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■春春(6)

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看板の修理が終わった後、神谷内さんは、持参の缶ビールを出して桜坂さんに勧めた。
「頂きます」
と言って、桜坂さんも飲む。井原さんも「頂きます」と言って飲み始めるので、これは井原さんも家族を呼ぶかタクシーで帰さないといけないなと神谷内は思った。
 
神谷内さんと桜坂さんは同期入社である。ただ国立大出身で品行方正の桜坂さんとあまりレベルの高くない私立大出身の上に好きなことを言って、何度も上層部を怒らせている神谷内さんは出世速度に差が出た。それで桜坂さんが5年前からプロデューサーをしていたのに対して、神谷内さんはこれまでディレクターだった。社内では立場上敬語で話していたものの、元々2人は同期の気安さで、職場を離れるとタメ口だったらしい。
 
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「でも飲食店のリニューアルって大変でしょ。設備も更新しないといけないし、従業員もまた雇わないといけないし」
 
「そうなんだよね。前のお店で働いていた人で、井原さんの他にあと2人またやってもいいと言ってる人がいるから、その人たちにも頼む予定」
 
「最初は少人数でやった方がいいだろうね」
「そう思ってる。人を雇うと簡単には解雇できないし、給料は固定費で出ていくから、軌道に乗るまでは、女房や母ちゃんにも手伝ってもらって何とか少人数で回すしかないと思ってる」
 
「設備の更新も大変でしょ」
「実はコロナ以降、かなり客が減ってたんだよ。やはり店がかなりボロだし。換気とかを改善しようにもできない状態で、それで避けられてしまったみたいで」
 
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「そのあたりは改善できる建物とできない建物があるよな」
「本当はこの建物崩して、新たに建て直したほうがいいんだけど、とてもそこまで予算が取れないから、だましだまし使うしかない」
 

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「建て直せば軽く5000-6000万飛ぶよね」
「1億掛かるかもと思ってる」
「恐ろしい」
「金沢で住んでた家も売ろうと思って買い手を探しているんだけど、なかなか見付からない」
 
「場所はF町だったっけ?」
「少し入り込んでて、あそこはM町なんだよね」
「車で通勤するならわりと便利な場所だけどなあ」
 
「でも交通機関に見放されてて。元々あそこは金沢市内でも相場が安い。だから20代でも買えたんだけどね。実はまだローン払ってるから、売れるものなら売ってその代金でローンを少しでも軽減したいくらいなんだけどね」
 
「売ってもローンが残る物件は売却できないと思う」
「実はそうなんだよ。だから頑張って完済まで払っていくしかない」
 
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「大変ですね」
と明恵が思わず横から口を出した。
 
明恵たちは隣のテーブルでおやつを食べながら紅茶やコーラを飲んでいる。
 
「ローンはかなり残ってるの?」
「27歳の時に20年ローンで買ったんだよ。だから実はまだ3分の1残ってる」
 
「それかなりきついね」
「うん。万一そちらの返済が滞ると、ブラックリストに載せられて、こちらのお店でも融資を受けられなくなる。そもそもこちらまで借金の形(かた)に取られる危険がある」
 

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すると幸花が言った。
「ここは、金沢ドイルさんが、どーんとその金沢の家を残ローン額で買い取ってあげるとか」
 
「え〜〜〜!?」
 
「金沢ドイルさんなら1億くらい朝御飯程度でしょ?」
「1億もする朝御飯なんて食べないよ!」
 
などと言っていたら
「さすがに1億の家には住んでない。ローンを組んだのは3000万円で残ローンが900万円くらいなんですよ」
と桜坂さんが言う。
 
「だったら、ドイルさんのおやつ程度だ」
「900万円のおやつってどんなのよ!?」
 
「金箔のミルフィーユとか」
「何それ!?」
「金箔を1000g使えば900万円になりますね」
「お腹壊しそう」
 

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「その家、広さはどのくらいなんですか?」
と真珠が尋ねる。
 
「建坪32坪の平屋建て、敷地面積は60坪くらいです」
「平屋建てなんですか!」
「将来的には、両親を金沢に呼ぶつもりだったんですよ。それで年寄りを住まわせるなら平屋のほうがいいと思って」
「なるほどー」
 
「工法は?」
「在来工法です」
と桜坂さんが言うが、何か後ろめたいような顔をしたので、青葉は訊いてみた。
 
「それもしかしてどこか傷んでたりしません?」
 
「よく分かりますね!実はそうなんですよ。雨漏りしてる所あって」
「築14年で雨漏りは酷くない?」
と神谷内は言うが
 
「在来工法は、工務店の技術力で大きな差が出るんですよ。建てて10年経たない内に廊下の床が抜けてしまった家とか、7-8年で雨漏りが酷くなって2階が使用不能になり、1階だけ使って住んでるという家とか、見たことありますよ。しっかりした家も多いんですけどねー」
と真珠が言った。
 
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「ああ」
 
「僕も後からそういう話聞いたんですよ。どうもうちはハズレの工務店だったみたいで。だいたい材木が節だらけで。曲がってる柱もあるし」
 
「それ住むのが危険なんじゃないですか!?」
と幸花が思わず言う。
 
「かなり酷い所に当たったみたいだね」
と神谷内が同情するように言った。
 
神谷内は、桜坂が家を建てた直後は何度か彼の家を訪問し、泊めてもらったこともあったらしいが、最近は、年頃の娘さんもいることもあり、あまり行ってなかったらしい。
 
「だから既に建物自体は無価値だと思う。すると土地の価値は600万くらいしかないんだよ」
 
「それ実際に売るなら、ローンを完済した上で更地にしないと売れないだろうね」
 
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「そうだと思う。雨漏りするボロ家付きの土地より更地の方が高くなる。だから何とかして900万完済して、それから土地を売ると600万くらい回収できる可能性がある」
 

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神谷内さんが考えている。
 
「退職金いくらもらった?」
「400万もらったけど、取り敢えずカードローンに100万くらいの残高があったのを完済して残り300万くらい」
 
「それなら計算上、今でも金沢の土地売却ができません?」
と真珠が言う。
 
「計算上はね。どこかから600万借りて、金沢の住宅ローンを完済する。すると土地売却が可能になるから、それを600万円で売ると、その売却代金で借りたお金が返せる」
 
「凄い。それで身軽になりましょうよ」
と幸花。
 
「身軽になりたいけどね。でもこの方法には2つの問題がある。ひとつはあまり便利ではない場所だから、売りに出しても実際に売れるまでにはかなり時間がかかる。もうひとつは、そもそも600万借りられるアテが無い」
 
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「銀行は600万円貸してくれませんかね」
「それに見合う担保が無ければ貸してくれないと思う」
「ここの土地は?」
 
「実はお店の改装費用をここの土地を担保に2000万円借りたんだよ。ほんとはこの土地の価値は1500万円くらいしか無いんだけどね」
 
「あぁぁ」
 
「自宅は40坪くらいだから、120万くらいしか評価額無いし」
「土地って実はあまり高くないですからね」
と千里が言っている。
 
東京の一等地の土地(深川アリーナの土地)をポンと110億円(*14)、現金で買った人にはどんな土地も安いだろうな、と青葉は思った。青葉も助けてあげたい気分だが、理由無くそのようなことはできない。
 
(*14) 知事さんは120億と言ったが、議会で「評価額がおかしい」という意見が出て100億に減額された。差額が(今後都との取引を有利にするための)リベートではないかと疑われたのである。それで知事さんは謝って減額されたことを伝え、千里はすぐ消費税を加えた110億円を振り込んだ。
 
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千里は何か考えているようだった。
 
「ちー姉、どうかしたの?」
と青葉が訊く。
 
「桜坂さん、その場所を地図で教えて下さい」
と千里は言った。
 
「はい」
 
それで真珠のパソコンを千里のスマホでテザリングしてネットに繋ぎ、Google Mapを開いて、桜坂さんにその場所をポイントしてもらった。航空写真に切り替えてその家を見る。
 
「きれいに家が映っているなあ」
と桜坂さんは言っている。
 
千里姉は地図上でその土地の広さを測っていた。
 
「間口14m, 奥行き15mくらいかな。それで面積は210平米で坪に直すと64坪」
「はい、そんなものです」
 
「坪10万として640万になりますね」
「近隣の土地を売却しした人が坪9.4万円だったので、それで計算すると600万くらいになるんですよ」
 
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「青葉、この土地、航空写真で見て何か問題とか感じる?」
 
青葉はしばらく見詰めていたが言った。
「磁北から19度の方向に***がある。そこからよくない気が来る。でもこの処理は、ちー姉なら簡単にできるはず」
 
「そうだね。***を爆破すればいいかな」
「ちょっとぉ!」
「ジョークジョーク。八卦鏡でも置けばいいよね?」
「うん。その程度で充分」
 
やはりこの姉妹、性格が違うなあと真珠は思った。青葉さんはいつも真面目だけど、千里さんは80%くらい冗談で出来ている。
 
(残り20%が嘘で出来ていることに、真珠はまだ気付いていない)
 

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「ここ私が700万円で買いましょうか」
と千里は言った。
 
「700万ですか!」
「家は崩さなくてもいいですよ。私の知り合いの工務店に崩させますから」
「工務店のお知り合いがありますか」
 
知り合い、というより所有してるよねと取材陣のメンツは思うが特に言わない。
 
「私が今700万円お支払いしたら、桜坂さん、それでローンを完済できますよね?」
「はい!」
「それで抵当権を消去してもらえません?」
「今700万円を頂けるんですか?」
「その旨の念書を書いて頂けたら、即振り込みますよ」
「本当ですか?」
 
「ちー姉、金沢の土地を買って何するの?」
「性転換病院でも作ろうかな」
「へ!?」
「流れ作業で1日に10人ずつ男の娘を女の子に生まれ変わらせてあげる」
 
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それマジじゃないよね?と青葉は思う、
 
「繁盛するかも」
などと真珠が言っている!
 
「クライアントはベルトコンベヤに乗せられて、まずはヴァギナを作り、割れ目ちゃんを作って、ペニスを切断し、睾丸を除去する。最後におっぱいを作り、退院前に喉仏を削る。6人の外科医が流れ作業で手術する」
 
「なんか順序がおかしい気がする」
と幸花。
 
「ま、それはジョークだけど」
と千里。
 
「それは残念」
と真珠!
 

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「まあマジな話、数日中に何かで必要になる気がするんだよ」
 
「ちなみにエイプリル・フールじゃないですよね?」
と幸花が確認する。
 
「エイプリルフールって明日じゃ無かったっけ?」
と千里。
 
「あれ?そうだっけ?」
と幸花が焦っている。
 
「今日は間違い無く4月1日です」
と明恵が確認した。
 

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桜坂さんはその場で念書を書いて、署名捺印した。すると本当に千里は桜坂さんの口座に700万円振り込んだ。残高を見てびっくりしている。
 
「では銀行の手続きが終わったらご連絡下さい」
「分かりました!月曜日(4/4)にも金沢に出てやってきます」
「よろしく」
 
神谷内さんは、桜坂さんと井原さんに、各々奧さんに連絡してもらい、迎えにきてもらった。桜坂さんの奧さんは、白い虎の件で驚き、金沢の土地を買ってもらった件で更に驚いていた。2人とも、奧さんの運転する車で帰って行った。(結果的に、桜坂さんと井原さんが朝乗ってきた車は置き去り)
 
それから取材班はホテルに引き上げた。
 

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そして夜にまた出掛け“再現ドラマ”(ほぼ、でっちあげドラマ!)を撮影した。
 
白い虎はお肉の絵を描いたキャンバスの中に封印された(ことにした!)そしてこの“虎のお世話”は遙佳がすることになり、彼女は「虎さんがごはんに困らないように」その絵を父が経営するレストランに飾っておくと言っていた。
 
※放送時には「この絵は元々遙佳さんに目撃した虎の記憶を元に描いてもらった絵です、この番組は報道番組ではなく、あくまでバラエティです」というテロップが流れた。でも多くの視聴者は金沢ドイルが何らかの方法で虎を封印したのだろうと思ったようである。この番組はこれまでもしばしば最終的な処理方法はぼかしている。
 

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真珠は遙佳を自宅まで送っていき、他のメンツはホテルに引き上げた。
 
真珠がホテルに戻ると、明恵から呼ばれる、初海も来ていて、3人でケーキを食べながら打ち上げをする。
 
「思うに、虎ちゃんは、ずっとレストランに住み着いてて、おかげで食事にも困らなかったんじゃないかなあ。でもそのレストランがオーナーさんが亡くなり閉鎖された。それでお腹空いて夜中に出歩いて、妖怪とか鬼とか食べてたのかも」
 
と初海は言った。
 
「あり得るね。だったら虎の絵を遙佳ちゃんが自分のお父さんのレストランに飾ると言ってたから、本当にそれで御飯がゲットできるようになるかも」
と明恵も言う。
 
「御飯もらえる代わりに遙佳ちゃんのお父さんのお店を守ってくれたりして」
と真珠は言った。
 
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