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■福引き(4)

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一週間後、今度は豊胸手術をすると言われた。
 
本来ならそんなのされたくない所だが、女になってしまった以上、おっぱいも無いと困るよなと思い直す。
 
「使用する素材はヨーロッパ社のコーヒー渋シリコン(と聞いた気がしたが、あとで紀恵から《ユーロシリコン社のコヒーシブシリコンでは?》と訂正された)を使用します。大胸筋下に脇から挿入しますので、傷跡は目立ちにくいです。とても丈夫な素材で、これを入れた女性兵士が戦闘で敵兵から撃たれたものの弾丸がシリコンの中で止まり無事だったという例もあります」
 
それは凄いなと思った。戦乱地域の支店に派遣されたら心強いかも? うちの会社は支店は国内にしか支店が無いが、数年前にニューヨークのビル建設に社員を派遣したことがある。確かニューヨークでの銃撃死亡率って、戦場並みと聞いた気がするし。
 
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「部分麻酔で自分でバストサイズを確認してもらいながら手術する方法と予め希望サイズを言ってもらって、全身麻酔でそのサイズで手術する方法があるのですが、どっちにしますか?」
 
「痛くないんですか?」
「痛いですね。部分麻酔を選択した方はだいたい痛い痛いと言いながら、結局サイズはどうでもいい感じになってしまう方が多いです」
「だったら最初から全身麻酔でお願いします」
 
「サイズはどうします?」
「そうですね。折角女になっちゃったし、どうせならGカップで」
「Gカップの胸の重さは1kgあります。両方で2kg。大型ペットボトル1本の重さをいきなり胸に掛けると、筋肉がそれを支えきれませんよ」
 
「はあ」
「大きくしたいのなら取りあえずCカップくらいにしませんか?Cカップなら片方250g、両方で500gですから小型のペットボトルサイズ」
 
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この先生、ペットボトルが好きなんだろうか。
 
「Gカップにしたいのでしたら、いったんCカップにして少し胸の筋肉を鍛えてから再手術した方がよいですよ」
「なるほどですね。じゃCカップでいいです」
 

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そういう訳で全身麻酔で手術してもらったが、これがまた無茶苦茶痛かった。
 
「先生痛いです」
「そうですね。たいていの方が、性転換手術より豊胸手術の方が痛かったとおっしゃいますね」
「そんなの早く言ってください」
「でもどっちみち、どちらも受けるつもりだったんでしょう?」
「そうですねぇ」
 
性転換手術も豊胸手術も受けるつもりなんて無かったんだけどね。
 

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豊胸手術のあと、また3日くらい苦しんだが、それが落ち着いた所で脱毛の施術をすると言われた。いったん足、腹、脇毛、それに自分のシンボルだった顔のヒゲも剃られた上で、レーザー脱毛の機械を当てられて脱毛されていくが、これが結構痛い。
 
しかし、それよりお股や胸の手術の跡のほうが痛いので、むしろ他の部位の痛みはそれらの痛みを一時的に紛らすような効果もあり悪くない気がした。
 
豊胸手術の一週間後、今度は肩の骨と、喉仏を削る手術を受けた。またまた身体の中で痛い箇所が増えた!! 更にしばらくはあまり声を出すなと言われた。もっとも携帯は取り上げられているから話す相手もいないけど。
 
そしてその手術の後10日ほど入院生活を送った上で里太郎は退院した。退院前に何かの書類に署名してと言われて名前を書いた。『審判申立書』とか印刷されていた。何だろうと思いながらも記名したが、病院の方で出しておくので1ヶ月くらいで連絡があると言われた。
 
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アパートに戻ってから、しばらくボーっとしていた。
 
あらためてパンツを脱いであの付近を眺めてみる。
 
そこには長年慣れ親しんできた、チンコとタマタマは無い。代わりに女みたいな縦の割れ目がある。中を開くと上の方にちょっとコリコリした感じのものがあり、その向こうにおしっこの出てくる穴、そしてその奥にはまるで女のようなヴァギナがあり、指を入れてみるとかなり深くまで入る。
 
いや、女みたいなというか、これって女の身体そのものだし。
 
まだ手術の跡傷が生々しい。陰裂の両脇に針で縫った跡が縦にできている。なんで傷跡の線が2本あるんだっけ?と考えてみるが良く分からない。しかし数ヶ月で目立たなくなりますよと言われた。そもそもこの付近は陰毛が生えるからよけい目立ちにくくなるだろう。
 
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。。。。。
 
泣けてきた。
 
なんで性転換するハメになったんだろう?と考えてみたが、どうにもよく分からない気がした。
 
ほんとに俺、女として生きていけるんだろうか??
 

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1時間ほど泣いていたが、腹も減る。何か食べ物でも買ってくるかと思い着替えることにする。
 
病院で着替え用に使っていたパンツに履き替えるが、前穴の空いてないパンツを見て、また悲しくなった。ここに穴が空いてたって、そこに通すべき棒が無くなってしまったんだから不要である。棒が付いてない人は穴の空いてないパンツを穿くことになる。
 
以前なら女のパンツなんか触ったら、それだけで性的に興奮していたが、今は興奮したとしても立つようなものが無い。それとも俺、性的に興奮したら立つんじゃなくて濡れるんだっけ? そういえば濡れるようになると言われた気がするけど。しかし今はこんな女みたいなパンツを見ているだけで悲しくなる。
 
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いや、女みたいなパンツって、これ女用のパンツだよな。この後、一生自分はこういうパンツを穿かなければならない。もうパンツの前開きからチンコ出して立ちションベンするなんてこともできなくなってしまった。おしっこは座ってしなければならないし。
 
そのまま考えていたら、とめどもなく落ち込みそうなので、首を振って少し気を取り直し、駐車場に行って自分の愛車ランドクルーザーの運転席に座る。1ヶ月ぶりのシートだ。ちょっと気が引き締まる。こういうSUVって男の車だよなあ。でも女になっちゃったし。俺、次車を買う時は、アルトとかタントとか選びたくなるのかなあ。。。
 
取りあえずランクルを運転して郊外のショッピングセンターに行った。冷凍食品やらカップ麺、レトルトカレーなどを大量に買う。このくらいあったら、しばらく外に出なくても何とか飢え死にしなくて済むかな?
 
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いったん食料品を車に積んだ上で、里太郎は店舗に戻ると、恐る恐る、2階の衣料品コーナーに行ってみた。
 
1ヶ月の入院生活の間に結構髪が伸びている。それを退院前に美容師さんが病院に来てくれて、女性のショートヘアっぽくまとめてくれた。それで店内の鏡に自分を映してみると、女に見えないこともないよな、という気がする。
 
よし!
 

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それで女性用の衣服を売っているコーナーに行った。
 
近づいて行く。
 
でも商品に触る勇気が無い。まるでたまたまそこに迷い込んだかのような顔をして通り抜けてしまった。
 
売場から離れてからちょっと溜息を付く。
 
しっかりしろ>自分。
 
痴漢とかじゃないぞ。自分は女なんだから、女の服を買いたい。だから売場を見に行くんだ。
 
そう言い聞かせて売り場に近づいていくものの、やはりしっかりと商品を見る勇気が無い。そのまま通り抜けて離れてしまう。
 
里子はまた溜息を付いた。
 

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結局5回くらいタッチと&ゴーをした上で、やっと売場の端の方にあるTシャツコーナーに何とか《ランディング》することができた。
 
ぜいぜい。心が大きく息をしている感じ。たかが女物の服を選ぶだけでこんなに勇気がいるとは!!
 
でも買わなきゃ着る服が無い! 頑張るぞ!
 
というので取りあえずTシャツを見ていたが・・・・サイズが分からん!!!
 
困っていたら、店員さんが寄ってきた。
 
「何かお探しですか?」
「あ、いや。自分の服のサイズが分からなくて」
 
「お計りしますね」
と言ってポケットからメジャーを出して測ってくれる。
 
「上はLでよろしいようですね」
「はあ」
「ウェストが・・・・75cmですから、ボトムはXLか3Lサイズになりますね」
「なるほど、ありがとうございます」
 
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「あのぉ、ブラジャーサイズとかも測りましょうか?」
「あ、お願いします!」
 
それで今度は胸にメジャーを当てられる。
 
「お客様、アンダーが88、トップが103ありますから、C85では少しきついですね。C90かD85ですが、C90という製品はあまり品揃えが無いのでD85を選ばれると良いかと思います」
「へー。Dですか?」
「カップが大きい分、豊かな胸囲を吸収してくれますので」
「なるほどですね」
 
それで結局、Tシャツ5枚、スカート3枚、ショーツ10枚、ブラジャー5枚を買った。会社に出て行く時の服も買わなきゃいけないけど、それはまだ後でいい。どうせ会社に行くのは2ヶ月後だ。
 
でも・・・俺、ほんとに女の格好で会社勤めできるんだろうか?
 
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ちょっと不安になるが今は考えないことにする。里太郎は割と起きてしまったことはくよくよせず、その先の対策を考えるタイプである。だから会社でも里太郎はトラブルに強いと評価されていた。他のプロジェクトで起きたトラブルの解決に駆り出されることもよくある。しかし、性転換されちゃうなんて、今までで最大のトラブルだ!
 

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買った洋服をいったん車に置いて、更に里太郎は買うものがあった。ドラッグストアに行く。あの付近を消毒する必要があるので、消毒用のアルコール綿を買う。それから・・・ナプキンを買う。ヴァギナの中の傷が癒えてないので、そのせいか、けっこうな下り物がある。今は一応病院で渡されたナプキンをしているが、自分で買ってストックしておく必要がある。やれやれ、こんなものを買うはめになるとは思いも寄らなかった。
 
しかし・・・ナプキンって何だか色々ある! どれがいいのかさっぱり分からない。昼用・夜用・多い日用・・・。うーん。どれだ? 夜用くらいにしておくかなあ。長時間換えなくてもいいということだよね?
 
羽付き・羽無しというのはさっぱり分からない! でも面白そうだから羽付きのを買った。
 
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ナプキンの近くに避妊具が置いてあるのに気付く。そうかこれ近くにあったのか。もう避妊具を使うことはできなくなっちゃったなあ。チンコが無いから装着のしようもない。
 
と思った時、里太郎は紀恵のことを思い出した。彼女に何て言えばいいんだろう・・・。
 

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最後に本屋に寄って、女性向けの漫画雑誌を数冊買った。
 
この手の雑誌を買ったことは無かったけど、俺、女だからこういうの読んでみるのもいいよね?
 
それで自宅に戻り、取りあえずUFO焼きそばを作って食べながら雑誌を読んでいたら、何となく気分が晴れる気もする。
 
しかし・・・
 
女性向けの漫画雑誌って、こんなにHだったの!?
 
嘘みたい。これって、女子高生とかも読む・・・よね?いいのか?ほとんど成人漫画じゃん!
 
安易にセックスするし!
 
 
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