広告:めしべのない花―中国初の性転換者-莎莎の物語-林祁
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■春回(9)

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幸花は毎度うなっていた。
「悪い子はいね〜が〜、ネダはね〜が〜」
 
「こういうのはどうです?夜中に車で走っていたら、横断歩道に人影を見たので停まったけど、よく見ると誰もいなかった」
「ありふれた話だ」
「まあその辺の幽霊ですよね」
 
「これはどうですか?Y温泉で湯船に浸かっていたら、いつのまにかF温泉に居た」
「酔ってたというのに1票」
「でもこの手の話、前にもありましたよ。金沢市のY温泉と富山県のF温泉って県は違うけど直線距離では3kmしか離れてないんです」
「なんか男湯にはいってたら、いつの間にか女湯に居たなんて小説もありましたね」
「妄想だと思う」
 
(広瀬正『鏡の国のアリス』)
 
「鏡像の世界に迷い込んだんでしたね。それで元の世界に戻るため、性転換手術受けて女になって今度は女湯にはいるんでしたっけ?」
「根性が無い。男の身体のまま女湯にはいればいいのに。希望ちゃんは堂々と女湯にはいるだろ?」
「すみません。ノーコメントで」
 
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水野希望は青葉に雇ってもらい、青葉の会社(グリーンリーフ)から健康保険証も発行してもらったので、親からもらってるほうの保険証は返却して被扶養者の削除手続きをしてもらおうと思い、保険証を郵送した上で母に電話を入れた。
 
「あ、お母ちゃん?希望(のぞみ)だけど」
「え?希望なの?なんか声が違う」
「何かの拍子にこういう声になっちゃったんだよねー」
「へー。一瞬、オレオレ詐欺かと思った」
「うちに詐欺されるほどのお金があるとは思えない」
「そうだけどね」
「女の子を妊娠させちゃったから中絶手術代に5000円貸して、とか?」
「5000円なんて大金無いよ。せいぜい50円くらいしか貸せない」
「あはは」
「だいたいあんたが女の子を妊娠させるというのがあり得ない。あんたが妊娠したというのなら分かるけど」
「あまり妊娠する自信無いけど、妊娠したら産みたいなあ」
「ああ、それは産みなさいよ。未婚の母でもいいじゃん」
「うん」
 
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「そういえばこないだ戸籍謄本取ったらさ」
「うん」
「あんたがまだ三男って記載されてたのよ。まだ性別変更申請してなかったんだっけ?」
「えっと、まだかな」
「早く手続きしたほうがいいよ。大学卒業するまでには変更しなよ」
「そうだね」
「性別変更届けって証人とか要るんだっけ?必要なら証人の署名してあげるから」
「ありがとう。今度確認しとく」
 
性別の変更か。したいなあ。
 
外国では手術とかしなくても社会的にその性別で暮らしていればその性別に変更させてくれる国とか、自分は女であると宣言するだけで法的に女にしてくれる国もあるのに。日本は遅れてるよなあ。と希望は思った。
 
しかし法的な性別の問題とは別に、身体も女の子に変わりたい。
 
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中山は会社を辞めると、少しリフレッシュしてから次の仕事を探そうと思い、金沢観光のツアーに参加した。東京から新幹線で金沢まで来て尾山神社・金沢別院・兼六園・老舗記念館・長町の友禅工房、などを見て“海天寿司”で北陸の海の幸を堪能する。安宅の関・白山ひめ神社なども見てから、夜は市内のY温泉に泊まった。
 
お風呂に入ってこようと思い、大浴場に行く。男湯に入る。頭を洗い、身体を洗い、湯船に浸かる。目を瞑って温泉の湯を堪能した。
 
次は少し給料安くてもいいから、週に1回程度は休める仕事がいいなあと思った。これまでのようなペースで40歳くらいまで働き続ける自信は無い。
 
思えば学校を出てから10年働きづくめだった。土日も有休も無い会社だった。夜も12時くらいまで仕事するから女の子と付き合う時間も無かった。自分がいつまでも結婚しないから、母からは「あんたホモだっけ?」と訊かれたけど、女の子とも男の子とも付き合う時間は無かった!!
 
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恋愛したことないから、自分の性的指向もよく分からない。
 
高校時代は女の子たちと一緒にバレンタイン・チョコを買いに行ったこともあるけど、誰にも渡さなかった。彼は女の子たちから「安全パイ」と思われているのは感じる。大学時代も女子の友人が「泊めて」と言って泊まっていくことがあった。彼女たちは“食事も保証された安全な休息場所”として彼の家を使っている感じだった。社会人になってからも女子会によく招待される。会社ではお茶を沸かす当番に組み込まれている。髪は子供の頃から美容室で切っていた。女性向けの雑誌や漫画をよく見ていたから女子と話が合う。
 
声も中性的で、電話ではよく女性と思われる。高校の合唱部では「あんたはアルト」と言われてアルトとテノールの境目の所に立っていた。大会で女子制服を着たこともある。喉仏も目立たない。体毛も薄いし自分は男性ホルモンが弱いんだろうなと思う。女性体型で男物のズボンが入らないからボトムはレディスを穿いていた。身長も低い。靴も23だし。下着は小さい頃からショーツである。トイレはいつも座ってする。
 
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天井から雫が落ちてきてハッとする。あがろうと思って湯船を出る。女性の姿を見るので何で?と思う。ここ時間帯によって男湯と女湯が入れ替わるとか?だったら早くあがらなきゃ。脱衣場に移動する。仲居さんがバスタオルと浴衣を渡してくれたので受け取り、身体を拭いて浴衣を着た。この時何か変な感じがしたが、違和感の正体はこの時は分からなかった。ロッカーを探すが、見付からない!?
 
中山は部屋に戻れば着替えはあるから部屋に戻れば良いと思った。それでお風呂を出て部屋に戻ろうとするが、戻れない!?
 
通りがかりの仲居さんに尋ねる。
「済みません。鶺鴒(せきれい)の間にはどう行けばいいですか」
すると仲居さんは言った。
「当旅館にはせきれいの間というのはございませんが」
「え〜!?」
 
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仲居さんが電話で女将さんを呼んだ。女将さんが来て言った。
「お客様、もしや□□旅館にお泊まりだったのでは?」
「え?ここは□□旅館じゃないんですか?」
「ここは◎◎旅館でございます」
「え〜!?」
「時々あるんですよ。□□旅館までタクシーで送らせます」
「済みません!」
 
それで女将がタクシーを呼んでくれて、中山は□□旅館まで回送してもらた。しかし迷い込むくらいだから近くの旅館なのだろうと思ったのに、タクシーは30分くらい走った!
「こんなに遠いんですか?」
「歩けばそんなに距離無いんですが、車が通れる道ではぐるっと回り込む必要があるんですよ」
「へー」
 
それで□□旅館に着いてから
「ちょっと待っててくれない?部屋からカードを持ってくるから」
と言ったのだが
「お代は旅館からもらいますからいいですよ」
と言われた。しかしそれで中山は部屋に戻ることができた。
 
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中山は自分の旅館に戻ってから寝る前にトイレに行ったが、個室で便器に座っておしっこをした時、初めて“異変”に気が付いた。
 
中山は東京に戻るとレディススーツを着てお化粧をし職安に行って仕事を探したが
「あなた声が可愛いから」
と言われて電話オペレータの仕事を紹介された。今度の仕事はお客様からどなられたりしてストレスはあるものの、1日の労働時間は8時間だし、週に2回休めるので天国だと思った。そして2年後、音楽教室で知り合った“男性”と結婚し、翌年(2026年)には子供も産んだ!
 

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2023年に話を戻す。
 
北信越大会の少し前、春貴は部員達に訊いた。
「君たちバッシュはどのくらい使ってる?」
 
するとたいてい2〜3年使っているということだった。
「じゃ君たちに新しいバッシュを買ってあげるよ」
 
「先生大丈夫ですかぁ?」
と夏生がお金のことを心配する。春貴は言った。
「技術的な向上は君たちの努力によってしか達成できない。でも私は道具を揃えたりの側面支援をするよ。お金はもうすぐボーナスが出るから大丈夫」
 
それで部員達を“こぶたぬき号”に乗せ、小矢部市のスポーツ用品店に連れて行く。そして全員足の計測をしてもらい、インターハイ用に、オーダーメイドのバッシュを頼んだのである。
 

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5月に希望は声を千里さんに女の子の声に変えてもらい、喉仏も消してもらったが、その時、千里さんから言われた。
「睾丸はどうする?残しておくとまた声変わりが起きて男の声になっちゃうよ。今すぐ取ってあげようか」
「少し考えさせてください」
「だったらまず精液の冷凍を作りなよ。そしたら睾丸を取っても人工授精して子供作れるし」
「あ、そうですね。取り敢えず精液の保存しようかな」
と言ってから彼は言った。
「でも実はもう10年くらい射精してないんですが、射精できると思います?」
「それって実はもう睾丸は無いのでは?あるいは機能停止しているか」
「やや自信が無かったりして」
「じゃ1回だけ射精できるようにしてあげるよ。その射精が終わったら睾丸は廃棄」
「それでいいです」
 
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それで高岡市内にある千里さんの家に招待された。
 
「でもここへの来かた難しいですね。ナビに登録してもいいですか?」
「希望ちゃんならいいよ」
 
それで登録させてもらった。
 
希望は赤ワインとビーフシチューの食事をもらい、部屋に案内される。
 
お風呂に入り、シルクの女性下着とドレスを着せられた。そして素敵なベッドに寝る。
「一度寝て。起きたらペニスが立つはずだから、採精キットを取り付けて射精して。それが終わったらまた寝て。次に起きた時はもう睾丸は無くなってるよ」
「分かりました」
 
それで希望は寝たが、起きたら本当にペニスが立っているので、枕元に置かれた採精キットを取り付けて10年ぶりのペニスオナニーをした。小学校の時以来、懐かしい感覚だが不快な気分である。でも精液は出た。キットはそのままにして、もう一度眠った。
 
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再度起きた時、何だか爽快な感覚だった。ハッとしてお股を手で確認すると、睾丸は無くなっていた。
 

彼は自分のアパートに居た。スマホで確認すると月曜の朝だ。彼はいつものようにタックしてから下着を着け、普通にブラウス・スカートを身に付けて朝御飯を食べて学校に出掛けた。
 
昼頃千里さんから電話が掛かって来た。
「精液は冷凍保存したよ。調子はどう?」
「凄くいい感じです。変なものが体内に分泌されなくなった感覚なんですよ」
「男性ホルモンなんて毒物みたいなものだからね」
「ですよね。余計な物が無いからタックもしやすいし」
「タックもしなくていいように完全な女の子に変えてあげようか」
「その内お願いするかも知れませんが今はまだ心の準備が」
「OKOK。女の子になりたくなったら連絡してね」
「はい」
「あ、そうそう。規則でさ、生殖能力を無くすことはできないのよ。だから睾丸を除去した代わりに卵巣を活性化させたから」
「卵巣ですか?」
「うん」
「そんなのあったんでしたっけ?」
「入れといた。大阪発動機製のV型2気筒だから」
 
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走りだしそう。でも2亀頭じゃないよね?V型ってVagina型だったりして?
 
「だから女性ホルモンはそこから分泌されるから、もう女性ホルモン製剤は飲まないで」
「はい」
「その内生理も来ると思うけど処理できるよね?」
「はい、多分」
「さすがさすが。男の娘は生理の処理方法知ってるよね。じゃ頑張ってね」
「ありがとうございました」
 
生理ってどこから出てくるの?
 
(知ってるくせに)
 

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北信越大会が終わった後、1年生の部員から質問があった。
 
「試合中に身体の接触が起きた場合にどちらがファウル取られるかって何か規則があるんですか?」
「はい、ルミ君」
と春貴はルールに詳しい高田晃に投げた。
「それを説明するためには、シリンダーという概念を理解してもらう必要がある」
と彼は言った。
「ビナやメイはシリンダーが分かるよね」
「厳密に分かっているかは自信無いけどだいたいは分かる」
と言うので、美奈子と五月にサンプルになってもらった。
 
「プレイヤーが直立してリーガルポジションを取った時、そのプレイヤーを包む円筒状の空間のことをシリンダーと言うんだよ。この領域ではそのプレイヤーが優先的に保護される。だからディフェンスのシリンダーにオフェンスが突っ込んできて接触が起きればオフェンスのチャージング。オフェンスのシリンダーにディフェンスが無理に入り込んで防御すればディフェンスのブロッキングになる」
と晃は説明する。
 
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それで、美奈子と五月に色々なパターンを演じてもらい、今のはどちらのファウルかというのを1年生たちに説明した。春貴先生まで「へー」などと感心していた!
 

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6月19日(月)、全体集会で女子バスケット部の北信越大会準優勝が報告されると、大きな拍手があった。
「女子バスケ部すげーな」
「俺も入りたいくらいだ」
「それには、まず性転換手術を受ける必要があるな」
「それは悩むな」
「女になればスカートも穿けるし、女性専用車両に乗れて、女子トイレにも女子更衣室にも女湯にも入れる」
「悩むな」
 

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6月30日、春貴は夏のボーナスを受け取った。校長から明細をもらって少しバスケ部の話をしたが、北信越大会のことで褒められ、インターハイの激励をされた。
 
もらったお金については邦生に連絡して全部定期にしてもらった。
 

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