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■少女たちのドミノ遊び(3)

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「明日手術するの?」
と千里は訊く。
「うん。でも大丈夫だからね」
と母は笑顔で千里たちに言う。
 
「私、お母ちゃんが助かりますように、神様にお願いしたから大丈夫だよ」
と千里は言った。
 
「ありがとう」
と母も言う。
 
「しかし千里はますます女らしくなってるな」
と美輪子が言う。
 
「それ私の悩みなんだけど」
と津気子。
 
「私もそろそろ生理来るかなあ」
などと千里が言うので
「そうだね。ここ1〜2年の内に来るかもね」
と美輪子は優しく言った。
 
その日の夜は美輪子が千里・玲羅と一緒に自宅に戻り、美輪子が晩ご飯を作ってくれたが、実際には3分の1くらい千里が手伝った。
 
「あんた、料理がうまいね」
と美輪子は言う。
「いつもしてるもん」
と千里。
 
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「女の子はお料理ちゃんとできないといけないからって、色々教えてもらってるよ」
「そうだね。女の子はそういうの覚えた方がいいね」
 

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翌日、千里と玲羅が学校を終わってから病院に行くと、母の手術はもう終わったと言われた。
 
「手術自体は簡単で1時間も掛からなかったよ」
と付き添ってくれていた美輪子叔母が言う。
 
「良かった。お母ちゃん大丈夫?」
と千里は訊く。
 
「ちょっと痛いけど大丈夫だよ」
と母は無理して笑顔を作って言った。
 
「悪い所はちゃんと手術で取ったから、もう大丈夫だよ」
と美輪子も言う。
 
「お母ちゃんが早く良くなるように、私おまじないしてあげるね」
と千里は言うと、小春から言われた場所、津気子の肝臓の上に手を置くと、目を瞑って、小春から教えられた呪文を心の中で唱えた。
 
「それ、なんか効いているような気がするよ」
と津気子は言う。
 
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「そこちょうど肝臓の上付近だね」
と美輪子が言うと
 
「お母ちゃんの肝臓が弱っているみたいだもん」
と千里が言うので、津気子はハッとしたような顔をした。
 
するとその様子を見て、美輪子が言った。
 
「お姉ちゃんさ、村山さんが帰港した時、晩酌するのにお姉ちゃんまで付き合ってない?」
「うん。それで結構飲んでいる気はする」
 
「病気したのを機会にさ、もうアルコールは飲まないようにした方がいいと思う。お姉ちゃん、村山さんの不規則な生活に合わせる一方で、学校に行ってる子供たちの世話もして、それでパートにも出てというのでは身体がもたないよ。いつまでも若い時みたいに無理は利かないから、取り敢えずお酒は医者に停められたからとか言って、もう飲まないようにしなよ」
 
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「それ少し考えてみる」
と津気子は言った。
 

津気子が入院したのが火曜日で、水曜日に手術をし、木曜日には退院した。美輪子は当初木曜まで休んで津気子のサポートをする予定だったのだが、結局、翌金曜日も滞在して、その日に漁から戻ってくる武矢のサポートをしてくれた。津気子のヴィヴィオを出して漁港から自宅まで武矢と荷物を運ぶ。荷物を運ぶのは千里も手伝った。
 
「美輪子さん、すみませんね。こういうのまでしてもらって」
「津気子姉ちゃんはしばらく静養させた方がいいですから、車で迎えに行ったりもしばらくできないかも知れませんが、必要ならタクシーとか使って下さい」
 
「そうだな。あれにも無理させてるし」
と武矢も少し反省するような言い方をする。
 
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「少々の荷物なら、私も自転車で運ぶよ」
と千里。
 
「お前、自転車乗れたんだっけ?」
「だいぶ練習したもん」
 
千里は昨年、友人のお姉さんが「もう古くなったから捨てようかな」と言っていた自転車をもらってきて、頑張って練習して運転できるようになっている。ちゃんと学校で「自転車試験」にも合格して《自転車免許証》を発行してもらった。(この自転車は千里が高校3年の時まで活躍した)
 
「じゃ、頼むかも知れん」
と武矢は言っていた。
 

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ところで千里の《自転車免許証》だが、それを見た美輪子が面白がっていた。
 
「なんでこれ性別女になってるの〜?」
 
この免許証には《留萌市立N小学校・1997年度入学・村山千里・女》と書かれているのである。
 
「担任の先生が私のこと、最初女子だと思っていたんだよ。それでこういう記載になった」
「でもこれ提示求められたときに困らない?」
と美輪子は言ったものの
 
「いや、千里は性別男と記されていた方が揉めるな」
と言い直した。
 
「それ友だちからも言われた」
 
千里は「こういうのもある」と言って、市立図書館のカード、病院の診察券、ファンシーショップのお客様カード、なども美輪子に見せた。
 
「美事に女になってるなぁ」
と美輪子は言ってから少し考えて言った。
 
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「千里、あんた実はもう法的にも女になっているということは?」
「よく分かんなーい」
 

その日の晩ご飯も千里と美輪子で作る。武矢が持ち帰った雑魚は千里がきれいにさばいて、刺身や焼魚で出した。
 
「お魚さばいたのは美輪子さん?」
「いえ、千里ちゃんがさばきましたよ」
「お前、魚さばけたっけ?」
 
「うん。小学1年の時からお母ちゃんから習ってるよ。漁師の娘なら魚くらいさばけなきゃって。寄生虫もちゃんと見つけるよ」
 
「漁師の娘?」
「あ、息子の間違い」
 
美輪子が苦しそうにしていた。
 
夕食がはじまり、武矢は日本酒を熱燗にしてもらい晩酌するが(熱燗にするのは千里がやってやった:母にお酒を触らせないためである)、
 
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「津気子、お前も退院したんなら飲めるか?」
などと言う。
 
津気子が困ったような顔をしていると美輪子が言った。
 
「お兄さん、津気子姉さんは手術終わったばかりで、お酒は当面飲めないよ。医者からもしばらくアルコールは取らないでくださいと言われてたよ」
 
「そうか。残念だな。じゃ当面晩酌はひとりでするよ」
と武矢は本当に残念そうに言う。
 
実は美輪子が残ったのは、これを武矢に言うためであった。気の弱い津気子ではちゃんと言えないのではと心配して、滞在を延長したのである。
 
「千里、あんた母ちゃんがお酒飲んだりしないよう気をつけてて」
「うん。分かった」
 
しかし津気子は武矢の反応に少し違和感を覚えていた。これまでの武矢なら、そんな医者の言うことなんかいちいち聞かなくていいとか言って、無理強いしかねなかったのである。美輪子がこの場にいるせいだろうか? そもそも今日の武矢は普段よりおとなしい感じである。もしかしたら、自分が大病をしたのでさすがに少し心配してくれているのかな、と津気子は思った。
 
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美輪子は結局10日(日)の朝まで滞在した。そして旭川に帰る時、千里と玲羅を旭川まで連れて行った。この日の晩ご飯、月曜日の朝御飯は暖めればいいだけにしておいた。
 
この日は7月29日に亡くなった千里の祖父(武矢の父)十四春の四十九日法要が行われるのである。
 
本来十四春の四十九日は9月15日だったのだが、都合の悪い人が多かったことからその前の週にすることになった。またしばしば四十九日が命日の翌々月になることを嫌って三十五日で喪明けとすることも多いのだが、十四春の場合、三十五日でも9月1日になり、結局翌々月になるため、本来の日程の直前日曜日に法要をすることになった。
 
今回の法要に千里と玲羅の2人だけで行くことになったのは、津気子は手術したばかりで、とても動けないし、武矢は月曜日早朝から船を出さなければならないので、日曜日に遠くまで行って疲れるのは避けたかったからである。
 
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しかし武矢の目が無いのをいいことに、千里は家を出る時こそズボンを穿いていたものの、旭川に行く途中でスカートに穿き替えてしまった。
 
「あ、それ私が昔穿いてたスカートだ」
と美輪子が言う。
 
「私の服は美輪子お姉さんのお下がりが多いんだよね〜」
と千里は言っている。
 
「私のことを『お姉さん』と言うのは、よく分かっておる」
と美輪子。
 
玲羅は千里のスカート姿を普通に見ているので、特に何も言わなかったが、なぜ千里が美輪子のことを『お姉さん』と呼んだのか、そして美輪子がそれを喜んだふうなのはなぜか、訳が分からずに首をひねっていた。
 
「叔母ちゃんもお姉さん、お兄ちゃんももしかしたらお姉さん?」
「うん。私のことはお姉さんとかお姉ちゃんとか呼んでくれた方が嬉しい」
と千里が言うと、またまた玲羅は首をひねっていた。
 
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美輪子は2人を会場になるお寺まで車で送っていき、顔見知りの光江さんに託した。
 
葬儀の時はかなりの人数であったものの、四十九日に集まった人数はあの時より少なくなっていた。やはり葬儀ではないので、無理しなかった人も居たし、葬儀の時は郵便局関係の人が多数来ていたのだが、四十九日は親族だけで行うので、その分減ったのもある。今回の出席者はこのような面々であった。
 
1 施主(故人の妻)天子。
2 長男の武矢は欠席で千里(小4)と玲羅(小2)が代理出席。
4 次男の弾児は一家で(光江・顕士郎(小1)・斗季彦(3歳))。
4 長兄・望郎の孫一家(広康・絵里・来里朱(小4) 真里愛(小2))。
2 長姉(本当は次姉)サクラの息子夫婦(礼蔵・竜子)。
2 次兄・啓次の息子夫婦(鐵朗・克子)。
3 三兄・庄造の孫一家(春道・章子・美郷(小5))。
 
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以上18名(内小学生以下7名)。
 

千里が女の子の服を着ているのを見ての反応は3種類である。
 
・元々女の子と思っているので何も疑問を感じない人(竜子や克子など)。
・千里が男の子であることは知っているが許容している人(光江・天子など)。
・なぜスカートを穿いているのだろう?と疑問を感じている人(弾児・顕士郎など)。
 
この他に、そもそも小学生が何人もいるので誰が誰か分からない人!も居る。
 
千里は現地までは普段着のポロシャツとスカートで行ったものの、会場で玲羅や美郷などと一緒に、女性用控室で、子供用の喪服に着替えた。千里はもちろん、母の配慮で女児用の喪服を持って来ていた。
 
女性用控室に居る小学生は千里・玲羅・美郷と、来里朱(くりす)・真里愛(まりあ)の姉妹である。この2人は葬儀の時には来ていなかったので、千里たちとは初対面になった。
 
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「そちらも小学4年と2年なんだ?」
とお互いに言い合う。
 
「生まれた年は違うのね」
 
「私は1991年3月3日生」と千里。
「私は1990年12月25日生」と来里朱。
 
「ああ!キリストさんと同じ誕生日だからクリスなのね」
「そうそう。妹は9月8日でマリア様と同じ誕生日」
「でもうちは仏教徒〜」
 
「私は7月23日。これ誰かと同じかなあ」
と玲羅。
「確か『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフとか女優の朝丘雪路さんと一緒だったはず」
と千里。
「あ、いいかも」
と真里愛が言った。
 

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