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■△・Who's Who?(6)

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ところがそれでアイスを食べてからまた打ち合わせをしていたら30分ほどした所で「真悠ちゃん、真悠ちゃん」という緑川志穂の大きな声がする。
 
千里たちは立ち上がり、すぐそちらに向かった。
 
「どうしたの?」
とコスモスが訊く。
 
「何か急に気分が悪くなったみたいで」
と緑川志穂。
「救急車を呼ぼう」
と本田マネージャーが言ったのだが、千里はまずい気がしてそれを停めた。
 
「本田君、真悠ちゃんを仮眠室のベッドまで連れてって」
「えっと・・・」
となんだか恥ずかしがっている。
 
「彼女は男の子だよ」
「あ、そうか。つい忘れてしまう」
と言って彼は真悠を抱き上げてベッドに連れて行った。
 

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千里3は《きーちゃん》経由で《びゃくちゃん》を呼び出した。彼女は偶然近くに居たらしく5分ほどで来てくれた。千里自身はまるで真悠を手当するかのようにお腹の付近を撫でてあげている。
 
『どう?』
と千里3は《びゃくちゃん》に尋ねた。
 
『どこもおかしくない』
『本人は苦しそうなんだけど』
『だったら多分気のせい』
『えー!?』
『臓器の様子を見てもごく正常。位置的には卵巣や子宮の付近を手で押さえているけど、卵巣にも子宮にも異常は見られない』
 
『ちょっと待って。この子、男の子なんだけど』
『冗談はやめてよ。この子は普通の女の子だよ』
『まさか性転換した?』
『性転換手術とかしたような形跡はない。そもそも卵巣・卵管・子宮あるし、この膣は人工のものには見えない。本物だと思う』
『うっそー!?』
 
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と言ってから千里3はあることに気づいた。
『ねぇ、ひょっとしてさ、羽衣さんや虚空が使う**の法とかを使えば、こういう感じで女性器ができちゃうことある?』
 
『千里1が羽衣さんを完全な女に変える現場を見た。あれは普通に女性器もあって完全だったよ。骨格は元のままだったけどね』
 
『ね、さっきこの子、1番と話していたんだよ。その時、うっかり**の法を掛けちゃったなんてことは?』
『それならあり得るね』
 
『なんで1番はこの子を性転換させたんだろう?』
『さあ。うっかり性転換しちゃったのかもね』
『もしかして自分でコントロールが利いてないとかは?』
『それはあり得るかも』
 
そういう訳で、門脇真悠は“犠牲者”第2号だったのである。
 
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真悠が少し落ち着いたようで目を覚ます。
 
「少し楽になりました」
「良かった、良かった」
と千里は言い、撫でるのをやめる。
 
「顔にも赤味が差してきた」
と緑川志穂が言う。
 
「どうしたんだろう?」
「コスモスちゃん、この子、今日は帰していいよね」
「うん。マンションで休んでた方がいい」
「リハーサル役はどうしましょう?」
「スピカを呼び出して。あの子、今日は空いているはず」
「はい」
それで志穂はすぐにスピカに電話を入れた。
 
「真悠ちゃんは私が送って行くよ」
と千里(千里3)は言った。
 
「そうですね。じゃお願いします」
 

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それで千里は真悠を連れて下に降り、タクシーを掴まえて一緒にマンションに行った。部屋の中に入る。
 
「てもボク今日はどうしたんだろう?変な物でも食べたかなあ」
と真悠は自問するように言う。
 
「真悠ちゃん、トイレに行くと分かるよ」
と千里は言った。
 
「トイレですか?」
「うん」
 
それで真悠はトイレに行った。そしてトイレの中で「嘘〜!?」という大きな声をあげた。
 

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さて、千里1の方は《えっちゃん》が変装している“コスモス”と地下のレストランで“打ち合わせ”をしていたのだが、最近の音楽業界のことで意見を交わしてから、§§ミュージックの歌手に渡す楽曲3曲のアレンジを依頼した。どっちみち《きーちゃん》経由で千里1に依頼するつもりでいた、松本花子の作品である。千里1は松本花子のことも、夢紗蒼依のことも知らない。
 
それで打ち合わせを終えて一緒に1階に上がり、“コスモス”は「ではまた」と言ってエレベータに消える。それで千里1は§§ミュージックが入っているビルを出て信濃町駅方面に歩く。ところが都道を歩いていたら、車が停まりクラクションが鳴らされる。
 
「醍醐先生、今お時間取れますか?」
と声を掛けたのは八重垣虎夫係長である。
 
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なお、彼は生まれた時は女性だったが、現在男性として社会生活を送っており、既に性転換手術も終え、法的な性別も男性に変更済みである。
 
「ええ。いいですよ。今§§ミュージックさんとの打ち合わせが終わった所で」
と千里は答えた。
「じゃ申し訳無いですけど、★★レコードまでご足労願えます?」
「はい」
 
それで千里1は彼の運転するプリウスの助手席に乗り込んだ。
 

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ところでこの日、千里2は★★レコードで南課長(4月2日付で課長代理から昇格)に呼ばれていた。実は元々呼ばれたのは丸山アイで、夢紗蒼依絡みの営業の話だったのだが、アイに急用ができて代理で千里が行くことにしたのである。それで青山ヒルズに行き、★★レコードのある14階に登ろうとエレベータホールに来た。ところがそこに《きーちゃん》から直信が入る。
 
『今1番が上から降りてくる。どこか隠れて』
『分かった』
 
それで千里2はエレベータホールから離れて、1階イベントスペースに移動した。今日は自動車の展示をしていたようで日産の車が多数置いてある。千里は新型ノートの傍で、それを眺めるようなふりをしながら、エレベータの方を目の端で見ていた。
 
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やがて1台のエレベータの扉が開いて、中から千里1と八重垣係長が出てきた。八重垣さんと打ち合わせしてたのか。今日は彼とあまり話を交わさないようにしなくちゃなどと思う。1番は八重垣と握手してからエントランスの方に向かった。八重垣はエレベータのボタンを押して待つ。やがて1台のエレベータの扉が開き、彼はその中に消えた。
 
2番は一呼吸置いてからエレベータホールに戻り、上向きのボタンを押した。
 

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14階に上がって、勝手に自動ドアを通って制作部のオフィスに入り、南のデスクに行く。以前は部外者は受付を通らないと入れなかったのだが、村上が社長になってから経費節約と言って受付が廃止され、セキュリティゲートも故障が多いからと言われて撤去され、少なくとも制作部には誰でも自由に出入りできるようになっている。
 
それで応接室に行って打ち合わせしましょうということになる。その応接室に行く途中で八重垣係長のデスクのそばを通るので、千里は彼と目が合わないように気をつけようと思った。ところが千里たちが彼のデスクのそばまで来た時、突然八重垣が苦しそうな声をあげて椅子から崩れ落ち、フロアに横たわると下腹部の付近を押さえている。
 
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「どうした?」
と南が声を掛けるが、身体には触らない。南は彼が元女性であることを知っているので、どうしても遠慮があるのだろう。千里2は関わりたくなかったが、やむを得ず八重垣のそばに寄ると彼が手で押さえている下腹部の付近に自分も手を当て
「八重垣さん、しっかり」
と声を掛ける。
 
「あれ?醍醐先生、戻ってこられたんですか?」
「ええ。別件で用事ができたので。この付近が痛みます?」
などと声を掛けながら、千里は《きーちゃん》に
『びゃくちゃんを呼んで』
と言った。《びゃくちゃん》は、§§ミュージックで3番に呼ばれて真悠の異変に対処した後、いったん北千住の“琴沢幸穂事務所”で休んでいたのだが、《きーちゃん》の呼びかけで、すぐに青山まで来てくれた。
 
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★★レコードでは医務室の女性看護師さんが来てくれて体温・脈拍・酸素飽和度を測定したり、血圧なども測っているが首を傾げている。
 
千里(千里2)は看護師に確認した。
「異常が無いですよね?」
「そんな気がします。体温も脈拍も血圧も全部正常です」
と看護師は言う。
 
「でも本人は辛そうだよ」
と南課長。
 
「提案。ベッドに少し寝せましょう」
と千里は言った。
 
「うん。それがいいかも」
 
それで腕力のある社員が八重垣を抱きかかえ、仮眠室に連れて行った。
 
「少し休んでいた方がいいかも」
「ええ。そうします。苦しさのピークは過ぎた気がします」
 
そんなことを言っていた時に《びゃくちゃん》が到着する。
 
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『この人、今少し落ち着いてきたけど、物凄く苦しんでいたんだけど、どこか異常無い?』
と千里2は尋ねる。《びゃくちゃん》は念のため充分観察して“全く異常が無い”ことを確認した上で、さっき診た真悠のケースに似ていると思ったが、守秘義務で千里3に関わること、千里2に関わることはお互い相手には言えない。それで千里2に言った。
 
『ごく普通に正常だよ。ところでこの人の性別は?』
 
『ああ。分かった?この人は元々女性だったんだよ。それを性転換手術で卵巣と子宮を取って、膣口を閉じて、股間を男性型に改造し、大陰唇を利用して陰嚢を作りシリコンの疑似睾丸を入れ、上腕部の皮膚を使用してペニスを形成している』
 
『この人はごく普通の男性。元女性であるなら存在するはずの膣本体が無い。前立腺が存在するし、睾丸や陰茎も本物だよ。試しに触ってみるといい。勃起するから』
 
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『は?』
 
『つまりこの人は性転換した元女ではなくて完全な男性なんだな。もし苦しんでいたとしたら、女の身体が男の身体に変化したからだったりしてね』
 
『そんな性別が変わってしまうなんてあるの?』
『知ってる癖に』
『まさか**の法?』
『可能性はあるね』
『でも誰がそんなものを・・・あっ』
『何か心当たりある?』
『この人さっき1番と握手してたんだよ』
『だったらその時に発動したのかもね』
『でも何のために?』
『無意識に掛けちゃってるのかもね』
『それって1番が握手した人はみんな性転換しちゃうってこと?』
『さあ。ひょっとしたら性転換したい人だけかもね』
『これ1番をフォローする必要がある気がする』
『んじゃ1番に常に付いている大裳にチェックしてもらうよう貴人から言ってもらうよ。それレポートするから』
『うん。よろしく』
 
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実は同じ事を3番にもさっき言われたばかりである。それで1番がうっかり?性転換しちゃった人は2番・3番の双方に通知されることになった。
 

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2番は八重垣に言った。
「トイレにでも行ってきません?」
「あ、そうだね。行って来ようかな」
 
そして(男子用)トイレに行って個室に入り、便器に座った八重垣は今まで感じたことのなかった感覚に
「何じゃ、こりゃぁ!」
と思わず大きな声をあげて驚愕することになる。
 
「だけど、これションベンが出ないじゃん。どうすれば出るんだ?」
などと悩んでいる。
 
この日、八重垣は初めて“男の快感”を知った。
 

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2番は彼にこういうメールを送った。
 
《どうも誰かが八重垣さんに術を掛けて性転換してしまったようです。もし女性に戻りたい場合は言ってください。私が術を解除出来ます》
 
彼の返事はこうだった。
《戻すの不要です。女房がびっくりしてます。凄く幸せです》
 
なお彼によると人造ペニスの素材確保のため皮膚を採取したはずの上腕部の傷跡も消えていたらしい。なかなか親切な術のようである。
 

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4月8日、四国の菊枝が千里を呼んだので、千里1は新幹線で岡山まで行き、彼女と話した。千里1は菊枝と話していて自分は“思い出さなければならないこと”があることに気づいた。しかしこの時、千里1は見ただけで妖怪を粉砕するというワザを見せて、菊枝を驚かせた。
 
千里1の監視を頼まれていた《たいちゃん》は、これも報告しておいた方が良さそうと思い《きーちゃん》と共有しているGoogle Keepにこの件を書いておいた。この往復中、千里1は岡山駅で20歳の女装大学生と接触し、彼も性転換して女になってしまったので、それも報告しておいた。きーちゃんは自由の利く2番に対処を頼み、2番が本人のアパートを訪ねて事情を説明したが、本人は「凄く嬉しい。このままでいいです」と言った。
 
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