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■少女たちの入れ替わり大作戦(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-05-16
 
6月下旬から、体育では水泳の授業が始まる。もっとも千里たちの小学校のプールは屋外に設置されているので、使用できるのは6月下旬から8月上旬までのごく短い期間だけである。
 
千里は1年生の時から水泳の授業は全部見学で押し通している。
 
「千里、なんで見学なわけ〜?」
「私カナヅチだからパス」
「だったら練習すればいいのに」
 
「千里は水着姿を人に見せたくないんじゃないの?」
と図星を突いてくる子もいる。
 
「私スクール水着を持ってない」
 
正確に言うと千里の母は水泳パンツを買ってくれたのだが、そんなものは絶対につけたくないというところが実情である。
 
一方の留実子は初日、水泳パンツで参加しようとして女子体育の桜井先生から「だめ〜!」と言われ、備品のスクール水着を着せられていた。
 
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「千里ちゃんも備品のスクール水着貸してあげようか?」
「パスで」
 
「先生、村山はたぶん女子水着のお股が盛り上がっているのを見られたくないんですよ」
とひとりの男子が言う。
 
「いや、村山は水着を着てもお股が盛り上がっていたりはしない気がする」
「もしかして、水着を着ると、もうチンコが無いことがばれるから着ないのでは?」
 

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桜井先生はある日千里を個人的に呼び出した。
 
「この水着は私と我妻先生で出し合って買ったんだけど、千里ちゃんにあげる。そしてこれから1時間は千里ちゃんだけの授業にする。他の子はプールに入れない。だから、私と一緒に少し水泳の練習しよう。千里ちゃんは漁船には乗らないだろうけど、フェリーとか観光船とかに乗っていて、沈没したような時に、泳げなかったら死んじゃうよ」
 
「ありがとうございます。でも・・・・」
 
「千里ちゃんが水着を着た時にどういう状態であったとしても、それ私は誰にも言わないから。我妻先生にもね」
 
と先生が言うと、千里は深く頭を下げた。
 

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それで千里はその日の放課後、ただひとりだけでプール付属の女子更衣室でスクール水着に着替え、初めてプールに入った。幼稚園の時にも水浴びのようなことはしているのだが、その時はお股が見えないスカート付きの水着を着ていた。
 
「まずは水に慣れよう」
と言って数回水中歩行でプールを往復した。
 
その後、プールの壁につかまってバタ足の練習をする。
 
「千里ちゃん、やはり私が思ってた通り。あんた運動神経は凄く良い」
「そうですか?」
「あんたスポーツ選手になれる素質がある」
 
「でも私、女子スポーツ選手にはなれないですよね?」
「難しいけど、可能性はある。テニス選手でレニー・リチャーズという人が性転換した後、女子の大会に出たいと言って裁判を起こして認められた事例がある」
「そんな選手がいるんですか!」
 
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この判決は1977年に出たものであるが、これはほとんど例外的な扱いであった。オリンピックが性転換者に門戸を開いたのは2004年5月である。その少し前、2004年3月にはゴルフのミアン・ベッガーが女子の試合に出場することを認められている。ひとつの判決からスポーツ界が一般的なルールとして性転換者の処遇を決めるまでに27年もの月日が掛かった。これには冷戦時代に共産圏の国が元々性別の曖昧な選手を女子として出場させて成績を上げようとし、これに対してセックスチェックが行われてそのような選手が排除されてきた不幸な歴史も災いしている。
 

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その日は1時間の予定だったのだが、千里がどんどん水泳の技術を習得するので、先生の指導も熱が入り、2時間ほどかけて、千里はクロールで息継ぎしながら泳ぐことができるところまで到達した。
 
「千里ちゃん、ふだんの水泳の授業にも出ない?」
「すみませーん。それはパスで」
「分かった。じゃまた個人レッスンをしようよ」
「はい、ありがとうございます」
 
「千里ちゃんの身体の秘密は私だけの胸の中に」
「えへへ」
 
「その水着、自宅に持ち帰って洗濯とかしても大丈夫?」
「はい、それは平気です。そもそも私、ふだん女の子の服ばかりだし」
「なるほどねー」
 

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その日母は言った。
 
「ね、千里、あんた男の子の下着は全然つけないみたいね」
「ごめーん。私、女の子の下着しか着たくない」
 
「だったら、男の子の下着はもう買わなくてもいい?」
「うん。無駄だから。未開封のは顕士郎君にあげてもいいよ」
「うーん。さすがに未開封でも下着は譲れないよ。上着で男っぽいものはあまり着ないみたいだから、そういうの送ろうかな」
「うん、そうして」
 
「ごめんね。今うちお金が無いから、あんたが着ないのなら、もう男の子の下着を買うのはやめようかと思ってさ」
「うん。それでお金のある範囲で女の子の下着を買ってくれたら嬉しいな」
 
「じゃパンツとかは少し買ってあげるよ。どうしてもパンツの傷みは激しいからさ」
「うん」
「あまり痛んだり汚れたりしたパンツ、穿いてるのよくないから」
「じゃゴムのゆるくなったの捨てちゃおうかな」
「そうしなさい。今度の火曜日は布紐類の日だから、その日に捨てよう」
「うん」
 
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「でもあんたのパンツって女の子と同じ汚れ方するよね」
「え?そうなの?」
「父ちゃんのパンツは前が汚れる。ちんちんが前に付いてるから」
「へー」
「あんたのパンツは私や玲羅と同じ。真下のマチの部分が汚れる。ちんちんが無くて、そのあたりからおしっこ出るから」
「ふーん」
「あんた、ちんちん無いんだっけ?」
「内緒」
 

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母は少し考えていたようだったが「まあいいか」と言った。千里は少なくとも幼稚園に入って以降、一度も母に自分のお股付近を見せていない。
 
「そうそう、お父ちゃんの手前、あんたのタンスには一応男物の下着も入れてはおくけど、あんたは好きなの着ていいから」
「ありがとう」
「タンスの下2段は玲羅が使って上2段はあんたの服だけどさ、女の子下着とかスカートは2段目に入れておきなさい。男物は1段目で。そうしたらお父ちゃんがタンス開けても、そこも玲羅の服かと思うだろうしさ」
 
「うん。そうする」
 

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7月中旬、夏休みが始まってすぐのある日、千里たちは蓮菜のお母さんに連れられて旭川に出た。同行したメンバーは千里・留実子・リサ・蓮菜・恵香の5人で、蓮菜のお母さんが運転するセドリックに6人乗りして出かけた。蓮菜が助手席に乗って後部座席に4人である(12歳未満なので違反ではない。後部座席のシートベルトが義務化されたのは2008年6月)。
 
なお座席の座る順序は左側から留実子・恵香・千里・リサである。身体の大きな留実子とリサを端にして足を伸ばしやすくしたのと、リサはやや日本語に不安があるのでフランス語で意思の疎通ができる千里を隣にしたものである。
 
この日は特に何か用事があった訳ではないのだが、休みだし町で少し遊ぼうという趣旨で、駅前の商店街を歩き、時間があったらイトーヨーカドーにでも寄り、その後旭川市内のレジャープールで遊び、最後はマクドナルドでハンバーガーを食べて帰ってこようという趣旨である。
 
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プールが入るコースというので千里は最初渋ったのだが、蓮菜が
 
「従姉からもらったパレオ付きの水着があるんだよ。私にはまだ大きくてさ。良かったらそれを千里使わない?」
と言った。
 
「パレオ?」
「スカートみたいなの。だからあの付近は目立たないよ」
「じゃ借りようかな」
 
ということで千里も行くことにしたのである。
 

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出るのに少し時間が掛かってしまい、結局旭川に着いたのがもう11時半である。
 
「ヨーカドーはパスかなあ」
「取り敢えずお昼食べようか」
などと言って、食べる所を探して商店街を歩いていたら洋服屋さんの入口付近にステージが作られていた。
 
「何かイベントがあるのかな」
「ビリーブ来演って書いてある」
「何だっけ?」
「さあ」
「演歌歌手か何かかな」
 
そんなことを言いつつ、千里たちはそのステージの横を抜けて、向こうに行こうとしていた。その時千里は、32-33歳くらいの女性と目が合った。彼女が「あっ」と言って寄ってくる。
 
「君たち、中学生?」
「小学4年生ですけど」
 
「そっかー。でもこの際、小学生でもいいか。あんたたち何かセンス良さそうだし」
「は?」
 
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「ちょっと来て」
と言って、彼女は千里たちを洋服屋さんの奥の小部屋の中に連れ込んだ。
 

「あのぉ、何でしょうか?」
 
「あ。私、こういう者です」
と言って名刺を出す。蓮菜の母が受け取った名刺には
 
《○○プロダクション・ミュージックプロデューサー 原知恵美》
 
と書かれていた。
 
「ハラトモ・エミさん?」
「あ、いえそれはそこで切るんではなく、原で切って、ハラ・チエミです」
 
「芸能プロダクションの方ですか?」
 
「ええ。それで単刀直入に。ちょっと代役をしてもらえないかなと思って」
「はあ?」
 
「私はビリーブという女子高生デュオのマネージャーをしているんですが、今日あと30分でビリーブのステージを始めないといけないのに、本人たちが到着してないんですよ」
 
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「電車でも遅れているんですか?」
「それが私、うっかりミスしていて、彼女たちには仙台の商店街のイベントも入れていて、ふたりは今仙台に居まして」
 
「もしかしてダブルブッキングですか?」
と蓮菜の母。
 
「いや、面目ない。そのことに30分前に気づいて。それで誰か代わりのアーティストにステージを務めてもらえないかと思って、知り合いに当たってもらっていたのですが、急なことで誰も捕まらなくて」
 
「1時間前は厳しいですね」
 
「それでもう誰でもいいからと思っていた時に、君たちと目が合ったので」
 
「目が合ったから代役なんですか〜?」
と蓮菜が呆れたように言う。
 

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