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(2019年)4月9-10日(火水) にS学園では、身体測定と心電図・X線検査が行われた。
西湖は4月7日までプーケットで写真集の撮影をしていたので、8日(月)は本人はアパートで眠らせておいて、代わりに《とうふちゃん》が学校には登校、8日と9日の仕事は《かぶちゃん》が代行した。
「いっそ健康診断も豆腐ちゃんが代行する?」
「いいけど、健康なアナグマだという診断が出そう」
「それはやばいね」
身体測定の初日8日、例によってクラスに男子は存在しないので(女生徒)全員で保健室に行き、服を脱いでブラとショーツだけになって並んで身長と体重を計る。身長は保健委員が読み上げて先生がパソコンに入力するが、体重はリモートのディスプレイに表示されたものを直接先生が見て記録する。微妙な乙女心に配慮したものである。
記録する時、ブラとショーツの重さとしてほとんどの子は100gを引かれている。でも巨大なブレストフォームを貼り付けていることが昨年の春の身体測定でバレてしまった瀬梨香は1kg引かれたと(本人が)言ってた。
「体重が少なめになって嬉しい」
「いや。それが本来の体重だし」
翌日は心電図とX線間接撮影である。
昨年は男の子の身体のまま、胸にブレストフォームを貼り付けていたので心電図でやばいっ!と思ったものの“誰かが”一時的に女の子の身体に変えてくれたので、無事乗り切ることができた。西湖の少し前でブレストフォームでバストを偽装している瀬梨香は、少し早めに保健室に入り、時間を掛けてブレストフォームを外した上で心電図検査・内科検診を受け、その後、X線撮影まで終わってからブレストフォームを再度貼り付けていた。
西湖は昨年秋以来一時的に(?)女の子の身体になっているので、何も焦らずに普通にバストに測定用のクリップをつけてもらい、普通に心電図の撮影をした。そして普通にX線検査も受ける。
西湖があまりにも平然として他の女子と一緒に検査を受けたので、保健室の川相先生は
「あなた、ひょっとして性転換手術しちゃったということは?」
と尋ねた。西湖はそれは否定したものの、先生が指摘した
「あなたはもう男の子には戻れないのでは?」
とう問題について
「今更男だなんて言ったら、クラスメイトから殺されますよね」
と言って同意した。
西湖も、このまま女の子の身体のまま生きて行ってもいいのかも知れないという気もしてきつつあった。ちんちんなんて、無ければ別に無くても気にならないし(西湖は小学6年生以降中学時代までずっとタックしていたので、立っておしっこをしてないし、ちんちん自体に触れないのでオナニーもずっとしていない。したのは冷凍保存のために精液の採取をした時くらいである)
4月10-11日には、龍虎(アクア)のC学園でも身体測定と健康診断が行われた。ここで学園内に9名だけ存在する男子生徒に関しては、朝一番に行うのですぐ保健室に来て下さいという連絡がある。
龍虎のクラス6年1組では、龍虎と武野昭徳が
「じゃ、先に行ってくるね」
と言って教室を出て保健室に向かったが、もうひとりの“男子生徒”田中成美の場合は、迷うような顔をしていたところで今年もクラス委員になった日高洋子が彼女(と言っていいだろう)に抱きつくようにして
「成美ちゃんはちゃんと他の女子と一緒に受けなきゃダメだよ」
と言ったので、
「そうする。ありがとう」
と答えた。
去年や一昨年は実は龍虎や武野君と一緒に保健室に行ったものの、彼らとも分けられて別途検査され
「あんた女子と一緒でもいいのでは?」
と言われたのであった。
4年1組の教室では“男子制服”を着た2名は保健室に向かったものの、女子制服を着ている門脇真悠は
「私、あとでみんなと一緒でもいいかなあ」
などと呟くように言った。
するとクラスメイトの佐藤小百合(WindFly20)が
「真悠ちゃんは私たちと一緒でいいと思うな」
と言った。
数人微妙な顔をする子もある。みんなテレビに出演している真悠が男の子であることを知っている。そこに田中宏佳が言った。
「真悠ちゃんは、ちんちん付いてないと思うなあ。もし付いてたら私がハサミで切り落としてあげるよ」
と言って大きな裁ちばさみを出す。すると場の空気が弛む。クラス委員の長井夜梨恵が尋ねた。
「真悠ちゃん、たぶん女の子と一緒に下着姿になっても問題無いよね?」
「うん。楽屋でも他の女性タレントさんたちと一緒だよ」
「じゃ私たちと一緒の時間帯に行こう」
「うん、そうする」
「ついでに宏佳ちゃんは危険物の持ち歩き禁止」
「はーい」
「じゃ真悠ちゃんにもしちんちんが付いてたら教室に戻ってからみんなで取り押さえてチョキンとするということで」
「いいよ、それで」
と真悠本人も笑って言っていた。
でも真悠は「私完全な女になってて良かったぁ」と内心思っていた。
そういうわけでこの日、朝一番に保健室に来たのは、4年生2名、5年生3名、6年生2名の7名だった。保健室の先生は龍虎を心配して
「田代さん、別室で検査しようか?」
と言ったものの、龍虎は
「ボクはみんなと一緒で大丈夫ですよ」
と言った、
でも龍虎は結局いちばん最初に検査されることになり、龍虎が検査を終えて服を着て出てきてから、先生は武野君に中に入るよう言った。つまり龍虎の上半身裸を見たのは心電図の検査技師と内科医の先生だけである(X線技師は撮影中は隣室に居る)。
実際にはこの日出て来ていたのは龍虎Mで下着も男物を着けてきていた。ブラ跡は、Fがブラジャーを着けている限りMにもNにもブラ跡がつくので、どうにもならない。
男子7名の身体測定・健康診断が終わった後は、6年生から順に保健室に行き、女子の測定・診断が始まる。龍虎たちのクラスは最初に呼ばれたので、授業は打ち切られ、龍虎と武野君の2人を除いた全員が保健室に向かった。
「田中さん、大丈夫かな」
と武野君が心配そうに言うが、龍虎は
「女の子が他の女の子と一緒に検査を受けるのは何にも問題無いと思うよ」
と言った。
「やはりあの子、女の子だよね?」
「たぶん性転換手術まで終わっているのだと思う。戸籍は20歳になるまで変更できないけど」
「やはりそうなのかな」
(成美が性転換手術を受けていることを龍虎たちに正直に話したのは、この夏)
真悠のクラスは3時間目の先頭で呼ばれたので先生は
「今日はX線まで終わったら教室で自習しておいて」
と宣言して教職員室に帰ってしまった。
そしてクラスの中で朝診断を受けた男子2人を除いて女子全員が保健室に向かう。田中宏佳は不安そうな顔をしている真悠に笑顔で
「一緒に行こう」
と言って手を繋ぎ保健室に向かう。真悠は宏佳の手を握って
「わぁ。女の子の手だ」
と思った。とても柔らかくて、男の子の手とは全く違う。真悠は西宮ネオンなどからは「真悠ちゃんの手を握ると女の子みたい」と言われるが、自分では女の子ほど柔らかくはない気がしている。でも“本当の女の子”になっちゃったし、これからは自分の手も宏佳ちゃんみたいになっていくかな、などとも思った。
服を脱いで下着姿で列に並ぶと、他の子から
「まゆちゃん、オッパイ大きい」
などと言われて触られる!
「パンティに男の子みたいなものの形が見えない」
などと言う子もいる。
「それは真悠ちゃんに、男の子みたいなものが付いてる訳無い」
と宏佳は言った。
「手術して取っちゃったの?」
「手術はしてないんだけどね」
「まあでも真悠ちゃんはお婿さんじゃなくてお嫁さんに行くよね?」
「お嫁さんになりたーい」
「だったら女の子の一種だよ」
「そうだね。女の子の一種かもね」
ということで、みんなから真悠は受け入れられたようであった。
真悠は普通に他の子と一緒に身長と体重を計られ、血圧を測られた後、バストにクリップをつけられて心電図の検査を受け、最後は校舎外に駐まっているレントゲン車の中で胸部X線間接撮影を受けた。その間下着姿の他の女の子たちと色々会話している内に度胸が付いてきて、自分がこの場にいることに自信が持てるようになった。
弘田光理(芸名弘田ルキア)はその日帰宅すると郵便受けに大きな封筒が入っていたので開けてみて中身を見て吹き出した。
「何これ〜〜〜!?」
入っていたのは《CBF会員証》と会員規約である。会員規約を読みながら結構ドキドキする。↓抜粋。
・CBF(Club Bain Femme)は女湯に入る会である。
・女湯に入るのは純粋に入浴するためであり、よこしまな気持ちを持ってはいけない。
・男性器が付いている人は何らかの方法で隠して見えないようにすること(一時的陰茎切断推奨)。
・バストが無い人は何らかの方法であるように見せること(一時的豊胸術推奨)。
・一緒に入っている女性たちに騒がれないように。女性たちに溶け込んで、まさか女ではないとは疑いもされないように、邪魔にもならないように、目立たず静かに入ること。
「一時的陰茎切断」とか「一時的豊胸」という単語を見てドキドキする。光理は別に女の子になりたい訳ではないが、結構小さい頃から「男になるのもったいない。女の子になればいいのに。ちょっと手術するだけだよ」と言われて育ったクチである。当時は「ちょっと手術する」の内容が分かっておらず、どんな手術なんだろう?簡単な手術で女の子になれるのなら、それでもいいかも、などと考えたりしていた(積極的に女の子になりたい訳ではないし、ルキアの性自認は男で揺らいでいない)。
声変わり防止のために女性ホルモンを飲まないかと言われた時も、半分は自分の身体が女性化することに興味があり、受け入れて飲んでいた。それで声変わりは抑えられていたのだが、バストが膨らんで来たので、これはヤバいと思い、事務所の社長と相談してホルモンの摂取を中止。すると2ヶ月で声変わりが来てしまい、彼の人気は急落した。でも仕方ないと思った。
自分と同様に女性ホルモンを摂っているのは確実と思うアクアは自分より2つ年上である。いったいどうやって女性化しないギリギリで声変わりを停めているのだろうと疑問を感じる。さすがにまさか睾丸を取ったりはしてないだろうし。
女性ホルモンの影響で膨らんだ光理の胸はだいぶ小さくなったものの、また完全には平らになっていない。少し膨らみかけくらいの感じだ。でもその内完全に消失するだろう。大きくなってしまった乳輪は大きいままである。
でも女の子になることに興味自体は持っていたので、後悔もしてないし、乳輪は大きいままで構わないと思っている。むしろおっぱいが消失しかかっているのは少し寂しい気もしている。
「女の子用の下着とか買っちゃおうかなぁ」
などとも思うが、実は買いに行く勇気が無い。スカートは数枚(ファンが送ってきてくれたものをもらってきて)持っているが、家の中で穿くと興奮してしまい、つい自分で“して”しまう。さすがにスカートを穿いて外出する勇気は無い。実はファンからのプレゼントの中には光理のサイズに合うブラジャー・キャミソールとか凄く可愛いショーツとかも時々あるのだが、事務所の人から「持って帰る?」と言われても「要りません」と断っている。断りながら後悔もしている。「持って帰ります」と言う勇気が無い。
なお精子の検査を受けたら、女性ホルモン飲んでいた時代は一時的に精子が無くなっていたが、やめてから2ヶ月ほどした時の検査では、ちゃんと精液の中に精子はあると言われた。もっとも以前より立ちにくい気はするし、凄く逝きにくい。夜中にベッドの中で自分でしていて、どうしてもしっかりは立たず、逝くこともできずに、腕が痛くなって、諦めて寝てしまうこともある。念のため女性ホルモンを飲み始める前に精液を採取して冷凍保存しているので、万一の場合はそれを使用して子供を作ることはできる。
規約の最後に
・最低2回は騒がれずに女湯に入った経験があれば入会資格を得る。
とあるので「あの時のことか」と思い至った。
元々女顔だし、中性的な服装をしていることも多いので、男湯に入ろうとして追い出されたことは何度もある。
一度は小学5年生の時に、家族と温泉に来ていて男湯脱衣場から追い出され、女湯脱衣場に連行されたので、そのまま女湯に入ってしまった。小学生だとおっぱいが無くても全然問題が無い。母親に見つかったらやばいと思ったものの、幸い見つかったりせず、また男だとばれることもなく、普通に女湯で入浴した。たくさん女の人が裸で歩いているのを見たが、おっぱいの形がきれいな人や大きい人を見て
「いいなあ」
と思ってしまった。別に自分がおっぱいを大きくしたい訳ではないのだが。
もう一度は実はつい先月である。ロケに行っていて旅館に泊まった。それで深夜にお風呂に行こうとして、男湯の脱衣場に入ったら中に男性客が居て
「お姉ちゃん、こちらは男湯!女湯は向こう!」
と言われる。
「済みません!」
と言って出たものの、どうしよう?と悩んだ。お風呂には入っておかないと明日の仕事に差し支える。
それで思い切って女湯に入ってしまったのである。幸い彼が入った時は誰もいなかったので、のんびりと身体を洗い、女性のように長い髪も洗い(学校からは芸能人の特例として認めてもらっている)、それで湯船に浸かっていたら、中年のおばさんが3人、入って来る。光理は、あがるにあがれなくなってしまった。そして浴槽で彼女たちと一緒になる。お股の物体は、足の間にはさんで隠す。
向こうはこちらが髪も長いし、胸は微かに膨らんでいて、乳輪も大きいので、光理が「中学生です」と言うと
「中学生ならこれからおっぱいはどんどん成長するよ」
などと言って、不審には思わなかったようだ。光理は声変わりは来ているものの、喉仏はあまり目立たないし、話し方が中性的なので、結構電話などでも相手はこちらを女性と思っているようなことも多い。
しかしあの場に居たのは自分とあのおばちゃんたちだけなのに、なぜこの会員証を送ってきた人たちはそのことを知っているのだろうと疑問を感じた。
文書の最後には
《CBF共同代表 久保早紀・成宮真琴》
とある。
「えっとこれって丸山アイさんと、レインボウ・フルーツ・バンドのフェイさんだっけ?」
と自問するように言った。
その夜、光理は夢を見た。お風呂に行ったら入口の所に「男性器預かり所」というのがあり、おちんちんをそこで切断されてしまい、何もお股にはぶらさがってない状態で女湯に入り、あがってから出る所で「男性器返却所」というのがあり、そこでまたくっつけてもらう、というものだった。
「お客さんがお風呂に入っている間に、ちんちんも超音波洗浄しておきましたから」
「ありがとう」
付けてもらうときれいになっていて気持ちいい感じがした。これ時々取り外して洗浄してもらったらいいかもなどと思った。
でも起きた後、切断された後の何も無い股間が凄く印象に残っていて、光理はドキドキしていた。
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△・Who's Who?(7)