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■春閼伽(1)

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“閼伽(あか)”とは仏教用語で水のことである。ラテン語のアクアと恐らく同語源。東大寺の“お水取り”では若水を汲む井戸を“閼伽井”と言う。
 

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Y温泉□□旅館。掃除をしていた従業員が主人の所に来て言った。
「社長、壁絵の所のタイルが5枚ほど剥がれて落ちてるんですが、どうしましょうか」
「下に落ちてるだろうからアロンアルファか何かでくっつけといてよ」
「でもかなり傷んでて弛んでるタイル多いですよ」
「旅館建てた時からのものだからねえ。50年は経ってるもんね」
と女将さん。
「直す金が無い。直すと50-60万掛かるだろうし」
と主人は言った。
「壁絵以外の部分のタイルもかなり傷んだり汚れてるけどね」
と女将さん。
 

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中川浩美の祖母・白石結子は娘に
「ちょっとネットの友人に会ってくる」
と言って、高崎の家を出ると、新幹線を乗り継いで名古屋まで行った。名古屋在住のトランス女性・マキちゃんと会い、土手煮を食べながら話が盛り上がった。名古屋市内のホテルで一泊すると、しらさぎ・新幹線を乗り継いで新高岡まで行き、タクシーで伏木の菓子神社に行った。浩美からこの神社を目印に来ればいいと聞いたからである。
 
お参りしておみくじを頼むと小学1年生くらいの可愛い巫女さんが筒を振って竹の棒を引いてくれた。大吉だった。
「あんた可愛いね」
と結子が少女巫女さんに言うと彼女は
「えへへ」
と笑って
「おばちゃん、そこのお菓子屋さんに寄るといいよ」
と言った。それで結子が三連水車のあるお菓子屋さんに入ると、店の半分に和菓子、半分にケーキなどが並んでいる。ここで食べられるようだったので、みたらし団子を買い、イートインの人へのサービスというほうじ茶をもらい、席で座って食べる。
「美味しい!」
と思った。
 
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でもこの味はもしや・・・と思ったら浩美が戻ってくる。
「あれ?おばあちゃん、お店に来たんだ?」
と浩美。
「やはりあんたの店だったのね」
「私の店とかとんでもない。私はただの下っ端だから」
「あら?浩美ちゃんのお祖母ちゃんだったの?」
と店長。
 
「おばあちゃん、高崎に帰ってからでいいから、おばあちゃんの手作りカステラ送ってくれない?」
「持って来たよ。良かったら皆さんで分けて」
「切ってくる」
と言って浩美はカステラを持って厨房に行くと切り分けて小皿に載せて持って来た。店長はじめスタッフ一同が食べて
「美味しい!」
と言う。
 

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店長が言った。
「もし良かったらこのカステラの作り方、教えてもらえませんか?」
「いいけど道具が」
「必要な道具は何でも用意します」
 
それで結子は伏木に1ヶ月滞在して、浩美、スポンジ担当の遙佳・舞花、和菓子作りの助手として雇っている矢部さんの4人にカステラ作りの指導をしたのである。
 
(スポンジとカステラは似ているが、主な違いはバターを使うかどうか。後は店により微妙な材料の違いがある。水飴・蜂蜜・牛乳・バニラエッセンスなど)
 
それで高崎のほうは、結子の和菓子店はずっと臨時休業が続き、
「おばあちゃん、病気かな?」
という噂が立っていた!
 
結子のカステラのレシピは亡き父から習ったもので、父は長崎の原爆で消滅したカステラ屋さんの息子だった。本人は投下時招集されて国外に居たため無事。戦後は実家が消滅したことから東京に出てきて、高崎の菓子屋の娘と結婚した。失われた味が80年の時を経て北陸の地で復活することになった。きっと仕掛け人は、つーちゃん。
 
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南田兄は“播磨内装・営業部長”という名刺を持つと、Y温泉の一軒の旅館を訪れた。
「うちは関西の姫路というところが本社なんですが、今度金沢に北陸支店を開設したんですよ。開設記念でお安くしますから、お風呂の壁絵を新しく直されませんか」
と言って施工例の写真を多数見せる。
 
「安いって幾らくらい?」
「うちは関連会社でタイル自体作ってるんですよ(*1)。ですから男湯・女湯合わせて18万でいかがですか?」
「でも去年屋根を直したばかりでね」
「御主人男前だから、特別に12万で」
 
それでやってもらうことにした。
 
「施工期間は何週間くらい?」
「うちは多数の技師が人海戦術でやりますから、男湯・女湯それぞれ1日でできますよ」
「じゃ2日休めばいいか」
「休まなくてもいいですよ。男湯と女湯を片方ずつ、日にちをずらしてやりますから、工事する日はもうひとつの湯を使って例えば7時まで男性客、以降は女性客とかにすればいいんですよ」
「ああ、そのやり方があるか」
「7時ジャストにお風呂に居たお客さんには性転換してもらうということで」
「あはは。性転換したい男の娘がたくさん来たりして」
 
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(ほら、アイゼンのバイトさんたち、チャンスだぞ)
 
この旅館の壁絵はこれまでは桜と浜名湖だったが、新しい絵はハワイとシャンゼリゼになった。また内装業者にはサービスで!壁絵以外の部分のタイルも新しい物に更新してもらった。更についでに蛇口とか鏡とかまで交換してもらった。しかし工事には50人くらいの技師が来てあっという間に工事したので、大きな会社なんだなと思った。1日というのは接着剤が乾く時間であった。
 
また旅館では、お風呂場がきれいになったので、男湯と女湯を1日交替にして、両方楽しんでもらえるようにした。
 

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(*1) お風呂の壁絵は一般に関東ではペンキ絵、関西ではカラータイルによるモザイク絵である。また題材も関東では富士山、関西では琵琶湖が多いと言われる。またいづれも壁絵の制作は個人業者が多く価格も10万くらいから100万くらいまで幅があるらしい。
 

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岡安俊夫(きっと今日の主役)は水野希望の知り合いの村山さんに男の子に戻してもらった時言われた。
 
「後でやっぱり女の子のほうがいいと思ったら私に電話でもしてね。女の子に戻してあげるから」
「あ、はい」
「一時的に女になりたいとかいうのにも対応してあげるよ。女湯にはいりたいとか、男の子とセックスしたいとか、ビキニの水着着たいとかで」
「あははは」
 
女湯にはいるとかビキニを着ることはないと思うけど男の子とセックスすることはあるかも知れないなと彼は思った。
 
電話番号とメールアドレスをもらったので取り敢えずスマホに登録しておいた。
 
彼は男の子に戻してはもらったものの、女の子になっていた後遺症でおり物が出るようになり、パンティライナーを着けるようになった。量の多い日はナプキンを使う。男子トイレには汚物入れが無いのでビニール袋を持ち歩き、それに入れておいて家で処分する。自宅トイレにはサニタリーボックスを置いた。
 
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しかしパンティライナーやナプキンはブリーフには取り付けられないので、下着はショーツしか穿かないようになった。彼はセシールで安いショーツをたくさん買った。
 
また乳首が立っているのでブラ無しでは痛い。それで乳首保護のためヌーブラを着けておくようになった。日によっては普通のブラを着ける。ブラジャーもセシールで買った。着けやすいフロントホックを3枚買った。
 

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月子(彪志)は水川所長の勧めで博士論文を提出していたのだが、それが認定されて出身大学から博士号を受けることになった。それで新幹線で往復して千葉まで行って、学位記を受け取って来た。水川は早速“理学博士”の称号が入った“UDD準備室長代理・鈴江月子”の名刺を作ってくれた。
(水川は薬学博士)
 
彪志は近いうちに珠洲市でもドローンの実験をすることになりそうなので、地理的感覚を掴むため、7月はかなり珠洲市を車で走り回った。ここも南砺市ほどではないが、凄い道ばかりだと思った。
 
能登半島は最近ツキノワグマが出没しているので、護衛のため、千里は能登組の当目(*2)という子を案内人兼任で同乗させた。田舎ではカーナビが「どの道がまともな道か」を誤認しやすいので、案内人は重要である。国道がとてもじゃないが走れない一方で、地図に載ってない立派な道が存在したりする。案内標識も凄く適当で、信用したら酷い目に遭う。
 
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(*2) 当目(とうめ)は能登半島の地名でもある。昔奥能登に猿鬼という者が居て村々を荒らし回っていたので、三井(みい)の女神が弓矢で倒した。女神の矢は猿鬼の目に当たったので、その地を当目という。現在は珠洲道路(通行無料の高規格道路)沿いに“道の駅・桜峠”が設置されている。
 

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青葉は、7月8-9日(土日)『ミュージシャン・アルバム』の取材をおこなった。今回8日が星原琥珀で、9日は松梨詩恩である。
 
朱美が紹介する。
「星原琥珀ちゃんでーす」
「やおーん!」
 
「琥珀ちゃんといえば“やおーん”だよね。なんで“やおーん”になったんだっけ?」
「何か特徴的な挨拶を作ろうと言って事務所の社長が考えてくれたんです」
「へー」
「と言えと言われてんですけどね、山無し・オチ無しでやおーんという異説もある。山無しというのは、人気のピークが無くていつまでも輝いている。エバーグリーン。オチ無しというのは人気が落ちていくことはない、ずっと人気。永遠のアイドル」
「いいことじゃないですか」
「でもそれwikipediaに書くと独自研究と言われて速効で削除されるんだよね」
「あはは」
「山無し・オチ無しのついでに意味無しで、人気はずっと低迷してる」
「いやそんなことはない」
「今までにCD 20作以上出してるけど、1万枚以上売れたものが1つも無い」
「そうだっけ?」
 
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「永遠にアイドリングしていてスタートしない」
「うーん。フォローできん」とさすがの朱美もさじを投げた。ケイが言う。
「でもランキング1位は確か3回取ってる」
「あれ800枚で1位だったんですよねー。他に売れるような発売が無いタイミングを狙って発売する隙間商法」
「いやそれはみんなやってる」
 
朱美は話題を変えたほうがいいと判断したようである。
「でも星原琥珀ちゃん、松梨詩恩ちゃんと、うちの事務所のアクアは高校の同級生だよね」
「うん。まあ同級生と言うより正確には北区にある女子高の同じ学年。アクアちゃんと松梨詩恩ちゃんは音楽選抜された1組、私は一般入試の3組」
「まあその女子高に私とはるこも通ってるんだけどね。はるこは音楽選抜で私は一般選抜」
「あそこ音楽選抜は凄いハイレベルだよね」
「そうそう。私はアクアちゃんや詩恩ちゃんみたいに歌うまくないから一般選抜」
 
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「仲間仲間。でもだからアクアが女子高生してたことを知る数少ない証人だよね」
「うん。あの子ふつうにスカートの制服で通学してたよ。あの子なんで自分が女だということを隠すのかね」
「隠しても全国民が知ってるけどね」
「そうそう」
 
ケイが困ったような顔をしている。千里は笑っている。
 

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「容貌も身体のラインも女として成熟してきているからね。男役できるのは、きっと今年いっぱいが限度」
「既に白雪姫・シンデレラ・かぐや姫やってるからね。きっと来年はオデットとオディールの二役」
 
(アクアは一度バレエの『白鳥の湖』をあけぼのテレビで踊っている)
 
「楽しみですね。でもアクアで『モモ』を撮るという説もあるよ」
「時間泥棒の役だったりして」
「10人のアクアが総出演とか」
「アクアがうようよ出てきてファンは喜ぶかも」
 
ふたりはこの後アクアに『シュガシュガルーン』をやらせようとか『プリキュア』とか『セーラームーン』とか『赤ずきん』とか『アルプスの少女』とか『ジェーン・エア』とか好き勝手なことを言い、最後の方はケイも笑っていた。
 
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歌唱では唯一9000枚売れたという4年ほど前の曲をはるこのピアノ伴奏で歌った。リビングに移動しての食事では、琥珀が
「氷見はお魚が美味しいと聞いたから鯨を食べたい」
と言うので
「鯨は魚ではないが」
と言いつつも、千里が北海道産の鯨を用意してくれた(能登では鯨は冬だけ)。
 
(ついでに伏木は氷見市と隣接はしているが氷見市ではなく高岡市の一部)
 
他に氷見産のふくらぎ(はまち)、まぐろ、いか、あじ、のどぐろなどを味わった。でも、能登牛の焼肉もした。
 

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