なく右を見たら、女子高生の集団がいた。何だか可愛い制服だ。ミッション系だろうか? 見たことのない制服なので、東京方面からでも飛行機で来た生徒たちなのかも知れない。何だかにぎやかにおしゃべりに興じている。
 
ふと左を見ると、背広を着たビジネスマンという感じの集団がいた。会議か何かででも来たのだろうか。少し緊張感のある空気が漂っている。ちょっと近寄り難い雰囲気だ。
 
あれ?これどこかで見たような構図だと思ったが、小学4年の時に瞑想してて見たヴィジョンだということに気づく。
 
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左手に男子の同級生たち、右手に女子の同級生たちがいて、あの時、青葉は男子の同級生たちに連れられて左手の方に行ってしまった。
 
少しぼーっとしていたら、希美が声を掛ける。
「青葉さん、どうしました?」
「あ、ごめん、ごめん」
「さ、帰りましょう」
といって希美は青葉の手を取り、右手の方にある駐車場へと向かった。
 
女子高生の集団の横を通る時、青葉はつい微笑んだ。
 

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帰宅後、青葉は久しぶりにのんびりとした夜を過ごしていた。
 
「久しぶりだね、こんなのんびりした夕飯は」
と晩御飯を食べながら母が言う。
「そうだね〜。一時期5人で食べてた夕飯もお母ちゃんと2人だし、この後私外出もしないし」
 
「ヒーリングも一段落?」
「うん。和実と春奈さんは、このあと週2回だから、そんなに負荷にならないし、ちー姉に毎日2時間ヒーリングする以外は、自分自身のヒーリングだけでいいから。朝走るのを復活させようかなあ、私」
「まだだめ」
「はーい」と青葉も素直に返事する。
 
「あんた自分では100%と言ってるけど、まだ実際には半分くらいでしょ?」
「お母ちゃんには嘘つけないなあ」
「だてに1年半一緒に暮らしてないからね」
「でも実際日常生活にはもう全然問題無いよ。体育の授業にも出てるし」
「でもまだ無理はできないでしょ?」
「うん」
「でも新しい身体には、かなり慣れてきたみたいね」
「慣れた。最初はとにかく嬉しいけど何だか自分の身体じゃないみたいで」
 
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「でも、たかが棒が1本付いてるか付いてないかの違いだから、あまり気にすることないよ。付いてたって付いてなくたって、青葉の身体なんだから。身体にとらわれすぎずに、自分の生きたいように生きていけばいい。女の子の身体になったから、これからは女として生きなきゃってのもあまり深刻に考えなくてもいい。自分の心の中に男の子としての自分があったら、それも認めてあげればいいのよ。青葉、きっと生まれながらの女の子だったら結構『漢らしい』とか言われてるタイプという気もするよ」
 
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「何か似たようなことを昔、お母さんに言われた気がした」
 
青葉は朋子のことを「お母ちゃん」、礼子のことを「お母さん」と呼ぶ。
 
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「小学2年生の時かな。私、幼稚園までは完璧に女の子の服着てたけど、小学校に入る時、お母さんから男の子の服を着なさいって言われたのよね。抵抗してパンティだけは女の子のを穿いていていいことにしてもらったし、髪の毛も切らずに長いままでいいことにしてもらったけど」
「うん」
「でも小学2年生の時にちょっとした事件があって。私女の子の服に戻しちゃったのよね。その頃、お母さん、もうキッチンドリンカーになってたから、酔っ払ったままだったけど・・・・・」
 

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青葉はその時のことを思い出していた。
 
「あんた、その格好で学校に行くの?」
と言って完璧に酔っ払っている礼子は、いきなりスカートをめくって、青葉のあそこをつかんだ。
「こんなもの付いてるけどスカート穿くんだ?」
「穿きたいもん」と青葉。
「そんなの付いてるけど、私は女の子だもん」
 
「あぁあ。変態息子にも困ったもんだ。まあいいや。ねぇ、青葉、酒が切れそうなんだよ。安いのでいいから日本酒1升買ってきてよ」
「子供には売ってくれないんだよ」
「めんどくさい世の中だなあ」
「そうだね」
「男とか女とかも面倒くさいね。性別なんて無くてもいいのにね」
「それもいいかもね」
 
「何かもうどうでもいい気がしてさ。金無いし、酒無いし、息子は自分は女だと言うし。何か死んでもいい気がしてきた。ね、青葉、一緒に死なない?」
「気分転換に少し遊んできたら? お小遣いあげるよ」
と言って、青葉は財布から5000円札を出して渡した。
 
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「おお、サンキュー。パチンコ行ってこよう。でも、青葉、あまり深刻に悩むなよ。世の中わりと、どうでもいいじゃん。青葉も女の子したい時は女の子の服を着ればいいし、男の子したい気分の時はそれも無理せず男の子の服を着てもいいんじゃない? ちんちんも要らないと思ったら切っちゃえばいいし、欲しいと思ったらまたくっつけちゃえばいいし。自分をあまり規定しないほうがいい」
 
「お母さんもあまり深刻に悩まない方がいいよ。晩御飯、お母さんの分まで作っておくから、あまり遅くならないうちに帰ってきて食べてね」
「おお、助かる、助かる。良い娘を持った」
 
礼子は出かけるのに顔を洗い、楽しそうにお化粧を始めた。
礼子は機嫌の良い時だけ、青葉のことを「娘」と呼んでくれていた。
 
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「いろいろ聞いてるとさ、青葉のお母さんって、飲んだくれたりお小遣いをせびったりしながらも、結構青葉のことを理解してくれてたんじゃない?」
「そうかも・・・・」
 
「世間体とか気にする親よりはマシだったかもよ?」
「ああ、それは思うことある!」
 

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9月19日(水)から21日(金)までは、修学旅行であった。青葉たちの中学は広島・神戸・大阪・(京都)というコースであった。
 
宿泊の部屋割りを決めるのに、小坂先生は青葉の名前のところで一瞬考えて、そして微笑んで、素直に美由紀・日香理・世梨奈との同室を決めた。修学旅行が1学期にあっていたら、ここで少し悩んでいたろう。青葉が2年の時から度々クラスメイトの女子などと一緒に温泉に行っていて女湯に入っているというのは聞いてはいたが、学校の教師の立場としては、青葉の身体がまだ男の子であった場合、部屋割りや入浴で考えざるを得ない。しかし青葉はもう女の子の身体になってしまったので、何も考慮する必要が無いのである。
 
部屋割りの作業は、男子の方はあまり考える必要が無いのだが、女子の方は相性の悪い子を必ず別の部屋にするのを第一原則にして、その上でできるだけ仲の良い子を同室にしてあげる、というので決めて行った。パズルのようなものだが、こういう時に誰とでも仲良くしてしまう明日香のような子は便利である。
 
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青葉もわりと誰とでも仲が良いのだが、美由紀・日香理といっしょにいる時間が長いし、また美由紀と日香理がどちらも友人の少ない子なので、そのふたりがいちばん仲良くしている青葉を入れて最近その3人とよく話している感のある世梨奈を加えた。つまり今回の修学旅行の部屋割りは、青葉より美由紀と日香理に考慮しての部屋割りになったのであった。
 

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19日は早朝高岡駅に集合し、6:26のサンダーバード(臨時増設車両)で新大阪まで行って新幹線に乗り継ぎ広島に昼前に入る。大きなお好み焼き屋さんで少し早めの食事をしてから原爆ドームに行った。
 
「ここ、お昼前に来てたら、お昼が食べられなかったね」
と繊細なタイプの子が言っている。青葉たちは平和資料館の中を見学していた。
 
「私ダメ、先に出る」と言って走って外に出て行ってしまった子もいた。
 
「青葉は平気なの?こういうのに敏感すぎて針が振り切れたりしないかってちょっと心配したけど」と日香理。
「今、閉じてる」と青葉は答えた。
「あ、そうか。開いたらたまらないよね」
「ここではとても心を開けられないよ。感性が敏感な子はみんな自己防衛的に閉じてると思うな。美由紀も今閉じてるじゃん」
「その開けたり閉じたりとかよく分からないけど少し身構えた」と美由紀。
「さっきだめーとか言って走って出て行った子がいたけど」
「敏感なのに、閉じ方を知らない子もいるからね」
「ああ」
 
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「私、長崎で生まれたから子供の頃、長崎の平和資料館に連れて行かれて、トラウマになった」と星衣良が言った。
「小さい子供に見せるべきもんじゃないと思う」と青葉。
「でも、そのショックのお陰で、私は閉じ方を覚えた気がするよ。あの後数日悪夢にうなされたもん」と星衣良。
「星衣良も霊感強いもんね」と青葉。
 
資料館を出てから原爆ドームをバックにして何人か記念写真を撮っている。
 
「ねえ、こういう場所で写真撮ったら心霊写真にならないの?」と美由紀。「青葉、私今開いてるんだけど、何も感じないんだけど」と星衣良。
「うん。ここはきれいだよ。とってもクリーンで変な霊とかいないよ。ここで写真撮っても、心霊写真にはならないだろうね」
と青葉が言う。
 
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「どういうこと? こんなにたくさん死んでるのに」と美由紀が訊く。
「つまりさ。原爆の熱が猛烈すぎて、霊ごと蒸発しちゃったんじゃない?」
「ひぇー!!」
「原爆って、そこまで猛烈なのね」と話を聞いていた日香理が顔をしかめて言った。
 

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広島を出たあと新幹線で神戸に移動する。阪神淡路大震災の資料を集めた「人と防災未来センター」に行く。
 
「今回のコースはつくづく東北大震災の側面復習だな」と美由紀。
「そうだね。広島で原爆、神戸で地震とは」
「青葉、大丈夫?」
「うん。自分のPTSDは早々に治療したから平気」
「青葉でもPTSDになったんだ!?」
 
「あれ、ならない方がおかしい。ただ私の場合、さっさと治療してしまったからPTSDじゃなくて、その前段階のASDになるかもね」
「ASD?」
「命に関わるようなショッキングな体験してできた心の傷で様々な障害が出る状態で、1ヶ月以内で治ってしまうのをASD, それ以降続くのをPTSDと言うんだよ。私の場合、心の傷の深さ自体はPTSDクラスだと思うけど、2週間くらいで特急で治しちゃったから」
 
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「やはり青葉は化け物だ」と美由紀。
「いや、PTSDだと思う。この場合、治ったまでの時間は関係無い」と日香理。
 
「震災の一週間後には、行方不明になってる家族を探してって依頼が飛び込み始めたからね。自分が落ち込んでなんかいられなかったもん」
 
「青葉は他人のために行動している時が強いね。震災でもそうやって他の被災者のためにいろいろ頑張ったから結果的に自分の心も治しちゃったんじゃないの?この夏の性転換手術だって、自分がたいへんな状態で、同時期に受けた他の人の傷を治すヒーリングやってたんだから」と日香理。
 
「そうだね・・・・他人に役に立っているということが自分の存在意義だったのかも知れないね、私って。子供の頃から」
と言って青葉は少し遠い目をした。
 
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「私に霊的な力が無かったら、どうなってたんだろう」
と青葉がつぶやくように言った。
 
「それでも私は青葉と友だちになってたよ」と美由紀が言う。
「私も。たぶん、青葉とは色々気があってたと思う」と日香理も言った。青葉は微笑んだ。
 

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その日は神戸近郊の温泉の旅館に宿泊した。
 
「青葉、もう温泉に入ってもいいの?」と日香理。
「うん。先週末に病院でチェックしてもらって、温泉・プールもOKと言ってもらった」と青葉。
「よかったね」
「セックスもOK?」と美由紀。
「あ、えっと・・・セックスは1ヶ月後くらいにはOKだろうと言われた」
「おお、楽しみだね」
「いや、彼とは2月に高校の内定通知を正式にもらってからしようと約束してるから」
「そんなに我慢できるかなあ」
「青葉って、けっこう節操無いもんね」
 
「まあ、とにかく一緒にお風呂入りに行こう」と世梨奈。
 
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