広告:ここはグリーン・ウッド (第4巻) (白泉社文庫)
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■少女たちのドミノ遊び(7)

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その日、千里は近所の小さい子たちが、神社の境内でバスケットをして遊んでいるのを見てあげていたが、しばらく姿を見ていなかった宮司さんが社務所兼住居から出てきて、自分たちの様子を見ているのに気付いた。
 
「宮司さん、お身体の調子はどうですか?」
と千里は声を掛けた。
 
「ああ、すまんね。心配掛けて。例祭はちゃんとしなければと思って頑張ってやったけど、その後反動でしばらく寝ていたよ。でも来月の秋祭りはちゃんとやるから」
 
「無理しないでくださいね」
「うん。でもここ数日なんか体調がだいぶよくなった感じでね」
「それは良かったです」
 
やはり、父ちゃんのタマタマを宮司さんに移植したおかげかなぁ、などと千里は考えていた。
 
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宮司さんと少し話していたら、小春が来て
 
「千里、ちょっとおいで」
と言う。
 
千里は子供たちは宮司さんも見てくれているから大丈夫かなと思い、小春に付いて行く。小春は千里を神社の“本殿内部”まで連れて行った。
 
ここは、普通の人は出入りできない場所、というよりそもそも見えない場所である。千里も小春と一緒でなければここに来ることはできない。大神様がおられるので挨拶する。
 
「千里、あんたの母ちゃんの肝臓は危機を脱したよ」
と大神様が言う。
 
「ほんとですか!」
「こないだから、千里がしてあげているおまじない。あれはお母ちゃんが通院している間くらいは、毎日してあげて。1回5分でもいいから」
「分かりました」
 
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「お前は不思議だよ。わりとその辺に普通にいる程度の霊感人間のように見えるのに、実際はお前の能力はもっと大きいのかも知れない。私にも量り知れない」
と大神様が言うが
 
「れいかんって何ですか?」
と千里は訊く。正直千里もよく「霊感がある」とか人から言われるものの、霊感というものが実は分かってないのである。
 
「まあ、あるものをあるように感じ取る力かもね」
と小春は言った。
 

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「千里、ちょっとそこに寝て」
と言われるので、横になる。
 
大神様が自分に近づいてくるのを感じる。実は千里は大神様と会話していても大神様の「姿」は見えていない。そこにおられることを感じるだけである。しかしその大神様が明らかに自分のそばまで来たので、千里はちょっとドキドキした。
 
「あれ?おちんちんが無い」
と大神様が言う。
 
「あ、すみませーん。無い方がこの子喜ぶので取り外していたんですが、戻しますか?」
と小春が言っている。
 
「あ、いや、別にそのままでいいよ。ちんちんなんて無くても構わないし」
 
と言って大神様は千里のお腹より少し下の付近の左右に各々両手で触った。これは明らかに触られている感触がある。
 
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「ちょっと危険な状態の卵巣をお前の身体の中に入れたからね。それでお前まで癌になられると困るからちょっとサービス」
などと大神様は言っておられる。
 
「千里、卵巣のある状態には慣れた?」
「最初の数日はすごく変な感じだったんですが、だいぶ慣れました。凄く女らしい気分になってしまうんですよね」
「感情の起伏が大きくなったろ?」
「そうなんです。今まであまり感じなかったものにも、凄く大きく感情が動く感じで」
「お前、詩とか書くといいよ。きっとお前才能があるよ」
「あ、そういうの書いてみようかな」
 

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千里はそのまま20分くらい大神様の治療(?)を受けていた。
 
「なんか凄く気分がいいです」
「これを千里も毎週1回くらいしようか?」
「はい、ありがとうございます」
 
千里を帰したあとで小春は大神様と話し合った。
 
「あの子、いっそのこと完全な女の子に変えてあげてはダメですかね?」
「既にほとんど女の子になっている気がするが」
「ちんちんの取り外しは1日最大3時間、週に5日までという約束なんです」
「ほほお」
 
「あの子、自分で包丁でちんちん切ろうとしていたんですよ。それを私が停めて代わりに**大神様のお許しを得て、そういう約束をしました。ですから体育の時間とか、他の女の子たちと一緒にお風呂に入るときに取り外してあげるんです。今日は5時間目体育だったから、その時に取り外して、まだそのままだったんですよね」
 
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「今唐突に大物の名前を聞いた気がした。そうか。あんたあの方の配下か。しかしあの子、意志が強いから停めなかったら本当に切り落としていたろうね」
 
「そう思います。あの子の寿命が最初6歳だったのは、ちんちん切り落とした傷が元で死ぬ筈だったのかも」
 
「あり得るなあ。しかしちんちん取り外しておくのはいいことかも知れんよ。卵巣があったらちんちんは間違いなく萎縮する」
 
「あ、確かに」
「だから取り敢えず卵巣がある間はずっと取り外したままでいいよ」
「大神様がおっしゃるのであればそうします。あの子喜びますよ」
「あまり萎縮したらトイレで困るだろ?」
「えっと、あの子は立ってトイレすることはないですけど」
「そうなの!?」
 
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「ちんちん付いてても座ってしかしてないですよ。ただ、付いてない方が、トイレの時も凄く気分が良いと言ってます」
 
「・・・・トイレの時って、ちんちん付いてた方が便利と思わない?」
「私もそうですけど、あの子は無い方が好きみたいです」
「ね、もしかして、あんた千里のちんちん使ってる?」
「はい。誰かの身体にくっつけておくのが保管には便利ですから。立っておしっこするの爽快ですよ。大神様も使ってみられます?」
「あんた卵巣あるよね?」
「ありますよー。生理もありますよ」
「だったら結局あの子のちんちんは萎縮するのでは?」
「別にいいいんじゃないでしょうか」
 
「・・・・そうかもね」
と大神様は言った。
 
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「ところで半年後に千里からお母さんに卵巣を戻した時にですね」
「うん?」
「お父さんの睾丸は千里のですよね」
「うん」
「それでもし妊娠するとやばくないですか?」
「今回の治療で、あの女の子宮は妊娠能力を喪失するから問題無い」
「なるほどー。どうせ使えなくなるのなら、千里にあげる訳にはいかなかったんですか?」
「卵巣は移植しやすいが子宮は拒絶反応が起きやすいのだよ」
「あっそうか!」
 
「でしたら大神様。千里の体細胞を取ってですね。それにリセットを掛けて万能細胞に変えて、それを培養して千里の子宮や膣を作ることはできませんか?」
と小春は言った。
 
大神様はしばらく考えていたが
「できる」
と答えた。
 
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小春が提案したのは今の言葉で言うとIPS細胞なのだが、この時代は人間社会ではまだIPS細胞の発見以前である。万能細胞自体は1980年代に既に受精卵から作成するES細胞が知られていた。
 
「でしたらそれで子宮と膣を作ってあの子に付けてあげられませんか?」
「ある程度のサイズになるまで、誰か女の身体の中で育てる必要がある。そして今から作っても10歳の身体に合うサイズにするのには10年掛かる」
 
「私の身体を使ってください」
「お前、自分の子宮と膣もあるよね?」
「はい。子宮と膣が2つあっても構いませんよ」
「しかしそもそも千里はあと2年半ほどで死ぬのだけど」
 
「何かの奇跡で生き延びることはあるかも知れませんよ」
 
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大神様は何か考えておられるようにも見えた。そして物凄く驚いたような表情をなさった。
 
「あの子がもし12歳の寿命を越えて生き延びたら、あの子は120歳くらいまで生きる可能性があるよ。事故とかに遭わなければだけど」
 
「私、そんな気がしました。あの子は物凄く長寿な体質をしています」
「しかし12歳の寿命を越えるのは難しいぞ」
「私はそれに賭けています」
「そもそも、そなた自身、あと4年か5年くらいしか生きられないはず」
 
その言葉で小春は、ああ自分の寿命は実際にはあと4年くらいなんだなと思った。大神様は4年と言ったあとで急いで「か5年」と付け加えた気がした。
 
「私が死んだら誰か適当な人か女狐にリレーで」
と小春は言う。
 
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「あ、いや。その時もし千里が生きていたら、その時点で千里の身体に放り込めばよい」
と大神様は気付いたようにおっしゃる。
 
「ああ、それでいいですね。じゃ千里の体細胞を取ってきますか?」
「骨髄液を取るのが一番やりやすいのだが」
 
「じゃ今夜あの子が寝ている間に骨髄液を少し取らせてもらいましょう」
「寝ている間に、麻酔状態にした上で取ろう。あの痛みには麻酔状態でなければ耐えられないから」
 

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2000年9月23日(土祝)。
 
千里たちN小の合唱サークルのメンバーは早朝から留萌駅に集まり、JRで札幌に出た。途中の行程はみんな普段着であり、会場で制服に着替えることになっている。この日は朝から雨だったので、千里は傘を差して行った。
 
「千里可愛い傘を使ってる」
「7月に旭川に行った時に買ってもらったぁ」
「千里の持ち物は概して可愛いものが多い」
「でも高いものは無いんだよ」
「まあ、それはみんな似たようなもの」
 
「しかし今日は天気悪いね」
「なんか台風が来てるらしいよ」
「北海道まで台風が来るのは珍しい」
「電車ちゃんと動いてくれるといいのだけど」
 
「でも第四土曜に祝日が来ても全然ありがたくないね」
「ほんとほんと。第三土曜とかだったら良かったのに」
 
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この時代は学校は第二・第四土曜が休みだった時期である。
 

取り敢えず札幌に行くまでは電車もバスも通常通り動いていた。
 
「だけどリサ、寂しくなるね」
とみんなが言う。
 
「うん。最後になるから頑張る」
と本人は明るい。
 
リサのお父さんが10月2日付けで釧路に転勤になってしまうのである。それで今回はリサにピアニストをしてもらうことにし、本来のピアニスト鐙さんは歌唱での参加ということになった。結果的には先日の学習発表会の時と同じ構成になる。
 
「(鐙)郁子ちゃん、ごめんね〜。またピアノじゃなくて」
と先生は鐙さんに配慮して言うが
 
「いえ。地区大会はそもそも参加自体できなかったら」
「あれも大変だったね!」
 
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「遅刻してしまって申し訳ありませんでした」
と鐙さんはあらためて謝る。
 
「まあ、色々なことがあるよね」
 
地区大会の時は彼女の乗っている車が、高速道路上の交通事故による渋滞に引っかかってしまい、演奏に間に合わなかったのである。
 
今回は地区大会の時と同じ編曲でなければいけないので、自由曲『キタキツネ』で小春が篠笛を吹くことになる。小春は課題曲の『大すき』ではソプラノで歌唱に参加する。
 

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会場に着いてから、女子の着替え場所に指定されている隣接する体育館のサブ体育館で制服に着替える。
 
「女子の着替えはここって書いてありましたけど、男子はどうするんですかね?」
と質問がある。
 
「たぶん男子はロビーの隅かどこで適当に着替えればいいということでは」
「なんか男女差別っぽい」
「まあ割と日本はそういう所がある」
「取り敢えずうちは全員女子だから問題無い」
 
などという声があがっている中、千里はリサと日本語・フランス語ミックスでおしゃべりしながら着替えていた。
 
千里のことを以前から知っている5年生が2人ふと千里に気付いて、こちらをじっとみているので
 
「どうかしました?」
と訊くと
「ううん。多分問題無い」
「やはり問題無いよね」
などと2人は言っていた。
 
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千里は「何だろう?」と思った。ちなみに千里たちは合唱サークル制服のチュニックとスカートに、リサはピアニストの衣装の黄色いドレスに着替える。
 

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今回の大会では全道から10の小学校が参加している。千里たちの演奏は4番目なので、最初は席に座って先頭の方の学校の演奏を聴いた。2番目の学校の演奏が終わった所で、静かにロビーに出る。そしてステージ脇につながる楽屋の方に行く。そしてひとつ前の学校の演奏を聴いていた。
 
「なんか凄い風雨になってない?」
と言ってみんな、ガラス張りになっているので見える外側の様子を見ている。
 
「帰りは電車停まってるかも」
「その場合どうなりますかね?」
「札幌で足止めされて、1泊する羽目になるかも」
 
そんなことを言い合っていた時のことであった。
 
小春が大きな声で叫んだ。
 
「みんな伏せて!」
 
みんなその声に「え?」などと言いながらもみんな姿勢を低くする。
 
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それで大事に至らなかったのである。
 
ガチャン!!
 
という大きな音がして、強い雨風が吹き込んでくるとともに、
 
ゴツッ!!!
 
という鈍い音がした。
 

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少女たちのドミノ遊び(7)

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