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午後は最初6年生の鼓笛が行われ、続いて5年生全員によるソーラン節が披露される。その後、千里たち4年生のフォークダンスが行われた。1組と2組がそれぞれ二重円を作っている。円の内側は女子、外側は男子。曲は『オクラホマ・ミキサー』と『マイムマイム』である。
1組2組とも27人なので2組の典子がこちらに来て男子14人・女子14人の輪が作られている。ここで留実子は女子として参加、千里も女子扱いの上に鞠古君が女子の輪に参加している。千里は元島君、留実子は高山君、鞠古君は佐藤君とペアになってスタートした。
元島君は千里の手を握ると何だかドキッとしたような顔をした。何だろう?と千里は思う。一通り踊ってから女子側の千里がお辞儀するように斜め後ろを見て、高山君を迎える形になる。高山君が1歩前に進み、千里の手を取って踊り出すが、高山君は千里の手を握った時に「え?」という顔をした。
何だ何だ?と思う。
次は佐藤君、最後は輪の先頭になって中山君だったが、どちらも千里の手を握った時に不思議そうな顔をした。
『オクラホマ・ミキサー』の曲が終わり、次は男子・女子ともに横の人と手をつないで、二重輪の状態のまま『マイムマイム』になる。千里は両隣の穂花・留実子と手をつなぐ(留実子は左手を鞠古君とつないでいる)。穂花は千里の手を握って何だか頷いている。みんな一体何なんだ〜!??
マイムマイムの曲は5回リピートして演技が終わる。リーダーに指名されている高山君が手をあげ、その隣付近にいた蓮菜も手を挙げて、2人が先頭になり、列を崩さないようにして駆け足で退場した。
そのあと応援席に戻る途中で穂花から言われた。
「男子たちがさ、千里の手を握ってみんな『あれ?』って顔してたじゃん」
「うん。何でだろうと思った」
「それは千里の手を握った感触が女の子の手の感触だったからだよ」
「へ?手に男の子の感触とか女の子の感触ってあるんだっけ?」
「まだあまり差は無いけどね〜」
と言って穂花は笑っていた。
来年小学校に入る予定の子たちの出し物、低学年の子の保護者参加イベントなども行われた後、最後は学年縦断・組別対抗リレーで締めくくられる。最初に女子のリレーが行われる。1年→2年→・・・・→6年とバトンがリレーされていくのだが、青組は3年生の段階で2位だった所を恵香は赤組の佐奈恵に抜かれて3位に落とした。最終的には6年の子ががんばって青組は2位でゴールした。
「抜かれちゃった。ごめん」
「ドンマイ、ドンマイ」
その後で男子のリレーとなる。これに青組は留実子が出場する。赤組は鞠古君なのだが、ふたりは何やら話していて、留実子がどうも照れている雰囲気である。
「ね、もしかしてるみちゃんさ・・・」
と穂花が言う。
「私もそんな気がした」
と千里は言った。
「うまく行くといいけどね」
「うん。でもそしたら、るみちゃん女らしくなっちゃうのかなあ」
「それもいいんじゃない。男らしいるみちゃんも格好いいけど」
競技では3年生の段階で白組が先頭を独走、赤組と青組が競った状態で来るので留実子と鞠古君はほぼ同時にバトンを受け取った。ふたりが物凄いデッドヒートをする。それで結果的には1位との差も縮まっていく。リレーでは4年生は1周(150m)走るのだが、その間に20mくらいあった1位との差が5mくらいまで縮んでしまった。結果的に4年生の1〜3位がほぼ同時に5年生にバトンを渡した。
走り終わった留実子と鞠古君が一瞬抱き合おうとしてからお互い照れるようにし、結局握手をしていたが、千里と穂花は留実子が凄く嬉しそうな顔をしているのを見て、また顔を見合わせていた。
6月には遠足が行われた。1年は晴日公園、2年は黄金岬、3年は運動公園、4年は白銀丘、5年は神居公園で6年は黒銅山と少しずつ距離が長くなっている。実際問題として4〜6年生は半ば登山である!
1〜3年生は9時出発だったのだが、4〜6年生は8時集合の8時半出発で、遅刻常習犯の子数人は出発に間に合わないのでは?と結構ひやひやさせられた。
行方不明者が出ないように!?5〜6人単位で班を作っており、その班単位で行動する。班はだいたい男女比が半々くらいになるようにしてあって、千里は蓮菜・留実子・田代君・鞠古君・高山君という「男子4人女子2人」の班に入った。1組は男子16人女子11人なので、男3女2の班が3つと、男3女3の班、男4女2の班ができるのである。
「これ男4女2なんだっけ?」
とリーダーでクラス委員の高山君がメンバーを見回して言う。
「まあ数え方によるかな」
と田代君。
「男6女0という説から男2女4という説まで諸説ある」
と蓮菜。
「なぜそんなに変動する!?」
途中迷うような道は無いし、1組の担任我妻先生が先頭、2組の担任近藤先生が最後尾を歩き、途中に体育の三国先生が入って、念のため各班のリーダーにはGPSも持たせている。
千里たちの班は1組担任の我妻先生の直後を歩いていた。
幼なじみの田代君と蓮菜は、何となく横に並んで、おしゃべりだか喧嘩だかよく分からないようなやりとりをしながら歩いている。千里はさりげなく高山君の横に並び、先日の運動会の話から始めて、高山君がやっているテニスの話題なども振り、彼をうまく乗せて色々話をさせた。
そして結果的に留実子と鞠古君が並ぶ形になる。ふたりはどちらもあまり普段おしゃべりなどするタイプではないので、結構無言で歩いていたようだが、その内、鞠古君が、以前留実子が住んでいた夕張の話など訊いたりしていた。しかし留実子は夕張でのことをあまり話したくないような雰囲気もあり、それもすぐに話題が止まってしまって、ふたりはまた無言で歩いていた。千里が見かねて、斜め後ろを歩いている鞠古君に彼が参加しているミニバスの話題を振ってみた。すると彼は試合での面白エピソードなどを話し始め、留実子がそれに相槌を打ったりして、何とか会話が成立していったようであった。
千里たちのそんな様子を少し先を歩く我妻先生は微笑みながら見ていたようであった。
6人は先頭を千里と高山君、その後に留実子と鞠古君、最後に蓮菜と田代君という並びである。
事件が起きたのは出発してから1時間ほどした頃であった。三国先生は密かにビールを持って来ていたようであった。それを近くを歩いていた男子がうまく乗せて、飲ませてしまったのである。すると先生はどうも「ブースト」してしまったようで、かなりハイテンションになり、先日の運動会での不満をしゃべり始めたかと思うと、1組の後ろの方で遅れがちになっていた女生徒のお尻を叩いて「こらもっとしっかり歩け」などと言ったりしていたらしい。
三国先生の行動に不快感を覚えた5班のリーダー佐藤君は我妻先生に注意してもらおうと、班の統率をしっかり者の佐奈恵に任せて、ペースを上げ1班のところまで上がってきた。そしてそのことを我妻先生に報告した。
すると先生は眉をひそめ、
「高山君、ちょっと先頭をお願い。GPSあるから道は大丈夫だよね?」
と言う。
「はい。大丈夫だと思います」
と高山君は答えたのだが、我妻先生は知らなかったのである。
高山君が大の方向音痴であることを!
佐藤君か後方にいる2組の近藤先生ではなく先頭にいる1組の我妻先生を頼ったのは、最後尾の先生が抜けた場合に、遅れた子が道に迷ったりしては危険なので先頭の先生の方が問題は少ないだろうと判断したからである。
それは常識的には正しい判断である。しかし佐藤君も高山君の方向音痴を知らなかったのである。
我妻先生が佐藤君と一緒に後ろに降りて行く。その間、千里と高山君は先頭を歩き、山道を進んでいった。
「この坂きついね」
「一気に上っちゃおうよ」
「なんか2班と離れてるよ」
「迷うような道は無いし大丈夫だろう」
などと言いながら坂道を上る。
その坂を登り切ってから更に5分ほど経った頃のことであった。
「ね?後ろ、まじで誰も来てないと思わない?」
と蓮菜が言った。
「え?」
と言って千里と高山君は足を止め後ろを振り返る。
ここはちょうど五叉路になっている所であった。
今来た方角を見ていたのだが、確かに誰も来ていない!
「遅れているということは?」
「やはりさっきの坂がきつかったから少し休んでいるのでは?」
などと言って6人はしばらくそこに立ち止まって待ってみた。
しかし誰も来ない。
「もしかしてはぐれた?」
「それってはぐれたのは2班以下?」
「それとも私たち?」
「高山、GPS見てたんじゃないのか?」
と田代君が訊く。
「ごめーん。何も考えてなかった」
「ルートは赤い表示が出てると言ってたぞ。そのルートに乗ってないの?」
「実はこれの見方よく分からなくて」
と高山君が情けないことを言い出す。
「分からないなら分かる奴に持たせろよ。ちょっと貸せ」
と言って田代君が高山君からGPSを取ろうとしたのだが、その時、高山君は田代君に端末を渡そうとして手が滑ってしまった。
「あっ・・・・」
「あぁぁぁぁ!!」
GPSが下に落ちて、そのまま横の斜面を滑り落ちて行ってしまったのである。
「俺取ってくる」
と高山君が言ったが
「やめろ。危険だ」
と留実子が制止する。
「やはり、俺たちが迷ってるのかな」
と鞠古君が言う。
「そんな気がする」
「じゃどうする?」
「今来た道を戻れば元の道に戻れると思う」
と鞠古君。
「今来た道が本当に分かる?」
と蓮菜が訊く。
「うーん・・・」
「下手に動き回るのはよくない。できるだけ安全な場所で見つけてもらうのを待った方が良い。たぶんもう俺たちがいないのに先生たち気づいて、何か手を打っていると思う」
と田代君が言う。
「ごめーん。俺がしっかりしてなかったから」
高山君。
「いや、クラス委員だから責任感を持つのはいいんだけど、不得手なことは無理せず、他の人にさせた方がいい」
と留実子。
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少女たちの入れ替わり大作戦(7)