【竹取物語2022】(6)大伴大納言の場合
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大伴大納言の場合。
看板係(麻生ルミナ)が黄色い服を着て「かぐや姫が5人の貴公子に難題を与えた直後」と書かれたプラカードを掲げる。
語り手「大納言・大伴御行(おおとものみゆき)(森原准太)は、龍が首につけているという五色に光る玉を所望されました」(*120)
(龍の首ってどこ?)
(*120) 竹取物語原文は最初の3人の求婚者については、その性格や属性を論評している。
「石作皇子は心のしたく、ある人にて」
(石作皇子は冷静に物事を思考できる人で)
↑
その割りには行動が適当すぎるんですが。
「車持皇子は心たばかりある人にて」
(車持皇子は計略性に富んだ人で)
↑
その計略にたくさん穴があるんですが。
「右大臣阿倍御主人は財宝豊かに家広き人にぞおはしける」
(右大臣阿倍御主人は財宝が豊かで家も広い人でありました)
ところが、後の2人、大伴大納言と石上中納言についてはそのような論評がなく、いきなり行動したことについて語っている。
あるいは原形となった物語は石作皇子・車持皇子・阿倍御主人で終わっていたのを、大伴大納言・石上中納言を竹取物語の作者が追加した時、スタイルを合わせそこなった結果か。
また求婚者が3人だったら、阿倍右大臣のところで翁ちが「もうこの人でいいじゃん」と言ったのも分かる。その人が最後の求婚者だったのだから。
全体的にこの物語は校正不足の雰囲気がある。紙が高価なものであった時代で充分なその手の作業ができなかったためか。あるいは書いた部分をどんどん都度発表していったため(「週刊竹取物語」!)、校正不足のまま広まってしまった結果か。
「大伴大納言は家人(けにん)たちを集めて言いました」
映像は40-50人の人々が大納言の家の庭に詰まっている様子。
(出演しているのは§§ミュージック・ファンクラブサービスの社員たち)
大納言「龍の首に五色に光る玉があるということだ。それを取ってきてほしい。それを取ってきた人には私にできる範囲で何でも望みを叶えてやろう。大臣にしてくれとか、男を女にしてくれというのは無理だが、官位(単にこう書けば従五位のこと)をくれとか、黄金を十両(約400万円)くらいくれとか、嫁を紹介してくれとか、その程度はかなえてやるぞ」
家人(けにん)たちは顔を見合わせています。
ひとりの家人・仲村(鈴本信彦)が言います。
「お言葉ですが申し上げます。家人(けにん)たる者、主(あるじ)の言うことを聞くべきです。筑紫まで使いに行ってきてくれとか、館を建てるのに材木を運んでくれとか、内裏(だいり)の警備に参加してくれというのはお聞きしましょう。五色に輝く玉というものは希にあるとは耳にします。とても入手しにくいものですが、あちこち探せば見付かるかもしれません。しかし龍の首に掛かっている玉など、どうやって手に入れましょう(手に入れることは不可能です)」
大納言は不快な顔をして言います。
「主君の部下というものは(*122)、命じられたことには命を捨ててでも従うものだ。なにも唐や天竺まで行って探してこいというのではない。龍は我が国にもたくさんいる。そして天から降りてきたり、また昇って行ったりしているものだ。だからその途中を捉まえればいいだけだ。それなのになぜお前たちは、そんなことできないと言うのだ」(*121)
家人たちは顔を見合わせています。
(*121) 無茶言う上司の口癖「やってもみずに出来ないと言うな」。一方孔子は言った。「まず分かることと分からないことを明確にせよ。それが物事を理解することである」
先ほどの家人・仲村(鈴本信彦)が言います。
「そういうことであれば、どうして仰せに背けましょう。何とか頑張って玉を探して参ります」
みんなが仲村を睨んでる!!
語り手「それで大伴大納言は、探索に行ってくれる者たちに、必要そうになる金品を与えました」
映像は大納言(森原准太)が部下の者たちに、ひとりずつ金(きん)や絹などを授けている様子を映します。
部下として登場した人:三国舜、沢村明美、中村昭恵(男装)、坂田由里(男装)
(沢村明美は信濃町ガールズ関東の男子メンバー。『黄金の流星』にも出演した)
語り手「実際には、旅に出たことにして家の中に引き籠もってしまった者、この機会に前から行ってみたいと思っていた所に旅行に行く者など様々でした。また家人(けにん)たちは、各々が必要な額を分け合ったりしていました」
映像は旅に出る者、家の離れに閉じこもる者、またお金を分け合っている所などを映します。
(*122) 原文は「天の使い」。むろん天使という意味ではない!
この“天”は“君”の崩し字が“天”に似ているのでそれを読み誤って書写したものではないかという意見が多い。つまり「主君の使い」ということ。ここでは「主君の部下」と訳した。
語り手「大伴大納言は、かぐや姫を妻にもらうのだからと言って、今の奧さんには離婚して欲しいと言いました」
大納言(森原准太)「申し訳無いが、私は何人もの女を愛することはできない。別れて欲しい」
大納言の妻(桜野みちる! (*123))「いいわよ。充分なお金と白玉(真珠)の首飾りでも頂ければ」
「すまん。お金はすぐ渡す。真珠の首飾りは1年くらい待ってくれ」
と言って、大納言は妻の家を退出します。
「そんな簡単に離縁に応じていいんですか?」
と侍女1(三田雪代)が心配して言います。
「平気平気。たくさんお金ももらえるしね。男なんて金よ。睦みごとはサービス」(*124)
「達観してますねー。私もお金持ちの旦那が欲しいなあ」
と侍女2(太田芳絵)は言った。
大納言は妻のところに多数の絹・紙などを届けさせると共に、九州の彼杵(そのぎ)に人をやって、真珠を買い求めさせました。
(*123) 桜野みちるは森原准太のリアルの奧さん!つまり夫婦で夫婦役をしている。
(*124) 「本気で言ってないか?」というツッコミ多数。
語り手「また大納言は『かぐや姫が気に入ってくれるような立派な住まいを建てよう』とおっしゃって、都に新たな土地を求め、立派なお館を建て始めました。計画では、壁に蒔絵を施し、屏風には素敵な絵を描いて、屋根に様々な色の糸をなびかせた、夢のような御殿(ごてん)になる予定です」
映像は立派な御殿を建てている様子(CG!)
(かぐや姫もここまでしてくれる人と結婚すればいいのに。もっともこの人は結婚して5年もすれば「すまん。新しい恋人ができたんだ。慰謝料は充分払うから、申し訳無いけど別れてくれ」とか言いそうでもある)
看板係(麻生ルミナ)が「1年後」と書かれたプラカードを掲げる。
「あら素敵な首飾りね」
と言って、大納言の元奥方は真珠の首飾りを着けて、うっとりと銅鏡を見ていました(*125).
(*125) 首飾りは本当に森原准太が桜野みちるに贈ったものらしい。つまり、桜野みちるは撮影にかこつけて、本当に真珠の首飾りを森原准太にねだって買ってもらった!お値段については“家庭内のことなので”敢えて誰も聞かなかった。
銅鏡は『とりかへばや物語』の撮影でも使用した本物の黄銅鏡。現在はムーランリゾートが所有しているものを借りて来た。
語り手「新しい館を建てたり真珠を求めさせたりしている内に1年ほど経ちましたが、探しに行った者は誰も戻って来ません。実際には誰も探していないので当然ですね。待ちくたびれた大納言は、家人が出払っているので、朝廷から派遣されている舎人(とねり)2人を連れて難波の港まで行きました」
映像は大納言(森原准太)が2人の舎人(城村銀河・城村流星 (*127))を連れて港に来た所。
大納言は船から荷下ろしをしていた船の船頭らしき男(獄楽)に尋ねます。
「大伴大納言の部下で、龍の玉を探しに船で出た者とか聞いてないか?」
「変なことを聞かれますな。そんな馬鹿な話聞いたことないし、そんな訳の分からないことで船を出す船頭などいませんよ」
と言って笑っている。
「ふん。龍を怖がるとは腰抜け者どもめ。私がその大伴大納言だ。お前たち私の弓の力を知らないだろう。龍など一発で射殺してみせるわ。しかし難波の船頭は弱虫者ばかりのようだな」
船頭はカチンと来ます。
「大納言だか青首大根だか知らねぇが(*126)、難波の船子(ふなこ)を馬鹿にする奴は許せん。船を出してやろうじゃないか」
「よし」
(*126) むろんこの時代に青首大根は存在しない!
それで大伴大納言(森原准太)が船に乗り込みます、舎人たちは岸に留まっています。
「お前たちどうした?」
「私たちも行くんですか〜?」
「当たりまえだ。お前たち私の供だろう?」
2人の舎人は嫌そうな顔をして船に乗り込みました。
船縁に座っていた女性(恋珠ルビー)(ガラスの靴を履いてる!)が
「あれ?出港するの?」
と訊きます。
「龍の玉を取りに行きます」
と船頭(獄楽)。
「何それ〜〜!?」
「大伴大納言のご所望なので」
「大納言!?」
「郎女(いらつめ)殿、今回の航海は危険です。残りますか?」
「行ってやろうじゃん。これでも私は難波の船主だ」
「上等です」
「ところで龍の玉って、オスの龍を捕まえるの?」
「その玉ではありません!」
(*127) 城村銀河・城村流星は、しまうららの四男・五男になる双子の兄弟。兄たち(長男・次男の真城聖広・歌広)が揃って性転換して姉たち(長女・次女の真城聖美・歌美)(*128) になってしまったので
「あんたたちは性転換しないよね?」
と母から訊かれ
「ぼくたち女の子になりたくはないです」
「ちんちん無くしたくないです」
と答えたが、念のためと言われて精液の冷凍を作らされた!
もっともこの2人の女装が凄い美人姉妹になるのはバラエティなどで確認済みである。全然男っぽくないので「実は既に睾丸は取っているのでは」などという噂まで流れていて、本人たちは去勢説は否定しているものの、母のしまうららとしては、とても心配である。この2人と姉2人の4人姉妹?で撮った写真集が近い内に出るという話もある。
(*128) 雨宮先生はアナ・オナと命名した:身体に穴(ヴァギナ)を開けたからアナ、女になったからオナらしい。
語り手「船は食料と酒を積んだ上で、漕ぎ手が艪を回して出港して行きます」
映像は船頭の指揮のもと、水夫(かこ)たちが艪(ろ)を操作している様子。
水夫:樟南・在杢・釜倉・稲邑・釣丘・銭荒(サウザンズ)
(銭荒はサウザンズのサポートメンバー。船頭がサウザンズのリーダーである樟南ではなく極楽なのは演技力の問題である!)
★音楽:サウザンズ『航海して行こうかい』
語り手「この船の船主・新田玲良子(しんでんれいらこ←酷い名前!)は、大伴大納言と2人の舎人に、『船の上では大したものはありませんが』と言いながらもお酒とお菓子を出して接待しました」
「お酒があるとは思わなかった」
と舎人のひとり。
「船の上ではこれが飲料水です。水を載せていてもすぐ腐ってしまうので」
「そういうものなのか」
「しかし女の身で船主(ふなぬし)なんですね」
「親も兄たちも死んでしまって後を継ぐ男が居なくなったので」
「どなたか良き人はおられないんですか」
「私に剣術で勝てる男が居たら結婚してやってもいいよ」
舎人のふたりは顔を見合わせています。
「舎人さん、取り敢えず腕相撲してみる?」
と言って船主(恋珠ルビー)は舎人たち(城村銀河・城村流星)と腕相撲をするものの、あっという間に勝負は付いて、船主が舎人に勝ちます。
(この腕相撲はガチである。男性であっても非力な城村兄弟とスポーツ少女の恋珠ルビーでは勝負にならなかった。視聴者も「やる前から勝負は見えてた」という意見)
語り手「船は太平洋に漕ぎ出し、四国南岸を西行。船はやがて九州の近くまで漕ぎ進められて来ました」
「しかし大納言殿、龍はどこに居るんですかね」
と船頭が訊きます。
「龍はたくさん居ると思うから、適当に船を進めていればいつか遭遇する思うのだが。遭遇したら私がこの強弓(こわゆみ)で龍を倒してやる」
などと大伴大納言(森原准太)は強弓を持っておっしゃっています。
(視聴者の声「森原准太に本当にあの強弓が引けるのか?ルビーちゃんの方がまだ行けそうだが」)
(腕相撲はルビーと森原准太でもやったらしいが放送しなかった!)
語り手「そんなことを大納言が言った時、突然突風が吹いて、あたり一面真っ暗になると、激しい雨が降ってきました。稲光が多数発生して、雷が激しく鳴ります。波が高くなり、船は波に持ち上げられたかと思うと、海の底に叩き付けられるかという感じになります」
映像はもみくちゃにされる船を映し、また激しく揺れる船の上を映します。
(船の上の映像は、カメラをプログラムで振って撮影している)
2人の舎人が立っていられなくなり甲板に横になり、流されないように船の綱を必死で握っています。
大伴大納言(横になっている)は狼狽しました。
「これはいったいどうしたことか。こんな辛い体験は初めてだ」
大納言も流されないように必死で綱を握っています。強弓などとっくに流されてしまいました。(放水したら本当に甲板から流れ落ちた)
船頭(座っている)が言います。
「私も30年船に乗っていますが、ここまで凄い嵐は初めてですね。こうなったら何があっても天に運命を任せるしかないです。海の底に飲み込まれるか、雷に打たれるか。もし無事に嵐を乗り越えられたとしても、遠く南方まで流される可能性もあります」
船主(ガラスの靴で!歩いている)がみんなに声を掛けます。
「お前らどうした?情けないぞ、この程度の嵐で」
「郎女(いらつめ)殿は元気ですね」
と船頭は苦笑します。
「水夫(かこ)たち、車櫂(くるまがい)を持て!北西に向かって漕ぐのだ!」
「北西ってどっちですか?」
「あっちだ」
と言って船主は右手を伸ばして示します。
「どうしてお主、この嵐の中で方角が分かるのじゃ?」
と大伴大納言が訊きます。
「海の上で方角が分からなくて船子(ふなこ)などやってられるか」
と船主は言いました。
「こんな嵐の中で方角が分かるのは郎女(いらつめ)殿だけですよ」
と船頭は言いつつ、頑張って船首に行き、障害物に注意します。
「玉のある奴は情けないなあ。私は玉が無いから肝っ玉を潰すこともないぞ」
「肝っ玉ってその玉なんですかね?」
「国良くんも玉取る?」
「本名をばらさないで下さい。玉取ったら結婚できなくなるから遠慮します」
(国良は極楽の本名で建前的には非公開だが、ファンならみんな知っている)
水夫たちが嵐の中必死に漕ぎますが、それでもなかなか船は嵐の中から脱出できません。
舎人が言いました。
「殿様、これはきっと龍が怒っているんですよ」
「そうですよ。龍を殺してやるなどと言ったから嵐を起こしてこの船を沈めようとしてるんです」
「このままでは船人も殿もみんな死んでしまいます」
「龍に謝ってください」
大伴大納言も物凄い揺れと激しい雨風でもう今にも死ぬか、あるいは波に身体が流されるかという状況でした。
船主はまだ立っています。
「なんだなんだ。みんな情けないな。まだ半時(はんとき:今の1時間)くらいは頑張れると思うのに」
などと言っています。
「半時(はんとき)後には?」
と大伴大納言。
「みんなで念仏でも唱えますか?」
だめだぁ!
それでついに大納言は大きな声で叫びました。
「海路守護の神様、私が間違ってました。金輪際、龍の玉はもちろん、その髪の毛1本も取ろうとも思いません。どうかお許しください。私は自分の力を過信して、思いあがっていました」
語り手「そのように大納言がおっしゃいますと、急に雷鳴は遠くなり、最後にピカリと稲妻が光っただけで静かになりました(*129) 。波も次第に小さくなります。しかし風は強く吹きました。その風を見て船主は水夫たちに命じました」
「帆を上げろ」
★音楽:サウザンズ『航海して後悔した!』
(『航海して行こうかい』と同じメロディーで歌詞違いバージョン)
それで水夫たちが帆を掲げると、帆はその強い風を受けて、どんどんある方向に向かって進み始めました。
「船頭、岩礁に注意しろ」
「もちろんです」
船頭が船首に座り、水夫たちは車櫂を外して艪を掴み、船頭の指示があったらいつでも回す態勢です。
(*129) ここで稲光をひとつ最後に光らせるところは作者の文学的センスの高さを示している。並みの作者ならここに最後に稲光が光ったなどと書くことを思い付かない。しかも稲光だけで雷鳴がしなかったということ自体、発生した雷が遠かったことを示している。稲光は50kmくらい届くが雷鳴は15kmくらいである。
原文「雷止みぬ。少し光りて、風はなほ疾く吹く。楫取の曰く。これは龍の仕業にこそありけれ。この吹く風は良き方の風なり。悪しき方の風にはあらず」
謝罪したら龍が許してくれて帰還しやすいように風を吹かせてくれるというのも素晴らしい。
「郎女(いらつめ)殿、これは良い風ですね」
と船頭(極楽)が言います。
「私もそう思う」
と船主(恋珠ルビー)は答えます。
語り手「そしてわずか3日ほどで、船は明石の港に戻って来たのです」
少しは体力の残っている舎人たち(城村銀河・城村流星)が大納言(森原准太)を助けて船から降ろしました。
「船主さん、お世話になりました。このお礼は必ず致しますから」
と舎人の2人。
「ああ、いつでもいいよ」
と船主。
語り手「大納言が立てないので、舎人たちは地元の国司に頼み輿(こし)を仕立ててもらい、それで大納言を都まで運びました。大納言はあまりの辛さに目が飛び出てまるで顔に2つスモモを付けているかのようになってしまっていたそうです」
(映像は輿に乗っている大納言は映すが顔は映さない:目が飛び出す病気の人への配慮。輿を持つのは、実はケイがオーナーを務める女子バケットボール・チーム:千葉ローキューツの長身メンバー4人)
語り手「それで世間の人は。大納言が玉を取ることができなかったので、思い通りに行かないことを“あなたへがた”(*130) と言うようになったとのことです」
(*130) 「あなたへがた」は「あな、たえがた(し)」と読んで、「ああ、笑いをこらえられない」という意味だが、「あな、食べ難し」で、いくらスモモでも大納言殿の顔にできたスモモでは食べられないと笑っているのである。ドラマでは病気の人への配慮でここはあまり深く触れずに流した。
語り手「さて、自分の家に戻ってきた大納言は舎人の2人に例の船の船主や船子たちに充分なお礼を届けさせました」
「助かります。あの船、あの嵐で傷んでしまって、もう次の航海には使えそうもないので作り直すんですよ。このお金は充分その足しになります」
と船主。
「待ってください。だったらその建造費くらい大納言は出すと思います。いくらくらい掛かりますか」
と舎人は尋ねて、およその金額を聞きました。
それで舎人が大納言に伝えると、大納言は「申し訳無かった」と言って再建造費と再建造中の休業補償を出しくれたので船主は安心して船を造り直すことができました。
そして大納言自身が失敗したという噂が広まりますと、大納言の部下のひとり仲村(鈴本信彦)が戻って来て言いました。
「殿様、まことに申し訳ありません。私も四方八方探し回りましたが(本当は家の中の離れに閉じ籠もっていただけ)、どうしても龍を捉えることができませんでした」
と申し上げます。
「ある時は高い山の風雪の中で凍えそうになり」
映像は仲村がヒマラヤか?という感じの高山の頂上で空を眺めている様。
「ある時は広い海で飢えそうになり」
映像は仲村がイカダに乗って漂流し、大の字(太の字?)になって大空を見ている様。
(「もう少しまともな船を使え」という視聴者の声)
「ある時は森で猛獣に追いかけられ」
映像は仲村が森の中で、ライオン(常滑舞音)、虎(水谷康恵)、白熊(水谷雪花)に追いかけられている様。
(「この3種類、生息地域が重複しないぞ」というツッコミ多数)
(「なぜライオンや虎が二足で走る?」というツッコミ多数)
「またある時は火山が爆発して死ぬかと思いました」
映像は多数の火山礫・火山弾が飛んでくる中を仲村が逃げている様。(火山噴火資料映像との合成)
「いちばん惜しかったのが、出雲で雨上がりに龍の飛び行く様を目撃した時です。龍に向かって『待ってくれ!玉をくれ』と言ったのですが、私の声が届かなかったようで龍は去ってしまいました」
映像は雨上がりに“天使の階段”ができている風景の中を∫型の光の線が飛んで行く様。(天使の階段までは資料映像。それに村山千里の監修で龍のような光の線を描き加えた)
「散々探し回ったもののどうしても龍の玉を取ることはできず、このままでは帰ることもできないしと思っていたのですが、殿様ご自身でも玉を取ることができなかったと風の噂に聞きまして、もしかしたらお叱りを受けないかも知れないと思い、取り敢えず都に戻ってこちらに顔を出してみました」
と仲村は長い話を終えました。
「お主、よくぞ龍を捕まえなかった!龍は雷の親戚だったのだ。もし私の部下が龍を捕まえようとしたら、お前だけでなく私も一緒に龍に殺されていたであろう。そのような危険な物を所望するとは、かぐや姫などという大盗人(*131)の者が、私をたぶらかして、大変なことになるところだった」
などと仰せられました。
そして“龍を捕まえなかったから”と言ってたくさんのご褒美を頂いたのです。
そして手ぶらで帰還しても叱られないようだという情報が伝わると、探索を命じられていた者が、ひとり・ふたりと帰ってきます。
部下2(三国舜)「伊豆の島々を南端まで探しましたが見付かりませんでした」
部下3(沢村明美)「蝦夷の彼方まで行きましたが見付かりませんでした」
部下4(中村昭恵)「琉球まで行きましたが見付かりませんでした」
部下5(坂田由里)「瀬戸の島々をしらみつぶしに探しましたが見付かりませんでした」(*132)
などと申して、大納言から
「よくぞ龍を殺さなかった」
とねぎらいのことばを掛けてもらい、各々褒美をもらったそうです。
(*131) “盗人(ぬすびと/ぬすっと)”は元々は泥棒という意味であるが、ここでは人を罵って「悪人」とか「曲者(くせもの)」といった意味で用いられている。
完璧にかぐや姫に対する熱が冷めたようだが、この人は元々飽きっぽいタイプのようである。
(*132) もちろんみんな適当なことを言っている。誰1人としてまじめには探していない。
大納言(森原准太)は罰が悪そうな顔をして、元奥方(桜野みちる)の所へやってきました。
「私は間違っていた。そなたが私にとって最も大事な人だ。どうかまた私の妻になってくれないだろうか」
元奥方は答えて言いました。
「いいわよ。お金を沢山と、翡翠(ひすい)の首飾りをくれるならね」
「ありがとう。お金はすぐ用意させる。翡翠の首飾りは1年くらい待ってくれ」
それで大納言は奥方の家に多数の絹や紙を運ばせました。
「さすが姫様ですね。しっかりまた宝石をねだりましたね」
と侍女1(三田雪代)。
「あの人また1年くらいしたらどこぞの姫君に夢中になって私に離縁してくれって言いに来るわよ」
「次は何をねだられるんです?玻璃(はり;水晶)ですか?」
と侍女2(太田芳絵)。
「そうね。瑪瑙(めのう)もいいわね」
「おぉ!」
語り手「それで結局、大納言と奥方は、かぐや姫のために用意した新しい邸に住むことにしました」
「なかなか豪華なお館ね」
「君が気に入ってくれて嬉しいよ」
ただし屋根に取り付けていた様々な色の糸は、小鳥が巣作りするのに、全部持って行ったそうです(あまりにも予測できる結果)。
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【竹取物語2022】(6)大伴大納言の場合