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■春望(8)
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4人で一緒に大浴場に行く。途中で何人かの男女クラスメイトたちと一緒になり、わいわい騒ぎながら浴場のある最上階へのエレベータを昇っていった。
「川上〜、俺たちと一緒に男湯に来ないか〜?」と奥村君から言われる。
「私が男湯に入ってたら、係の人が青くなって飛んでくるよ」
と青葉は笑いながら答える。
「でも、戸籍上は男なんだから、男湯に入る権利あるんじゃない?」と呉羽君。
「そんな権利は放棄する」
「しかしここ、男湯と女湯の表示が分かりにくいな」
「一応色分けで青と赤になってるから間違えにくいとは思うけど、色弱の人には辛いね」
「間違っちゃった振りして女湯に入ってみようかな」と呉羽君。
「入れば?通報してあげるから」と美由紀。
「いや、冗談、冗談」
「男湯が『天の湯』で、女湯が『花の湯』というのも、少し悩むね」
「一応、右端に men と lady という表記はあるから、外人さんは大丈夫かも知れないけど、逆に日本人のお年寄りには分からなかったりして」
「だけどmenとladyって不釣り合いだ。menならwomenだろうし、ladyならgentlemanだろうし。そもそも片方は複数で片方が単数ってのは。。。」
「まあ、日本人の英語力なんて、そんなものでしょ」
「おーい、川上、こっち来いよ〜」とまだ言ってる奥村君たちに笑顔で手を振って、青葉は美由紀たちと一緒に『花の湯』の暖簾をくぐった。
みんなとおしゃべりしながら服を脱いでいく。
「青葉、胸大きくなった?」
としばらく、青葉と温泉に行ってなかった女子からチェックが入る。
「そうかなあ。去年の秋からずっとCカップだけど」と青葉が言うが
「待て待て」と言って奈々美が後ろから青葉のバストを両手でつかむ。青葉はいきなりされたので、小さく「きゃっ」と叫ぶ。
「これはDカップあると認定するぞ」と奈々美。
「青葉は来週からDカップのブラを付けてくるように」
「えー? そんなに大きくなくてもいいのに」
「小さいブラを無理に付けてると良くないよ」と星衣良。
「青葉、夢の中に出てくる時はFカップじゃん。きっと、あそこまでは成長を続けるよ」と美津穂も言っている。
「ひゃー」
青葉がショーツを脱ぐ時にも、かなり周囲から視線が集まる。青葉はこういう状況でみんなに見られるのが実はけっこう好きである。
「ジャジャジャジャーン、本邦初公開、私の新しいお股です」
と青葉は言うが
「何か以前から変わったっけ?」と美津穂。
「前お風呂に一緒に入った時も、こんな感じじゃなかった?」と別の女子。「私、去年の段階で既に手術済みなんだと思い込んでた」とまた別の女子。
「青葉は昔から女の子だったよね」と美由紀。
「うんうん。20年くらい前からずっと女の子だよ」と日香理。
「私、まだ15歳なんだけど・・・・」
浴室にみんなで移動する。
「だけど、いったんフルヌードを晒した上で、タオルで前を隠すのって無意味な気もするな」と青葉。
「別に見せたければ、隠さなくてもいいんじゃない?」と美由紀。
「いや、みんな隠してると私も隠したくなる」
おしゃべりしながら身体を洗い、湯船につかる。
最初はみんなおとなしくおしゃべりをしていたのだが、ひとりの子が隣の子を羽交い締めにして胸を揉んだのが発端になって、たちまち、おっぱいの触りっこが湯船の中に拡散した。青葉も、周囲にいた5〜6人から触られ、触られた分は、みな触り返した。凄い騒ぎになってしまったが、ちょうどそこに学級委員の紡希(つむぎ)が入ってくる。
「ちょっとみんな何やってんの?」と紡希が言うと、近くにいた明日香が
「見ての通り、おっぱいの触りっこ。紡希も参加しよう」
と言って、早速紡希の胸を触っている。
紡希は大きく息を吸い込むと「静かに!」と大きな声で叫んだ。
ぴたりと騒ぎが止まる。
「他のお客さんもいるんだし迷惑でしょ? 修学旅行だし、楽しむのはいいけど、節度を持とう」
と紡希が言うと、みんな「了解〜!」とか「はーい」と答えて、ようやくおっぱいの触りっこは終わった。
あらためて紡希は身体を洗って湯船に入ってくる。
「お疲れ様〜。学級委員も大変ね」と世梨奈。
「学級委員関係無い。注意すべき所は注意する」
「いや、それができるから紡希は、みんなに信頼されてるんだよ」
と騒ぎをかなり煽っていた明日香が言う。
「まあ、私は自分のできることをしていくだけ」
などと言う紡希の顔がりりしい。紡希って、あまり親しい友人はいないみたいだけど孤高の美しさがあるよなと青葉は思った。
ちょっと見とれていたら
「何か顔に付いてる?」と紡希から訊かれる。
「ううん。ちょっと見とれていただけ」と青葉。
「青葉ってレズっ気あったっけ?」と明日香。
「無い無い」
と青葉は笑ったが、ふと紡希の持っている波動に何か違和感を感じた。あれ?これ何だったっけ?と考えるが、おしゃべりは別の方角に進んでいき、青葉はその違和感のことは忘れてしまった。
「でも湯船の中はタオル禁止だから、全員無防備だね」
浴室を出て、脱衣場で服を着ながら世梨奈が言う。
「都会の学校だと、水着付けて入浴する学校もあるらしいよ」と明日香。「裸の方が気持ちいいのに」と青葉。
「それに水着じゃ身体洗えないじゃん」
「いや、青葉みたいに胸が大きければ、むしろ見せたいかも知れないけど、胸が小さいと、やはり気にするんじゃない?」
「うーん。水着を着ても胸のサイズは分かる気がするぞ。ってか、水着なら男の子でも女湯に連れて来れる気がする」
「・・・・それ、凄く実験してみたい」
こういう悪戯好きの明日香が、数人の男子と話し合って『生け贄』は呉羽君と決まった。
本人がヘッドホンで音楽を聴いてたところを数人の男子で飛びかかって手足を押さえつける。
「痛い目に遭いたくなかったら、おとなしくしているように」
と言われて、本人も
「何なんだよ、いったい?」
と笑っている。そこで、ひとりの男子が部屋に置かれている安全カミソリを使って、呉羽君の足の毛を剃ってしまった。
「何?女装でもさせられるの?」
と呉羽君はまだ笑っている。他の子にしたら、いじめになりそうなことも、呉羽君の場合は本人が面白がる性格だ。そのため『生け贄』には最適とみんなに思われてしまった。
「もうちょっとやるぞ」
と言われて、呉羽君はパンツを下げられ、あの付近の毛も全部剃られてしまう。
「ちょっと、ちょっと、何させるつもりさ?」
と言いながらもまだ本人は笑っている。
「川上〜、やってくれ」
という声が掛かったので、青葉は彼らの部屋に入る。見学者の女子数名も入る。
「ねぇ、呉羽君、おちんちんを切っちゃうのと、接着剤で留めるのと、どちらが好き? どちらでもしてあげるけど」
「その二択なの〜? 男やめたくないから、切らないで欲しいな」
「OK」
というと、青葉は呉羽君のタマを体内に押し込み、陰茎をひっぱって後ろに仮留めすると、それを陰嚢の皮膚で包み込んでいく。青葉に触られて呉羽君の陰茎は立ってしまったが、青葉も厳密にやるつもりは無いので構わず包んでは瞬間接着剤でくっつけ、テープで仮押さえしていく。
慣れた作業なので、5分ほどでタックが完成した。仮留めのテープを外す。
「すげー。あっという間に女みたいな股間になった」
「私も作業してるところ初めて見た」
と男女双方から声が上がる。当の呉羽君自身も
「すごい。魔法みたいだ」
などと感心している。
「ということで、これを着てね」
と言って、ワンピース型の水着を取り出した。旅館の売店で、この計画に荷担した数名でお金を出し合い買ってきたものである。
「水着女装か! ちょっと楽しいかも」
などと言って、呉羽君は嬉しそうに?その女の子水着を身につけた。元々身長が160cmと小柄なので、用意した水着を無理なく着ることができた。
「眉毛少しカットしていい?」
「あ、いいよ」
青葉が自分の眉毛カットはさみを使って、呉羽君の眉を細く整えていく。
「こんなんでいいかな」
「で、僕この後、どうすればいいの?」
「私たちと一緒に、女湯にご案内〜」
「えー!?」
「さっき女湯に入りたいなんて言ってたじゃん」
「男子に女子水着を着せて女湯に入れても逮捕されないか?という実験なのよ」
「ちょっと待て。逮捕されたら、僕どうなんの?」
「内申書の点が悪くなるかもね」
「君、もしくは君の性器が逮捕されあるいは殺されても当局は一切関知しない」
と明日香。
もうクラス別の入浴時間は終わって、旅館の大浴場には人が少なくなっている。
「ちょっとさすがにまずいよー」
とびびっている呉羽君を、男女数人で連行して大浴場まで行く。女湯の入口からは、女子でガードして脱衣場へ。ガード役の女子たちは先に自分たちが脱いでから、呉羽君の浴衣を脱がせる。
「大丈夫だよ。私たちで周りをガードしてるから」
「何かあったら一緒に逃げてくれる?」
「放置して逃げて通報してあげる」
「勘弁して〜」
そのまま浴室に誘導し、身体を洗った上で浴槽につかった。水着を着ていることで、他の客から少し視線を受けたが、今時そんな子もけっこういるので、特に問題にはされていない感じである。
「ミッション成功。今どんな気分?」と明日香。
「逃げ出したい」と小声で呉羽君。
「ふだん女装しないの?」
「何度かしたことはあるけど、さすがに女湯は初体験」
「私たちのおっぱいとか見て、あそこ大きくならない?」
「なんか押さえ付けられてるから、大きくなれないみたい。それとできるだけ誰の身体にも視線が行かないように気を付けてる」
「今夜は女の子同士だから、見てもいいのに」
「遠慮しとく。自分が分からなくなりそうだもん」
浴槽内で10分ほどおしゃべりしてから、上がることにする。
脱衣場で女子水着を脱がせる。胸は無いが、お股はタックしているので、大きな問題は無い。
「中学生だと、まだ全然胸の無い子もいるからね」
「そうなの?」
身体を拭いた上で旅館の浴衣を着る。そしてみんなでガードして、部屋まで帰還した。
「ミッションコンプリート。その水着は記念にあげるね」
「水着女装にハマっちゃったらどうしよう」
「逮捕されない程度にね」
「きちんとお股の処理してればプールまではバレないかも知れないけど、お風呂は逮捕確率高いよ」
「女の子の声を出す練習はした方が良いね。声かけられた時に男の声で答えたりしたら即通報されるから」
「あ、このお股、どうすればいいの?」
「この剥がし液で、自分で外して」
「何かさっきからトイレ行きたくて」
「それ、そのままおしっこできるよ。トイレに座って試してごらん」
「ほんと?」
「おしっこ、後ろに飛ぶから気をつけてね」
「体験してみよう」
「それ、ずっとしてても、そのまま生活できるけど、あまり何日もしてたら睾丸の機能障害起きて子供作れなくなるから気をつけてね」
「今夜中に外す! 明日お風呂入れないし」
「女湯に入ればいいじゃん」
「そんな何度もしたら、さすがにバレる」
「もし、ハマっちゃって、おちんちん切りたくなったら病院紹介してあげるね」
「それ、3年後の自分が怖い」
呉羽君はそんな感じで、その夜の体験がまんざらでもない様子だった。そういう訳で、男の子に女の子水着を着せて、女湯に入れるかというその日の危険な実験は成功したのであった。
「呉羽君、ふだんからあれ女装してるよね」と奈々美。
実験に参加した女子で取り敢えず奈々美たちの部屋に集まり、感想など話す。
「あ、絶対してると思った」星衣良。
「機会あるごとに女装を唆してたら1-2年後には立派な女子高生になってたりして」
と青葉。
「おお、唆してみたーい」と世梨奈。
「でも、青葉、呉羽君のお股を処理する時、平気で触ってたね」と明日香。「あ、そうそう。私もモロに見ちゃったけど」と星衣良。
「平気じゃ無いけど、触らなきゃできないし」と青葉。
「男の子のに触ったことあったの?」と世梨奈。
「うん。彼氏のには触ってるから」と青葉。
「わあ、凄い」と世梨奈。
「いや、ちょっと待て。青葉は自分のにも触ってたんじゃない?」と奈々美。「あ、忘れてた。青葉にも付いてたんだっけ?」と星衣良。
「さあ。私、昔のこと忘れちゃったし」と青葉。
「青葉にはあんなの付いてなかったと思うよ」と明日香が言い、青葉はニコリと微笑んだ。
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