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■春回(12)
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夏生にフリースローが与えられるが当然2本とも決めて0-2とこちらが先行した。
更にこちらのスローインでゲームは再開される。相手はゾーン気味に守ったが、夏生はミドルシュートで更に得点をゲットした。
その後は交互に攻守する展開となるが、向こうは大黒柱の子が居ないと、県予選ベスト8レベルの学校という感じだった。シュートの精度があまり良くなく、リバウンドも8割くらいこちらのボールになった。
また、向こうは1Qの間はゾーンを使っていたがゾーンはスリーには無力である。夏生・美奈子・彩がどんどんスリーを入れるとゾーンを諦めてマンツーマンにした。しかし誰が誰をマークするのかが混乱しているようである。マーカーが固まるまで5分くらいかかった。相手キャプテンは最初河世に付いていたが、美奈子のマーカーは美奈子の急速反転に付いてこられない。美奈子はしばしばフリーになり、ミドルシュートやスリーを放り込んだ。それでキャプテンが美奈子をマークしたが、今度は河世のシュートを停めきれない。
どうもこのチームはマンツーマンではあまり守備がうまくないようで、こちらは結構中に入ってシュートできた。それで1Qでは12-26とこちらが大きくリードする。
第2Qでは優をPGに使う。すると向こうは優のシュートに無警戒であった。
え?ポイントガードがシュートするの?と混乱している。しかし優はランニングシュートもミドルシュートも上手い。むろん優は自分が警戒されている時は梨央や彩を使う。それで2Qもどんどん点を奪っていき、14-27とこのQもこちらがリードする。
この試合は結局合計46-109と大差となり、H南高校は初戦を制することができた。
着替えて会場を出た後、お昼にはカツゲンを飲んで味噌ラーメンを食べた。
「北海道と言えば味噌ラーメンですよね」
という声があるが、千里さんが説明する。
「味噌ラーメンは札幌。旭川は醤油ラーメン、函館は塩ラーメンなんだよ」
「あ、町によって違うのか」
「更に室蘭にはカレーラーメンがある」
「よし、4日掛けて北海道4大ラーメンを制覇しよう」
「取り敢えず明日のお昼は食べることが確定したな」
「どうせなら6日目まで残ろう」
「最後の2日間は何食べるの?」
「釧路の極細醤油ラーメン、ラーメンとは少し違って焼きそばに近いけど稚内のチャーメンとか」
「じゃそれで」
午後からは朱雀林業第2体育館に移動して練習をした。この日はスノーフェアリーズの人たちが練習試合をしてくれた。晃や河世は防御の仕方について、指導までしてもらった。
この日の夕方は、各種お魚のフライを食べた。フライにしたのはニシン、ホッケ、サケ、スケソウダラ、牡蛎といったものである。牡蛎は季節外れだが、季節をずらして育てている牡蛎があるのらしい。
7月26日(水)、H南高校は2回戦に臨む。試合開始前の練習を見てみんな沈黙する。
「何このチーム?」
「プロ?」
「君たちと同じ女子高生だよ」
「嘘ー!!」
「こんなチームに勝てるわけがない」
この子たちこのチームに勝つことを一瞬でも考えたんだなと春貴は思った。やはり今日の対戦相手のことは何も言わずに正解だったなとも思う。しかし北信越大会でG学館と対戦したからこそ、このチームの強さの程度が分かるのだろう。分かるようになっただけ、強くなったとも言える。やはりこの子たちは北信越大会でG学館に負けたことで成長したんだ、きっと今日も成長するだろう。
「まあ君たちはこないだG学館と対戦したけど、G学館が100戦して1回勝てるか微妙というのがこのチームだね」
「じゃ私たち100万試合くらいしたら1回くらい勝てるかも知れませんね」
「そうだね。100万回やったらひょっとしたら勝てるかもね」
「先生、私が選手に選ばれた意味が分かりました」
と高田晃が言った。
「まあ今日の目標はこのチームから1点取ることだな」
「頑張ります」
「うん。頑張ってきて」
それで選手達が出て行く。選手達は無茶苦茶気合が入っていた。その気合に向こうは「おっ?」と思ったようである。いきなり選手を総入れ替えして4〜8番の選手が出てきた。多分レギュラースターターだろう。
向こうは容赦無くこちらを潰しに来た。向こうのセンターの外人選手が切り込んで来てシュートを撃つ。が、晃が美しくブロックした。このブロックで相手は更に本気になった。激しい攻撃が続くが、晃が河世がブロックして相手のシュートをかなり停める。昨日スノーフェアリーズの人に指導してもらったのが効いている。加えて晃は勘が良い。それで向こうはダブルクラッチでタイミングをずらしたり、スリーまで撃ってきた。女王の戦い方ではない。マジだ。
ペネトレイトして近くから撃ってもいいのにわざわざ遠くから撃つのはこのチームがあなどり難しと見たのだろう。そして相手の攻撃が慎重になった。低得点ぎみに推移する。そして相手が2桁背番号の選手を3人入れて来た時、夏生は仕掛けた。
夏生からのロングパスを、相手が無警戒だった優が中継し、たくみにマークを外した美奈子が受けて、8mくらいの遠距離からスリーを撃った。これが成功。この試合で初めてH南高校側に得点がはいった。この組み合わせ以外には点を取る方法は無かったかもという絶妙のリレーがうまく行った。点を取られたことで、やはりこのチームは油断すると危ないと向こうは思ったようである。
向こうのベンチではこんなことを言っていた。
「このチーム1回戦では3桁得点してますよ」
「北信越大会の準優勝校ですよ」
2桁番号の選手をあまり使わなくなる。激しい攻めが来る。しかし1Q終了間際には晃がランニングシュートに行くかと見せてノールックで美奈子にパスし今度は美奈子は7mほどの所からスリーを入れて、1Qは17-6となった。
2Qは更に点数が少なくなったが、今度は彩がスリーを入れてり15-3, 3Qは14-3となる。そして第4Qの後半、美奈子がスリーを撃つかと思わせて相手がブロックに来た所を美奈子は空中で優へのパスに切り替えた。PGにボールを渡したということはそこから誰かにパスするのだろう・・・と思わせて優はそのままミドルシュートを撃つ。これが入って、H南はスリー以外でも得点することに成功した。“シュートするポイントガード”優あってのプレイである。これが夏生とかではシュートも警戒されていた。優だから穫れた得点だった。それで4Qは18-5となった。合計は64-17 で決着した。
そして試合後向こうの選手はこちらと握手してくれた。コートを出てロビーに出てから向こうの選手が訊いた。
「そちらの21番さん(晃)まだ1年生?」
「いえ、2年生ですけど、まだ初心者なんですよ。だから実はまだシュートが下手で」
「バレーか何かしてたのかな?ブロックが凄く上手かった。あなたが上達してきたら結構脅威だよ」
と向こうの選手は言っていた。
「皆さんほんとに女子高生なんですか」
と美奈子が訊いた。春貴が焦る。
「ごめんなさい、変な質問して」
と謝る。
向こうの選手達は困惑していたが、監督さんが言った。
「ぼくは女子高生じゃないけど、この子たちは間違い無く女子高生だよ」
「そうだね。男子じゃないね」
「ちんちん付いてないし」
「ちんちん付いてる子がいたら、バレない内に切り落としておくように」
「私がハサミで切ってあげるよ」
「ちんちん検査する」
とか言って、お互いにお股を触っていた!ちんちんの見付かった子は居なかったようである!
監督が言った。
「うちは今では強豪とか3強とか言われてるけど、最初バスケット部を創設した時はバスケットやったことのある子が全然居なかった。それを興味持ってくれた子を集めてルールを勉強して、チェストパスの出し方とかドリブルの仕方とか、ほんとに基礎の基礎から練習し始めたんだよ」
「そこから頂点まで来たんですね」
「今年こそ頂点に立ちたいね」
「頑張ってください」
「ありがとう。君たちもね」
「はい!」
向こうのキャプテンが再度美奈子と握手してくれた。
教頭が言った。
「優勝候補の一軍から17点ももぎ取ったのは凄い。完封されてもおかしくないチームだった」
春貴もそう思った。
相手の一軍を引き出したのは、みんなの気合である。普通ならこんな下位の試合では控え組しか出て来ないだろう。
その日のお昼は教頭のおごりの牛串と旭川風の醤油ラーメンを食べた。それから体育館に行き、練習したが、みんな練習に熱が入っていた。晃は百合にゴール下で守る時のフェイントの掛け方を指導していた。
千里さんが“撞き出しのトラベリング”を説明してくれた。
「ビナちゃん、私にパスちょうだい」
「はい」
千里さんは空中でボールを受け取り、両足で同時着地した。
「両足同時着地は基本ね。その先で、どちらの足も軸足にできるから」
「そうですよね。同時着地でなかったら先に着いたほうの足しか軸足にできない」
「それでこれが“撞き出しのトラベリング”」
とやってみせる。
「え?今のどこがトラベリングなんですか」
と、美奈子以外、みんな分からない。
「そしてこれがフェアなドリブル」
とやってみせる。
「え〜!?違いが分からない」
千里さんはもう一度やってみせたが、やはりみんな違いが分からない。
「いい?ドリブルというのはボールを撞きながら歩いたり走ったりするプレイだから、実際にボールを撞くのより前に足がステップしていたら、ドリブルもしてないのに歩いたことになってトラベリングになるんだよ、みんなボールが床につくのと、足が動くのとどちらが先かよく見てて」
と言って、千里さんはまたトラベリングになる例とフェアなプレイをやってみせた。今度は多くの子が分かったが、分からない子もいた。
「意味は分かったけど難しい!」
「うん。このトラベリングは難しいよ。しばしば気付かない審判も居るけど、ちゃんと取る人も居るから気を付けないと」
と千里さんも言う。
「ボールが床につくまでは絶対に足を動かしてはいけないというのを徹底しないとね」
それでこの日はみんな正しいドリブルの始め方を練習した。
「ビナ、フェイントが上手い!」
「そりゃボールを撞いた側に踏み出すとは限らない」
「バスケットって騙し合いなんですね」
春貴は教頭に、滞在費用は自分が出すから、勉強のため、部員たちに大会を最後まで見せてやりたいと頼んだ。教頭も「こういうハイレベルな試合は見るだけでも勉強になるよね」と了承してくれた。更に追加寄付までしてくれた!
夏生と松夜のお母さんは先に帰すことも考えたが残ってくれるということだったので、引き続き付き添いをお願いした。
「だって私たちは炊事と洗濯の係だから」
「いつ戻ってくるの?ってうるさいけどね」と松夜のお母さん。
「愛されてるんですね」
「単にお腹空かせてるだけでしょ」
「うちの家ではカップ麺のオンパレードになってる気がする」と夏生のお母さんは言っていた。
また、日和は東京でドラマの制作があるということだったので、飛行機で迎えにきてもらいそちらに行かせた。代わりに弘絵と1年生たちが交替で炊事・洗濯係に回ってくれた。
日和を東京に送っていった機体が戻ってきたら、それに乗って教頭が能登空港に飛ぶ。
取り敢えずこの日の夜は残念会と称して(鶏の)ザンギを食べた。その後のメニューはこんな感じである。
27日 イカ飯+塩ラーメン/根室エスカロップ風
28日 ジャガバター+カレーラーメン/海鮮丼
29日 イカ丸焼き+極細醤油ラーメン/北海道牛の焼肉
30日 ホタテ串+チャーメン/(帰郷)
3日目にはピック&ロールを教えてもらったが、みんな
「こんな画期的な攻撃法があったのか」
と驚いていた。
4日目にはピック&ロールを仕掛けられた時の対処法として代表的なスイッチとファイトオーバーを教えてもらった。
しかし最後に千里さんは言った。
「バスケにはこういう色んな作戦もあるけど、結局は1対1の戦いで、どう相手に勝つかというのが基本。それをないがしろにして作戦だけ覚えても強くなれない」
「それって日本のスポーツ指導法全般の問題ですよね」
「そうなんだよ。1980年代頃まではそういうこざかしいやりかたの指導がもてはやされていた。でもそれでシャキール・オニールやレブロン・ジェームスに勝てるわけ無いんだよ。個人の技術を鍛えずして作戦ばかり考えても無意味」
「スポーツに王道無しですね」
「そうそう」
千里さんは現在フランスのプロリーグで主として活動しているが、フランスに行ってそういう考え方が強くなったと言っていた。180cm,90kgの選手にぶつかられても平気でシュートできなきゃフランスでは生き残れないとも言っていた。
部員たちは毎日ハイレベルな試合を見て勉強になっているようだった。札幌滞在中に練習試合も3つやった。
そしてみんな練習熱以上に食欲も旺盛で、お米は最初に買った150kgが全部無くなり、20kg追加した。部員達は帰りの飛行機の中でもおにぎりとチキチキボーンを食べていた。更に氷見に戻ってから、打ち上げと称してジンギスカンを食べた!
岡安は水野さんの知り合いの人に男性器を復活させてもらったものの、女の子になっていた後遺症?が出ていた。
・スネ毛が生えなくなり毛を剃る必要が無くなった。ヒゲも週に1回剃ればよい。
・ウエストが細くなり63のスカートが穿けるようになった。ヒップは大きくなった。
・喉仏が無くなり、高い声が出るようになった。(低い声も出る:事実上両声類)
・ショーツを穿くようになり、トイレは座ってするようになった。
・ピッチリジーンズを穿いても股間に膨らみができなくなった。
・お化粧を覚え女装外出の味をしめた。女物の服が増えた。髪は美容室で切るようになった。
7月下旬、水野希望が帰宅すると市役所からハガキが来ていた。
「新しいマイナンバーカードができています。このハガキを持って受け取りに来てください」と書かれている。まさか・・・と思って市役所に行ってみると、性別女と記載されたマイナンバーカードを渡された。
「嘘!?あれって夢じゃなかったの?」と希望は思った。
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春回(12)