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■Shinkon(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-03-23
 
彼にされている最中にちょっと自分の手でその付近を触ったら、何だか感触が女の子の股間なのである。どうも彼とする時だけ、僕の身体は女の子になっているみたいだということに気付いた。最初は分からなかったのだが、乳房もかなり膨らんでいる。それに声を出す時にも女の声になっている。僕は元々女の子っぼい声も出せるが、彼にされている時に出る声はもっと純粋な女声だ。
 
2週間目のある日、僕は彼が布団から出た直後に自分のお股の所に手をやり、たしかに割れ目ちゃんがあり、その中にクリトリスとヴァギナも存在することを確認した。ヴァギナには入れられた感触が残っていた。でも僕はすぐに眠くなり、目が覚めるともう男の身体なのである。裸のままだけど。
 
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そもそもが超自然っぽい現象なので、身体の変形が起きていても納得いくような気もした。僕はそうと分かると、彼とのセックスの時に少し甘えるような声の出し方で「あれしてぇ」とか「これして♪」とリクエストをするようになった。彼もそれを面白がっているようで、色々なプレイを楽しむことができた。これ、多分基本的には「夢」なんだろうけど、ここで彼とのセックスでいろいろ研究していたら、後で、理彩を口説き落として恋人になれた時も、使えるよな、と思っていた。
 
僕は本屋さんで立ち読みしたり、ネットで調べたりして、色々な「プレイ」
や「ワザ」を勉強し、それを彼に提案してみた。するとそれも彼は新鮮だなどと言って、試してみたりした。彼は物凄く腕力があるみたいで、色々とアクロバット的な体位をしても、平気なようであった。1度「駅弁スタイル」
もしてもらったけど、これはこちらも辛くて快感どころではなかった。彼もさすがにきつかったようで「これまたやりたい?」ときくので
「やめようか」と答え「ふつうのがいいね」などという会話になった。
 
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この頃、僕は毎晩のプレイで疲れてはいるものの精神的には充足していて、学校でも授業中積極的に発言して「元気だね」とよく言われたし、理彩とのメールでも文章が活力を持っていて、理彩からも「なんか頑張ってるみたい。私も頑張るね」などと返信が来ていた。
 
「ね、ね、もしかして命(めい)、恋人できた?」
と6月上旬に久しぶりに理彩と会って食事をした時に言われた。
 
「うーん。リアルじゃないんだけどね」と僕が言うと
「2次元か!」と理彩が言う。
「まあ、あまりハマりすぎないようにすれば、それもまた楽しいけどね」
「そうだね。理彩は○○君と、実際はどうなの?」
「うん。3回デートしてるからなあ。次あたりでそろそろホテルとかに誘われちゃうかも知れない」
「避妊しっかりね」
「うん。私もまだ妊娠出産はしたくないから、ちゃんと付けさせるよ」
 
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そんな話をしたのだが、その時、あれ?僕は避妊しなくても大丈夫なんだろうか?という疑問がチラっと起きた。でもあれ現実じゃないから、妊娠は無いよね・・・そもそも、僕、卵巣や子宮が無いし。
 

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7月4日の晩のことだった。
 
いつものように夜の秘め事が終わり、彼が身支度を調えて帰る時
「すまないけど、しばらく来れないと思う」
と言った。
「えー、寂しい」と僕は言う。
彼との夜の営みは、自分の生活の一部になっていたので、それがしばらく途絶えるのは、ほんとに寂しい気がした。
 
「お金が必要になると思うから、7月12日、みずほ銀行の○○支店前の売店で14時ジャストに、サマージャンボを10枚バラで買って」
と彼が言う。
「宝くじ?」
「うん。僕はこの世界にダイレクトには作用できないけど、そのくらいはしてもいいから。買う前にソーミーショーリョーと唱えて」
 
その時、初めてこの相手が、あの祈年祭の「真祭」で、かがり火の回りを一緒に踊った相手であることに思い至った。そういえば、あの時「また会いたい」と言われたんだっけ!
 
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「次、いつ会えるの?」
「多分、来年の3月」
 
そして彼は去って行った。心の中にポッカリと大きな穴が空いた気がした。
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僕がまたボーっとしているので、クラスメイトたちが心配した。
「うん、何とか頑張る」と僕は答えて、勉強に集中しようとした。そういえぱバイトもしなくちゃなと思う。入学当初、少しバイト探しをしたのだが、なかなか良いところが見つからなかった。そんなことをしている内に「夜の訪問」
が始まり、そちらで体力・気力を使い切っていたので、バイトどころではない気がして、バイト探しは中断していた。取り敢えず、最初はたくさんいるだろうと言って親が少し多めに送金してくれていたので、何とかなっていたが、いつまでも親に頼る訳にもいかない。
 
しかしバイト情報誌を見ていても、なかなかまともなバイトが無い。幾つか電話をして、何件か面接にも行ったのだが、不調であった。
 
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理彩からも電話で「元気無いけど、失恋したの?」などと言われる。
「うーん。それに近いものかなあ」
「元気出しなよ。また食事でもしようか?」
「いや、今理彩、○○君とうまく行ってるみたいだし、僕と会ってる所、他人に見られて誤解されたらいけないから、遠慮しておくよ」
「そう? 辛い時は電話してね。いつでも話し相手になるから」
「うん。ありがとう」
「そうだ。女装してみない?女装すると気持ちいいよ」
「そうだなあ。。。でも女物の服持ってないし」
「嘘つくのは良くないよ。でも持ってないなら貸してあげるよ」
 
と言って、理彩はその日の内に僕のアパートまで自分の服を数セットに、女物の下着(新品)まで持ってきてくれた。
 
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僕も「たまにはいいよね」と思い、身につけてみると、少し気分がすっきりする。ちょっとその格好でコンビニに行って、サラダとコーラを買ってきたら、もっとすっきりした。
 

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翌日は「午前中ちょっと時間空いたから、一緒に御飯でも食べよう」と朝から理彩が電話をしてきた。
 
「いや。○○君に悪いから」と僕が言うと
「女の子の友だちと会うのにボーイフレンドに遠慮する必要無いもん」
「は?」
「だから、命(めい)は女の子の服を着て来てよね」
「あはは」
 
僕は確かに気分転換になりそうだしと思い、理彩から借りた女物の服を身につけ(下着もブラとショーツを付けた)、スカートもちゃんと穿いて、実はこっそり買っていた口紅も塗って、理彩との待ち合わせ場所に行った。
 
「理彩、お待たせって、あれ? そちらは」
と僕は理彩の隣に座っている男の子に気付いて言う。
 
「あ、メイ、これ、私の彼氏の○○。○○、これ私の古い友だちのメイ」
「ごめーん。デートの予定だった。そちら優先して」
と僕。なぜかこういう時は自然に女の子っぽい声が出ちゃう。
 
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「ううん。○○とは別に今日は約束してないし。私がここにいるの見て、男と待ち合わせしてるんじゃないかなんて疑うからさ。じゃ、誰が来るか見てなよ、と言っただけ。男の嫉妬ってみっともないよ」
「それはやはり理彩が浮気性だから、彼氏も心配するんだよ」
「やっぱり、こいつ浮気性ですよね?」と彼氏がいう。
 
「ええ。昔からそうでした。でも強烈な吸引力を持ってる男の子がいると、その子に真剣に夢中になって、浮気はしないんですよ」と僕は少し皮肉って笑顔で答える。
 
「強烈な吸引力か。よし頑張るから、これからデートしろよ、リサ」
「私、メイと御飯食べる約束だったんだよ」
「いいよ。今日は○○君に譲ってあげる。また今度ね」
と言って僕は席を立つ。
「ああん」などと理彩は言っているが僕は「今日のは貸しね」と笑顔で言って、その場から立ち去った。
 
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僕は仕方ないので、春代に電話して、理彩に乗せられて女装で町に出てきたものの、理彩は他の男の子とデートに行っちゃったと説明した上で、せっかく女装したのに、このまま帰るのも虚しいから、お昼付き合わない?と誘った。
 
「ああ、命(めい)か!最初声が分からなくて誰かと思ったよ」
「あ、そうか。ごめん。えっとちょっと待って。男の子の声。。。こんな感じかな」
「分かった分かった。そちら女の子の格好してるなら、さっきの女の子の声でいいよ」
「ありがとう」
「そうだなあ。命(めい)が今日は女の子なら、付き合ってもいいかな。女の子と会うなら、私も浮気にならないし。じゃ、お昼おごりなら付き合うよ」
「そうだね。神戸から電車代使わせちゃうし、お昼代はおごるよ」
 
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ということで春代は阪神で梅田まで出て来てくれた。駅で落ち合うと
 
「わあ、可愛い!」と春代は僕の服装を褒めてくれる。
「子供の頃から、命(めい)の女装は何度も見てたけど、あらためてこうして見ると可愛いね。でもお化粧、もっとすればいいのに」
 
「やり方分からないのよね。化粧品も口紅しか持ってないし」
「よし、そしたら化粧品、ワンセット買いに行こうよ。お昼のあとで」
「えー?」
 
「でも、最近はもうこういう格好で学校に行ってるの?」
「いや、まだそういう勇気は無くって」
「出て行けばいいのに。カムアウトしちゃったら楽だよ」
「でも僕は女の子になりたい訳じゃなくて、女の子の格好するのが好きなだけだからさ」
「そういう意味不明な言い訳はやめようね」
 
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7月12日。その日はなぜか朝から気持ちが爽快だった。自分でもなぜこんなにスッキリした気分なのか、よく分からなかった。何だか勘が冴えていて、交差点で赤信号を見た時、どちらが次に青になるかというのが、ピタリと分かった。電車に乗るのに「あ。これは間に合う」と思い、ゆっくりと乗車口まで歩いて行くと、僕が乗った次の瞬間、ドアが閉まった。
 
僕はその日の講義を午前中だけ出て午後からはサボることにし、「彼」から言われた通り、みずほ銀行の○○支店に行った。途中で何となくそんな気分になったのでたまたま通りかかった洋服屋さんで僕はスカートを買い、その店の試着室を借りてスカートに穿き替えると、その格好で支店まで行った。店の前に宝くじ売場がある。時計を見る。14時。僕は「ソーミーショーリョー」と唱えて、売場のおばちゃんに「サマージャンボ、バラで10枚ください」と言った。
 
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「彼」がわざわざ言ったのだから、これきっと当たるのだろうけど、いくら当たるんだろうな、と思う。あまりこちらの世界に干渉できないとか言ってたけど3等の100万円くらい当たるのだろうか。そのくらいあたると、バイトが見つかるまでの生活資金・学資にはなるよな・・・・と僕はスカートの中に吹き込む心地良い夏の風を感じながら、そんなことを思っていた。
 

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異変に気付いたのは、7月も下旬であった。
 
学校がもうすぐ夏休みに入るので、このまま帰省しようかと思っていたところで家庭教師の口が見つかった。高校3年生で、夏休みの間、塾にも通わせるが目標校にかなり怪しい点数なので、家庭教師にも就いて、しっかり鍛えたいという話であった。僕はその高校生を毎日夕方2時間ほど指導した。
 
理彩の方もマクドナルドのバイトをしていて夏休みは少し学資を稼ぎたいから帰省せずにバイトで頑張ると言っていた。僕たちは7月下旬に1度会った。僕は○○君に配慮して女装で出て行った。(ああ、こんなことしてるといつも女装ばかりしているように思われちゃう、などとも思うのだが)
 
「なんか顔色が悪いね。どうしたの?」と理彩からいきなり言われた。
「なんか最近胃腸の調子が悪くてね。こないだから何度か吐いたりしたんだよね」
「ふーん。命(めい)って、元々あまり身体が丈夫なほうじゃないからね。バイトで無理してない?」
「それは大丈夫。夕方2時間だから。その前に午後仮眠して体調を整えてる」
「ほんと無理しないでね。あまり調子悪かったら、病院で診てもらった方がいいよ」
「うん。そこまでは無いと思うんだけどね」
 
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8月上旬。ちょうど大学が夏休みに入った頃、僕は夢を見た。空にとても明るい星が光っていた。その星が輝きを増して、こちらに近づいてきた。何だ何だ?と思っていたら、その星が僕の体内に飛び込んだ。お腹の中で、星は強く光っていた。
 
ハッとして目が覚めた。もしかして、僕って妊娠した? こないだからの胃腸の調子が悪いのは、ひょっとして、つわりだったりして??
 
朝になると、僕は居ても立ってもいられなくて、ドラッグストアに行き、妊娠検査薬を買ってきた。2個組1800円だった。1個取り出して、トイレで自分のおしっこを掛けてみた。
 
陽性!
 
ひぇー。やっぱり妊娠してるんだ! でもどこに入ってんだ?子宮なんて無いはずなのに。
 
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でも、どうしよう?これ。
 
こんなアホな事態、相談できるのは、やはり彼女しかない。僕は理彩に電話した。
 
「おはよう。実は相談があるんだけど、会ってくれない?」
「いいよ。今日はちょっと都合が付かないけど、明日の午前中なら」
「じゃ、いつものあそこで」
「うん。じゃ10時に」
 

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