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■春望(3)

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その晩も彪志は青葉と裸で添い寝をした。青葉は夜間ヒーリングの波動を出しっぱなしにして寝ていると彪志に説明した。朝までにたっぷり手術の傷の治療が進むという仕組みである。青葉は彪志に「少しパワー貸してね」といい、添い寝している彪志を「電源」の一部として使わせてもらっているようだった。
 
「でもさ、青葉。ヒーリングするにはエネルギーを使うわけだろ? 寝ている間にずっとヒーリングしてたら、傷は治せるかも知れないけど、疲れないの?」
と、朝起きてから彪志は訊いた。
 
「パソコンを充電しながら使っているようなものよ。睡眠で身体を休めているから大丈夫。夜間大量にエネルギー消費するから夕食たくさん食べてるしね。ここのところ、4時くらいまで自分をオートで治して、朝4時に目が覚めたら、隣の部屋で寝てる、ちー姉のヒーリングを6時くらいまでしてる」
 
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「なるほど、それで4時にエネルギー補給するために、おにぎりを持ち込んでいるわけね」
「そうそう。隣の部屋くらいならダイレクトにそばでやるのと使うパワーは大差ないんだよ。特に私とちー姉って、元々のリンクが深いから」
 
「へー」
と言ってから彪志は
「俺よりもリンク深い?」
と訊く。
 
青葉はニコっと笑い「彪志の波動を女の子の波動に変えちゃったら、ちー姉より深いリンクになるよ」と言う。
 
「いや、それは遠慮しとく」と彪志は慌てて答えた。
 
「でも私の『家族』の中では彪志が一番長い付き合いだからね、それ忘れないでね」
と青葉が真顔で言う。
 
「うん」と答えて彪志は青葉にキスした。
 

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3日目は桃香が「せっかく彪志君来てるのに、あんたらデートくらいしなさい」
と言って午前中、車でふたりを海王丸パークまで送ってくれた。昨日港祭りで来た場所である。港に留め置かれている帆船・海王丸を見学し、遊覧船に乗った。
 
「昨日来た時も思ったけど、大きな橋だね」
と彪志が新湊大橋を見上げて言う。
 
「帆船の前に、あの橋に目が行くよね」
「あれ?昨日は気づかなかったけど、まだ開通してないのかな?」
「そうそう。もうすぐ開通予定だけどね。彪志が次に来た時はもう通れるようになってるよ」
 
海王丸は巨大な人口港である富山新港に留め置かれていて、新湊大橋はその富山新港によって東西に分離されている両地区を結ぶ長さ3600mの巨大な橋である(嵐太郎が言っていた「大きな橋」は伏木港側の伏木万葉大橋-長さ600m-のこと。ただし嵐太郎がこの地に公演に来た時はまだ建設中であった)
 
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遊覧船は海王丸の前から出発して、富山新港と伏木港を結ぶ内川をのんびりと走って行く。この内川に架かる橋が観光スポットになっており、屋根付きで、まるで建物のような東橋、ステンドグラスで彩られた神楽橋などは、青葉もここに来たのは初めてだったので「わあ!」などと声をあげていた。
 
お昼前に桃香が千里を連れて海王丸パークまで迎えに来た。パーク内でお昼を食べてからまた青葉を(コーラス部の練習のある)学校まで送っていき、それから自宅に戻った。
 
「彪志君、青葉とセックスしたか?」
と自宅に戻ってから、桃香が唐突に訊く。
「あ、いえ、まださすがにあそこはまだ使えないということで」と彪志。
「みたいだね。私も千里にやらせろと言っているのだが、まだ無理だと言う」
 
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「ふつうは半年くらい無理だよ。でもたぶん連日の青葉のヒーリングのお陰で2ヶ月もすれば、無理しなければ使えるレベルになるかも」と千里。
 
「一応、青葉とは青葉が高校に合格してからしよう、なんて言ってたんですが青葉がもう高校は内々定になっちゃったので、一応推薦入試の内定者発表がある2月かな、なんて言ってるんですけどね」
 
「じゃ、千里も2月くらいになったらHしよう」と桃香。
「しない、しない」と千里は笑って答える。でも笑うのも少し辛そうだ。お腹に力が入らないのだろう。
 
「桃香さんと千里さんの関係も面白いですよね。桃香さんの話だけ聞いてると日常的に性的な関係を持っているみたいに思えちゃうけど、実際は僕と青葉より頻度低いですよね?」
「そうなのだよ。私のヴァギナは結局千里のペニスを5回しか受け入れなかった。内4回は寝ている千里を襲って、本人の意識が無い内に入れてしまったのだが」
「レイプですか!?」と彪志。
 
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「そうそう。目を覚ました後は、ちゃんとしてくれたけどね」
「だって入ってしまってたら仕方ない」と千里。
「私の男性能力が弱くなってたから最後まではできなかったけど」
「結局ちゃんとやったのは1回だけだね」と桃香。
「うん。でも、桃香にやられたの、それぞれ記念の日だったしね」
 
「千里さん、優しい」と彪志。
「彪志君も凄く青葉に優しいね」と千里に言われて彪志はドキッとする。
 
「でも、私たちは普段は裸で抱き合って寝ているだけだよ。フェラとかシックスナインはしてたけど」と桃香。
「でも同性愛カップルには、わりとそういう人たち多くありません? 手をつないで寝るだけとか」
「ああ。そういう話は聞くけど、そんな淡い関係って私は経験が無いな。恋人になったら、やりまくるもんだと思ってる」
「おやおや」
「彪志君も、どんどん青葉をやっちゃえ」
「あ、はい」
 
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千里が笑っている。彪志は結局自分は性転換前の青葉と何回セックスしたんだっけ?と考えていた。
 

 
「結局9回だよね。7月にサンライズの中、8月にここと冬子さんの家、3月に一ノ関の実家、大船渡の旅館、4月に俺のアパートで2回、5月の誕生日にここで、そして6月に一ノ関」
と、青葉が戻って来てから、彪志は青葉の部屋で数の確認した。
 
「へー、私が出てる間にそんなこと考えてたんだ?」
「いや、そういうことばかり考えていた訳でもないけど」
 
「今回はしなくて良かったの?」と青葉。
「青葉体力無さそうだもん。素股でやったとしても、青葉体力使うだろ?」
「うん」
「だから今回はパス」
「ありがとう。せめて、手でしてあげようか」
「あ、えっと」
 
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と彪志が返事をちゃんとせずにいる間に青葉は彪志のファスナーを下げ、彪志の棒を取り出すと左手で掴んで、動かし始めた。
「あ・・・・」
 
彪志は「待って」と言い、ズボンとトランクスを脱いだ。
「この方がいい」
「OK」
 
彪志はされるがままにしている。彪志は1分もしないうちに逝ってしまった。青葉が右手で出てきた物を受け止める。ティッシュでていねいに拭いてあげる。
 
「へへ。男の子が逝くところを見てみたい気もしたのよね」
「あ、そうか。青葉自分のでも経験無いんだもんね」
「私女の子だもん。おちんちんなんて無いから経験できないよ」
「そうだね」
 
「青葉の見せてよ」
「うん」
青葉はスカートとパンティを脱いで、そこを露出する。すっきりしたお股に縦の筋がある。
 
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「わあ・・・・凄いな」と言いながら彪志が触るが、青葉も
「ふふ」と笑って、触られるままにしている。、
 
「俺みたいな形が、こんな形になっちゃう、ってのも凄いね」
「魔法みたいだよね。彪志もこんな形になりたい?」
「別になりたくないけど」
「彪志も性転換したくなったら、してもいいよ。私たちレズになっちゃうけど」
「したくない、したくない」
 
「でも彪志、性転換手術はしてもいいけど、戸籍は男の子のままにしてくれると助かるな。私は戸籍女の子にしたいから、彪志まで戸籍の性別変更すると、私たち結婚できなくなっちゃう」
「いや、だから性転換するつもりなんて無いから」
「何なら女装してみる?」
「勘弁して」
「ふふ」
 
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「でも青葉は小さい頃から、こういう形になりたかったんだもんね。やっとなれたね。嬉しい?」
「うん。とっても。でもこないだから、女の子の身体になれたってのが夢で目が覚めたら男の子だった、なんて夢を3回も見たよ」
「それはまだ青葉の心が、新しい身体を完全に受け入れてないんだよ」
「鞠村先生からもそれ言われた」
「でもすぐに慣れると思うよ」
 
「うん。でも小さい頃、よく夢見てたなあ」
「どんな?」
 
「お母さんに連れられて病院に行くの。お医者さんに診察されて、おちんちんをいじりまくられるの。それで、そこに寝てって言われて、横になったら、『今から切るね』って言われて、お医者さんがメスでさっと切って。切られたおちんちんをお医者さんが手に持ってて『これ、どうしますか?』ってお母さんに訊くとお母さんが『捨ててください』って言うの」
「ふんふん」
 
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「あとはお母さんとお姉ちゃんと一緒に温泉に行って服脱いだら、お母さんが『あれ?あんた、おちんちん付けてるの?』『女湯に入る時は外さなきゃ』
『外しかた知らないの?』って言われて、お母さんが私のおちんちんを少しひねってから、最後ぐいって引っ張ったら抜けちゃって、何も無いお股になって、それでお姉ちゃんから『私とお揃いだね』と言ってもらって」
「ほほお」
 
「お母さんがお裁縫して私にスカート作ってくれて、それを穿かされるんだけど、あらスカート穿くのに、これ邪魔ねっていって、裁縫用の裁ちばさみで、私のおちんちんをチョキンって切っちゃうの。女の子パンティ穿かされてスッキリしたシルエット見て嬉しくて」
「なるほど」
 
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「幼稚園の入園式で、みんな列を作ってるの。制服の赤いのと青いのと好きな方を選んで良いんだけど、赤を選んだ子はその場でパンツ下げられて、おちんちんをつかまれて、大きなハサミでチョキンと切られちゃうの。切られたおちんちんがテーブルの上に並んでて、青い服を選んだ子には、その並んでるおちんちんを手に取ってぐいっとお股に押しつけられて、くっつけられるの。その内、私の番になって、もちろん赤い制服を選んで私もおちんちん掴まれてチョキンって切ってもらったのよね。それで取られたおちんちん、どんな子にくっつけられるのかなって、様子を見てるの」
 
「へー。でも男の子になりたい女の子と、女の子になりたい男の子で、生殖器を交換できたら便利だろうけどね」
「できたらいいけど、なかなか組織が適合しないよね」
「うん、そうだろうね」
 
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「でも彪志はそんな感じの夢見たことない?」
「無いよ」
と彪志は困ったような顔で答えた。
 
「でも、青葉は幼稚園の制服、どちら着てたの?」
「もちろん女の子のだよ。私、女の子だもん」
「それって、最初から?」
 
「私、女の子の服しか着てなかったからね。幼稚園の入試にも女の子の服着て行ったみたい。入園願書の性別は男だったらしいし、制服も男の子用で注文したらしいけど、間違いだろうと思われたらしくて女の子用渡されたんで、お母さんも『ま、いっか』と言って、女の子の制服着て通ったらしい。自分では記憶無いけど、そのあたりは後で聞いた話」
 
「お母さん、けっこう青葉のことに理解あったんじゃない?」
「当時はそうかもね。下着とかも女の子用を買ってくれてたみたいだし。上着とかスカートとかはお姉ちゃんからのお下がりだったみたいだけど、さすがにパンツとかは個別に買ってたみたいだから」
 
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帰宅した朋子が彪志と青葉を乗せて高岡駅まで行き、彪志は18:47の「はくたか」
で千葉に帰還した。
 
「越後湯沢まで付いていかなくても良かったの?」と母から訊かれたが、
「付いて行きたいと言ったけど、体力無いのに無理するなって言われた」
と青葉は答えた。
 
「今回はしなかったの?」
「私単に横になってるだけで彼に勝手にしてもらおうと思ってたんだけどね、寝てるだけでもセックスって体力使うはずだから、やめとこうって言われた」
「大事にしてもらってるね」
「うん。手術の後で2回夢の中でも会ったんだけど、その時もしなかった。夢の中でしても、それなりに体力使うはずって言われて」
 
「青葉、正直に言いなさい。今体調何%?」
「25%くらいかな」
「やはりね。あんたまるでほぼ全快したみたいな顔してるんだもん。来週の東京行きは仕方ないけど、それ以外は今月はとにかく身体をやすめてなさい」
「うん。そうする」
 
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大会前にはもう1度、市の夏祭りでもステージに出させてもらって『立山の春』
と『ヘビーローテーション』を演奏した。むろんどちらも葛葉のソロをフィーチャーした歌唱である。
 
そしてコーラス部の全国大会は8月18日、東京で開かれた。他の部員は18日の朝から出かけたのだが、青葉は日帰りの体力が無いということで、前日17日の15時半の特急で東京に出て(19時半着)、都内のビジネスホテルに1泊した。(移動中の車内で春奈・和実・千里にリモートヒーリングをした)
 
バスルームでシャワーを浴びて、ホテルのガウンを着てベッドに横たわり、ラジコでFM放送を聴きながらダイレーションをする。
 
寂しいな。誰かに電話しようかな・・・・
 
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彪志はバイトに出てるだろうしなあ・・・と思う。和実はこの時間もう寝てるだろうし、桃香と千里も既に寝室に入っているだろう。冬子は明日からキャンペーンで全国飛び回ると言っていたから今日は忙しいだろう。日香理・椿妃は明日こちらに来るため早めに寝てるだろう。美由紀は必死で進研ゼミをやっているに違いない。早紀は映画を見に行くようなことを言っていた。咲良は夏休みの集中講座に行くと言っていた。今の時間はまだ講義中かも。
 
電話を掛ける相手がいない!
 
「寝よう」とつぶやくと、青葉は留め置き用のダイレーターを入れてから自己ヒーリングの波動で自分を包み、ベッドの上で、すやすやと眠ってしまった。
 

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