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■Shinkon(2)

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僕は踊るにつれ、どんどん楽しい気分になっていった。1時間も踊った頃、一緒に踊っている「誰か」から何か言葉を掛けられた。何だろう?最初よく分からなかったが、やがてそれが『ソーミーショーリョー』と聞こえた。あれ?これって理彩が言ってた呪文じゃん。
 
その時、僕は気付いてしまった。そうだ。きっと理彩は去年、これを踊ったんだ! 神社の人は「原則18歳の子」と言っていたが、僕たちの上の学年の子はうちの集落には居なかった。だから、年齢がひとつ違うけど、昨年きっと理彩が選ばれたんだ。だから今年は、僕と理彩のどちらかを選ぶ占いはせずに、残った僕が選ばれたのだろう。
 
ってことは、自分は占いの外れか! でも仕方ないよな。理彩の方が頭いいし。僕と理彩はふたりとも阪大を受けるが、僕は理学部、彼女は医学部である。ふたりで勉強していても、僕が理彩に教えてもらうことの方が多い。英語と国語は僕の方が得意だけどね。でも今年、この踊りをできて、僕はやっと理彩と並ぶことができるんだ。そう思うと、それも面白い気がした。
 
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ふと考えると、この呪文を僕は覚えていて、香川君と春代は忘れていたのは僕がこの踊りを踊ることになっていたからなのかも知れないという気もした。きっと、本来、余所の人には伝えられない言葉なのだろう。
 
踊りは既に2時間ほど続いている気がした。少し手足に疲労を感じるが気分が昂揚しているので、そんなに辛くもない。むしろ、この2時間ほど楽器を演奏し続けている3人に敬意を表したい気分であった。
 
しかしこうやって踊っていると、感覚がどんどん研ぎ澄まされていく感じだ。カコンという小さな音が聞こえたが、それは守山さんちの若い奥さんが台所で、しゃもじを落とした音だと僕は確信した。守山さんちまで200mくらい離れているから、そもそもこんな音は普通は聞こえない筈だし、聞こえたとしても何の音かなんて分かるはずがないのに。
 
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吉川さんちではガサゴソという音がする。吉川さんちに帰省してきている息子とそのガールフレンドが夜の営みをしている音だと確信した。こんなの普通分かる訳無い。こんなの分かっちゃったら、うかつにHなんて出来ない。
 
などと思いながら、ああ、自分もHしてみたいなと思ったら、一緒に踊っている「誰か」がクスクスって笑ったような気がした。
 
理彩と恋人になってしまっていたら、今頃はけっこうHしていたのかも知れないという気もする。でもこの狭い集落の中でそんなことしていたら、すぐ大人たちにバレてしまうし、下手すると無理矢理引き裂かれていたかも知れない。それを考えると、お友達関係を維持している今の状態の方がいいのだろう。ふたりとも大阪に出たら、あらためて恋人にならない?と提案してみようかな、という気もした。一緒に踊っている「誰か」が頷くのを感じた。
 
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やがて、うっすらと空が明るくなりはじめた。天文薄明だ! 嘘!そうしたらもう5時くらい? そう思った時、一緒に踊っていた「誰か」が「さすがに疲れたね」と言った気がした。そして更に「じゃ、今日は帰るけど、また会おう」
と言ったような気がした。
 
気配が消えた。
 
僕は踊りをやめた。
 
楽器の演奏も終わった。
 
みんなが、その気配が消えたことに気付いたのだろう。
 
僕は明るくなり始めた空をじっと見つめていた。
 

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その一週間後が、僕たちは大学の前期試験であった。僕と理彩は受検の前日、ふたりでバスと電車を乗り継ぎ、大阪に出た。男の僕はひとりでいいとして、理彩にはてっきりお母さんか誰かが付いてくるのかと思ったのだが、ひとりであった。僕たちは同じホテルの隣同士の部屋に泊まった。寝る時はもちろん別々だが、僕たちは御飯なども一緒に食べたし、僕の部屋に理彩が入ってきてふたりでテーブルに並んで座り一緒に勉強した。
 
「理彩、てっきりお母さんが付いてくるのかと思った」
「私も18だし、ひとりで行けるよといって断った」
「信頼してるんだね」
「そうでもないな。これ渡されたし」
と言って、理彩はスポーツバッグから、何か薄い箱を取り出した。
「何?それ」
「私も初めて見たよ」
 
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僕はその箱を受け取ると、ひっくり返して裏を見た。何だ?これ・・・・と思って、しばらく見ていた時、突然、その正体に気付いて僕は真っ赤になった。
 
「あ、赤くなってる。純情なんだ」と理彩。
「僕もこれ初めて見た!」
「使う?」
「使うってその・・・・」
「今夜、このコンちゃん付けて、私とHする?」
「いや、そんなこと、受検前にやってたら落ちるよ」
「私も同感。でも『受検前』にってことは、受検終わった後は?」
 
僕はドキっとした。交通の便が悪いので、僕らは前泊・後泊である。受検が終わった後、1泊してから帰るのである。終わった後・・・・理彩とセックスする??
 
「でも、僕、まだ理彩に告白してない」
「そうだねー。私もセックスするなら、その前にちゃんと告白はして欲しい」
「その話は・・・・受検終わった後にしない?」
「うん、そうしよう」
 
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そんなことを言って、僕たちはまた勉強に戻った。
 

翌朝。(僕たちはもちろん、ちゃんと各々の部屋で寝た)一緒にホテルのバイキングで朝御飯を食べ、試験会場に向かう。その時僕は理彩に
 
「ソーミーショーリョー」と言った。
理彩もニコリと笑い「ソーミーショーリョー」と言った。
 
僕たちは別の会場なので、途中の駅で別れる。僕たちは手を振って別れた。
 
今日の試験の科目はふたりとも数学・英語・理科である。僕は試験前に例の呪文を唱えると、またセンター試験の時と同様、物凄く頭が冴える感じで、とても調子良く解答することができた。数学はほぼパーフェクトに書けたし、英語も96点くらいは取れた感じだった。理科もかなり良い手応えだった。
 
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試験が終わったのは18時である。僕たちは梅田で待ち合わせて、一緒にカラオケ屋さんに行った。3時間の予約をしていたので、その予約を確認してもらって中に入る。
 
実は僕の試験は今日だけで終わりである。しかし理彩は明日面接がある。ここで一緒に御飯を食べながら、明日の理彩の面接の練習に付き合おうということにしていた。
 
面接の想定問答集を見ながら僕が試験官役になって理彩に質問する。理彩がそれに答えていく。ちゃんと声に出して練習するのが大事だ。そのためにカラオケ屋さんに来た。一緒に食事も出来るから便利である。
 
「ちょっと待って。そんな質問、想定問答集にあった?」と理彩。
「何も想定問答集通りに進行するとは限らないよ」と僕。
「でも、そこまで質問される?」
「面接なんて、けっこうその場のノリだからね。空気読めない子は落とされる」
「うんうん。それは先生からも言われたね」
 
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「ところで祈年祭の前夜祭、昨年は理彩が踊ったんだね?」と僕が訊くと「今年は命(めい)だったんでしょ?」と理彩は聞き返してきた。
 
「祭りのことは話してはいけないって言われたけど、踊ったもの同士ならいいよね?」
「あの言葉は、うちの集落の子だけに通じるみたい。他の子に教えても、その子がその時に口にすれば効果を発揮するけど、翌日にはもう忘れている」
「不思議なこともあるもんだね」
 
「真祭(しんさい)は少なくとも600年くらいは毎年やってるんじゃないかって話だった」
「しんさい?」
「真の祭り。あれは前夜祭ではなく、あれこそが祭りの本体。みんな集まって御神輿かついで騒ぐのは、あくまで一般向けの祭りで、真祭こそが重要らしい。あれで毎年、神様を呼び込むから、あれが成功すればその年豊作になる」
 
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「そんな話、聞かなかった」
「そう?神職さんが詳しく教えてくれたよ」
「あの人、女の子と男で扱いが違うな」
 
「まあ、そもそもあそこで踊るのは女の子の役割らしいね。神と結婚するんだよ」
「なるほど! そういえば巫女さんみたいな服だと思った」
「下着も女物の腰巻き付けなかった?」
「あ、そうか!あれ腰巻きだったのか!」
 
「純白の婚礼衣装だよ。あの踊りを長時間踊っていられたほど、豊作になるんだって。私は1時間くらい踊ったけど、充分成功だって言われた。実際去年は結構な豊作だったよね」
「僕は5時間踊った」
「凄い! じゃ、今年は大豊作だよ」
「さすがに終わった時は、僕も、演奏していた人たちも、疲れて放心状態だったけどね。でも笛と太鼓の人はそのすぐ後に巫女舞も控えてるから大変」
 
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「そこまで行くと凄いな。過去に5分で終わっちゃって、大不作になった年もあるらしいよ」
「わあ、そんな年の踊り手はなんか村に居づらいね」
「大丈夫。みんな、これ踊った人はすぐにこの村出て行っちゃうから。私たちも4月からは大阪だもん」
「明日の面接しっかりやればね」
「試験の成績が充分手応えあるから、よほどひどいことしない限り合格できると思うけどなあ」
「じゃ、よほどひどいことしないように練習練習」
「OK」
 

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翌日は理彩は面接に行ったが、僕が受ける理学部は面接が無いので、図書館に行くことにした。4月からは大阪の住人になるにしても、ふだん都会にはなかなか出てこないので、こういう大きな町の図書館に行ってみたかったのである。
 
むろん試験がないのだから一足先に帰ってもいいのだが、女の子ひとりでは不用心だから帰りも一緒に帰っておいでよと言われていたので、今日は待機なのであった。
 
村の中心部にある公民館を兼ねた図書館はとっても小さいので、たまにこういう大きな図書館に来ると、迷子になりそうな気分である。適当に見て回っていた時「古事記」というタイトルに目を留めた。
 
歴史の時間に「古事記・日本書紀」ということで習って名前は知っているものの内容については全然知らなかった。何気なく手に取って読み始めたが、神話の世界にぐいぐい引き込まれていった。
 
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そもそも昔話として聞いていた「海幸彦・山幸彦」の山幸彦が神武天皇の祖父だったなんて、初めて知った! ちょっと無理矢理っぽい気もするけど。
 
色々な神と人との交流が出てくる。しかしたぶん、人の記憶の中に残る太古の世界というのは、神と人との境界線が曖昧で、今よりもっと頻繁に神と人が交流していたんだろうな、という気もした。
 
ちょっと面白いと思ったのが崇神天皇の巻に出てくる、三輪大物主神(みわの・おおものぬしのかみ)の話である。三輪山の大神神社(おおみわじんじゃ)には小学生の頃に行ったことがあるが、ここの神様にこんな伝説があったというのは知らなかった。
 
崇神天皇というのは、本に付いていた解説によれば日本書紀に「初めて国を治めた天皇」と書かれているらしい。つまり、伝説的な大王・神武天皇という存在はあるものの、実質大和朝廷というのは、この崇神天皇に始まるということなのだろう。
 
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その崇神天皇の代に、オオタタネコという人がいて、その人の娘に活玉依姫(いく・たまよりひめ)という人がいた。その活玉依姫の元に毎夜通ってくる若者がいた。やがて姫は妊娠するが、親が問い糾しても、姫はその夫の素性を知らないなどという。
 
そこである晩、夫が帰っていく時、服に長い紐の端を付けた。朝になってからその紐を辿っていくと、三輪山の神の社まで続いていた。そこで、毎夜姫の元に通っていたのは、三輪山の神様であったことが分かった。
 
この三輪山の大物主神というのは、因幡の白兎で有名な大国主神(おおくにぬしのかみ:だいこく様)の別の姿らしい。
 
昔って通い婚だから、実際身分の高い人が市井の姫の所に通うものの、身分をちゃんと明かしていないなんてことは結構あったのではないかという気がした。西洋でもバレエの名作「ジゼル」の物語などがある。
 
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