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■春閼伽(3)
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「霊界探訪」のネタが足りないので、幽霊屋敷巡りをすることにした。明恵が「ドイルさんが居ないと危険」と言うので、まだ万全ではないようなのに申し訳ないが同伴を頼む。ドイルは「人数が多いと守り切れないから人数を搾って欲しい」と言うので、幸花・明恵だけにして、希望には紗織の面倒を見ているのをお願いする。またドイルのサポートにコイルにも同行してもらう。
そういう訳で青葉(金沢ドイル)・千里(金沢コイル)・明恵(金沢セイル)・幸花(金沢ウール)の4人で回ることにしたのである
(同行したのは霊力の高いRである。代わりに世界水泳に付いて行ったのがLだが、記者の前で泳いでみせたのはR。その時だけ入れ替わった)
幽霊屋敷レポート、1軒目は某町住宅街の家である。原則として住所は明かさない。場所のヒントになるようなものも映さない。家はかなり荒れ果てている。
「かなり荒れてますね。障子は破れてるし、家自体がかたがってる(傾いてる)し、屋根も壊れてるみたい」
と明恵。
「何か事件のあった家で、気味悪いので近所の人も近づかないそうです」
コイルが注意した。
「この家は撮さないで。私たちだけを撮して」
「やばいですか」
(注意される前に少し撮した筈が後で確認すると全く写っていなかった)
「いきなりこんな危険な所に来るのよそうよ」
「すんませーん」
「ここはこれ以上ここに留まるのも危険です。次行きましょう」
とドイルが言って次のポイントに移動する。
どこか田舎の一軒家という感じのところに来る。
「ここはもう30年くらい空き家なのですが、夜この近くを通ると人の声がするらしいです。灯りも見るという話しもあります」
と明恵の説明。
「ここは妖怪の類いの巣窟になってますね。空き家ってこの手のものが溜まりやすいんですよ」
とドイルが言う。
「この家が無くなれば妖怪たちも解散するだろうね」
とコイルが言った途端、家が大きな音を立てて崩れた。
「ああ、無くなっちゃいましたね」
と明恵。
「最近地震が多いから傷んでたんじゃないかなあ」
とコイル。
「この後は次第に浄化していくでしょう」
とドイルが言って、取材班は次に行く。
最後はどこか道路沿いの旅館跡のようである。
「ここは10年くらい前に倒産した旅館です。戦後間もない頃に建てられたもので築後70年以上経ってます。窓ガラスも破れて壁板も剥がれていて見るからに怪しいですね」
と明恵の解説。
「でもここは変な物は居ないよ」
とコイル。
「私もそう思う」
とドイル。
その時、破れている窓から白い小猫が出てきて「ニャー」と鳴いた。
「猫ちゃんたちの宿舎になってるのかも」
「幽霊の正体見たり、白小猫、かな」
「以上幽霊屋敷レポートでした」
7月28日(金)の「霊界探訪」では“温泉ワープの怪”、“たぬきの金時計”などの話題のほか、源義経の笛、ドイルの水泳練習風景、ガトー・ムーラン伏木店で“長崎風カステラ”が発売された件、墓場巡礼の練習風景、それに幽霊屋敷のレポートなどをした。
“たぬきの金時計”では明恵がバイク仲間の男の子4人(卯辰山麓男声合唱団)に“例の歌”を歌わせていた。
たんたんたぬきの金**は
風も無いのにぶーらぶら
(以下略)
“金時計”ではなくこっち歌っちゃうのがさすが深夜番組である(*4).
温泉レポートでは“通行止め”と書かれたバリケードの置かれた、遊歩道入口も映した。
(*4) 昔ゴールデンのドラマで森光子と石野真子がこちらを堂々と歌ったことがあった。
アイゼンでの会話
「温泉ワープの件は情報が集まりませんでしたと言ってたけど、温泉の評判に影響するからドイルさんが内密に処理してワープルートを塞いじゃったみたいね」
「ドイルさんもつくづく余計なことを」
その筋ではこういう噂があった。
・女の子になりたい男の子がY温泉A旅館に泊まり、男湯の湯船に浸かって5分くらい目を瞑っていると、いつの間にかF温泉B旅館の女湯・湯船に移動している。しかも身体も女に変わっている。
。A旅館女湯からB旅館男湯への移動もあるらしい(不確か)。
・移動だけが起きて性別は変わらない場合もあるらしい(不確か)。男の身体で女湯に放り込まれてしまうが騒ぎになったことはないみたい。
・現象が起きるのは夜10時頃から午前4時頃の間。日帰り利用では起きない。
・女の子になりたい気持ちは明確に意識していなくても潜在的に持っていれば充分。
・ずっと目を開けているとワープは起きない。
・他にも何か条件があるようだが不明。
A旅館とB旅館は創業者がお友達同士で、大浴場の壁絵を同じにしようとしたが、誤って双方男湯・女湯の絵が逆になってしまった。A旅館は男湯が吉野桜で女湯が浜名湖であったが、B旅館では女湯が吉野桜で男湯が浜名湖である。
千里はそれに気付いて、A旅館の壁絵を変えてしまったのである。広瀬『鏡の国のアリス』では壁絵が男湯と女湯が左右対称だったために鏡像ワープが起きる。
岡安は夏休み、内々定している会社の研修に参加した。ワイシャツに紳士用スーツを着、ネクタイも締めて出社する。業界の勢力図・取引先の名前とか、用語の解説、またビジネスマナーなどの講義を受け、端末を使って実務の実習をする。
実習で彼が使用していた端末がトラブり、システム部の人が来て復旧作業した。それで彼は他の研修生より帰りが遅くなった。
「ごめんね。遅くなって」
と課長さんが言うが、岡安は
「いえ、立石さん(復旧作業してくれたシステム部の人)こそありがとうございました」
「まあシステム部の仕事の半分はトラブル対応だから」
そんなことを言っていた時、専務さんがはいってきた。
「あれ?女の子みんな帰っちゃった?」
「あ、お客様でしたらお茶とかお出ししましょうか」
と課長さん。
「いや、接待に女の子も連れて行きたいと思ったんだけど、みんな帰ったのなら仕方無いか」
と専務さんが言った時、レディススーツを着た50歳くらいの女性が
「私が行こうか」
と言った。どうも専務の奧さんか妹さんっぽいなと思う。
しかし専務さんは
「賞味期限切れの奴はいいや」
と言った。
ひっどーい!
専務は岡安に目を留めた。
「君可愛いね」
「は!?」
「君、お酒飲める?」
「ビール12〜13杯程度なら」
「結構強いじゃん。君ちょっと接待に付いてきてくれない?」
え?
「専務、この子は内々定している学生で、まだ入社前なんですが」
と課長が言ったが専務は
「じゃ今日だけバイトで」
と言った。
「それで来てくれない?」
「はい、やらせてください」
と岡安。
「じゃ頼む。女子制服着てね」
「え〜!?」
「洋子、この子に女子制服着せて、お化粧してあげて」
と奧さんに言う。
「まあいいけどね。あんたこっち来て」
と言って岡安は女子更衣室に連れ込まれてしまった。
「あんたウエストは?」
「63です」
「細いね!だったらMでいいな。これ着て」
と言われて彼は女子制服を着せられてしまった。
専務の奧さん(次長)は岡安がスムースに左前のボタンを填めるのを見て「へー」と思った。
「あんた女子制服が似合うね」
「そうですか」
「足の毛は剃ってるの?」
「私毛が薄いんです」
「ふーん。一応これ履いて。これはあげるから」
と言って新品のパンストをもらったので履いた。
岡安が一人でパンストを履いたので次長は「この子普段から履いてるな」と思った。普通の男の子にはパンストを履くのは難しい。途中までしかあがらない。それと、この子パンティ(ブリーフには見えない)に膨らみが無いのはなぜ〜?
そして
「お化粧してあげるね」
と言われて彼は美しくメイクされてしまった。
「あんたヒゲも薄いね」
「はい。週に1回くらいしか剃りません。今日は研修なので剃って来ましたが」
「ふーん。顔剃りとかせずにそのままメイクできるよ」
それで眉毛だけ細くカットされ眉毛コームで短く切り揃えてから、化粧水で顔を拭き、乳液→ファンデ→アイメイク→チーク→口紅と入れられる。目は、アイカラーの後、アイライナー、アイブロウと入れられる。マスカラを入れられまつげをカールしてもらう。
でもアイブロウは最近の方式で1本1本縦に描くのではなく横に1本描いちゃう。この人の年代だとそうかなと思った。まだ眉毛を全部剃られないだけマシだ。眉毛剃られてしまうと男装できない!女装しかできなくなっちゃう。
口紅は紅筆で輪郭を描いてから中を塗られた。またマニキュアもされた。
「君、靴のサイズは?」
「24です」
「じゃ私の靴が入るかも。これ履いてみて」
「はい」
と言って履いてみる。
「ああ、何とか行けるね。じゃよろしくー」
「はい」
「そうそう、トイレは女子トイレを使ってね」
あはは。
しかし岡安がスカートで普通に歩いているので次長は「やはりこの子スカートも穿き慣れてるみたい」と思った。だいたいこの子胸あるじゃん。女性ホルモン飲んでるのかな。この子、可愛いから女の子扱いしてあげよう。こういう子って普通の女の子より素直だったりするし。声も女の子の声にも聞こえるから女子制服着せて入口に近い席に座らせてもいいかな。最近の女の子は受付嬢とかやりたがらないけど、この子は喜んでやってくれそう。
(岡安は受付嬢のOLになることが決まったかも)
それでともかくも岡安は女装で接待に出ることになったのである。
でも接待って何するの?
まさかセックスとかしなくてもいいよね?
課長が「**情報サービス株式会社・総務課・岡安俊美」という角丸の女性的な名刺を作って渡してくれた。専務と一緒に応接室に行く。専務は
「君は何も発言しなくていい。適当に微笑んでいて。夜11時までには帰すから」
と言っていた。
応接室でお客様に挨拶して名刺を渡す。お客様は60代の男性だが、凄く上等のスーツを着ている。専務は「先生」と呼んでいたが、どういう人だろう?
一緒に出る。
タクシーに乗り、市内の料亭?に行った。そこで3時間ほど過ごした。お酒は口紅をティッシュで拭き取ってから、日本酒をおちょこに5杯くらい飲んだ。料理は何かよく分からないものを適当に食べた。石川名物の“ふぐの卵巣”(*5)は「美味しいよ」と勧められたので、怖かったが、覚悟を決めて食べた。
歌をなんか歌ってと言われて、古い歌がいいだろうと思ったのでプリプリの『ダイアモンド』を歌ったら受けていた。専務が「君歌がうまいんだね」と感心していた。夜10:50くらいに「女の子は帰しますから」と言って、タクシーチケットを渡されて帰してもらった。
(*5) 石川県美川町の「ふぐ卵巣の粕漬け」はこの地域で伝統の調理法により作られる独特の料理。この地域限定で製造が認可されている。なぜ毒が消えるのかは不明だが伝統の手順で作ったものからは確かに毒が消えている。
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