【竹取物語2022】(8)帝の求婚

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帝の求婚。
 
語り手「かぐや姫というのが類い希な美人であるという評判を帝(みかど)、つまり天皇がお聞きになって、内侍(ないし (*142))の中臣房子という者を召して、言いました。『多くの男の身を滅ぼしてそれでも結婚しないらしいかぐや姫という女。いったいどれほどの美人なのかお前が見てきなさい』と」
 
それで中臣房子(小野寺イルザ:友情出演)が侍女たちを連れてかぐや姫の家を訪問しました。
 
侍女たち:竹原比奈子・神谷祐子・山道秋乃・水端百代 (Flower Sunshine)
 
最初、女房頭の藤(花園裕紀)が出ますが、帝の使いというのに驚いて、竹取媼(入江光江)が出て来ます。お店のほうに居る竹取翁のところにも使いを走らせます。媼は中臣房子に応接間の上座を勧めてから、伏して問います。
 
「このように汚い所に大変恐れ入ります。どういうご用件でしょうか」
 
中臣房子が言います。
「私は、かぐや姫と言うのがたいそうな美人という噂なのでどれほどの美人か見て参るよう帝(みかど)に命じられたのです」
 
「分かりました。伝えて参ります」
 

(*142) 中臣房子は、内侍司(ないしのつかさ)の長官である尚侍(ないしのかみ)であったと思われる。この時代は尚侍(ないしのかみ)が本当に内侍司の長官を務めていた時代である。
 
内侍司(ないしのつかさ)は天皇の秘書室であり、多数の女官(女孺:にょじゅ)で構成される。男性職員は居ない。女孺たちは文などに勝れ知識も豊富な超エリート女性たちであったと思われる。女性だけで構成される部署は最初は多数あったのだが、全てここに統合されてしまった。
 
内侍の女官たちのもうひとつの役割は賢所(かしこどころ)におかれた三種神器(*143) のひとつである、八咫鏡(やたのかがみ)を守ることである。
賢所(かしこどころ)は内侍の女孺たちが詰めていることから“内侍所”(ないしどころ)と呼ばれることもある。この鏡の守護のため、霊感の発達した女性も多く採用されていたと思われる。
 
かぐや姫は実は内侍司の女孺として超適格である!
 

(*143) 三種神器(さんしゅのじんぎ/みくさのかむたから)は下記の3つである。
 
(1) 八咫鏡(やたのかがみ)。本体は伊勢の内宮(ないくう)にあり、皇居賢所にあるのは、あくまでも分霊(レプリカ)である。そもそもこの鏡の本体を祭る場所として伊勢の神宮が作られた。この分霊は平安時代に度重なる内裏の火災で焼損し、新たな鏡が鋳造されて、焼損した鏡の破片と一緒に収めてある、
 
(2) 天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)別名草薙剣(くさなぎのつるぎ)。本体は名古屋の熱田神宮境内某所(*144) にあり、分霊が皇居の天皇の寝室である夜御殿(よるのおとど)にある。
 
壇の浦の合戦で失われたのは皇居にあった分霊のほうである。合戦の後で海中から剣を発見したという報告があったものの神宝の剣ではないと判定された。その後、伊勢の神宮にあった別の古い剣が新たな分霊として皇居に納められた。
 
(3)八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)。本体が夜御殿(よるのおとど)にある。天皇の最も重要なお仕事は、剣と璽の番をすることである!
 
三種神器は全て箱に入っており、この箱は天皇でさえ開けることを許されない。しかし重みや振った時の音で中に何か入っていることは確かである。
 
(*144) 公式には熱田神宮の本殿にあることになっているのだが、戦後進駐軍により(武器とみなされて)接収されることを恐れて境内のある場所に隠し、その後そのままになっているという説がある。妄説かもしれないが、ありうる話という気もする。でも境内にあることは確かだと多くの霊能者が言う。それらしき波動をある場所で感じるらしい。
 

平安時代になると、天皇の女御(妻)になる女性をいったん尚侍(ないしのかみ)にしてそれから女御に昇進(?)させる、または女御にできないような身分の低い家出身の女性を尚侍の名目で事実上の妻とすることが多くなり、内侍司の事実上の長官は本来次席である典侍(ないしのすけ)になった。
 
更に時代が下り、平安中期頃になると、この典侍まで事実上の天皇の妻になってしまい、内侍司の事実上の長官は本来は第3席である掌侍(ないしのじょう)になってしまう。現代の会社で言うと、社長秘書室長と社長秘書室副室長が実は社長の愛人で、社長秘書室長代理が事実上の秘書室の責任者である、みたいな話である!
 
しかし奈良時代は、まだ、内侍司の女官は本当に天皇の秘書をしていた。
 
『とりかへばや物語』で女の子として育てられた兄君は尚侍(ないしのかみ)として宮中に行き、女性皇太子の秘書を務めていて、皇太子に“犯られてしまう”(逆レイプ)。
 
「ひつぎのひめみこ様、なりませぬ」
「よいではないか、よいではないか。お前が男だから悪いのだ」
 
尚侍は最終的には天皇の妻になるが最初から妻にするつもりで尚侍にしたわけではない。
 

藤と桐が「粗末なものですが」と言って麦湯とお菓子を中臣房子と侍女たちに勧めている間に、媼はかぐや姫の部屋に行きます。
 
「かぐや、帝(みかど)のお使いが来て、あなたがどれほどの美人なのか見たいとおっしゃっています」
と翁が言いますが
 
「私は別に美人でも無いので会いません」
と、かぐやは言います。
 
「何を言っているのです?帝のお使いですよ。粗末には扱えないでしょう?」
「別に私は恐れ多いとも思いません」
 
かぐや姫がどうしてもお使いに会わないと言うので媼も困ってしまい、応接間に戻って、中臣房子に伝えます。以下、媼は何度も応接室とかぐや姫の部屋を往復して双方の言葉を伝えることになります。
 
「私は帝が興味を持って頂けるような家の女でもありません。山の中から出てきた卑しい身分の女です」
 
「低い身分の女でも宮仕えしている例は多数ありますよ。私は帝からかぐや姫を見てくるよう命じられました。かぐや姫を見ずに帰ることは許されません。この国に住んでいる者が帝の命令に従わないとは、どういうことです?」
 
「帝の命令に従わない不届き者ということならば、私を死刑にしてください」
 
語り手「中臣房子もかなり頑張り、竹取媼も何度も両者の間を往復します。お店から戻って来た竹取翁も恐縮して媼と一緒にかぐや姫を説得するのですが、どうしてもかぐや姫は出て来ません」
 
「数時間に及ぶやりとりをして、とうとう中臣房子も根負けしました。それで帝の所に戻り、どうしても会ってくれなかったことを報告します」
 

ここで帝の姿が初めて映像に出る。
 
アクア扮する帝(みかど:天皇)が中臣房子(小野寺イルザ)の報告を聞きます。
 
「かなり時間を掛けて説得したのですが、自分は美人でもないし身分も低い田舎娘なので会わないと言って出て来てくれないのです。この国に住む人が主上(おかみ)のお言葉に従わないとはどういうことです?と言ったのですが、不届き者ということであれば死刑にして下さいと言って、言うことを聞かないのです」
 
帝(アクア)は笑って答えます。
「さすが多くの男を破滅させ、死なせた女だな。稀に見る強情な女とみた。そんな女は放っておこう」
 
「はい」
「そなたも大儀であった」
「ありがとうございます」
 
(視聴者の声:なるほどー。アクアは帝と二役か。アクアは女役だけはしないからね」「アクア姉がかぐや姫でクア弟が帝かな」「だったら最後は帝と結婚してハッピーエンドかな」)
 

語り手「帝もこの時は、そんな強情な女のことは忘れてしまおうと思いました。それでどこどこの皇女だとか、どこどこの王(*145) だとかとの婚儀の話、また様々な重臣の娘とかとの縁談の話をしていたのですが、どれもあまりパッとしない女であったり、純粋培養で面白みの無い娘であったりします。文など書いても返事が全部明らかな代筆です」
 
(*145) 現代では天皇(過去の天皇を含む)の男系子孫で2親等以内の者(子・孫・兄弟姉妹)を、男性は親王、女性は内親王といい、それより血統が遠い者は、男性は王、女性は女王という。この親王・内親王が当時の皇子・皇女に相当する。ただし当時の運用は結構恣意的である。天皇の子でも皇子・皇女になれない場合もあるし、多少親等が遠くても皇子・皇女になる場合もある。
 
また当時は王・女王は性別によらず、どちらも王と呼んでいた。だから“額田王”(ぬかたのおおきみ)は女性だが王である。のちに女性は特に女王と書くようになった。
 

「その内、ふとかぐや姫のことを思い出しました。皇子だろうか大納言であろうが、言うことを聞かない。そんな強い娘は、めったに居ないでしょう。それで帝は竹取翁を宮中に呼び出します。竹取翁は驚き、正装して参上しました。竹取翁は宮中の作法など全く分からないので、草笛皇女の所の女房に付添いをお願いしました」
 
御簾の中の帝と清涼殿の庭に伏した竹取翁(藤原中臣)が話します。そばに草笛皇女の所の女房(七尾ロマン)も一緒に伏しています。
 
(竹取翁は殿上人ではないので清涼殿に上がることはできない)
 
(この場面はアクア無しで撮影している。撮影時の代役は早幡そら。後日アクアがアフレコした)
 
「そなたの孫娘を私にくれ」
と帝(みかど)は単刀直入に言いました。
 
竹取翁は庭に伏した姿勢のまま申し上げます。
 
「大変恐れ入ります。先日御使いの方がいらしたのに、大変失礼なことをしてしまいました。しかしあの娘はとうてい宮仕えなどしそうにありません。自分は身分も低いし、美人でもないしなどと申しております」
 
「ほんとに面白い女だな。その強情な所が気に入ったぞ」
「面目ございません」
「身分が低くて会えないというのであれば、さぬきの造(みやつこ)よ、そちに五位の位(*146)を授けよう。そなたが貴族であれば、身分が低いからということもあるまい」
 
「ははぁ。そのように娘に伝えます」
と言って竹取翁は下がった。
 

(*146) 原文は“かぶり”(冠)。貴族に取り立てるということで、具体的には従五位下(貴族の中でいちばん下の位階)を与えることを意味する。この位にある男性を大夫(たいふ)、この位の女性を命婦(みょうぶ)と呼んだ。
 
(命婦は大夫の妻ではなく本人が五位である女性。日本では位階は男女ともに与えられた。もっとも同じ位階にあっても女性は給料が安かった!)
 
なお大夫(太夫)という言葉は、東宮太夫など職名を表す時は“だいぶ”と読み、五位の男性の意味で使う場合は“たいふ”と濁らずに読む。
 
貴族の一番下(通貴)ではあるが、地方ではこれに叙せられるのは物凄い名誉であり、後の時代には実際の位階によらず、また性別によらず、偉い人への尊称として使われ“たゆう”と読まれるようになった。
 

それで竹取翁は、家に帰ってかぐや姫に伝えます。
 
「帝(みかど)が私に五位の位階を授けると言ってる。お前も貴族の娘ということになるから、身分が低いからといって遠慮することはないぞ。帝の元に参上しなさい」
 
(この場面もかぐや姫は御簾の中に居る。竹取翁はかぐや姫の部屋の中で座って会話する。もちろん撮影時は早幡そらが代役する。つまり、早幡そらと藤原中臣は、セットだけ移動して同じ組み合わせで会話している!)
 
「父上、私は帝(みかど)とは結婚しません。五位の位を授けるから結婚しろというのでしたら、父上その位をもらってください、私は宮中に参上した上で、帝に抱かれる前に自殺します」
 
「自殺するなどとたやすく言うものではないよ。子供を失うことが親にとってどんなに辛いことだと思う?」
 
「私の言うことが嘘だとお思いなら、試しに結婚させてみてください。そして私が翌朝まで生きているか、お試しになるとよいでしょぅ。私のために5人の方々がご苦労なさって、財産を無くしたり(車持皇子のこと)、行方不明になったり(石作皇子のこと:彼は世間的には行方不明だが、かぐや姫や車持皇子などは実情を知っている)、命まで落とした(中納言・石上麻呂のこと)方まであるというのに、帝(みかど)がお召しになったら、ひょいひょいと靡くようでは、亡くなった方があまりにも可哀想です」
 
「これ以上そのような気の毒な人を出さないように、お前もいい加減結婚したほうがいいと思うのだけどね」
 
翁はそれでもかぐや姫の説得を試みたのてすが、どうしてもかぐや姫は、うんと言いませんでした。
 

竹取翁は宮中に参上して、位階は辞退することを伝えた上で、かしこまって報告します。翁は清涼殿の庭に伏しています。草笛皇女の女房も一緒に伏しています。帝は御簾の中です。
 
「娘は、どうしても結婚したくないと申しております。無理にお召しになったら自分は死んでしまうと申しているのですが如何致しましょうか」
 
「ほんとに強情な娘だな!」
と言って帝(みかど)はとても楽しそうです。
 
「朕(ちん)はますます気に入ったぞ」
「恐れ入ります」
 

帝は少し考えてから言いました。
 
「よし。かぐや姫が宮中に来ないのであれば、朕(ちん)がそなたの家に行こう」
「え〜!?私の家はたいへん粗末なもので、とても主上(おかみ)にお越し頂くような家ではございません」
 
「構わぬ。正式の御幸(みゆき)をすれば姫も警戒するだうし、狩りにでも行くような振りをして、途中そなたの家に立ち寄ろう(*147)。そして姫の部屋にそのまま押し入れば何とかなるだろう」
 
レイプ宣言!
 

(*147) 原文「造麿(みやつこまろ)が家は山本近かなり。御狩りみゆきし給はんやうにて見てんや」。
 
ここで「見る」はもちろんセックスしちゃうという意味!
 
“山本”は山の麓という意味で、ここだけ読むと竹取翁の家は最初にあった竹を採るのに住んでいた場所から移動していないようにも見える。しかし5人の貴公子が毎日通ってきていたという記述があったから、家は都またはその近くに移動していたはずである。これも複数の物語を合体させる際に起きた不整合か。
 
ここでは山の麓にかぐや姫の家があるという設定は採用しなかった。
 

「もったいのうございます。確かに有無を言わさず会ってしまえば(犯っちゃえばという意味)あの娘も受け入れざるを得ないでしょう」
 
「日取りは決めないぞ。突然行くぞ」
「分かりました。家の者にも何も言わないことにします」
 
それで翁は取り次ぎの女官(大仙イリヤ)に筆と紙を乞い、自分の家の見取り図を描いて女官を介して帝に献上しました。
 
(視聴者の声「アクア弟がアクア姉をやっちゃえば近親相姦なのでは」「お芝居だし。『ロミオとジュリエット』でも『白雪姫』でも『陽気なフィドル』でもアクアとアクアでキスしてたぞ」「そもそも、アクア弟にちんちんとか無いはず」「ちんちんなんてとっくの昔に取ってるよね」「そそ。男だというのは戸籍と意識だけの問題で身体は既にほぼ女同然のはず」)
 

「ただ恐れながらお願いがあるのですが」
「申してみよ」
 
「私の家には、かぐやを狙って、毎日のように不逞(ふてい)の男が侵入を試みては、警備の女房に撃退されております。主上(おかみ)がおいでになった時何も目印が無いと、その手の者と間違えられて警備の者に叩き出される恐れがあります」
 
「ほほお、そうなるとどうなるのじゃ?」
「木刀で叩かれて、矢を射かけられて、それでも撤退しなければ最後は斬られるかと」
「あはは。それは面白い。矢を射かけられてみたいものだ」
と帝がおっしゃるので竹取翁は恐縮しています。
 
帝は少し考えてから
「しかし斬られるのはあまり心地良くない。造麿(みやつこまろ)、そちが何か目印になるものを朕(ちん)に賜れ(*148)」
 
「ははぁ」
 
それで竹取翁は少し考えた上で、紙に「月月月」と書き、隅に「竹」と書いて女官に渡しました。
 
「ではその日はこれを持って行くことにしよう」
 
(*148) 時代劇でよく使われる「たもれ」(「たまはれ」の縮約形)は中世以降の形でこの時代には無い表現。
 

映像は翡翠の首飾りを着けて、うっとりと銅鏡を見る、大納言の奥方(桜野みちる)。
 
「素敵ね〜。あの人、また浮気しないかしら?また首飾りをねだるのに」
 
画面の隅に現代の服を着た森原准太が小さく映り
「もう勘弁して〜」
と言う。
 

語り手「その日、帝(アクア)は、狩衣(かりぎぬ)姿で、ごく少数の供のみを連れてかぐや姫の家に来ました」
 
護衛(赤石:新田金鯱、白岩:タイガー沢村)
女房(近江:原町カペラ、中川:石川ポルカ)
連絡係・山口少将:花貝パール(男装)
 
★音楽:薬王みなみ『姫狩り』
 
“グーテルバッハ作曲『インドの虎狩り』に加糖珈琲が歌詞を乗せたもの”と表示された直後、その下に
“↑真っ赤な嘘です”と表示された。
 
かぐや姫の取次ぎの藤(花園裕紀)が応対に出ますが、帝は
「これを翁に」
と言って、「月月月」と書いた紙を渡します。藤は首をひねりながら紙を翁に渡しました。翁もいつ帝がいらしてもいいようにここしばらくは店に行かず、家の方に居ました。藤には
「麦湯と最上級のお菓子と果物をお出しして」
と言って、すぐ飛んできます。
 
帝は護衛の2人と女房の1人にはここに留まるよう言い、ひとりの女房のみを連れて、静かに物音を立てないように、翁の後に付いて廊下を進みました。
 

この日、かぐや姫は天気も良いので、部屋の表の御簾を降ろし、自分は帳台から出て、桃と箏の合奏をしていました。音を鳴らしていたので、足音に気付きませんでした。
 
唐突に翁と一緒に狩衣姿の男性、そしてそのお付きっぽい女房が現れたので、かぐや姫は驚いて帳台に入ろうとします。しかし狩衣姿の男性は部屋に駆け込むようにして、かぐや姫の手を掴みました。警備の松と竹は、翁が一緒なので戸惑っています。かぐや姫は自分の袖で顔を隠しました。
 
帝はひと目かぐや姫を見て、なんという美女なのだろうと思いました。この美貌に迷って男たちが身を滅ぼしたのも納得だと思いましたが、彼女の顔はあることを思い出させました。
 
「怖がらなくて良い。朕(ちん)は帝(みかど)である」
 
帝ということばを聞いて、かぐや姫の一番近くにいて、姫と“乱暴な男”との間に身体をわりこませようとしていた桃は仰天しています。駆け寄ろうとしていた松と竹も呆気にとられています。
 
「その顔をもう一度見せなさい」
「嫌です」
 
なるほど、帝という名前を聞いても恐れ入りもせず、言うことも聞かないのは本当に大した女だと帝は思いました。
 

「乱暴なことはしないから(←犯る気満々)逃げないで」(*149) (*150)
 
と言って帝は手を放して座りました。かぐや姫も袖で顔を覆ったまま座ります。(実際に袖で顔を覆っているのは早幡そら!)
 
桃は厳しい表情でかぐや姫の隣に座り、かぐや姫の後ろには桜と橘が寄ってきて座りました。松と竹は所定の位置に戻ります。桃は万一帝が乱暴なことをしてかぐや姫が嫌がったら、斬り捨てられたり死罪にされること覚悟でそれを妨害するつもりでいます。
 
紫は翁に促されて、麦湯とお菓子・果物を差し上げるために出て行きます。帝は自分に付いてきた女房の近江に何か囁き、何か文を書いて渡します。近江が出ていきます。近江が退出したので、すぐに中川が代わりにこちらに来ました。
 
(*149) 男の「何もしないから」は絶対嘘だし、女の「何でもいいよ」は絶対嘘。
 

(*150) 原作では帝がかぐや姫を捉まえようとすると「かぐや姫、きと影になりぬ」とある。“きと”は急にという意味である。北陸方言では、魚などが新鮮なのを“きときと”と言うが、この言葉の類語か。この“影”の解釈に竹取物語の翻訳者はみんな悩んでいるが、もしかしたら光の塊と化したのかも。元々が光輝く姫だし。
 
どっちみち物理的に捕まえることができない状態になったものと思われる。物凄くSF的な展開である。
 
ここではその展開は採用しなかった。
 

帝は言いました。
「お主の顔には見覚えがあるぞ。今から14年くらい前。お主、崖から落ちそうになったことがあったろう?」
 
翁が「あっ」という声を挙げます。駆けつけて来ていた媼も同じように声をあげます。
 
「あの時助けて頂いた」
と翁。
「うむ。あれがまだ東宮(はるのみや)にもなる前の私だよ」
と帝。
 
それを聞いて、かぐや姫は初めて袖をおろし、素顔を見せます。帝はあらためてかぐや姫を見て、美しく育ったなあと思いました。
 
「あの時私は、お互いにもう少しおとなだったら求愛したいと言った」
「確かにおっしゃいました」
「もうお互いにおとなになった。あらためてそなたに求愛したい」
 
「仰せには応じかねます」
とかぐや姫は笑顔で答えます。
「ははは。本当に強情な女だな」
と帝も笑っています。
 
(この場面、帝とかぐや姫は向かい合って座っており、カメラは交互に双方の顔を映す。片方は後姿である。その後姿を演じているのは実は今井葉月と早幡そら)
 
帝の護衛2人もこちらに来て、最初は松と竹の近くで立って控えましたが、お互い落ち着かないので、右側に松と竹、左側に帝の護衛、と位置替えしました。
 

ふたりの会話は穏やかに続きます。会話をしている内に垣を乗り越えて侵入しようとした男がいたので、速攻で竹に排除されました。
 
「凄いな」
と帝。
「日常茶飯事なのでもう気にならなくなりました」
とかぐや姫。
 
やがて、宮中まで往復して来た山口少将(花貝パール)が戻って来て帝に笛を渡しました。
 
「主上(おかみ)、持って参りました」
と言って細長い繻子(しゅす:サテン)の袋を渡します。帝はその袋から笛を取り出しました。
 
「これはあの時、お礼にともらった笛だよ」
「そんなものを取っていてくださったなんて」
 
帝が笛を吹きます。かぐや姫は箏を引き寄せその笛に合わせて合奏しました(*151).
 
(*151) 笛を吹いているのは狩衣を着て後姿の今井葉月、箏を弾いているのは女性衣裳のアクア:実はアクアM!。Fの方は狩衣を着けて別室で待機している。役割交替する時は、女性衣裳の早幡そらと狩衣のFに交替する。
 
MとFはたいていFが男役、Mが女役をしている。性別逆で演じるのは、Fの女装とMの男装では同一人物に見えないからである。
 
本来は狩衣と女性衣裳の着替えには1時間掛かるがアクアは控室に入ると5分で出てくるので、やはりアクアは2人いるんだろうなと、多くの人が思っている。
 
早幡そらも一応箏が弾けるがアクアほどうまくはないので音はアクアが弾いたものを活かしている。でも一応箏が弾ける人なので、わりとちゃんと絵になった。
 

帝がかぐや姫の家に行幸なされたことを知って群臣がかぐや姫の家に集まってきます。藤と紫に桐まで動員されて、その方々の応対に走り回ります。来た人の中には、あの大伴大納言まで居ました!阿倍御主人は代理を派遣していました。しかし集まった人たちは、笛と箏の合奏の音が流れてくると
 
「なんて美しい合奏だ」
「この笛は主上(おかみ)ですな」
「箏がかぐや姫かな」
「美しく響き合っている」
と褒め称えました。
 
(まあ帝の演奏をけなす人はいない!でも視聴者は「さすがアクア。美しい」と言った)
 
応接間のほうは次第に宴会になっていったようです。翁と媼は多分このまま帝はかぐや姫を宮中にお連れになるだろうと思い、応接間のほうの応対に出ました。また翁は、帝がこんな粗末な家に泊まることはないだろうとは思ったものの、念のため紫に床の用意を命じました。
 

帝とかぐや姫の語らい、そして時折する合奏は、夜中まで続きました。
 
「かぐや、僕(*152)はもう君を離せない。僕と一緒に宮中に行こう」
と帝は言います。
「嫌です」
とかぐや姫は笑顔で答えます。
 
帝は苦笑します。
「あるいは造麿(みやつこまろ)が床を用意してくれているらしい。そこで僕と一緒に休まないか?」
 
「夜遅いですし、どうぞお休みになってください。私はこの部屋で寝ますから」
 
女童の2人はもう遅いので休ませて、かぐや姫のそばには桃だけがいます。もちろん松と竹もいるので、何かあっても?安心です。
 
帝は頭を抱えて苦笑します。
「ほんとに君は凄い女だよ。仕方ない。後ろ髪を引かれる思いだけど今日は帰る」
「はい」
「また来てもよいか?」
「このような粗末な家でも良ければいつでもどうぞ」
「君とおしゃべりしたり、合奏したりできるよね」
「私のつまらない話や、つたない箏や和琴でもよければいつでも」
 
(*152) “朕(ちん)”というのは、あくまで天皇が公的な場で使う1人称であり、プライベートな場では“わたくし”とか“ぼく”を使う。“ぼく”を使うのは基本的に同母の兄弟姉妹や、妻とその側近などくらいである。帝はかぐや姫とすっかり打ち解けている。
 

それで帝はまるで自分の魂がずっとここに留まってるかのような気持ちで、お帰りになることになったのです。帝はお立ちになる前にかぐや姫に歌を書きました。
 
「帰るさの行幸(みゆき)もの憂く思ほえて背きてとまるかぐや姫ゆゑ」(*153)
 
(*153) 「帰るさ」の“さ”は移動を表す動詞の終止形に付く接尾語で、〜の時、〜の途中という意味。「背きて止まる」は、自分の心が身体の移動に背いて留まるという意味と、かぐや姫が自分の意向に背いてここに留まるという、2つの意味を掛けている。
 
「帰りの行幸がとても辛く思える。私の心は帰らずにここに留まるし、かぐや姫は私に背いて宮中に来てくれないし」
 

かぐや姫は返歌をします。
 
「葎(むぐら)生ふ下にも年は経ぬる身の何かは玉の台(うてな)をも見む」(*154)
 
(*154) 葎(むぐら)は蔓草の類いで、転じて雑草全般を言う。玉の台は現代風に言うと“玉の輿”。
 
「雑草が生えているような貧しい家で長く暮らしてきた私がどうして玉の台などに昇ることができましょうか」
 

かぐや姫の返歌を見て、帝はまた帰りがたい思いになりましたが、かといっていつまでも帰らない訳にもいきませんので、仕方なくお帰りになりました。
 
その後帝は、後宮に入っている他の女性のところにお渡りになることもなく、ずっとひとりでお休みになっていました。そして度々かぐや姫のところに文をやり、かぐや姫も帝にはちゃんとお返事を書きました。
 
帝はまた少数の供だけを連れて唐突にかぐや姫の家を訪ねることもありました。かぐや姫もにこやかに応対して、楽しくおしゃべりしたり、楽を合わせたりします。帝が笛や琵琶を弾き、かぐや姫は箏や和琴を弾きました。
 
また囲碁や双六で対戦することもありました。
 
「かぐや、この対局で僕が勝ったら契ってくれ」
「いいですよ。勝てたら」
 
それで対局するのですが、かぐや姫は帝相手に全く手加減しません。ことごとくかぐや姫が勝つので、帝はどうしても、かぐや姫と契ることはできなかったのです。
 
「全くお前は本当に手加減せんな」
「臣下の方ですと、恐れ多いから自然に自分が負けるのでしょうね」
と言ってかぐや姫は笑っていました。
 
帝が度々おいでになるので、竹取翁は隣接する家を買い取り、そこに立派なお邸を建てました。規模は小さくても良い調度を揃えた家です。お付きの人たちが休みながら待てる部屋も用意されています。帝が行幸なさった時は、かぐや姫はそこで帝の応対をしました。
 
この別邸はいわば帝の離宮のようなものとなりました。ここでお休みすることもできるようにしていたのですが、帝がお泊まりになることはありませんでした。
 

しかし帝がかぐや姫の家に行幸し、かぐや姫の私室に長時間籠もっていたこと、その間にお付きの者や群臣なども集まって華やかな宴がおこなわれたことから世間の人は、帝とかぐや姫は“成った”ものと思いました。
 
女性の私室に男性が来て長時間過ごしたのなら、当然セックスしたのだろうと思うのが普通です。
 
更に隣に事実上の離宮が建てられたことから、かぐや姫は帝の事実上の妻になったのであろうと思いました。
 

人々は噂しました。
 
市井の女3(鹿野カリナ)「かぐや姫は帝を狙っていたのか。そんな大物を狙っていたのなら、皇子様とか右大臣・大納言に求婚されても応じなかった訳ね」
 
市井の女4(豊科リエナ)「それがさ、帝とかぐや姫は小さい頃に出会ったことがあって、その時結婚の約束をしていたらしいよ。だからかぐや姫は、その人に出会うことが無いかも知れないけど、その人に操(みさお)を立てて今まで誰からの求婚にも応じてなかったんだって。でも会ってみたらその時の人だったことが分かってそのまま逢った(セックスした)らしいよ」
 
市井の女3「そんな話があったんだ?だったら純愛じゃん」
 
市井の女4「だよねー。私もかぐや姫って冷酷女かと思ったけど、実は一途な女だったのね。かぐや姫を見直したよ」
 

車持皇子が隠れ住んでいる小屋に、女房装束の旅村と平民の男物の服を着た坂口が荷物を持って入って来ました。
 
★音楽:常滑舞音『素敵な山の秘密基地』
 
「皇子(みこ)様、食料を持って来ましたよ」
「おお、すまんすまん。助かる」
 
それで旅村と坂口の2人で荷車から荷物を降ろします。
 
「皇子様もそろそろ山を降りられませんか?」
「世間の様子はどうだ?」
 
「かぐや姫様、帝(みかど)と結婚なさいましたよ」
 
「え〜〜!?あの女、帝を狙ってたのか。道理で私や石作に冷たくした訳だ」
「帝も凄いです。いくら参上しろと言っても出て来ないから、かぐや姫の家に押し掛けて行って、そのままやっちゃったそうです」
 
「それはまた強引な。私もそうすれば良かった」
「普通は木刀で叩かれて、矢を射かけられて最後は太刀で斬られますね。帝だから警護の女房も手を出さなかったんですよ」
「うむむ。帝の特権か」
 

「でも帝とかぐや姫って、6歳の時に出会っていたらしいですよ」
「6歳!?」
 
「かぐや姫が危ない所だったのをまだ東宮(はるのみや)にもなる前の帝が助けたらしいです。その時帝はかぐや姫に求婚していて、だからかぐや姫はその人に再会することがあるかないか分からないけど、ずっと操(みさお)を立てていたらしいです」
 
「そんな話があったのか。だったらいい女じゃないか」
「ですよね。それでかぐや姫はいまだに宮中には参内してないのですが、もう実質、帝の嬪(*155) になられたので、草笛皇女殿がかぐや姫の後ろ楯になられたんですよ」
「ほほぉ」
 
(*155) 嬪(ひん)とは。天皇の妻のランクで、皇后・妃・夫人に次ぐ最下級の妻。最下級ではあってもここまでは正式の妻である。定員があり、皇后1名、妃2名、夫人3名、嬪は4名。しかし後に妃・夫人は用いられなくなり、平安時代になると嬪の別名“女御”が用いられるようになる。結果的に天皇の妻は皇后(別名中宮)と女御という構成になる。
 
更衣・御息所(みやすどころ)などは定員外の事実上の妻である。
 

「まあそんな状況だから、もう山を降りてもいいと思いますよ」
「どうすっかなあ」
と皇子は呟きながら旅村が持って来た竹細工の箱を引き寄せます。
 
「これは菓子か何かか?」
「あ、それ美味しいんですよ。皇子様もどうぞ」
 
それで皇子は蓋を開けたが、皇子は中を見て絶句する。
 
「これは何だ?」
 
「かぐや姫のお店、別店舗でお菓子屋さんを始めたんですよ。麦菓子とかも美味しいんですけどね。自分の家ではお菓子を作る職人を雇えない中級貴族に随分売れているみたいですよ。これ“玉の枝・煎餅”というんですよ。例の玉の枝の形をしたお煎餅で、白玉の所は柔らかい麦菓子が塗られていて今都で評判なんですよ」
 
映像には“赫夜菓子舗”という看板が掲げられたお店、そしてお客様に様々な菓子を見せている店長の小夜(松梨詩恩:友情出演)(*156) と助手(筒木サリナ)が映る。
 
後で出てくるが実は小夜は、かぐや姫の乳母子(めのとご)である。つまりかぐや姫の乳母・垂女の子供で、かぐや姫と乳を分け合って飲んで育った子である。
 
お客さん:水森ビーナ、美崎ジョナ
 
(*156) 松梨詩恩はアクアの高校時代の同級生なので、その縁からの友情出演である。
 

「これが都で人気なのか?」
「ええ。利益の半分は草笛皇女様が取ることになっています」
「だめだ、だめだ、とても降りられん」
「気にしなくていいのに」
 
「ところで旅村く〜ん、しちゃダメ〜?」
「ダメです!」
と旅村。
 
「だってもう5年くらいしてないんだよ。辛いよぉ」
と皇子。
「だから山を降りればいいのに」
と坂口。
「だって」
 
「でも毎回襲われてはたまらないし、いつまで私も貞操守れるか分からないから用意しましたから」
「用意って?」
 
(視聴者の声「さくらちゃん、無事だったんだ?良かったぁ!」)
 
「入ってきなさい」
と坂口が言うと、恥ずかしそうな顔をして入ってきたのは、美女とお付きの女房・女童である。
 
玉姫:平田留美!(招き猫バンドのベーシスト"Lucy"。もちろん男の娘♥)
女房:(鱈)大崎忍・(鯛)木下宏紀
女童:(谷)甲斐絵代子・(滝)直江アキラ
 

「山田少納言の子で玉にございます。皇子(みこ)様、身の回りのお世話をさせていただきます」
と姫が自分で挨拶しました。
 
「おお、そうかそうか。可愛いな」
と皇子はご機嫌です。
 
「しかしこれだけの人数が暮らすにはこの小屋は狭すぎるな」
「大丈夫です。すぐに邸を建てさせますから」
と言って旅村は外にいる大工たちに声を掛けます。
 
「始めてくれ」
「はい」
 
それで15人ほどの男たちが作業を始めました。彼らは実は姫君と女童たちの輿をここまで運んでくれました。女房たちは馬に乗って来ました。
 
「待て。あまり大きな館を建てると目立って、私がここにいることがバレる」
「大丈夫です。今更です」
「そんなぁ!」
「車持皇子は山の中に引き籠もっているらしいと都では既に噂されていますし」
「あはは」
 

「まあ“最初は”女5人と皇子様だけ住む小さな邸(*158) ですから、そう目立たないと思いますよ」(*157)
「だったらいいかな」
 
(*157) “最初は”ということばに録画や再放送を見た人が大笑いした。
 
(*158) “やかた”というのは元々は仮設の住居のことを言ったが、後に貴族の住宅の一般的な呼び名となった。
 
この時代には“やしき”(屋敷)という言葉は住宅の意味では使われない。それは“やかた”を建てる敷地(宅地)のことだったが、室町時代頃から、住宅の婉曲表現として使われるようになった。また“亭”というのは、本来は広い住宅の中に建てられた小さな休憩所で、貴族の感覚からは住居として分類できない小型の建物である。
 
“やかた”は漢字では“館”“邸”の2通りが使用されるか、館は比較的大きなもの、邸は比較的小型のものである。かぐや姫の家は邸。使用人まで含めて10人程度以下が住むような(貴族の感覚で)小規模のものである。
 

「それで山田少納言殿は、来年には地方に赴任することになっているんですよ。でもいい年だし、出世につながらなくてもいいからできたらあまり辛くない所に行かせてもらえないかということなのですが、皇子様に良かったら一筆書いていただけないかと」
 
「ああ、そのくらいは構わん」
と言って、皇子は大伴大納言への手紙を一筆書き、旅村に渡しました。
 
「でも山田少納言にこんな可愛い娘さんがいたとは知らなかった。子供は男ばかりで帝に差し上げるような娘が居ないと嘆いておられたのに」
 
「私、男ですけど」
と玉姫。
「は?」
 
旅村が言います。
「皇子様、かぐや姫に振られてもう女を愛すのはやめられたんでしょう?私を何度も物にしようとなさったし」
 
「私、男ではありますが皇子様をちゃんと気持ち良くして差し上げますから」
と玉姫。
 
(視聴者の声「ルーシーが出て来た時点で、このオチは見えていた」)
 
(一部の視聴者の声「女房や女童(めのわらわ)も性別が怪しい」「やはりそういう者ばかり揃えたんだな」「皇子の手が付いてもいいようにだな」「だいたい旅村も性別が怪しい」)
 
「ちょっと待て。お主、女にしか見えないのに」
「玉を取っていますから。皇子様も玉を取ります?調子いいですよ」
と玉姫(玉彦?)。
 
「皇子様、玉を取られるのでしたら、玉取翁(たまとりのおきな)を今度連れて参りましょぅか?」
と旅村。
 
「少し考えさせてくれ」
 
棒玉算です。ここに8人居て。棒が5本、玉が2個あります。この中に男の子、男の娘、女の子は各々何人いるでしょう?
 
語り手「車持皇子が玉の枝を失って世間から消え、また自らの玉も失っておとなしくなったことから、人々はこれを“たまうす(玉失す)”と言い、これが訛って“だまる(黙る)”という言葉が生まれたそうです」
 
(男子視聴者の声「やはり玉取ったのか!」「そのほうが世のため」「でも玉取翁って何する人?」「野山にまじりて玉を取るんだろ?」「それで玉の中に金(きん)を見付けるんだな」「でもこんなのゴールデンでやっていいのか?」「深夜番組ネタだよな」)
 
 
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【竹取物語2022】(8)帝の求婚