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■福引き(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-01-18
 
少し落ち着いた所で会社と妹に電話した。
 
「はい。無事手術が終わりました。ええ。では10月1日から出社します。またよろしくお願いします」
と部長に言う。
 
1ヶ月前に病院から部長に電話した時は翌日には「冗談でーす」と言うつもりだったのに。こういうのを嘘から出たまこととか言うんだった??
 
「あ、繰戸君、名前は何になるの?」
「はい、里子(さとこ)で」
「じゃ、建設三課課長・一級建築士・繰戸里子(あやべ・さとこ)で新しい名刺を作っておくから」
「ありがとうございます」
 
それで電話を切ったが、まだ会社にどんな顔して出て行けばいいのか分からない。
 
「無事手術終わったから」
と有華に言ったら
 
「お兄ちゃん、あれ冗談じゃなかったの?」
などと言われる。
 
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いや、俺も冗談のつもりだったんだけど。
 
「お兄ちゃんが女の子になりたがってたなんて知らなかった!」
 
うん。俺も女になりたいなんて思ったこと無かったし。
 
「でも会社にはそのまま勤められるみたいだから、お前の学費は出してやるよ」
「ほんと。じゃマジで受験勉強頑張る」
 

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食糧も充分買ってきたし、里子は取りあえずのんびりと「静養生活」を送った。
 
実際、手術した所は、お股も胸もとっても痛い。喉や肩も痛いのだが、その2ヶ所に比べれば痛みは随分小さい。まあ2ヶ月も自宅療養していれば、痛みもだいぶ減るだろう。
 
里子はそう思っていた。
 
ダイレーション(人工的に作った膣が縮まないようにダイレーターという棒を膣に挿入し、拡張する作業)は苦痛だし、痛かったが、これを毎日3回やることを医師からは言われていた。一応ふだんはあまりきつくない、留め置き用のダイレーターを入れっぱなしにしている。
 
男の人とセックスする時は外さなきゃやばいよな、と考えてみたものの、当面、男性とセックスするあてはない。というか、そもそも男とセックスなんて考えただけでも気持ち悪い。
 
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しかし女の形になってしまったお股でおしっこするのにも随分慣れてきた。むしろここにチンコがあった時、どうやってしてたんだっけ?とそちらの方を忘れてきつつあるような気もした。
 
そして5日ほど経った時であった。
 
里子のアパートの玄関のベルが鳴った。
 

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「はーい」と言って里子は玄関に出た。
 
女になったら会社の女の子たちともたくさんおしゃべりしないといけないだろうし、少女漫画に少し親しもうと思い、アマゾンで『夏目友人帳』全巻セットを頼んだので、それが来たかと思ったのである。
 
それでドアスコープも見ずに玄関を開けたら、そこに居たのは紀恵だった。
 
「あ、のんちゃん・・・」
「さと・・・・ちゃん!?」
と彼女は戸惑うような顔をした。
 
それはそうだろう。女の子みたいな髪型、水色のフレンチ袖チュニック、白い膝丈スカートと穿いている。まるで女装でもしているみたいだ。いや、2ヶ月前の自分なら女装なのだが、今はこれが普通の服だ。
 
「何て格好してるの? 何かの罰ゲーム?」
「あ、えっと・・・いろいろあってね。取り敢えず中に入らない?」
「うん」
 
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と言って中に入ってくる。
 

里子は取り敢えず紀恵の好きなローズヒップティーを入れて、買い置きのムーンライト・クッキーを出す。これも紀恵の好み。甘いローズヒップティーにあっさりめのムーンライトが合うのである。
 
「わぁい。前回来た時にローズヒップティーもムーンライトも最後のストック使っちゃったのに、また買っておいてくれたのね」
「うん。4日くらい前に買物に行った時買っておいた」
 
「へー。で、どうしたの? 心配してたんだよ。全然連絡無いから仕事が忙しいのかなあとか思ってたんだけど、携帯にメールしても反応無いし。会社には連絡したら悪いかなと思ったしさ。何度か実はここまで来たんだけど留守みたいだったし。でも1ヶ月も連絡が無いのは変だと思って。まさか建築現場とかで怪我して重傷とかで入院してたらと思って、昨日思いあまって会社に電話したんだよ。友人ですが全然連絡が取れないのでと言って。でも友人には教えられないと言うんだよ。それで実は恋人なんですと言っちゃったんだけどね」
 
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「うん」
 
「そしたら、1ヶ月入院していたけど数日前に退院して今は自宅にいるはずと言われて。でも部長さんが『ショックを受けないでください』と言ったんだけど何なの? やはり現場の怪我?」
 
里子は頭を畳に付けて謝った。
「ごめん。お詫びのしようもない」
 
「ちょっと、ちょっと。何なの? 別れてくれとか言うのは嫌だからね」
 
「別れるとか何とか以前に、俺、女になっちゃった」
「はあ?」
 
「実は性転換手術を受けて1ヶ月入院していたんだ」
「性転換!? 何の冗談? それに女装でもしてるかのような服だし」
「女に見えない?」
「全然」
「そっかー」
 
そうかも知れないな。だって、こないだ女になったばかりだもん!
 
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それで里子は1ヶ月前に起きたことを話した。
 
テレビ局の番組に出たこと(紀恵は見ていなかったらしい)。それでドッキリ企画がありますと言われたこと。そのテレビ局を出た直後に福引券の落とし物を拾い、商店街の人に届けたものの、どうせ落とし主は分からないし、連絡があったらその人にも引いてもらうから、あなたが引きませんかと言われたこと。それで引いたら1等が当たり、賞品を渡すと言われて病院に連れて行かれたこと。それで1等賞品は性転換手術だと言われたこと。そんな賞品の福引きなんて、あるわけないし、これがテレビ局の人が言ってたドッキリ企画かと思っていたら本当に手術されちゃったこと。
 
しかし紀恵は途中からとっても変な顔をする。
 
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「ねえ、その冗談、出来が悪すぎるんだけど」
「俺も冗談だと思い込みたいんだけど」
 
それで里子は服を脱いでみせた。
 
「嘘・・・・」
 
紀恵は口に手を押さえて呆気にとられている。
 
「うっそーーーー!!!」
と紀恵は再度叫ぶ。
 
「いや、嘘とか冗談だったらいいんだけど」
 
「でも、どうするのよ!? 突然女になっちゃって」
「まあ、なっちゃったものは仕方無いから、頑張って女として生きていくかなと」
 
「さとちゃん、受容性がありすぎ!」
「うん。それは人から良く言われる」
 
紀恵は少し考えていた。
 
「ねぇ。本当は元々女の子になりたくて、それで自主的に手術を受けたということはないの?」
「それだったら、大喜びしてるんだろうけどねー」
 
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更に少し考えて紀恵は言う。
「私との関係はどうするつもり?」
「うん。この身体では、のんちゃんの夫になってあげることができないなあと思って」
 
「まさか、私との関係を解消したいなんて言わないよね?」
「どうしよう・・・」
 
紀恵は更にまた少し考える。
「私のこと好き?」
「好き」
「ずっと一緒に居たい?」
「ずっと一緒に生きて行きたい」
 
「だったら、恋人のままでいいね」
と紀恵は笑顔で言った。
 
「ほんとにいいの?」
「私、過去に女の子と恋愛したこともあるしね」
「へー!!」
 

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「名前とかどうすんの?」
「それは里子(さとこ)で」
「そうだねぇ。女で里太郎(さとたろう)という訳にはいかないよね。でも『さとちゃん』のままでいいね」
 
「うん。会社も繰戸里子の名前で新しい名刺作ってくれるらしい」
「ふーん。そのまま勤め続けるんだ?」
「うん。でもどんな顔して出ていけばいいんだろう?」
「何も変わらない顔して出て行けばいいんだよ。ずっと前から女であったような顔して」
 
「そうだね。そうなるかな」
「でも建設会社で女性の課長って珍しいかも」
 
「ああ。それが国の政策で女性の管理職の比率を増やさないといけないらしくて。今管理職が30人の内女性管理職が2人しかいないけど、30人管理職がいるなら2割の6人は女性でないといけないんだって。だから4人増やさなきゃってことらしい。だからちょうど良かったと言われた」
「男性の管理職も1人減るし?」
「そうそう」
 
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「でも28人の男性管理職と2人の女性管理職の所に4人女性管理職を追加しても、34人中6人で比率は17.6%にしかならない。2割以上なら5人追加しないと。それなら35人中7人で20%になる」
「あ、そうか」
 
「もっとも、さとちゃんが女になっちゃったから現在27人の男と3人の女。これなら4人追加で34人中7人で20.3%になるね。さとちゃんの性転換は人事をとっても楽にしたね」
「うむむ」
 
今回の自分の性転換って会社の陰謀じゃないよな?と一瞬考えてしまった。
 
「いっそ、さとちゃん以外にも3人の男性管理職が女性に性転換しちゃうとか」
「なるほど、それはいいな。提案してみようかな」
 
「仕事辞めるのと男辞めるのとどちらがいい?と迫るとか」
「それ、子作り終わって住宅ローン抱えてる中年男は性転換を選択せざるを得なかったりして」
「妄想小説にありそうな展開だ」
 
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「だけどさぁ、さとちゃん」
「うん?」
 
「さとちゃんさあ、そういう格好してても全然女に見えないんだけど」
「そう?」
 
「罰ゲームで女の服を着せられたお兄さんって感じなんだよなあ」
「うむむ」
 
「女として生きるつもりなら、取りあえず女に見えるようにしないと」
「どうすればいい? やはり眉かな。なかなかうまく切れなくて」
 
「まあ眉もあるかな。ちょっと切ってあげるよ」
「うん」
 
それで紀恵に切ってもらうと、目の付近の印象がかなり変わる。眉は男女の顔を見分けるのに重要なファクターであることを再認識する。
 
「あとね。視線が男の視線なんだよ」
「視線が男と女で違うの?」
 
「男の視線は対象物を刺すように見る。女の視線は対象物を受け入れるように見る。視線の方向が逆なんだよ」
「へー!」
 
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それで里子は意識して物を受け入れるように見てみた。コーヒーカップならコーヒーカップが自分の目に飛び込んでくるかのように見てみる。確かに今まではコーヒーカップに自分の視線をぶつけていた気がする。
 
「あ、変わった変わった。結構印象が変わったよ。すぐ変えられるって、さとちゃん、女の子になる素質を持ってたのかも」
「うむむ」
 
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