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■春歩(18)
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愛佳と舞花は、男子バスケ部の坂下部長のところに挨拶に行った。
「男子が女子より成績悪かったら、お前ら全員性転換手術受けてもらって、女子と男子を入れ換えるぞと言われてたけど、女子は不戦勝だったから、性転換は勘弁してもらった」
と坂下君は言っていた。
「1〜2年生でベンチに入れない子でもいいから、2〜3人、女子部にもらえません?女子部は今8人しか居ないから最後のほうはどうしても疲れて動きが鈍くなるんですよね」
と愛佳。
「じゃ性転換の希望者がいたら紹介する」
と坂下君は言っていた!
5月31日(火).
H南高校女子バスケ部の部員8名が春貴と一緒に“終わりのジョギング”をしていたら、ジョギングコース途中にある焼肉店跡に変化があった。
「基礎工事されてるみたい」
「じゃいよいよ何か建つのかな」
「何ができるんでしょうね」
「コンビニだったら、いいなあ」
などと部員たちは話していた。
6月1日(水).
この日から多くの中学・高校では衣替えとなり、制服は夏服に切り替えられる。ただし今年は例年より寒いこともあり、しばらく移行期間を設けるところも多かった。
歩夢の通うN中学では、男子は冬服から学ラン(*27)を脱いでワイシャツ(*28)だけの格好になる。女子は冬服なら白い汎用品のブラウスの上にセーラー服だが、夏は夏用のセーラー服っぽいラインが入ったブラウスを着る(結局女子はお金が掛かる)。
歩夢はその日の朝“白いブラウス+ズボン”という格好で居間に出て来た。遙佳は「その格好は無いよなあ」と思ったが、早速母に突っ込まれる。
「歩夢、あんたその胸は大きすぎる。パッド外しなさいよ」
「パッドとか入れてないよ」
「嘘!?」
「触っていいよ」
母はそれでブラウスのボタンの隙間から手を入れて歩夢の胸に触る。確かにかなり育った胸の感触がある。
「あんた随分胸大きくなったね」
「なんか3月頃から急に成長したぁ。だから2月に買ってもらったAカップが入らなくなって、お姉ちゃんから譲ってもらったBカップ着けてる」
「え?そうだったの?」
洗濯物を見たら分かるはずだか、この母なら気付かないよな、と遙佳は思った。
「でもこの格好は絶対変に思われる」
と母は困っている。
「提案その1.女子制服を着て出て行く」
と遙佳は言った。
祖母の薫がパチパチパチと拍手している。
「うーーん。それは・・・」
と母は悩んでいる。
「提案その2.今月いっぱいは移行期間だから、学ラン着て行く」
と遙佳は続けた。
「それがいい。あんた学ラン着て行きなさい」
と母は言った。
それでこの日、結局歩夢は学ランを着て男子冬服状態で登校することになったのである。
そういう訳で、歩夢は、6月1日は一応、ブラウス+ズボンの上に学ランを着るという不思議な格好で登校したものの、すぐに女子のクラスメイトに言われて、普通に夏服女子制服(セーラーブラウス+スカート)に着替えている。
この日は身体測定があったが、もちろん歩夢は他の女子と一緒に測定された。この学校では、今年の春に着任した女性の校長先生が
「身体測定は着衣でしましょうよ」
と言ったことから、“今年は”着衣で測定がされている(*26)
それで、歩夢は“今月も”着衣のまま他の女子と一緒に保健室で身長と体重を測定された。着衣なので、一部居る、歩夢が女子扱いになっていることに抵抗を感じている女子たちも、寛容的であった。
「川口さん、だいぶ胸が大きくなったね」
などと声を掛けて、胸に触っていた(きっと本物かどうか確認している)。
前回の身体測定は5月10日(火)に行われているが、歩夢は5月6日以降はほぼ女子制服で学校生活を送っているので、身体測定も、女子制服を着たまま他の女子と一緒に測定されている。(4月は男子と一緒に測定されそうだったから、その日学校を休んで、翌日個別測定された)。
なお昨年度は脱衣方式だったので、毎回1人だけ別に測定されていた。着衣になったことで、個別測定は無くなったが、それでも歩夢は男子と一緒には測定されたくないと思った。
(*26) 身体測定に関するルールを定めた、文部科学省令(学校保健安全法施行規則)では、身体測定は脱衣を原則とするが、着衣でもよいと定められている(衣服分の重さを控除する)。更に、規則ではないが、文部科学省が監修している「児童生徒等の健康診断マニュアル」では脱衣で身体測定をする場合は男女別に行なうこと、という指示がある。
(非常に少数ではあるが、身体測定を脱衣で、男女分けずに実施していた小学校はわりと存在した。現在もあるかどうかは不明。さすがに中学以上には無いと思う)
そういう訳で実は、身体測定を脱衣でするか着衣でするかは、その学校の任意であり、実質、校長先生が決めることができるのである。
(*27)“学ラン”の“ラン”はオランダのことである。幕末から明治初期の頃は今で言う“洋服”のことを“ランダ”とか“蘭服”と言った。学ランは学生用ランダ、あるいは学生用蘭服の略である。
従って漢字で書くなら学蘭が正しい。学欄とか学鑾などは誤り。
(*28)ワイシャツは衣料品店ではしばしば“Yシャツ”と書かれているが、その表記は誤り。英語の white shirt が訛ったものである。従って「青いワイシャツ」とかはおかしな表現である。「青いシャツ」なら良い。
“カッター”は昔、この服を着てカッターボートによるレガッタの応援をしていた学生たちが自チームが優勝して「勝った勝った」と大騒ぎしたことから来たものである。商品名として付けたのはミズノの水野利八。つまりアルファベットで書けば Katta である。(でもカッターボート cutter boat とレガッタ regata にも掛けてる。野球の応援だったとの説もある)
概ね関東ではワイシャツ、関西ではカッターという、と言われるが、地域によっては、学生用のものをカッター、社会人用のものをワイシャツと呼ぶ。
フランス語ではシュミーズ(chemise)と言う。実は起源的には女性用のシュミーズと同じ物である。男性用のシュミーズはボタン留めのものが流行し、それが現在のワイシャツの原型になった。だから実は元々は肌着。
(一般的に衣服の歴史では元々下着だったものがアウターとして使われるようになることが多い。浴衣などもそんな感じ)
ちなみにスリップはアウターのすべりをよくするために、アウターのすぐ下に着ていた服であり、シュミーズとは起源が異なるものである(だから元々は、シュミーズはコットンやリネン製、スリップはシルク製:現代ではナイロン製)。しかし形が類似していることから現代日本(多分1970年代後半以降)では混同され、全てスリップと呼ばれるようになってしまった。
ところで歩夢が最後にタックをしたのは5月13日である。14日にはペニスが事実上消滅してクリトリスに変化してしまったため、タックは不能かつ不要になった。ただ、陰唇が無いのが悩みだったのだが、半月ほどの間に陰毛が生えてきて、その付近を覆ってしまった。
(タックするためには陰毛を剃る必要があった(実際には焼き切っていた)が、タックしなくなったので、剃らなくなった)
それで陰裂は無いものの、この時点で、もはや女子のお股にしか見えなくなった。歩夢はお風呂の中で自分の身体を鏡に映してみて
「私もう完全な女の子ということでいいよね?」
と思った。
6月3日(金).
歩夢はまた夢を見ていた。
歩夢がセーラー服を着て道を歩いていたら、突然大きな地震が起きる。
とても立っていられない感じがして座り込んでしまった。
すると突然道路に亀裂が生じる。そして道路表面がV字状に傾くので、歩夢は「きゃー」と悲鳴をあげながら、そのクレバスの底まで滑り落ちた。
そこで目が覚めた。
部屋は・・・揺れてない!スマホの地震速報を確認するが、特に大きな地震は無かったようだ。
やはり最近地震が多いから見た夢かなあと思った。
ふと、スマホの時刻に気付く。
うっそー!?
7:50!?
遅刻しちゃう!
急いで制服を着て部屋を飛び出す。
「やっと起きたの?何度も起こしたのに」
と母が言っている。
「ごめーん!行ってきます」
と言って、歩夢は朝食も食べず、トイレにも行かずに家を飛び出し、学校まで必死に走った。
学校に辿り着き、教室に飛び込む。
クラス委員が前に立ってSHR(ショートホームルーム)をしているようだ。
「あゆちゃん、遅刻〜」
「ごめんなさい」
「でもSHR中に来たから、ちゃんと居たことにしとくね」
「ありがとう。あれ?先生は?」
「今日は研修でお休み。昨日言ってたじゃん」
「あ、そういえば」
「しかし君もいい加減、諦めて最初から女子制服で出てくればいいのに」
と言われてSHRの後、女子たちに更衣室に連行され、お着替えさせられた。歩夢は、学校まで走って来て汗を掻いていたので、下着まで交換した。
「あゆちゃんのおっばい、更に成長してない?」
「なんか日増しに大きくなってる気がする」
「Cカップになるのは時間の問題だな」
「し〜〜!?」
「でも、毛が生えてきたのね」
「うん。何か急に生えて来た」
「初潮が来たんだから、これからはどんどん大人の女になっていくよ」
歩夢は、毛が生えて来たおかげで、割れ目ちゃんが無いのを見られなくて済むと思った。
ところが、1時間目の後でトイレに行った時(朝から行ってなかったので、わりと辛かった)、(当然女子トイレの)個室で、おしっこをした時に出方に違和感を感じた。
何だろう?と思い、紙で拭いた後、指で触ってみる。
え?え?
歩夢は家に帰ってから確認しようと思った。
その日5時間目の授業の時、突然教室がガタガタッと揺れた。
わりと明確な地震だった。
でもみんな最近この手の地震に慣れっこになっている。
「結構揺れたね〜」
と先生がいう。
「震度3くらいかなあ」
という声もある。
歩夢は地震が来た瞬間、今朝の夢を思い出したが、震度3程度で、大したことは無かったので安心した。この程度で地面にクレバスができたりはしないだろう。
帰宅後、歩夢はトイレに行った上で自分の部屋に入る。制服のスカート(*29) も脱ぎ、パンティを脱ぐ。手鏡に映してよく見る。
「割れ目ちゃんが出来てる!」
昨日までは無かった、大陰唇ができているのである。
歩夢は今朝の夢を思い出した。
「今日の地震で、地面にはクレバスができたりしないけど、代わりに私の身体にクレバスができちゃったんだったりして?」
などとも考えるが、クレバスができたのは地震が起きる前である。
「これでもう完全な女の子かなぁ」
歩夢は“中”を確認した。
クリトリス、尿道口、ヴァギナ、全てがちゃんとこの大陰唇の中に入っている。完全に女の形になったみたいと思ったが、何か足りない気がする。
「あ!小陰唇が無い」
でも、小陰唇くらいは、いいよね?
「これ開け閉めする練習しなくちゃ」
今日のおしっこが凄く変な感じになったのは、大陰唇をきちんと開けないままおしっこしてしまったせいだと思った。
「それに、お姉ちゃんが、お嫁さんになるためには“閉める”練習って大事なんだよと言ってたし(←意味は分かっていない)」
(*29) 母は歩夢が女の子の格好で“登校”するのは気にするのに、女子制服で“下校”しても何も言わない。世間体とかなら、下校のほうが重要な気もするが?
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