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■福引き(2)

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「誰が落としたかなんて分かりませんよ。お客さん引かれませんか?」
「でも・・・」
「問合せがあったら、そのお客さんには別途引いてもらいますから」
 
「そうだなあ。じゃもらっちゃうか」
というので、福引のガラポンを回す。金色の玉が出た。
 
「大当たり!!1等賞!!!」
と言って係の人とが大きな鐘を鳴らす。ちょっとちょっとそんなに鳴らしたら恥ずかしい。
 
「いいんだろうか?他の人の券なのに」
「いいんじゃないですか? お客さん、運が良いですね。あ、こちらに1等賞、受け取りのサインを頂けますか」
「はい」
 
と言って里太郎は何やら書類のサインをする。
 
「それでは1等賞を差し上げますので、こちらへいらして下さい」
「はいはい」
 
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ということで、背広を着た40代くらいの男性に連れられ、里太郎は商店街の裏の方に行く。駐車場があり、車へと案内される。
 
「どこか遠くですか?」
と里太郎は戸惑ったように言う。
 
「ああ。すぐ近くです。ご心配なく。日本語も通じますから」
 
日本語も通じる!? なんだそれはー!?
 
やがと車は小さな病院に到着した。里太郎は戸惑う。
 
「病院で何するんです?」
「この商品は病院でないと受け取れませんから」
と商店街の人は言う。
 
それで病院の受付でその人が事務の人と何やら話していたが、やがて
 
「302号室ですから」
と言って、里太郎は病室に連れて行かれてしまった。
 

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「あのぉ・・・・ここで何を」
「もちろん性転換手術です」
「は!?」
 
「福引きの賞品は1等がフル性転換手術、2等が豊胸手術、3位が去勢手術、4位が喉仏の除去手術、5位が全身永久脱毛です。各々上の景品には下のものが内包されていますので、あなたはフル性転換手術・豊胸手術・喉仏の除去手術に永久脱毛を受けて頂きます」
 
「凄い冗談ですね」
「ちなみに、この当選の権利は他の人に譲ることはできませんので。それでは女性としての良き人生を」
 
と言って、商店街の人は帰ってしまった。里太郎は「うーん」と考えたが、ハッとさきほどのテレビ局でのやりとりを思い出す。
 
あ、これきっとドッキリ企画だ!
 
だいたい商店街の福引きで性転換手術が当たるなんて有り得ないし。
 
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どこかで「ドッキリ」とかいうプラカード持った人が出てくるんじゃないかな。この病室カメラで撮されているのではなかろうか? まあ、それまで楽しむか。
 
里太郎はそう考えた。
 

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60歳近くかなという感じの看護婦さんが来て、体温・脈拍をチェックする。それから検査室に連れて行かれ、血液を採られ、レントゲン、心電図まで取られた。ここまでやるとは徹底している。ほんとに何かの手術でも受けるみたい!
 
病室でのんびりと寝ていたら、やがて30代くらいの女性医師がやってくる。
 
「それでは治療内容を説明します。あなたはフル性転換手術コースで登録されています。1ヶ月入院して頂きます。明日まずは性転換手術を行い、来週豊胸手術、再来週に喉仏と肩の骨を削る手術をします」
 
へー。1ヶ月かかるのか。たしかに男の身体を女に作り換えるといったら1日では済まないだろう。オカマさんとか大変だなあ、などと他人事のように考える。
 
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「1ヶ月の間、治療の妨げになるので携帯電話、スマホ、パソコンの類は禁止になりますので、連絡をしたい方があったら、夕方までに連絡を済ませておいてください」
「はいはい」
 

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医師は里太郎を診察室に連れて行き、里太郎に下半身裸になってベッドに寝るように言う。それでズボンとトランクスを脱ぎ、ベッドに横たわると、ペニスとタマタマを弄られる!ひぇー。 里太郎は女性医師にそんなことをされたので、あっという間に立ってしまった。
 
「女性ホルモンとかは飲んでないのですか?」
と訊かれるが
「そんなの飲んでません」
と答える。
 
「精液出るかな? ちょっと**さん、精液が出そうだったら採取しといて」
と言われる。
 
すると「はい」と言って、20代の男性看護師が寄ってきて、里太郎のペニスを掴むとピストン運動を始めた。ぎゃー。男にこんなことされるなんて。
 
と思ったものの、物理的な刺激には弱い。あっという間に里太郎は射精した。
 
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射精した精液は何やら容器で受け止められる。医師はその液を一部スポイトで取り、顕微鏡で観察していた。
 
「ふーん。精子は元気ですね。ふつうに女性を妊娠させられるくらいの精子があります」
などという。そりゃ一応健全な男子のつもりだし。
 
「その精液、念のため冷凍保存」
と女性医師が言うと
 
「はい」
と男性看護師が言って、その容器を持って出ていった。
 
そのあとパンツとズボンは穿いていいと言われるが、今度は上半身裸になるように言われる。
 
「ふーん。おっぱいは全然大きくしてないんですか」
と女性医師は言って、里太郎の乳首をつまんでいる。
 
「してませんけど」
と里太郎は答える。
 
「分かりました。けっこうです」
 
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ということで診察は終わった。
 

医師は手術の内容を説明してくれる。
 
「基本的には、陰茎と陰嚢・睾丸を削除し、代わりに陰核・陰唇・膣を形成します」
「はあ」
「しばしば、ポールとボールを取ってホールを作る手術と言われますね」
「なるほどー」
 
「基本的には陰茎の皮を裏返して体内に埋め込み、膣にします」
「へー!そうだったんだ」
「するとちょうど陰茎が入るサイズの膣が出来るわけです」
「なるほど。合理的ですね」
「その時、尿道も膣の一部に転用します。すると性的に興奮した時に分泌液が出て膣が濡れてくれるので」
「ほほぉ」
「陰茎の先端、亀頭の一部を利用して陰核にします。どちらも敏感な部分ですから、陰核を弄られると気持ちよくなることができます」
 
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しかし話を聞いていると何だか自分のあそこがむずかゆくなってくる気さえする。こんなドッキリ企画に乗らなかったら、こんな話は知ることもなかったろうし世の中には色々な世界があるものだと里太郎は思う。
 
「結構、男の身体と女の身体って、似たような部品があるものなんですね」
「当然です。人間の身体は元々女性型で、それを改造して男の身体は作られています。ですから性転換手術というのは実は改造されてしまった男性が本来の女性の身体に戻る手術なんですね」
「わあ」
 
医師は性転換手術の「Before/After」の写真を数枚見せてくれた。
 
「これが・・・こうなっちゃうんですか?」
「そうですね」
「なんか普通の女性の形だ」
「もちろん、そういう形にしますから」
 
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「ふつうの女と区別つかないですね」
「ふつうに女性の中に埋没している人は多いですよ」
「へー」
 
里太郎は一瞬、自分が本当に手術されてこんな形になってしまった場合のことを想像してみた。
 
これ、オナニーはできないよな?などと変なことを考えた上で、おしっこはどうやってするんだろ? などとふと里太郎は思ったが、そんなことを女性の医師に訊くのはちょっとためらわれた。
 
「あ、そうそう。性転換して女性になった後のお名前はどうしますか?」
 
ああ。さすがに女で里太郎は無いよね。
 
「じゃ、里子(さとこ)で」
「了解です」
と言って女性医師はその名前をカルテに書き込んでいた。
 

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病室に戻った後、1ヶ月、携帯も使えないという話だったなと思い、念のため必要な所に連絡しておく。
 
まずは会社に掛けた。部長につないでもらう。
 
「部長、済みません。急になのですが、入院したので1ヶ月休ませて下さい」
「何やったの?交通事故?」
 
里太郎は入社以来、一度も病気などで休んだことがない。それで事故か何かと思われたようである。
 
「いや、それが手術を受けることになって」
「何の手術?」
「性転換手術なんですけどね」
 
「性転換? じゃ君、女だったんだっけ? それで男になるの?」
「えっと今私男ですけど」
「じゃ、女になるの?」
「はい」
 
どうせ明日くらいにはドッキリのプラカード持った人が出てきて撮影終了になるだろうけど、このやりとりもきっと記録されているだろうから、どうせなら真剣にやった方がテレビを見る人も面白いだろうなどと里太郎は変なサービス精神を起こしていた。
 
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「それは好都合だよ」
「はい?」
 
「いや、実は男女共同参画社会とか言われてさ、特に日本は女性の社会進出が遅れていると外国からさんざん非難されて、それで上場会社は管理職の数の中で女性を3割以上、従業員300人以上の会社は2割以上にしなければならないという法律がどうも通ってしまいそうなんだよね。だけど今うち女性の管理職は30人管理職がいる中で2人しかいないから」
 
その2人の内のひとりは社長の奥さんの妹である。もう1人は・・・・女性に分類してもいいんだっけ?と悩みたくなるような猛者だ。短髪で日焼けしているし声も低いので女性だということに気付かない人も多いし、女子トイレや女湯で悲鳴をあげられたという伝説もある。
 
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「それであと4人増やさなきゃというので候補者を選定していたんだけど、なかなか管理職を任せられそうな人がいなくて」
 
元々建設会社は男社会である。女性社員そのものが少ないし、新卒で入ってきてもほとんどが1〜2年で辞めてしまう。
 
「繰戸君が女性になってくれたら、女性課長が1人誕生することになるからさ。しかも男性管理職が1人減るから、比率の面でも助かる。とっても好都合。性転換してもうちの会社を辞めないよね? オカマバーとかに転職したりしないよね?」
 
「オカマバーには行かないと思いますが」
「じゃ、よろしくー。いや助かった。性転換手術って大変だよね?3ヶ月くらい休職にしてあげようか?その間、給料は保険から3分の2支給されるから」
「はあ。じゃ3ヶ月休職ということで」
「了解了解」
 
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そんな感じで電話を切ったが、明日ふつうに会社に出て行ってから部長慌てるかな、などとも思ったりする。
 

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