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■少女たちの入れ替わり大作戦(4)

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それで帰ると父はビールを飲んでいたようである。
 
「ただいまあ」
「お帰り。ああ。一緒だったのか?」
「うん。ちょうど一緒になったんだよね」
「千里、ビールが切れた。ちょっと買ってきてくれないか?」
 
「私、お金持ってないよ。お母ちゃんが帰ってきてから言って」
 
しかし父はビールを飲んでいたせいか機嫌が良いようである。
 
「そうそう。ゴールデンウィークにさ、漁船体験乗船ってのを漁協でやるんだよ。千里ちょっと乗ってみないか?」
 
「え〜?私船は苦手だよー。観光船に乗っただけでも酔っちゃったのに」
「将来漁師になる男がそれでどうする。船酔いは慣れたら酔わなくなるんだよ」
「私は漁師になるつもりはないから」
 
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などと言い合っていたのだが、父は強引である。千里は5月5日に体験乗船に行かざるを得なくなってしまった。ちなみに玲羅が
 
「お兄ちゃんが乗らないなら私が乗ろうかな」
と言ったものの
「女を漁船に乗せられるか」
と言われて却下されてしまった。
 

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そういう訳で5日、千里はしぶしぶ漁港まで行くことにした。ちなみに最初は父も付いてくると言っていたのだが、寄り合いに呼ばれたというので、漁協の役員をしている福居さんの所に出かけて行った。
 
それで千里はひとりで出ていく。バス停を降りて港まで歩いて行くと、ずいぶん多くの小中学生の姿がある。こんなにたくさん体験乗船の参加者がいるのか?と思って眺めていると、どうも男子より女子の方がずっと多い。
 
お父ちゃん、女を漁船に乗せられるか?なんて言ってたけど、実際には女の子の方が多いじゃん、と思って見ていると、千里を見て手を振る子がいる。
 
「るみちゃん、漁船の体験乗船するの?」
「え?体験乗船?何それ。僕は『漁協主催・新鮮魚料理教室』に出てきたんだよ」
「そんなのやってるんだ!」
 
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「僕は料理なんてしないというのに、お母ちゃんがあんたも一応女の子の一種なんだから、料理くらい覚えるべきと言って、無理矢理。千里は?」
「私、漁船なんか乗らないというのに、お父ちゃんが俺の跡継ぎになって船に乗ってもらわなきゃとか言って無理矢理」
 
「うーん。お互い苦労してるね〜」
「全く全く」
 

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それでしばらく留実子と2人でおしゃべりしている内に
 
「新鮮料理教室始めまーす。参加者はこちらに集まって下さい」
という声と
「体験乗船、1回目の船を出しますので、乗られる方はこちらに並んで下さい」
という声がする。
 
それで千里と留実子は手を振って、千里は体験乗船の方の列に並び、留実子は料理教室の方に行きかけた。
 
ところが・・・・
 
千里が列に並ぶと、たちまち前後に並んだ男の子から変な目で見られる。そして列の人数を数えていたおじさんから
 
「君、料理教室に参加する女の子は向こうなんだけど」
と言われた。
 
一方、料理教室の方に集合しようとしていた留実子は
「君、体験乗船の男の子は向こうの列に並んでもらわなきゃ」
などと言われている。
 
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千里と留実子は一瞬視線を交わした。そしてほぼ同時に
「ああ!」
という感じで両手をポンと打った。
 

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千里は料理教室の方に向かう。留実子は体験乗船の列の方に来る。お互いハイタッチして「これが平和だよね〜」「そちらもがんばってね」などと言って持っていた参加票を交換して入れ替わった。
 
そういう訳で留実子は千里の代わりに体験乗船に参加し、千里は留実子の代わりに料理教室に参加したのである。
 
料理教室では、新鮮な海の幸を使った鍋料理を作るということであった。体験乗船の子たちが沖合の網に掛かっている魚を持って来て、それを料理したら理想なのだが、時間の都合でお魚は既に水揚げされているものを使用する。
 
お魚を切る班と野菜を切る班に分かれるが、千里は
「あんた料理ができそうな顔をしている」
などと言われて、お魚を切る班に組み込まれる。
 
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千里はその中に見知った顔があったので会釈した。神崎さんの所のお姉さんである。確か中学2年か3年くらいではなかったろうか。
 
まずお魚を三枚に下ろしたいということになるが
「誰かやってみたい人?」
と言われた時、その神崎さんのお姉さんが
「村山さんできるよね? 鯖をさばいてるの見たことある」
と言われる。
 
「あら。鯖がさばけるのなら、鱒は楽勝ね」
などと講師の女性から言われる。
 
それで千里は前に出てきて、まずは鱒の鱗を落とす。
 
「そうそう。お魚は最初に鱗を落とさないとね」
 
その後千里は魚の腹に包丁を入れて内臓を取り出す。そして骨に沿って包丁を押し進めてきれいに半身を切り取った。反対側も同様にして包丁を入れてまた半身を切り取る。
 
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あっという間に三枚おろしのできあがりである。
 

「鮮やかだね!」
と講師の人が感激している。
 
「三枚おろしは、小学1年生の頃からやらされているので」
と千里は言う。
「漁師の娘なら、そのくらいできないといけないと言われて」
 
「いや、おとなでもできる子は少ないのよ。そうそう。鱒で気をつけないといけないこと知ってる?」
 
「はい。鮭や鱒にしろ、鱈とか鯖とかにしろ、寄生虫がいるので、それに気をつける必要があります」
 
と言って千里は今切り取った半身の途中をすぱっと切断すると、箸で細長い虫をつかんでみんなにみせた。
 
「きゃー」
と悲鳴を上げる子もいる。
 
「アニサキスです。気をつければ分かりますよ。だいたい内臓に寄生しているんですけど、腹部の筋肉に移動していることもあるんです。鱒の場合、ごくごく新鮮なものなら、結構大丈夫なんですけどね」
 
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と千里は平然として言う。
 
「よく知っているね。でもどうしてそこを切ったの?」
「ここにいる気がしたから」
 
講師の先生は悩んでいるが、神崎さんが
「この子、すごく勘が良いんですよ。だからすぐこういうのも見つけるんだと思います」
と言ってくれたので、何となくその場は収まってしまった。
 

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それで魚さばき班はその後数人単位で渡された鱒をさばくのだが、そもそも腹に包丁をしっかり入れきれない子が多い。そして何とか内臓を取り出したものの、その後うまく身と骨の間に包丁を入れきれない。
 
それで結局講師の先生や、千里、多少はできる神崎さんなどに手伝ってもらって何とか3枚におろすことができたものの、失敗して身がぐちゃぐちゃになってしまうケースも何件か発生していた。
 
「村山さん、すごくうまいね。きっといいお嫁さんになるよ」
などと何人もから言われて千里はとてもいい気分であった。
 

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3枚に下ろした後は切り身にして鍋に投入するが、切り身にする所はみんなできる。しかし切っている内に寄生虫を発見して「きゃー」と声をあげている子がけっこういた。
 
「これ気づかずにそのまま煮ちゃったらどうなるんですか?」
とひとりの女の子が訊くが
「寄生虫は熱に弱いから煮たり焼いたりすれば死んじゃうよ」
と言って講師の先生は笑っている。
 
「逆に冷凍する手もあるんでしょ?」
「ごく低温で冷凍すると死ぬ。業務用の冷蔵庫でないと無理だけどね。家庭用の冷蔵庫はあまり低温にならないから、あの程度では死なないんだよ。だからルイベとして売られているのは、そういう極低温にしたもの」
 
「そうだったのか。じゃ家庭用の冷蔵庫ではルイベは作れないんですね?」
「寄生虫にやられてのたうち回りたくなかったら、やめた方がいい」
 
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「寄生虫のいない鮭や鱒って無いんですか?」
「そりゃ、土のついてない大根は無いんですか?なんてのと似た話だね」
「そうかぁ」
 

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材料を切り始めてから一通り煮るまで、あれこれ騒ぎながらやっていたので2時間近く掛かったものの、ちょうどその頃には漁船の体験乗船をしていた男の子たちも港に戻って来た。結局体験乗船をしたのは15人しかおらず2艘の船で一度に乗ってしまったので、全員が2時間後に戻って来た。
 
それで海に出ていた男の子たちも入れて試食会となる。
 
「美味い、美味い」
と言って男の子たちは食べている。
 
留実子が千里の肩をポンポンと叩いた。
「るみちゃんお帰り。どうだった?」
「楽しかった。僕、漁師になってもいいかなあ」
「へー!」
 
「お前十分戦力になる。中学出たらすぐ船に乗らないかとか言われた」
「るみちゃんなら行けるかもね〜」
「千里はどうだった?」
「うん。楽しかった。私はやはりお料理が性(しょう)に合ってるよ。船なんかに乗らなくて良かった」
「たぶん千里は足手まといになると思う」
「うん。そんな気がする。だいたい私すぐ船酔いするし」
「それじゃ船に乗るのは無謀だな」
 
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千里たちの学校では3年生までは担任の先生が全教科を教えていたのだが、4年生からは音楽・体育・図工・家庭については専門の先生が教えるようになる。
 
千里たちを教えてくれた音楽の馬原先生は以前赴任していた学校では合唱部を率いて全国大会にも出たことがあるという先生で合唱の指導に燃えていた。
 
「パート分けするよ〜。4年生はまだ男子も声変わりしてないだろうから、高音部と低音部の二部に分けようね」
 
と言ってピアノを弾きながら「このあたりの声が出る子は高音部、このあたりの声が出る子は低音部」と言って分ける。それで音楽室の左側に低音部の子、右側に高音部の子と集まることにする。
 
留実子は「僕は低音部のようだ」と言って、そちらに移動する。千里も低音部に行ったのだが、それで「春の小川」を歌うと
 
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「高音部の中にオクターブ下で歌っている子がいる」
と言って、数人低音部に移動させる。田代君などがそれで高音部から低音部に移動になった。また
 
「低音部の中にもオクターブ上で歌っている子がいる」
と言って、こちらも高音部に移動になる。千里も
「あんた向こう」
と言われて低音部から高音部に移動された。
 
オクターブ違いというのはけっこう分かりにくいのである。
 

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「高音部は女子が多くて、低音部は男子が多いですね」
とひとりの子が言う。
 
「うん、それはまあ仕方ない」
と先生。
 
実際問題として高音部から低音部に移動されたのは全員男子で、低音部から高音部に移動されたのは少なくとも千里以外は全員女子であった。
 
「学習発表会の時は高音部の子にスカート、低音部の子にショートパンツ穿いてもらって、そろえようかなあ」
などと先生が言っているので
 
「低音部の女子がショートパンツ穿くのは別にいいですけど、高音部の男子にスカート穿かせるのはまずいですよ」
 
「うーん。面倒くさいなあ」
 
「私男の子がスカート穿いてもいいと思うけど」
などと蓮菜が大胆に発言するものの、
 
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「いや、それは保護者からクレームが来る」
とクラス委員の玖美子が言っていた。
 
実際高音部に入った数人の男の子も
「僕はスカートとか穿きたくない」
などと言っていた。
 
「村山はスカート穿きたいかも知れんけど」
とひとりの生徒が言うが
「あら、村山さんは女子だからふつうにスカート穿くでしょ」
と先生は言っていた。
 
 
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