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食事の後は、本屋さんに行き1時間くらい過ごした後、プールに移動した。3時間のチケットを買う。これは終日チケットの半額で買えるのである。
蓮菜のお母さんは「3時間券を小学生6枚、おとな1枚」と切符売場で言った。
「ロッカーが男女別なんですが、お子さんは男性何人と女性何人ですか?」
と係の人が尋ねる。
「あ、男の子1人と女の子5人です。それに大人の女1人」
とお母さん。
ここでお母さんは千里が男の子で他の5人が女の子と考えている。半券を切り取った大人券1枚と子供券6枚、それに青いロッカーの鍵1個と赤いロッカーの鍵6個をもらった。
料金子供300円は全員その場で蓮菜のお母さんに渡した。
「チケットは私がまとめて持ってるね。はい、鍵」
と言ってお母さんが鍵を配る。千里に青い鍵、他の子に赤い鍵を渡す。
「じゃ中で会おう」
と言って手を振り、更衣室の前で千里は他の6人と別れた。
蓮菜たちが女子更衣室の方に入って行く。千里は「ふっ」と息をついた。
うーん。ここ入りたくないなあと思って男子更衣室の入口を見る。そもそも千里は今日は蓮菜から借りた、可愛い女の子水着を持ってきている。これを男子更衣室で着ていたら、ギョッとされないか?などというのも考えたりしていた。
でもやはり私が女子更衣室に行ったらまずいかなあ・・・などと考えつつ、思い切って男子更衣室の中に入っていこうとしたら
「ちょっと君、そこ違う」
と声を掛けられる。
振り向くと従業員さんである。
「女子更衣室はそちらだよ」
「あ、すみません」
それで千里は今度は女子更衣室の前でその「女子更衣室」という札を見つめていた。どうしよう?
その時、そこから留実子が出てきた。
「るみちゃん、どうしたの?」
「トイレに行くと言っていったん出てきた」
「ああ」
「千里は?」
「男子更衣室に入ろうとしたら、そこ違うと言われた」
すると留実子は言った。
「ね、鍵を交換しようよ」
「いいの?」
「僕は男子更衣室で着替えたい」
「るみちゃん、水着は?」
「男物の水泳パンツを持って来てる」
「そんなの着られるの?」
「今年の夏が最後という気がする。もう来年は無理かも。たぶんおっぱい膨らみ始めるから」
おっぱい・・・・私も膨らむといいなあと千里は思う。しかし留実子にとってはその胸が膨らんでくることが物凄い苦痛なのだろう。
「鍵交換しちゃおうか」
と千里も言った。
「うん」
と留実子が笑顔で言う。
それで千里と留実子は鍵を交換し、千里は女子更衣室、留実子は男子更衣室に入った。
自分の番号のロッカーを探し、荷物をそこに入れ、服を脱ぐ。
ズボンを脱ぎ、ポロシャツを脱ぐ。アンダーシャツを脱いだ所で近くで着替えている女子高生が目に入った。彼女はブラジャーをしている。そのブラジャーを取ると豊かな乳房があらわになる。
それをちらっと見て千里は「いいなあ」と思った。私もおっぱい膨らんできたりしないかな。
そんなことを考えながらパンティも脱ぐ。持参のアンダーショーツを穿いた上で、蓮菜から借りた水着を着た。
足から入れて上に引き上げ、肩紐を肩に掛ける。水着の端に指を入れて乱れを直す。パレオを取り付ける。
よし。
千里は髪をゴムでまとめて水泳帽の中に収納し、ゴーグルを手にしてプールの方に進んだ。シャワーになっている出口で冷たい水を浴びてきゃっと思った。中に入ってから蓮菜たちを探す。
しかしその前に千里は留実子に出会う。
「お、凄い」
と千里が笑顔で言う。
「えへへ」
と水泳パンツ姿の留実子。
「よく堂々と胸をさらせるね」
「うん。この方が気持ちいい」
千里は留実子に手首に付けている鍵の交換を提案する。
「確かにその方が平和的かも」
と言って留実子も鍵を外して千里のと交換し、赤い鍵を手首につけた。
「他の子はどのあたりかな」
と留実子。
「あ、向こうにいるよ」
と千里は言って留実子と一緒に蓮菜たちのいる付近に行った。
「るみちゃん、そんな水着持って来たの?」
と蓮菜のお母さんが驚いている。
「こないだ水泳の授業でこれ着ようとしたら『だめ〜』と言われてスクール水着を着せられたんです」
と留実子。
「まあ学校じゃ着られない水着だね」
「千里も可愛いね」
と蓮菜が言う。
「こういう水着を着ると落ち着く」
と千里。
「まあ学校じゃ着られない水着だね」
恵香とリサは遊泳用プールで水浴びみたいなことをしていたが、留実子は
「僕は泳ぎたいな」
と言うので、コハルが付き合うよと言って一緒に競泳用プールの方に行く。蓮菜と千里も何となく付いていった。
年上のコハルが先導するように先を泳ぎ、留実子がその後を泳ぐ。コハルはさすが6年生だけあって軽快に泳いでいるが、留実子も力強い泳ぎ方である。
「凄いね」
「でもあの子、十分男の子に見えるから、まあいいのかな」
と蓮菜がつぶやくように言う。
「ああいう水着を着られるのは今年が最後かもと言っていた」
と千里が言うと蓮菜は頷いていた。
「千里は泳がないの?」
「私、かなづちだし」
「なんか桜井先生の特別レッスン受けてた」
「今まで全然水泳とかやったことなかったし、ひたすらバタ足だったよ。プールに入っても5mで沈没」
「5mなんて最初の勢いでそのくらい進むじゃん」
と蓮菜。
「だったら、千里、スライダーに行かない?」
「スライダー?」
「楽しいよ」
と言って蓮菜は千里の手を握ってスライダーの方に一緒に行った。
「でも千里、ちゃんと女の子に見えるよ」
「えへへ」
「男子更衣室でそれに着替えていて、何か言われなかった」
「ううん。別に。小さい女の子がお父さんに連れられて中にいたし」
「ふーん・・・」
と蓮菜は何か考えているふうであった。
「だけど千里、手の感触が女の子だよね」
「運動会の時に穂花にもそんなこと言われた」
「千里、実は本当は女の子でしょ?」
「女の子だったらいいのにと1日10回は思う」
「ふーん。10回も?」
「トイレに行く度にね」
「なるほどねー」
スライダーは人気なので、列が凄い。
「結構待つことになりそう」
「まあ仕方ないね」
「後で、流れるプールの方にも行こうよ」
「うん。泳いでいる子たちが一休みしたらかな」
階段に列ができているので行列で待ちながら少しずつ上に登って行く。10分くらいしてやっと順番になる。
千里はスライダーというのは初体験であった。
千里が滑り口の所に立つと係の女性から言われた。
「済みません。そのパレオは危険なので外して下さい」
「あ、はい」
と言って取り外す。
「お預かりしておきますので、あとで階段の下で受け取って下さい」
「すみませーん」
係の人は千里の鍵番号を記録していた。青いタグの付いた鍵なのを何か言われるかなと思ったが、特に何も言われなかった。
それで滑り口を見るが・・・・何だか怖い。
「ここから滑るんですか?」
「そうそう。君初めて?」
「はい」
「だったらAコースに行った方がいい」
「はい?」
それで千里はAコースの入口に行く。腰を下ろす。
やはりこれ怖いよぉ!!
と思ったものの、止まるわけにはいかない。思い切って手を離す。
勢いよく滑り出す。
きゃー!!!
いきなりストンと落ちる。
ひぇーーーー!!!
やだぁ。なんでこんなのにみんな乗るの〜〜?と思ったもののスピードはどんどん上がっていく感じである。
助けて〜〜!!
と思っていたら、ドボン!!と勢いよく水の中に落ちて止まる。ひゃーと思いながら何とか体勢を立て直す。次の人とぶつからないようにすぐにそこからあがる。
大きく息をついていたら、千里が滑ってきたのとは別の出口から蓮菜が降りてきた。
「楽しかった!また行こう」
と蓮菜は笑顔である。
え〜〜!?
それで蓮菜に手を握られてまたスライダーの所の階段に並ぶ。お股の付近にはさりげなく手をやって、その付近のラインが見られないようにしている。蓮菜も敢えてその付近には視線をやらないようにしてくれていた。
しかし結局千里は蓮菜に連れられてスライダーを6回も滑ることになった。最初の2回はAコースを滑ったものの
「君、今度はこちらに行ってごらん」
と係の人に言われて3度目はBコース、5度目はCコースに行く。それにつれて恐怖度も上昇した。
「ね、楽しいでしょ?」
と蓮菜は笑顔だったが、千里は顔が引きつっていた。
スライダーはずっと使えるのだが、プール本体の方は1時間に1回強制休憩タイムが入るようで、音楽が鳴ると全員水から上がっていた。千里たちもちょうど2度目の休憩タイムに合わせてプールの方に行くことにする。パレオをスライダーの階段下で預かってくれていた係の人から受け取り身につけてから、恵香たちと合流した。
蓮菜のお母さんが「これはおごり」と言って、ホットドッグを買ってくれたのでみんな食べて一息つく。留実子は今日男子水着でたっぷり泳いでかなり精神的に満足したようである。
「でもなんで全員一斉に休ませるのかなあ」
と千里が言うと
「誰かプールの底に沈んでいても分からないから、それをチェックするんじゃない?」
と恵香が言う。
「え〜〜〜!?」
「私、千葉に居た頃、海水浴に行ってて、海の中から人を担架に乗せて運んでいくの見たことある」
とリサが言い出す。
リサは小学校に入る前は、千葉県の銚子市に住んでいた。
「嘘!?」
「それおぼれて死んだの?」
「分からない。もしかしたらクラゲとかにやられたのかも」
「ああ、クラゲは怖いよね」
「お盆過ぎるとクラゲが増えるとか言ってたね」
とコハル。
「北海道じゃどっちみちお盆過ぎは寒くて海水浴できないなあ」
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少女たちの入れ替わり大作戦(11)