【竹取物語2022】(4)車持皇子の場合(後編)

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車持皇子の場合(後編)。
 
竹取翁に皇子は冒険譚を話しています。
 
★音楽:WADO『荒波を越えて』
 
皇子「どちらへ向かえばいいのかも分かりませんでしたが、『思いを達成できなかったら何の生きている価値があるだろう』と思い、紀伊の岬を回った後はただ風任せに船を進ませました。命が無くなってしまえばそれまでですが、生きている限りは旅を続けていれば蓬莱という山に出会うこともあるだろうと思いました」
 
映像では船が2本の帆を掲げて海を進んでいく様子を映します。
 
皇子「ある時は海が荒れて船が海底に沈んでいきそうになりました」
 
映像は嵐にもてあそばれている船(CG)と、風雨にさらされ苦しそうな皇子。
 
(キャロル前田はマジで水を掛けられ大型扇風機で風を当てられて撮影されている。ほとんど体当たり芸人扱い!後から 「息が出来なくて苦しかった!」と言っていた)
 

皇子「ある時は島があったので漕ぎ寄ったら、鬼が出て来て我々を殺そうとしました」
 
映像は身の丈3mほどの鬼(角があり虎皮のパンツを穿いている)に、皇子と従者、船頭と水夫たちが追いかけられているシーン。
 
水夫のひとり(央花)が転んだのを旅村(鈴原さくら)が助け起こすシーンがある。ここは撮影時に本当に央花が転んだので、近くを走っていたさくらが助け起こした。央花はNGだろうと思ったが、監督はこれを活かした。マジで危機を脱した感になった。なお鬼はCGである。
 
皇子「ある時はずっと空が曇っていて太陽も星も見えず、方角が分からなくなって何日も漂いました」
 
映像は曇天の中で風も無く船は帆を下ろして皇子と船頭が話し合っている様子。
 
(この時代は羅針盤が無い(*70) ので、外洋では太陽と星が頼りである。もっともこの時代に外洋航海の経験がある船頭は日本には存在しなかったはずである!)
 
(*70) “指南”と呼ばれるごく原始的な方位磁針なら存在したが、磁化した釘を刺した木の魚を水に浮かべるというもので不安定だし信頼性も低かった。
 

皇子「ある時は食料が尽きて草の根を食べて飢えを凌ぎました」
 
(↑航海中にどこに草の根があるの?というツッコミ、昔から多数)
 
映像は皇子・従者・船員たちが草を頬張るシーン。実際に食べているのは、よく見れば分かるが小松菜である!
 
皇子「ある時は何とも形容しがたいものがやってきて食われそうになりました」
 
映像は船の傍にテンタクルズみたいな巨大なタコが現れ、船を多数の足でつかんで海に引きずり込もうとします。旅村と坂口が弓矢を何十本も足に射かけ、船頭と皇子も剣を抜いて蛸の足に斬りつけ、水夫たちが必死で艪を漕いで、何とか脱出する様子。
 
このシーンは3分ほども掛けて死闘が描かれ、この間に視聴率が10%上昇した。
 
なお大ダコはCGであるが船に掛かった巨大な足は発泡スチロールの芯に粘土を塗って作った大道具さんの力作である。紐で引いて!動くようになっている。(スタッフが頑張って動かしている)これに大量に矢を撃ち込んだ。さくらときららは矢を打つ練習をだいぶさせられたが、おかげで真に迫った映像が撮れた。
 
視聴者の声「さくらちゃん格好いい!」「きららちゃん格好いい!」「のぞみちゃん格好いい!」「若南ちゃん格好いい」「淳子ちゃん格好いい」「大菜ちゃん格好いい」
「央花ちゃん格好いい」
 
キャロルは?
 
(この大活劇で広瀬のぞみのファンが多数できたようでファンメールが100通くらい来て本人もびっくりしたらしい:彼が性転換して信濃町ガールズに加入する日は遠くない??女の子になったら妹のみづほより人気出たりして!?)
 

皇子「ある時は食料が尽きて、貝を食べて命をつなぎました」
 
(↑海の上では貝より魚のほうが得やすい気がするのですが)
 
映像は皇子・従者・船員たちが貝に食いついている。実際に食べているのは、“茹でた”あさり・さざえである。
 

皇子「ある時は島があったので寄せたら、多数の女の人が居ました」
 
映像は船が島に到着するシーン。それを女性たち(斎藤恵梨香・桜井真理子・安原祥子・悠木恵美・佐藤ゆか・南田容子・高島瑞絵・山口暢香)が迎えます。女性たちは変わった服装をしていました(*72).
 
向こうが友好的っぽいので、小舟を降ろして、旅村(鈴原さくら)と船頭(広瀬のぞみ)が浜辺に漕ぎ寄ります(広瀬のぞみが漕ぐ。彼は“今の所まだ”男の子なので舟が漕げる)。
 
旅村が女性たちに尋ねます。
「ちょっとお尋ねします。蓬莱(ほうらい)という島はご存知無いですか?」
 
住民1(斎藤恵梨香)が答えます。
「ここは“ロウライ”(*71)と申します。“ホウライ”というのは聞いたことがありません。でも長く航海なさっておられるのでしたら、少し休んでいかれませんか。歓迎しますよ」
 
旅村が船頭と顔を見合わせます。
「ちょっと聞いて来ます」
 
それで2人は船に戻り、皇子に確認します。
「歓迎するから休んでいきませんかと言われているのですが」
「そうか。では少し休ませてもらおうか」
 
語り手「それで皇子たちはここで休憩し、できたら食料やお酒の補給もしようと思ったのです」
 
一行は船の碇(いかり)(*73) を降ろし、船を停泊させました。そして2艘(そう)の小舟で岸に漕ぎ寄ります(*74).
 

(*71) 蓬莱(ほうらい)の偽物として少しもじって“ロウライ”を登場させた。実はローレライと掛けている。住民は妖しい人魚たちである。
 
(*72) 住人たちは全員ノースリーブのサマードレスを着ている。色は全員派手なピンクである。
 
「バーゲンの売れ残りみたいな服だ」
と視聴者から言われたし、撮影時にこれを着た出演者たちからまで声があがったが、本物の蓬莱と区別するため、わざとダサい(死語?)服を使用した。
 
(*73) “いかり”は現代では鉄製なので“錨”と書くが、昔は石だったので“碇”と書いた。この2つの文字を混同して“錠”と書くと“錠前(じょうまえ)”になってしまう!
 
(*74) このドラマは大半を千葉市のララランド・スタジオ(ΛΛテレビ)で撮影しているが、小舟で浜に漕ぎ寄るシーン、浜から船に戻るシーンは、越谷の小鳩シティの池で転落防止ロープと支柱を全部抜いて撮影した。船はホリボテ。
 
小舟のオールを漕いだのは船頭役の広瀬のぞみと、水夫1役の若南の・・・ボディダブルを務めた三国舜。だから小舟が漕がれているシーンでは若南の顔が映っていない。今回のドラマでWADOには“男装はしてもらうけど、男っぽい演技は絶対させない”という約束で出演してもらっている。
 

皇子たち一行が女性たちに連れられて、立派なお館に導かれます。日本とは違うので門構えや建物の形も違っていて、まるでおとぎ話の世界に来たかのようです(*75).
 
中に入ると、わりと普通の広間があり、大きなテーブルと椅子が並んでいます。皇子たち一行は勧められてそこの椅子に座りました。まずはガラスのような透明の器(*76) に入った飲み物が出てきます。
 
「これは何ですか?」
と訊きますと住人2(桜井真理子)が
「ニョーニー(*77)と呼んでいます。この地で採れる果物の実を搾ったものなんですよ」
「へー」
と言ってみんな飲んでいます。
「この器も日本では見ないものだ」
などと言っています。
 
皇子(キャロル前田)も飲もうとし器を手に取ったものの、船頭(広瀬のぞみ)から話しかけられたので、器を手に持ったまま、船頭と話し始めました。
 

やがて、食べ物も運び込まれてきました。食べ物は野菜や高野豆腐のようなものを炒めたもののようです。女性8人が皇子一行8人の各々の隣に座って料理を取ってくれます。こちらの男1人の隣に女が1人付いたということは、まさか“して”いいということじゃないよね?などと皇子たちは考えました。
 
坂口(夢島きらら)が尋ねます。
「男の方は漁か何かに出ておられるのですか?」
 
住人3(安原祥子)が言いました。
「この島には女しか住んでないのですよ。だから男の人が来て下さると大歓迎するんです」
 
皇子たちはドキッとしました。
 
看板係(麻生ルミナ)がこう書かれたプラカードを掲げる。
 
「皇子たちの頭の中/女だけの島↓男が来たら大歓迎↓今夜は楽しい♥♥♥」

その時、突然、水夫1(若南)の頭の上からピンクの霧のようなものが降ってきます(CG)。すると水夫1の服装が水夫服(貫頭衣っぽい上着と袴)を着ていたのが唐突にピンクの“セーラー服”!(*78) に変わっちゃった!
 
「え?何、この服?」
と水夫1(若南)。
 
続けて、水夫2(淳子)、水夫3(大菜)、水夫4(央花)、の上からもピンクの霧が降りてきてその3人もセーラー服になっちゃう。
 
セーラー服を着た4人が前に出て来てハンドマイクを持ち(*79)セーラー服姿のまま彼女たちのヒット曲『ぼくたち女の子』を歌った(*80).
 

(*75) 中国・インド・アラビア・中世ヨーロッパなどが入り乱れた無国籍なデザインで生成したCGである。まほろばグラフィックスの森石イリモ主任の力作。
 
(*76) 撮影に使用したのは実はトライタン(コポリエステル樹脂)の透明コップである。これも仙境の物質ということで。
 
(*77) “ニョーニー”は“女似”だったりして!? 実際に出演者が飲んだのはノニジュースである!飲まなかったのは車持皇子だけ。
 
(*78) セーラー服は、テレビ局の副音声の解説によると、仙境の服ということらしい。
 
(*79) 「マイクとかどこから出て来たのか?」「この時代に電気があるのか?」とかツッコミ多数。元々この物語は車持皇子のデタラメ話である。
 
(*80) 鳥山プロデューサーは『セーラー服を脱がさないで』を指定していたが、「おニャン子クラブとか誰も知りませんよ」と若いADさんたちに言われて、WADO自身のヒット曲『ぼくたち女の子』が使用された。
 
ちなみにWADOはこの時点までひとつも台詞が無かった。これらは彼女たちに男声を出させないための配慮である。鬼ヶ島で事故的に央花が発した「ありがとう」は女声だった。本人はこれはどうせNGだろうと思ったので普段使っている女声を使った。
 

「ぼくたち、どうしちゃったの?」
「ひょっとして女の子になっちゃった?」
「あ、おっぱいがある」
などと言って触りあっている。
 
「これはどうしたことか?」
と旅村が言っている間に、その旅村(鈴原さくら)と坂口(夢島きらら)の上からもピンクの霧が降ってきて、2人とも女房装束に変わってしまいます。
 
「え!?何が起きたの?」
「髪が長くなってる」
「おっぱいが大きくなってる」
「なんか身体が軽くなった気がする」
「あ、はぜ(*81)が無くなってる」
「その分軽くなったのか?(*82)」
「私たちも女の子になっちゃったみたい」
 

(*81) “はぜ”は男性器の古名。番組では特に説明しなかったが大半の視聴者が意味を理解したと思われる。
 
このセリフは元々WADOに当てられていたが
「女の子にそんなセリフ言わせるのは可愛そうです」
と、さくらが言い、自分が引き受けた。この件はあとでWADOがブログに書いて感謝していますと述べたので、WADOファンの間で、さくらの人気が上がった。
 
多数のファンメールも来て
「さくらちゃんも早く本当の女の子になれるといいね」
などと書かれているので
「ぼく女の子になるつもりないんだけどなあ」
などと言って
「嘘はよくない」
と男子寮の住人たちからも言われていた。
 
(*82) どう考えても男性器よりバストのほうが重いハズというツッコミ多数。
 

「随分早く女になってしまいましたね」
と住民5(佐藤ゆか)。
「大抵は女に変わるのは翌朝だから一晩は楽しめるのに残念」
と住民6(南田容子)。
 
「どういうことです?」
と船頭(広瀬のぞみ)が隣に居る女性(悠木恵美)(*83) に尋ねます。女性が答えます。
 
「この島に来た男性はなぜか分かりませんが、大抵翌日くらいまでの間に女に変わってしまうのですよ。朝までもってくれたらその夜だけでも楽しいことができるのに」
 
船頭と皇子が顔を見合わせます。
 
「逃げよう」
と皇子が言いました。
 
「全員撤退!船に戻るぞ」
 
「あっ待って」
と住民7(高島瑞絵)。
「女同士でもいいから一晩楽しみましょぅよ」
と住民8(山口暢香)。
 
(*83) 悠木恵美(常滑舞音のマネージャー:元信濃町ガールズ)は久々のドラマ出演である。この女人国の住人の役は高卒メンバーにしかできないので「メンツが足りないから」と言って引っ張り出された。
 

皇子、船頭、女房装束の旅村と坂口、セーラー服姿の水夫たちは部屋を出て港へ走ります。その後を女たちが追いかけます。
 
突然皇子たちの前に銀色の天女の服を着た女性(月城たみよ)が姿を現しました。皇子たちは「はさまれたか?」と思ったものの、銀色の女性は皇子たちに身振りで小舟の所に行くよう指し示します。それで皇子たちはそのまま小舟に向います。
 
皇子が銀色の女性のそばを通り過ぎようとした時、
「皇子(みこ)様、これをお飲み下さい。女にならなくて済みます」
と小声で囁(ささや)いて、銀色の小さな薬(*84) を渡しました。
「分かった。命は捨てる覚悟で出て来たが、男を捨てたらかぐや姫と結婚できなくなる」
と言って、皇子はその薬を飲みました。そして小舟に飛び乗って、2艘の小舟は浜辺を離れ、船へと漕いで行きました。
 
浜では銀色の女性が島の住民たちを通せんぼしてくれていました。
 
船は碇を揚げ、船頭と4人のセーラー服の水夫(かこ)が艪を漕いで沖へと出港していきました。
 
(*84) 撮影に使用したのはアラザンでコーティングしたチョコレート(ドラジェ)である!
 

船はやがて風を受けて帆走に切り替えます。
 
旅村が船頭(広瀬のぞみ)の服装に気がつきました。
 
「船頭さん、その服は?」
「え?あれ?何この服?(*85)」
 
船頭はいつの間にか、女子高生の制服!みたいなブレザーとチェックのプリーツスカート(*86) を着ていました。
 
「船頭さん胸が」
「え?どうしてぼくのおっぱいこんなに大きいの?」
「あれ無くなってない?」
「うっそー!?無くなってる。ぼくこれからどうしたらいいの?」
 
「皇子(みこ)様は身体に変調はありませんか?」
 
皇子は自分の身体をあちこち触って確認します。
「今の所大丈夫のようだ。おっぱいは無いし、はぜはあるし」
 
「女たちはたいてい翌日女に変わると言っていました。明日かも」
「嫌だなあ」
 

(*85) ここから先、広瀬のぞみは女声で台詞を言う。彼は夏休みが始まった7月21日に宮崎を出て東京に出て来て、メゾン・ドゥラ・カデットに入った。
 
「可能なら早めに出て来て。撮影前に性転換しちゃおうよ」などと言われて少しドキドキしながら出て来たのだが(結構“その気”があるのでは?)、花ちゃんから
 
「君、女の子の声を出す練習してみない?」
と言われてボイトレに通ったら、ほんの一週間で出るようになった。それで彼はめでたく両声類になれた。もっとも女声が出たあとは2日くらい男声が出なくて焦ったらしい。
 
「このまま女の子になる手術を受けて女子高生になればいいよ。私お姉ちゃんが欲しかったのよね」
などと妹から言われる。
 
「待って。多分元の声も出る」
 
それで3日目にやっと男声が出て、両方切り替えて出せるようになった。
 

それで彼はこのドラマでの車持皇子の冒険譚では、前半を男声、後半を女声で話した。
 
喉仏に関しては、アクアのマネージャーの50代の女性が“後半の撮影に入る前に”
 
「あ、ちょっと貸して」
と言って喉のところにしばらく手を当てていたら、目立たなくなっちゃった!
 
「喉仏必要なら後で元の状態に戻してあげるけど(←戻すつもりは毛頭無い)」
「いえこのままでいいです」
「だったらそのままで」
 
なおこの大冒険譚の中で、さくらは全編女声だが、前半をアルトボイス、後半をソプラノボイスで話している。きららは前半を自分の声(男声)で話し、後半の台詞は、信濃町ガールズの左倉まみに吹替えてもらった。左倉まみはこのドラマに出演しているがセリフが無い。
 

(*86) この女子高生制服風の衣裳もセーラー服と同様“仙境の服”という設定である。広瀬のぞみのサイズに合わせて作ったもの。のぞみは妹に唆されて、女性用ショーツ(*87)とブラジャーを着け、服を汚さないようにスリップまで着けてこの服を着た。下着は妹がサイズを測って調達してくれた。
 
髪の毛も美容室で女子高生らしい髪型にカットしてもらい、自分の顔に陶酔していた!
 
制服は撮影終了後本人に贈呈された。
 
「こんなのもらっても困るんですが」
「こっそり着てればいいよ」
 
(*87) 最初に試着した時はガードルも着けないと“支障”があったのだが、↓に書く事情で2度目からは支障が無なり、ショーツだけで着られるようになった。
 

また彼は妹が「費用は出してあげるから」と言うのに乗せられて顔のむだ毛は撮影に入る前にレーザー脱毛しちゃった!一週間はマスクが外せなかったものの「毎日剃らなくていいの凄く楽」と言って喜んでいた。ついでに撮影後に足のむだ毛もレーザー脱毛しちゃった!自分の足の美しさに感激していた。
 
彼の急速な変化を心配した女子寮長の花咲ロンドは「もし女性ホルモン飲みたいなら1ヶ月待って」と言って彼に精液の冷凍を作らせた。冷凍を作る前の禁欲を守れる自信が無いと言ってたら鈴原さくらが彼の男性器をタックしてくれた。
 
「これでオナニーしようにもできないよ」
と言われたが、まるで女の子みたいになった股間を見て彼はうっとりしていた!おしっこが凄く後ろから出るのにも感動していた。
 
撮影中はずっとタックしていたので、彼は女物を着るのに何も支障が無かった。
 

なお、のぞみは8月いっぱいメゾン・ドゥラ・カデットに滞在して、あけぼのTVに出たり、音源制作の補助(オーボエとトランペットが吹ける。クラリネットとサックスも吹ける)などもした。“女性”トランペッターはわりと貴重である!
 
「女子寮に移動してもいいけど」
「自粛します」
 
「スカート穿かないの?」
「癖になったら怖いからやめときます」
 
(既に手遅れのような気がする)
 

彼が宮崎に帰る前に、妹は宮崎で進学する予定だった高校(=弥日古が通学中の高校)の女子制服を兄(姉になるのは時間の問題?)にあげた。
 
「もらっても困る。こんな服着て登校したら叱られるし」
 
(↑既に着る気になっている)
 
「私は着ないし、留依香(2人の妹)の身体にこの制服が入る訳無い。お姉ちゃん、これで登校したら叱られるのなら、登校する時だけ男子制服で登校して、下校する時に女子制服に着替えればいいんだよ」
 
(もう「お姉ちゃん」と呼びかけている。「お姉ちゃん」と呼ばれて照れている)
 
彼は15秒くらい考えて(←妄想中)から
「そんな恥ずかしいことできないよぉ!」
と言った。
 
嫌だとは言ってない!
 

ちなみにこの制服は、ちゃんと試着してみて問題無く着られることを確認した。ついでに写真を撮って母に送ってあげたら母が異様に喜んでいた!
 
「やーちゃん、9月からはこの制服で通学するの?性別変更届け書いとくね。せっかく作った制服が無駄にならなくて良かった」
 
父は
「なんでこいつこんなに女の服が似合うんだ?いっそ金玉取って女になるか?」
と呆れていたらしい。
 
2人は身長は少し違うもののウェストがほぼ同じなので服が共用できる。宮崎でも結構Tシャツやジーンズのパンツを共用していたらしい。妹さんはバスケットをしていて体格がいいので、姉たちの服が入らない。この3人の上に宮崎市の大学に行っているお兄さんがいる。
 

語り手「皇子の船は西風を受けて順調に東へ向けて航海していました。その後、2日経っても皇子の身体には変調は起きず、女に変化したりはしませんでした。皇子は密かに、これは銀色の女性がくれた薬のおかげだろう、と考えていました」
 
「もう3日経ちますが皇子(みこ)様は身体にはお変わりはありませんか?」
「うん。変わりない」
「なぜ皇子様だけ無事だったのだろう」
 
すると女子高生制服姿の船頭(広瀬のぞみ)が言いました。
 
「それ考えたんだけど、皇子様はあの島の食べ物・飲み物を一切口にしなかった。あの飲み物を飲もうとしたところで私が話しかけて、ずっと話し込んでいた。だから無事なのかも」
「なるほどー。女人国の食べ物や飲み物に口を付けてしまうと女になってしまうのかな」
 
「でも皇子様、私たち女になってしまいましたが、この後どうすればいいのでしょう」
と旅村(鈴原さくら)が不安そうに言います。
 
「旅村と坂口は私に女房(にょうぼう)として仕えればよい」
「やはりそうなるのか」
と坂口(夢島きらら)。
 
「水夫(かこ)たちは良い嫁のもらい手を紹介してやるから安心するように」
と皇子。
 
「私たち、嫁さんに行くんですか〜?」
と情けなさそうな顔で水夫2(淳子)が言う。
 
「心配しなくても、もらい手は居るから」(*88)
 

(*88) 視聴者の特に女子たちからの声
 
「若南ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「淳子ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「大菜ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
「央花ちゃんに私のお嫁さんになってほしい」
 
君たち結婚の意味分かってる?
 
しかしWADOの4人が全員揃って性転換手術を受けて女になったことを発表してから女性ファンは壊滅的に減ったのだが、最近戻って来ている女性ファンがかなり居るっぽい。WADOのファンクラブでは再登録する場合、以前の会員番号を復活できるサービスを行っているが、解約した女性ファンのこれまでに1割くらいが旧番号を復活させている。
 

語り手「皇子たちの一行はひょっとして、皇子以外の全員が飲んだニョーニーに女性化の作用があるのかもと話し合いました。それで皇子一行はこの島を“ニョーニー島(じま)”と呼びました。これが後に訛って“にょうごじま”と呼ばれるようになり“女護島”という表記もできたそうです。“にょごがしま”は後にこの表記から派生した読み方です」
 
と語り手の元原マミはわざわざフリップボードに「ニョーニーじま→にょうごじま→女護島」と書かれたものを掲げてこの説明をした。
 
(↑視聴者から「無理がある」「さすがに嘘だろ」というツッコミ多数)
 
でも、女護島に向かった『好色一代男』の世之介って無事だったんでしょうかね。速攻で女に変えられて、二度と女を泣かせることはなくなったとか?
 

語り手「皇子の船はこのように苦労しながらも航海していきました。皇子以外が男の身は失ってしまったものの、命を失ったものはなく、航海は500日(*89) に及びました。
 
辰の刻(午前8時)」
 
「島だ!島が見える!」
と船央の見張り席に座っていた船頭(広瀬のぞみ)が言いました。
 
(当時は望遠鏡が無いので肉眼で見ている)
 
皇子もその島影を確認しましたので、そちらに漕ぎ寄ることにします。すると物凄く高い山が海中からそびえていました。
 
「こんな高い山は見たことが無い」
「これがきっと蓬莱だ」
 
と皇子たちは言い合いました。
 

(*89) 当時の船で本当に500日航海した場合、運が良ければハワイに到達する可能性があると思う。和歌山からハワイへは大圏距離で 7000km=3800海里である。これを500日で行くには1日に7.5海里進めば良い。当時の船が1ノットくらいの速度なら1日平均7.5時間、もし車持皇子の船が優秀で3ノットくらい出たとしたら1日平均2.5時間くらい進むことができれば到達できる計算になる。
 
ハワイの最高峰はマウナケア(4205m) で、富士山より高い。またダイアモンド・ヘッドは西洋人が来た時、山にダイアモンドが大量に転がっていたことからその名がある。ただし、当時ダイアモンドと思われたものは実際にはカルサイト(方解石)であった!
 
日本からハワイへ大圏航路を進んだ場合、その途中にミッドウェー島がある。するとミッドウェー島がロウライ(女護島)かも!?
 
海中に高い山があるというのは、伝説のバリハイを思わせる。映画『南太平洋』では現実の島として登場したが、元々は海の向こうに見えていて、辿り着けそうでどうしても到達できない島である。
 

車持皇子の船は、岩礁に充分気を付けながら島の周りを一周しました。特に怪しげな所はありませんが、皇子は船頭に小舟を漕いでもらい、2人の従者を連れて上陸しました。
 
ちなみに女人の島で着ていた服は動きにくいので、船頭も従者(女房?)たちも女の作業着に着替えています。船にあった麻布を旅村が縫って作りました。
 
それで浜辺を歩いていたら、天女のような白い絹衣を着た女性(ビンゴアキ)が山の中から出て来て、銀の入れものに海水を汲み、戻ろうとします。皇子は声を掛けました。
 
「すみません。ここは何というところでしょうか?」
女性は答えます。
「ここは蓬莱(ほうらい)ですが」
 
皇子は「おぉ!」と声を挙げて、旅村・坂口と喜び合います。
 
★音楽:パシフィック『蓬莱』
 
「そのような質問をなさるあなたはどなたですか?私は宝冠瑠璃(ほうかんるり)と申しますが(*90)」
 
「これは大変失礼しました。私は日本から参りました車持皇子(くらもちのみこ)と申します」
「それはまた遠い所から。何も歓迎などできませんが、ゆっくりしていって下さい。欲しいものがあったら常識の範囲で勝手に取って構いませんから」
 
「ありがとうございます」
 
それで女性は水を汲んだ器を持ち、山の中へ入っていってしまいました。
 

(*90) 原文「我が名はうかんるり」。ここの部分の読み方について古くから2種類の解釈があり、決着が付いていない。
(1) 我が名は、うかんるり
(2) 我が名、はうかんるり
 
(1)で解釈すると名前は“ウカンルリ”という無国籍的な名前となり、いかにも仙境っぽい。(2)で解釈すると女性の名前は“はうかんるり”となって、漢字で宝冠瑠璃・宝漢瑠璃、などと書けるとする。
 
ここでは「我が名、宝冠瑠璃」と解釈した。
 
なお異本のひとつには「我が名はこらんなり」(我が名は胡蘭なり?)というのもあるが、これは多分原文が何かの誤写ではと考えて修正した、解釈しすぎの本ではないかと思われる、
 

皇子「蓬莱山はとても高くて、上まで登ることは不可能と思われました。山の傍まで寄ってみると、この世のものとは思えない花の木がたくさん立っていました。山から流れてくる川が、金色の川、銀色の川、瑠璃色の川とあります。その川には様々な色の宝石の橋が掛かっています」
 
映像は車持皇子の言うとおりの状況をソフトフィルターを掛けたような状態で映しています。その仙境の中を皇子と2人の女房(従者)が歩いています。もちろんCGに決まってます!
 
皇子「その川の流れの傍には様々な木が立っていました。とても立派な木もたくさんあったのですが、かぐや姫がおしゃったのと同じものでなければと思い、それと似た木を一枝、手折って(たおって)持ち帰ることにしました(*91). 蓬莱の山はほんとうに素晴らしい場所でした。この世のものとは思えない楽園です。ずっと居たい葉分でしたが、この枝を取ることができた以上、早くかぐや姫にこれを見せなければと思い、急ぎ船に戻ることにしました」
 
映像では、車持皇子と、2人で玉の枝を持つ女房(従者)が浜に就けた小舟に戻ります。それで船頭と一緒に船に戻ろうとしたら、先ほどの女性が声を掛けます。
 

(*91) ここで撮影に使用したのは、後に出てくる“本物”を3Dプリンタでコピーした樹脂製のレプリカである(それでも制作には着色などで1週間掛かった)。重さは3kg程度なので、簡単に片手で持てる。ソフトフィルターを掛けた撮影なので、安っぽさがあまり分からない。
 

「皇子(みこ)様、しばし待たれよ」
と宝冠瑠璃(ビンゴアキ)。
 
「帰りの食料・お酒を差し上げます」
と言って、多数の天人が酒樽や木箱を、海の上を歩いて船に運び、積み込んでくれました。
 
(天人たちに扮したのは、ノンクレジットだが、§§ミュージック広報部の男性社員たち。ただし彼らは何も持っていない。荷物も海もCGで描き足したものである。だからこのシーンは千葉のララランド・スタジオで撮影した)
 
「ありがとうございます!」
と車持皇子(キャロル前田)はお礼を言いました。
「お気を付けてお帰りください。旅は帰りのほうが事故に遭いやすいものです」
と宝冠瑠璃(ビンゴアキ)。
 
それで一行は港から漕ぎ出し、帆を立てて西へと帆走し始めました。
 

皇子は語ります。
 
「帰りはあまり大きな嵐などにも遭わず(*93) 400日ほどで日本に戻ってくることが出来ました。これもきっと衆生(しゅうじょう)をお救いくださる仏様の御力(みちから)のおかげでしょう。昨夜、難波の港に帰り着きましたので、一日も早く玉の枝をお見せしなければと思い、正装にも着替えず、旅の服のまま、こちらへ参上した次第なのですよ」
 
映像は難波の港に船が到着した所。そして船頭と水夫が疲れ切って寝ている中、車持皇子と、玉の枝を入れた袋(*92) を持った2人の女房(従者)が船から降りて来る所である。
 
(*92) ここでは袋しか映っていない:実際は樹脂製のレプリカを入れている。
 

(*93) 原文では車持皇子は「帰りは“追風吹て”追い風だったので早く到着した」と言っている。皇子は、蓬莱に行く時も「風に任せて」進んだと言っている。これを好意的に解釈すると、往路では偏西風で進み、復路では貿易風に乗って帰ってきたことになる。だから行く時は北寄りのルート、帰りは南寄りのルートを通ったことになる。
 
ハワイは北緯21度くらい、ミッドウェーは北緯28度、紀伊半島南端は北緯33度くらい。しかしミッドウェーに辿り着けたらその後は島伝いにハワイ島に到達できる。つまり女護島は蓬莱へのガイドポイントである!小笠原の硫黄島が北緯24度くらいである。ハワイから西行して小笠原に辿り着けたら、その後は島伝いに北行して本州に到達できる。
 
なお、偏西風と貿易風の境界はだいたい北緯30度くらいである。
 

車持皇子(キャロル前田)の物凄い冒険譚を聞いて、竹取翁(藤原中臣)はたいそう感動して歌を詠みました。
 
「呉竹のよゝの竹取り野山にもさやは侘しきふしをのみ見し」(*94)
 

(*94) 古文に興味の無い人はこのコメントは読み飛ばし推奨。
 
「やは・・・見し」は“係り結び”で、“見たことがあるだろうか”(反語)→「決して見たことが無い」。“わびしき”は辛いという意味。その前にある“さ”は代名詞で、皇子の体験談を受けている。
 
“ふし”は「思い当たるふしがある」の“ふし”と同様。物事のこと。“侘しきふし”で“つらい物事”。しかしこの“ふし”(節)は前半に出てくる“竹”の縁語になっている。
 
結局意味としては「私は、あなたの体験なさったことみたいに辛い目には遭ったことはありません」となる。
 
物凄く技巧的な歌であり、一瞬で詠める歌ではない。私なら1時間くらい推敲を重ねてもこのレベルに到達できるだろうか。いや3時間掛けても辿り着けないであろう(反語?)。
 
いづれにせよ、この竹取物語の作者が物凄く高レベルの和歌の技術を持っていることを推察させる歌である。
 

この翁の歌に対して、車持皇子は
「本当に随分辛い日々を送りましたが、こうやって生きて帰ってきて、やっと私の心も落ち着いた所です」
と言った上でこう返しました。
 
「わが袂(たもと)今日乾ければ侘しさの千種(ちぐさ)の数も忘られぬべし」(*95)
 

(*95) 航海で海の水で袂が濡れたという意味と、涙を流して(涙を拭くために)袂を濡らした、というのが掛けられていて、それが乾くというのは、航海が終わったことと、辛いことが終わったことを掛けている。
 
“乾ければ”は四段動詞「乾く」の已然形“乾け”+完了の助動詞「り」の已然形“れ”+順接を表す“ば”で「乾いたので」。「乾いたら」ではない!「乾いたら」なら“乾かば”。
 
“わびしさのちぐさ(侘しさの千種)”で“数多くの種類の辛いこと”。
 
航海が終わり、辛いことも終わったので、辛かったことの数々も、忘れることができる、ということ。
 
まあこの程度は5分で書ける。
 

一方かぐや姫の部屋の前で、女房装束を着けたまま、お菓子と麦湯を頂いてた旅村と坂口ですが、かぐや姫の女童(めのわらわ)が持って来てくれたのは、金色と銀色の丸いお菓子でした。
 
「こんなお菓子は初めて見ました。これは何と言うお菓子です?」
「唐国(からくに)からもたらされたお菓子で“銅鑼珠”というものです」
「唐国のお菓子ですか!そんな貴重なものを頂いてよいのですか?」
「どうぞ。たくさんありますから」
「へー。さすがですね」
 
女童(めのわらわ)たちが言いました。
「従者様方が女ならば金色の玉をお召し上がり下さい」
「女房様方が男ならば銀色の玉をお召し上がり下さい」
 
2人は顔を見合わせました。
「銀色を頂こうかな」
「私も」
 
と言って2人とも銀色のお菓子をいただきました。金色のお菓子は女童たちが下げました。
 
「あ、美味しい」
「中には果物の実が入っているんですね」
と旅村と坂口は言いました。
 
そして2人がお菓子を食べ終わった時、
 
2人の姿が突然、女房装束から男性従者の姿に戻ってしまいました。
 
「これはどうしたことか?」
「何か起きましたか?」
 
2人は顔を見合わせました。そして頷きあいました。そして
「かぐや姫様」
と何か言おうとした時のことです。
 

何やら表のほうで騒ぎが起きているようでした。
 
「何だろう?」
と2人は言いました。
 
かぐや姫が言いました。
「桜」
「はい」
「殿方たちに、少し休める部屋を用意して」
「はい」
と言って、桜(入瀬ホルン)が立って行きます。
 
「いえ私たちは」
と男装に戻った旅村たちは言いますが、かぐや姫は
「皇子(みこ)様は夜中にお帰りになるでしょう。それまで仮眠なさっていたほうがいいです」
「はい?」
 
「桃、これを殿方たちに」
と言って、姫君が着るような上等の服を旅村たちに渡しました。
 
「すみません。これを私たちが着るのでしょぅか?」
「皇子(みこ)様が必要になります」
「へ?」
 

門の所で騒いでいたのは7人の職人たちでした(7人の小人ではない!)。
 
藤(花園裕紀)が忙しくしているので、紫(広瀬みづほ)が応対に出ました。
 
「何事ですか?」
と問いますと、男たちのひとり(スーザン高橋)が文挟み(ふみばさみ)に文を挟んで高く掲げて言いました。
 
「内匠寮(たくみづかさ)の匠(たくみ)で、漢部の内麿と申します。玉の枝を作るのに、五穀断ちをして千余日、力を尽くして作業いたしました。それなのにまだ報酬を頂いておりません。車持皇子様のお館に行ったのですが、ご不在でした。聞くところによりますと、皇子様はこちらの姫君とご婚礼を挙げられる(*96) とのこと。玉の枝もそのご婚礼の記念の品かと思い、こちらに参りました。どうかこの文をお読み頂いて、私の部下たちに褒美を給えないでしょうか」
 
その声を聞いた竹取の翁は困惑しています。車持皇子は狼狽してどうしたらいいか分からないまま立ち上がることもできずに居ます。
 

旅村と坂口は
「ああ、とうとうバレたか」
「バレない訳無いよな」
と言いました。
 
かぐや姫は桃(川泉パフェ)に「匠(たくみ)の文(ふみ)を持って来なさい」と言いました。それで桃が表に出て行き、まだ困惑している様子の紫に手で合図し、匠の文を自分で取りました。そして、かぐや姫のところに持って来ました。
 
(桃は本来かぐや姫のそばを離れないが、ここは離れても女童の橘がいるし、護衛の松・竹もいる)
 
かぐや姫(アクア)が匠の文を読みます。
 
「車持皇子(くらもちのみこ)様は千日間にわたり職人たちと一緒に同じ場所に閉じこもって、立派な玉の枝を作らせました。これが出来上がったら、たくさん褒美をやるし官位も授けようとおっしゃっていたのですが、まだ頂いておりません。どうか賜り下さいますようお願いします」
 
(*96) 原文ではこれは匠が言ったのではなく文に書いてあったことばであるが、文に書くのなら、それをいつ書いたのかがおかしい。文には単に褒美を下さいとだけ書いてあり、かぐや姫のところに来た理由は口頭で言ったと考えたほうが素直である。
 
なおこの部分の原文は「御使ひ(みつかい)」。単純に訳せば「使用人」。つまり皇子の使用人の立場で夫婦関係も結ぶ人。天皇でいえば御息所(みやすどころ)とか更衣といった立場。側室と訳す本もある。平民のかぐや姫は皇子の正妻になることはできない。
 
だから逆に、かぐや姫は石作皇子と車持皇子にはとりわけ難易度の高いものを要求した。
 

かぐや姫はすらすらと文を書くと、それを皇子に届けてくるように桃に言いました。その文にはこのようにありました。
 
「まことかと聞きて見つれば言の葉を飾れる玉の枝にぞありける」(*97)
 
(*97) “枝”だから“葉”を飾る。それに“言葉”を飾るものだったとはと言っている。
 

「従者(ずさ)殿」
とかぐや姫は呼びかけます。
 
「はい」
 
「匠たちに褒美を取らせてください。ちょっと私と一緒に来てください」
「はい」
 
それで橘(入瀬コルネ)に御簾を揚げさせて、かぐや姫が出て来ます。旅村と坂口は姫の美しさに思わず見とれてしまいました。灰色の服を着ているのでその美しさはより際立っています。
 
松と橘に玉の枝を見ているように言い、かぐや姫(アクア)は護衛の竹(川泉スピン)と(文を渡して戻って来た)女房の桃(川泉パフェ)を連れて土蔵に向かいます(姉妹共演!)。その後に旅村と坂口が続きます。かぐや姫は土蔵警備の男たち(星村泰児・川谷国男)(*98) に会釈して土蔵を開けます。姫は2人の従者を招き入れました。
 

(*98) 土蔵警備の男を演じた星村泰児・川谷国男は、あけぼのTVの社員。“奈良時代の服着て立ってるだけだから”と言って徴用した。彼らは元バスケット選手と元ラグビー選手で体格がガッチリしており、いかにも警備兵という感じである。2人は『八犬伝』では芳流閣の屋根から、アクアと白鳥リズムが抱き合って転がって落ちて行く所が安全なことを確認するための実験台をしてもらっている。
 

土蔵の中には大量の宝箱が積み上げられています。
 
「私には重くて持てないのです。この箱をひとつ匠に差し上げてください。皇子(みこ)の部下のあなたたちからもらったら、皇子様からのご褒美と思い、匠たちも喜ぶでしょう」
と言って宝箱の鍵を土蔵の鍵とは別の鍵で開けました。
 
「分かりました!」
 

それで旅村と坂口は宝箱を持ちますが、ずっしりと重いので(*99)
「まさかこれの中身は金(きん)か?」
と思いました。
 
「これが相当数積み上げてあったぞ。これだけ財産を持っているのなら、金銭的なものでかぐや姫を満足させることはできまい」
と2人は思いました。
 
匠たちはたくさんの褒美をもらい、車持皇子に感謝の言葉を言って帰って行きました。旅村たちが応接間を見ると竹取翁はたくさん皇子を褒めていたのでバツが悪くなったのか、寝たふりをしているようです。皇子の姿は見えません。
 
「ひとりでお帰りになったのかな」
「まさか。きっと夜の闇に紛れてお帰りになるよ」
「じゃそれまで仮眠してるか」
 
それで2人がかぐや姫の部屋まで戻ると
 
女童(めのわらわ)の桜(入瀬ホルン)が
「こちらへどうぞ」
と案内してくれるのに付いて行きました。
 
(*99) 撮影は空の箱でおこなっている。きららは割と腕力があるので、2人がかりなら30kgくらいまでは持てる。
 

藤(花園裕紀)は何とか宴の準備を整えると紫(広瀬みづほ)に声を掛けました。
 
「何とかなったと思う。そろそろお客様が集まってくるかな」
「あ、婚礼は中止になったから」
「なんで〜〜!?」
「玉の枝がニセモノと判明したから」
「え〜〜?たくさん用意したお料理どうすればいいのよ!?」
「匠の人たちに持って帰ってもらいましょう。まだその辺にいるはず」
 
それで匠たちを追いかけて声を掛けますと、大喜びでお料理を持って行ってくれました。
 
「たくさんご褒美を頂いた上にお料理までくださるとは、皇子(みこ)様は素晴らしいお方だ」
と匠たちは皇子を褒めていました。彼らは3年間五穀も肉魚・酒なども断っていたので、お肉・お魚がたくさん、それにたっぷりのお酒に大喜びしていました。
 

皇子は夜中に旅村たちの部屋に来ると
「帰るぞ」
と言って、坂口を蹴ります。旅村も目を覚まして言いました。
「これをかぐや姫から預かっております」
 
「これは・・・かぐや姫の御衣(みぞ)?」
「いえ。皇子(みこ)様が着て出て行けば目立つまいと」
「涙が出るほど嬉しいよ」
 
それで皇子は女物の服を着た上で、偽物の玉の枝を載せた荷車を曳く旅村・坂口と一緒に闇に紛れて、かぐや姫の家を退出しました。
 
語り手「そしてその後、皇子の行方は誰にも分からなくなりました。確かにいったんお館まで戻ったものの朝御飯を差し上げようと持って行くと、皇子はおられませんでした。馬が1頭居なくなっていたので、皇子が使ったものと思われました。旅村たちは生駒の作業所にも行ってみたのですが、おられませんでした」
 
「その後、大勢で手分けしてお探ししたのですが見付からず、人々は、きっと深い山に入ってお亡くなりになったのだろうと言いました」
 
「それで「たまさかる」という言葉がうまれたのです」(*100).
 

(*100) 「たまさかる」というのは通常「魂離る」と書き、魂が抜けたかのようにぼんやりした状態を指す。皇子が作戦失敗して茫然自失になってしまったということか。ここでは魂(たま)と玉(たま)が掛けられて、皇子が玉の枝の作戦を失敗したことがひっかけられている。
 
ところがこの部分はテキストによっては「たまさかなる」になっている本もある。それだと「めったにないことである」という意味になる。皇子のしたようなことは普通誰もしないことだが、たまにこういうとんでもないことをする人もあるということ。
 

車持皇子がかぐや姫の家を退出した後1ヶ月ほど経った日、旅村と坂口が馬に横乗りした貴人の女性(姫路スピカ)を、かぐや姫の家につれてきました。坂口は荷車を曳いています(*101).
 
旅村と坂口を見知っている紫(広瀬みづほ)が笑顔で応対に出ました。
 
「これはいらっしゃいませ。何かございましたか」
 
女性が自分で馬を降りて用件を言います。
 
「私は車持皇子(くらもちのみこ)の妹で、草笛皇女(くさぶえのひめみこ)と申します。かぐや姫殿にぜひともお願いしたい儀がありまして参りました」
 
紫は思いがけない貴人の来訪に驚き、皇女をかぐや姫の部屋に案内しました。旅村が付き添います。坂口は荷車をかぐや姫の部屋の前k庭へ進めました、かぐや姫(アクア)も帳台から出て、部屋の入口まで来ます。そして皇女に上座を勧めましたが、皇女は「こちらから頼みたいことがあるから」と言って、結局かぐや姫と同じ線に並びます。そして2人は部屋の入口で話しました。
 

(*101) 日本では馬に荷車を曳かせるという考え方が生まれず馬車は無かったとされる。馬は人間が乗るだけである。平安時代になって牛車が生まれるまで荷車は人間が曳いていた。
 

草笛皇女はかぐや姫を見て『とんでもない美人だ。なるほど兄が破滅したのも分かる』と思いました。でもなぜ灰色の服など着てるのだろうと疑問を感じました。
 
「皇女(ひめみこ)様、その後、車持皇子様の御消息は?」
「分かりません。でも死んだりはしませんよ。自分の盛大な嘘がバレて恥ずかしがってほとぼりが冷めるまで身を隠しているつもりに違いありません」
「確かに。自殺なさるような方ではないでしょうね」
「ね?」
と2人は同意見になりました。
 

「車持皇子の馬鹿が」
と皇女は言った。馬鹿なのは同意だなと、かぐや姫も思います。
 
「あなたに贈る玉の枝を作るために、家の蔵、支給されている田、荘園、全ての蔵から金(きん)を持ち出し、米や絹も全て金(きん)に換えていたので、現在うちには何も財産が無いのです。このままだと数ヶ月以内に、使用人たちのお給料も払うことができなくなります」
 
「先のことを何にも考えていませんね」
「全くです。それで単刀直入に、かぐや姫殿にお願いがあるのです。あの馬鹿皇子が作らせた玉の枝を適当な額で買い取っていただくことはできないでしょぅか」
 
旅村と坂口が荷車から玉の枝を取りだして、かぐや姫の部屋の縁側に置きます(*102).
 
(*102) 玉の枝は本物の金(きん)で作ると後述のように85kgくらいと思われるが、これは撮影用のものなので、金(きん)ではなく真鍮で作って金メッキをしており、更に内部を空洞にしているので25kgくらいである。さくらときららで何とか持つことができた。この2人が全力で持ったので、いかにも重たい感じがよく出た。
 

「重さはどのくらいありますか?」
「測らせました。金(きん)が2000大両(*103)、銀が100大両、大粒の白玉(真珠)か108個使用されています。白玉を調達した旅村によりますと、1粒2-3大両で買ったそうです。ですから購入資金は金(きん)300大両程度です。重量はそちらで再測定していいですよ」
 
「皇女(ひめみこ)様のところで測定なされたものでよいでしょう。いくらで買い取りましょうか?加工賃まで含めて3000大両くらいで引き取りましょぅか?」
とかぐや姫は尋ねました。
 
「加工賃は匠たちに、かぐや姫殿が代わりに払ってくださっています。それと銀100大両は金(きん)に換算すると1大両にもなりませんから無視して、金と白玉分で2300大両くらいで引き取って頂けると助かるのですが」
 
「ではそれで」
 

(*103) “両”は後世にはお金の単位としても使用されたが、元々は質量の単位である。当時は“両”に“大両”と“小両”があり、大両は41.9g, 小両は13.9gだった。
 
大雑把に1大両=40gと考えると、2000大両は80kgになる。現代の感覚で1g=1万円と考えると金80kgは8億円に相当する。16の荘園の蔵から各々5000万円くらいずつ出させたことになる。
 
なお、価値的には、銀はだいたい金の1000分の1くらいと等価交換されたので、銀100大両は金0.1大両相当になる。
 
金を80kg, 銀を5kg 使っていたら、玉の枝の重さは85kgということになる。なお、真珠は超巨大な9mm玉でも1g程度であるから、重さとしては無視してよい。
 
簡単のため金の重さを80kg, 金の比重を約20g/cm3として、80000g=4000cm3. この体積の円柱を考えて、例えば長さ50cm とすると断面積は80cm2となり、円形なら半径は5cmになる。つまり玉の枝は長さ50cm 枝の直径10cm程度かもしれない。主枝から多数の小枝が出ていたらもう少し全体の長さは短いか、あるいは太さが細いか。
 
原文では翁が軽々と持ち運んでいるが、年寄りが持てる重さならもっと小さいもので16の荘園の蔵を開けさせたというのと釣りあわない。また加工に3年もかかるはずもない。3年掛けて制作したというのは、最低でもこの程度の大きさと思われる。これ以上重くなると、今度は運搬に困難を生じるし、蓬莱で皇子が手折ったという話と釣りあわない。なお蓬莱のシーンの画像は樹脂製レプリカである。
 

かぐや姫は、松と紫、女童たちに玉の枝の警備をさせておき、桃と竹を連れて、皇女と従者を土蔵に案内しました。土蔵警備の男たち(星村泰児・川谷国男)に会釈して土蔵を開けます。多数の宝箱が積み上げられており、皇女はなかなかのものだなと思いました。
 
「ここの箱は、1つに500大両(20kg)(約2億円)の金(きん)が入っています。計るのも面倒ですしこの箱を5つ持って行かれます?」
 
「いえ、あとで揉めてもいけませんし、ちゃんと計りましょぅ」
 
語り手「それで皇女は、旅村と坂口に持参の秤(はかり)で、きちんと金(きん)の重さを量らせました。ひとつの宝箱(500大両)には各々1大両(41.9g)の金の延べ棒500本が入っています。旅村たちはその重さと体積を量り、間違い無く純金であることを確認。宝箱4つと残り金の延べ棒300本を取りました。かぐや姫は空き箱とそれに対応した鍵を差し上げましたので、300本はこれに入れました」
 
「かぐや姫がひとつひとつの箱を別々の鍵で開けたので、皇女は感心していました。しかもかぐや姫は、皇女がこの箱がいいと言って指し示した箱を開ける鍵を、壁に多数、番号とかも無しに並んで掛けてある鍵の中からさっと取ったので、この人は、ただの美人ではないぞと思います。従者たちは玉の枝を載せてきた荷車を土蔵の近くまで持って来て、宝箱を積みました」
 
「ありがとうございます。助かります」
と皇女は言い、かぐや姫に握手を求めたので、かぐや姫も笑顔で握手をしました(*104).
 
これで車持皇子の家の経済は危機を脱し、草笛皇女とかぐや姫はその後も交友を重ねることになります。
 
またこの玉の枝は、竹取翁のお店に飾られ、それを見るのに大勢の客が押し寄せ、ますますお店は繁盛したということです。
 

(*104) 握手は古代中国でも行われていたので、唐文化の影響を強く受けていた奈良時代の貴族も握手を知っていたであろう。多分。だから貴族文化の教育を受けているかぐや姫も握手は知っていたと思う。
 
なお身分差がある場合、下の者から上の者に握手を求めてはいけないので、かぐや姫から皇女に握手を求めることはできない。必ず皇女から求める。
 

川のほとりの粗末な小屋に、女房装束の旅村と平民の男物の服を着た坂口が来ました。坂口は荷車に多数の荷物を積んでいます。
 
「皇子(みこ)様、食料を持って来ましたよ」
「おお、すまんすまん。助かる」
 
それで旅村と坂口の2人で荷物を降ろします。
 
★音楽:常滑舞音『素敵な山の秘密基地』(童謡『山のワルツ』の替え歌)(*105)
 
(*105) 『山のワルツ』とは、このタイトルで認識している人が必ずしも多くないが「すーてきな山の幼稚園〜♪8時になるとリスの坊やがやってきまっすー」と歌う歌(香山美子作詞・湯山昭作曲)である。
 

「皇子様もそろそろ山を降りられませんか?」
「世間ではどうだ?私のこと忘れてくれたか?」
 
「石作皇女(いしづくりのひめみこ)殿が書いた『車持波行物語』(くらもち・なみゆき・ものがたり)なんて本まで出来て、今、都では話題ですよ」
「あいつー!」
 
「写本がたくさん作られて、写本の売上げは、石作皇女殿と草笛皇女殿とで山分けだそうです」
「なんて恥ずかしい」
 
「10年くらいはこの話で持ちきりですよ」
「都で飽きられた頃、きっと越国(こしのくに:北陸)や吉備(きび:岡山から広島東部)に筑紫(つくし:九州)で話題になりますよ」
「うーん・・・」
 
語り手「この『車持波行物語』が後に音読みされて“しゃじはこう”物語と呼ばれるようになり、それが訛って話が更に膨らんで“しんどばっと”物語と言われるようになったとのことです」
 
(「嘘だぁ!」という多数の視聴者の声)
 
シンドルバット衣裳の恋珠ルビーの姿が一瞬映り「ん?」と声を挙げる。
 

「ところで旅村、お前可愛いな」
「は?」
「ちょっとやらせろ」
 
と言って皇子は旅村を押し倒しました。
 
「あ〜れ〜!」
「よいではないか、よいではないか」
 
果たして旅村の運命はいかに?
 
(「ほんと心配だ」という視聴者の声多数)
 
看板係(麻生ルミナ)がこう書かれたプラカードを掲げる。
 
「よい子のみんなへ。皇子たちはプロレスの練習をしてるんですよ」
 
(「嘘つけ!」「今時の子供は欺されんぞ」という視聴者の声多数)
 
 
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【竹取物語2022】(4)車持皇子の場合(後編)