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■少女たちのドミノ遊び(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-03-19
 
9月10日(日)名寄市。
 
暢子は朝食を食べた後で「あ。そうだ!バレーの助っ人頼まれていたんだった」と思い出し、体操服を着ると母に「バレーの試合に出てって頼まれたから言ってくるね」と言い、出かけて行った。
 
場所どこだったっけ?確か市民センターと言ってた?と思い、バスに乗る。この時、暢子の頭には先月、市民センターで盆踊り大会があったことが思い起こされていた。
 
市民センターに行くと、確かに何だかユニフォームを着た多数の小学生がいるので「良かった良かった、ここか」と思い、澄香を探す。
 
が、なかなか見つからない。
 
おかしいな・・・どこに居るんだろう?と思っていたら、突然後ろから肩を叩かれる。隣のクラスの容子である。
 
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「暢子ちゃん、どうしたの?」
「なんか助っ人頼むと言われたんで来たんだけど」
「わぁ!暢子ちゃん、助っ人してくれるの?来て来て」
と言って、容子は暢子を自分のチームの児童がいる所に連れていく。
 
「ね、ね、暢子ちゃんが助っ人してくれるって」
「おお!それは凄い」
「いや、和哉がなかなか来ないから困ってた」
「やはり和哉、逃げたのでは?」
「女の子の振りして出てくれってのは、さすがに無理があるもん」
「和哉なら充分女の子で通ると思ったんだけどなあ」
 
「でも暢子ちゃんが出てくれると心強いよ」
「うん。こんな背の高い選手は貴重」
 
「じゃ名前書いた。出してくる」
と言って4番の背番号を付けた6年生が走って事務局に向かった。
 
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「じゃ、暢子ちゃん、このユニフォーム使って」
と言って容子が13という背番号のユニフォームを渡したので、暢子は周囲は女子ばかりだしと思い、その場で着換えた。
 
暢子はここに澄香が居ないことを疑問には思ったものの、何か急用で休んだのかな?と思い、気にしないことにした。
 

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同じ頃、和哉は「バスケットの試合の助っ人を頼む。女子の試合だから女の子の振りしててね」と言われたのを気が進まないなあと思いながらも会場に向かっていた。
 
「トイレは女子トイレ使ってね」と言われたので、堂々と女子トイレに入れそうというのに、若干不純な動機を感じていた。女子トイレって1度入ってみたかったなあという気がする。そこで何か変なことをしようというのではなく、単純な好奇心である。
 
バスケットの試合なら動きやすい体操服かなと思い、体操服を着て出かけるが、バス停まで来てから「あれ?場所はどこだったっけ?」と思う。
 
えっとえっと・・・あ。確か市民プラザじゃなかったっけ?
 
それで和哉は市民プラザ方面行きのバスに乗った。
 
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バスケットの大会が開かれている市民センターでは、暢子たちのチームの最初の試合が始まる。
 
暢子はコートに出て行って、コート中央にネットが張られていないのを不思議に思った。たしかここにネットを張っていて、その向こう側にボールを撃ち込むんじゃなかったっけ??
 
あまり熱心にバレーの試合というのを見たことがないので、やや不確かである。
 
暢子はジャンプボールをしてと言われた。
 
「どうすればいいの?」
「審判が投げ上げたボールが落ちてきた所を叩いて飛ばせばいいんだよ」
「へー」
「あくまで落ちてきた所を叩いてね。ボールが最高点に到達する前に叩いたら違反だから」
「了解〜」
 
それでセンターサークルに立つ。向こうの選手がこちらを見上げて「うわぁ」と声を漏らした。こういう反応には慣れているので気にしない。審判がボールを高くトスする。暢子は高くジャンプした。
 
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そしてバレーのジャンプサーブでもするかのように身体を思いっきり反らすとその反動を利用し、4本の指で思いっきりボールを叩いた。
 

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ボールは物凄い勢いで飛んで行くと、向こう側のゴールにダイレクトに飛び込んだ。
 
会場がざわめく。
 
「これどうなるの?」
と暢子が容子に訊く。
 
容子もよく分からないようである。
 
2人の審判が何か話し合っている。
 
そして主審が右手に指を2本立てて振っている。スコア係の子が得点板をめくりこちらのチームに2点の点数を表示した。
 
「もしかしてあそこに入れたら得点になるの?」
と暢子が訊く。
「うん。そう」
 
「でもここからあそこまで届かせるのは難しいなあ。今のは偶然入ったけど」
 
「いやジャンプボールを直接放り込んだ人、初めて見た。ふつうはもっと近くまで行ってからシュートする」
 
「あ、近くまで寄っていいんだ?」
「次向こうの攻撃になるから、向こうの選手の動きを見てるといいよ」
「分かった」
 
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相手チームのキャプテンが抗議してきた。
 
「すみません。ティップオフを直接ゴールするのは違反ではないんですか?」
 
「いえ、ありです。NBAではたまにあるプレイです。まあ普通入りませんけど」
と審判が言ったので、キャプテンは引き下がった。
 
(実際にはこの審判の判断は間違いかも知れない。2001年のルール改訂でジャンプボールのタップはシュート動作の一部と認められるようになっているので、現在はジャンプボールを直接ゴールしてもOKと思われるが、それ以前は微妙である。しかしゲーム中の審判の判断は絶対かつ最終的であり、覆ることはない。なおNBAでもフリースローサークルでのジャンプボールがゴールすることはあるが、センターサークルから打ったボールがゴールすることはまずありえない。暢子のプレイは奇跡である。ちなみにスローインの直接ゴールは違反である)
 
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それでゲームは向こうのゴール下からのスローインで再開される。暢子は相手の8番の選手に付いてと言われ、彼女の前に行く。向こうがパスしようとしたボールをたたき落とす。
 
しかしそのボールを持ったまま走っちゃった!
 
たちまち審判が笛を吹く。両手を手前でぐるぐる回す。
 
容子が頭を抱えている。
 
「何か問題あった?」
「ボールを持ったまま3歩以上歩いてはダメ」
「そうなんだ!」
 
こういう感じで、全くルールが分かっていない暢子は最初のうちこそたくさんバイオレーションを取られたものの、生来の運動神経の良さと体力で、どんどん得点を挙げるし、相手からボールを奪う。
 
結局暢子は第1,3,4ピリオドに出場し、ひとりで20点も取ってチームの勝利に貢献した。
 
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「やったやった」
とみんな大喜びであった。
 

その頃、市民プラザにやってきた和哉はバスケットの会場はどこだろう?とキョロキョロしていた。
 
スタッフさんっぽい人を呼び止めて尋ねる。
 
「すみません。バスケットの会場はどちらでしょうか?」
「ああ。バスケット作りね。4階の小ホールよ」
「ありがとうございます!」
 
それで4階までエレベータで上り、小ホールを探す。廊下の突き当たりに、小ホールと書かれた所があるので中に入って戸惑った。
 
てっきり体育館のような所を想像していたのに、そこには多数の机が並べられているのである。
 
「あのぉ、バスケットは?」
と入口の所に居た人に尋ねる。
 
「ああ、ここですよ。ここに名前書いて」
「あ、はい」
 
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和哉は女子の振りしてと言われたしと思い、落合和美と書いた。そしたら
 
「じゃ、これ材料セットね」
と言われて段ボール箱を渡される。
 
「どこか適当な空いてる席に座ってね。もう少ししたら始めるから」
「あ。はい」
 
それで和哉は首をひねりながら、空いている席に着いた。
 

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そういう訳で、市民体育館で行われるバレーの助っ人を頼まれた暢子は間違って市民センターに行ってしまい、市民センターで行われるバスケの助っ人を頼まれた和哉は間違って市民プラザに行ってしまったのである。
 
暢子が行かなかった市民体育館だが、こちらには幸いにも救いの神が現れていた。
 
もうすぐエントリー締め切りの時刻なのに、暢子が来ないので
 
「どうしよう?」
「暢子が来ないと5人しか居ないから参加できないよぉ」
 
と言っていたら、男子チームの選手の妹(1年生)が母と一緒にやってきた。兄の応援に来たのであるが
 
「あんた、お兄ちゃんのプレイ見てるからルール分かるよね?」
「女子の試合に出てくんない?」
と言って取り敢えず、彼女の名前を書き、エントリーシートを出して来た。
 
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「わたし、とてもレシーブとかできないですぅ」
と言っていたが、
「勢いよく飛んできたボールからは逃げていいから」
と言って、何とか頭数をそろえることができたのであった。
 

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津気子は手術を受けた週を1週間仕事を休んだだけで、翌週からは会社に復帰した。会社の人からは「大丈夫なの?」と心配してもらったが「平気平気」などといって、ふだん通りに働いた。
 
手術した患部はさすがに痛いものの、我慢できない範囲では無かった。この後最短で3ヶ月、長い場合で1年くらい通院が必要と言われている。一応会社との話し合いで、病院に行く週は水曜日をお休みさせてもらうことになった。
 
治療は1ヶ月を1クールとして、1ヶ月放射線と投薬をして1ヶ月は治療を休むというサイクルで様子を見ていく。2クールまでは確実に治療を受けるものの4ヶ月後の検査で問題が無ければそれで治療終了。続けた方がよさそうであれば、更に延長されていくことになる。
 
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そういう訳で、9月15日(祝)に行われた千里や玲羅の学習発表会はちゃんと見に行くことができた。この日は休日なのでお弁当だったが、千里が自分の分、玲羅の分、母の分と全部作ってくれた。千里は最近本当に家事をよく手伝ってくれている。いい娘に育ってきたなあ、と一瞬考えてから、あれ?息子だったっけ?と考え直して「まあいっか」と思った。あの子はやはり、20歳くらいになったら、手術を受けて本当の女の子になってしまうんだろうなと津気子は時々考えていた。
 

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学級別の劇では、玲羅は笠地蔵のお地蔵さんだったが、千里が白雪姫の役をしていたのを見たのには、さすがの津気子もぶっ飛んだ。何でも白雪姫役の子が直前にダウンして、セリフを覚えていて、しかも白雪姫の衣装が入るのが千里だけだったらしい。
 
あの子、細いもんなあ、と津気子は思った。
 
千里が細いのは、元々3月3日生まれで、学年の中ではいちばん遅い時期の生まれであることに加えて、本人があまり食べないこと、そして食べさせてあげられないことがある。本人が食べないのは、たぶん「女の子としての自分」を育てて行くため、体格があまり大きくならないように気をつけているのではと津気子は推察していた。そして食べさせてあげられないのは、うちが貧乏なせいである。
 
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食事の時の様子を見ていると、お肉やお魚は武矢や玲羅に主として食べさせていて、自分では野菜とかばかり食べているようである。実は津気子も同様に夫や玲羅に譲って自分ではあまりお肉やお魚を食べない。これについては千里には申し訳ないなと思ってはいるが、充分食べさせてあげるにはお金が足りないのも事実である。
 
市営住宅の家賃は払わないと追い出されるので何とか頑張って払っているものの、電話料金や電気料金などは支払いが、本来より1ヶ月遅れの状態になっている。NHKもかなり滞納している。
 

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しかしそんな津気子にも、まさか千里が今回の学習発表会では、女の子たちと一緒に着替え、更にギリギリで着ていた白雪姫の衣装を脱ぐとき、下着まで一緒に脱げてしまって「何も無い」股間を同級生の女子たちに見られてしまったなどということは、想像の範囲外であった。
 
千里は一応男子なので体育の時間は男子たちと一緒に着替えてはいたものの、千里の下着姿は「他の男子が見るには問題がある」ので、同級生の田代君の配慮で、教室の後ろに置かれている移動型黒板の後ろでひとりだけ着替えていた。しかし今回の学習発表会の時の着替えを見て、女子たちから「今度から私たちと一緒に着替えようよ」と言われた。
 
千里に「おちんちんが無いのでは」というのは、実は昨年くらいから女子たちの間で噂になっていたのだが、今回の学習発表会の着替えで、それが「証明されてしまった」のである。
 
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