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■娘たちの転換準備(3)

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その後、一緒にお風呂に入った桃川はあがって身体をバスタオルで拭いたしずかに言う。
 
「これ私の下着とパジャマ。サイズが大きくて申し訳ないけど子供用の服が無いのよ。明日買ってくるから、とりあえず着ておいて」
「うん。ありがとう」
 
パジャマは実際にはトップだけでネグリジェのように膝付近まで丈があり、ボトムは着る必要がない感じだった。パンティは伸縮性の高いタイプを渡したのだが、それだと何とかずれ落ちずに穿けるようだった。
 
それで自分の部屋に連れて行き、オーナーの妹・英代さんが用意してくれていた予備の布団にしずかを寝せる。
 
深夜遅かったこともあり、彼女はすぐにすやすやと寝入った。
 
桃川はしずかが着ていた服を何となく見ていた。服も下着も13号である。ネットで検索して確認すると、小学1−2年生くらいのサイズのようだ。確かに幼稚園年齢の子にしてはやや大きい方かも知れないなあという気がする。
 
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上着やズボンのタグの所にマジックで《しずか》と書かれている。幼稚園や保育所に通っていて、そこで着替えを間違えないようにするのなら、むしろ苗字を書く気がした。ということは名前を書いてあるのは、これは家庭内で姉妹のものと間違わないようにするためかも。
 
「お姉ちゃんか妹がいるのかな?」
と桃川は独り言を言うかのようにつぶやいた。
 
「でも家の中でも女の子名前で呼ばれてる訳??下着は女の子用を着けてたし」
 
と桃川はその問題に疑問を持った。親公認で女名前・女装で過ごしているのだろうか???
 

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翌日は朝一番に町内のしまむらに行って、女の子用の下着・服などを多数買ってきた。それでしずかもちょっと落ち着いた感じだ。お昼過ぎからはまた網走市に移動して音源制作をする。
 
「牧場に居る?それとも私たちのお仕事に付いてくる?」
「ママといっしょにいたい」
「よしよし」
 
それでしずかも連れてスタジオに行くが、作業中にしずかを見ておく係として虹子が名乗り出てくれたので虹子も入れて7人で行くことになった。星子は牛乳の配達をすると言っていた。虹子・星子は言語障害は持っていても聴覚や視覚・運動能力はごく普通で、知能も普通の人よりは低いものの、まあまああって、運転免許(AT限定)を取得しており、車で配達ができるのである。配る先はみんな虹子・星子のことを知っているので、言葉が話せなくても大きな問題は無いし、筆談で意思の疎通ができる。
 
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夕方くらいに網走警察署から連絡があり、しずかに該当するような行方不明の女の子の捜索願いは出ていないということであった。桃川はチェリーツインの他のメンバーに聞かれないように個室の中に入って警察の人に話す。
 
「このことは、私とあの子の約束で、私以外には今の所秘密にしているので、他の人には言わないで欲しいのですが、あの子、女の子として暮らしてはいるみたいなんですが、昨夜お風呂に入れて分かったのですが、肉体的には男の子なんです」
 
「え!?」
 
「該当するような年齢の男の子の捜索願いは出てませんか?」
「ちょっと待って下さい」
 
と言って確認しているようだ。
 
「やはり出ていませんね。北海道管内で小学生以下の子供の捜索願いは男女ともに現在出ていません」
 
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「分かりました。親が捜索願いを男の子として届けるか女の子として届けるか分からないので、どちらでも年齢が合いそうだったらチェックしてもらえませんか?名前も《しずか》はあるいは戸籍名ではない可能性もあります」
 
「了解です」
 

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札幌での旭川N高校と札幌P高校の女子バスケット部合同合宿は2010年1月17日まで続いていたのだが、千里と薫は1月15日夕方で上がらせてもらい、最終の羽田行きで東京に戻った。
 
「ここしばらくの千里のプレイ見てて、私もマジで頑張らなきゃと思った。私春くらいまでに鍛え直すよ」
と薫は言っていた。
 
「薫、こないだはまだちんちんあるとか言ってたけど、嘘でしょ?実はもう性転換終わっているんでしょ?」
と千里は訊く。
 
「まあ実際問題としてちゃんと終わってないと、女子選手として出場できないんだよ」
と薫。
 
「やはりね〜。いつ手術したの?やはり高校2年の頃?」
「秘密。だけど、千里だって、結局いつ性転換したのかよく分からない」
「実は自分でもよく分からない」
「千里ってよくそう言うよね。まあ明日は頑張ろう」
「うん。頑張ろう」
 
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それで翌日は早朝千葉駅に千葉ローキューツのメンバーが集合した。今回集まっているのは、西原監督と、浩子・玉緒・夏美・夢香・国香・菜香子・麻依子・千里・誠美・来夢・薫の11人の選手である。
 
「今日は谷地君は自分の中学の試合があって来られないんだよ」
と西原さんが言っている。
 
谷地コーチは中学の先生でバレー部の顧問をしているので、しばしばそちらが優先されてしまう。
 
「まあ人が少ないのはいつものこと」
「でも今年は今まで1度も不戦敗が無かったね」
 
「そうだ。でしたら国香さんをアシスタントコーチ登録できます?」
と浩子が言う。
「ああ、それもいいかも」
「本人はマネージャー登録のつもりだったんだけどね」
 
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年内でやっと退院した愛沢国香はまだプレイできる状態ではないのだが、本人曰く「賞品のイチゴをゲットせねば」と言って、マネージャーでいいからベンチに座らせてと言い、出てきたのである。
 
「じゃアシスタントコーチで」
 

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千里のインプレッサ、監督のモビリオスパイク、夢香のお父さんのプレマシーの3台に分譲して宇都宮まで走る。ただしプレマシーを運転しているのは玉緒である。夢香は運転免許を持っていない。
 
「私、バスケ自体はまだよく分かってないし、ドライバー専任でもいいよ〜」
などと玉緒は言っていた。
 
玉緒は千葉市内、夢香は成田市に住んでいるが、玉緒は昨夜のうちに夢香の家に行き、一晩泊めてもらって、車を運転して千葉市に出てきたのである。
 

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約2時間で宇都宮市の体育館に到着した。
 
キャプテンの浩子がエントリー表を提出してくる。9時にエントリーが締め切られトーナメント表が発表された。参加チームは14チームであった。つまり
 
1回戦→2回戦→準決勝→決勝
 
と行われるが2チームが1回戦不戦勝になる。組み合わせは事務局で代理抽選により決定しましたと書かれている。
 
「初戦で負けた所は交流戦をして、最低2試合はやることになっているみたいね」
「うちの相手は・・・」
 
と言って表を見ていた夏美が「げっ」と声をあげる。
 
「うーん・・・」
「あぁ・・・」
 
「今日は交流戦して帰るパターンかな」
などという声が出る。
 
初戦の相手がなんと関女1部の栃木H大学なのである。何度もインカレを制している超強豪校である。
 
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「テーブルオフィシャルも頑張らなきゃ」
「主審・副審することになったら、誰がする?」
 
「でもこんな強い所が何もこんな大会に出なくてもいいのに」
「出るにしても1回戦不戦勝にしてほしいな」
 
千里、麻依子、薫も腕を組んで考えていたが、やがて薫が言う。
 
「たぶん二軍とかじゃない?」
「私もそう思う。一軍のメンツをわざわざこんな大会に出さないよ。たぶん二軍の子たち、あるいは1〜2年の子に経験を積ませるために出たんだと思う」
と麻依子。
 
「H大学の二軍って、どのくらい強いんですかね?」
と夏美が尋ねる。
 
「まあ二軍でも実業団2部か1部の下位あたりとは良い勝負すると思うよ」
「なかなか厳しいな」
 
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今日のスケジュールはこのようになっている。
 
9:10-9:40,9:50-10:20 1回戦7試合
10:40-12:10 2回戦4試合
12:30-13:00 交流戦4試合
13:20-14:50 準決勝2試合
15:10-15:40 交流戦3試合
16:00-17:30 決勝戦
 
コートはメインアリーナに3つ、サブアリーナに1つ取られている。ただし決勝戦のみメインアリーナのセンターコートを使用する。また1回戦と交流戦は10分ハーフの20分の試合で、2回戦以降が10分クォーターの40分の試合である。但し試合を迅速に進めるためフリースローとタイムアウト以外では時計を停めない特別ルールでおこなう(決勝戦を除く)。
 
千里たちはサブアリーナで9:10からの試合になっていた。
 
最初2分間、練習時間が与えられたので、ローキューツのメンバーは多数のボールを入れてシュート練習をしたが、この時、千里、薫、麻依子、誠美、来夢の5人は、練習しているふりだけして、実は1本もシュートを撃たなかった。そしてむしろ向こうの様子を観察する。
 
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「ああ。分かった」
と向こうの様子を伺っていた薫が言う。
 
「今日のH大学のメンツは3年生・2年生のチームだよ」
と薫。
 
「ああ、やはり下級生の度胸付けですか?」
と玉緒が訊く。
 
「この時期、4年生はもう卒論の準備・発表とかをしている。つまり4年生は全員退部していると思う。だからこれは春からの新チームの試運転」
と薫は答えた。
 
「まさか・・・1軍」
と夏美が訊く。
「うん。バリバリの1軍だと思う」
と薫。
「ひぇー!!」
と夢香が悲鳴を上げる。
「うん。向こうはかなり上手い」
と千里も言った。
 
「やはり今年H大学はオールジャパン出場を逃したから、こういう大会に出て新しいチーム出発の景気づけにしたいんじゃないの?」
 
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「1年生は入ってないよね?」
と麻依子が言う。
 
「うん。2年生中心で、何人か3年生が入っている」
と薫。
 
「オールジャパン逃したのも3年生があまり強くなかったんじゃないかな。それで2年生中心のチームに転換したいんだよ、きっと」
と千里も言う。
 
「ということは、千里とか誠美の素性を知らなかったりして」
と麻依子が意味ありげに言う。
 
「ん?」
 

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こちらのスターターは 薫/千里/来夢/麻依子/誠美とした。
 
ティップオフする。向こうのセンターはどうも中国人のようである。身長が190cmくらいある。
 
その身長差で誠美より遙かに上でボールをタップ。H大学側が取って攻めあがってきた。ローキューツはマンツーマンで守る。
 
相手PGが今ティップオフしたセンターの人にパスする。中に飛び込んでくる。が来夢が巧みにボールを奪う。
 
麻依子にパスする。麻依子が高速ドリブルで攻め上がる。相手の俊足の選手がうまく麻依子を外側に押し出すように走り、中に入れないようにする。千里にパスする。すぐに撃つ。
 
入って3点。
 
試合はローキューツの先行で始まった。
 

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相手が千里の「素性」を知らないのは明らかであった。
 
相手は背の高い誠美にいちばん警戒している。また「上手そうな」オーラを放っている来夢にも結構な神経を使っている。
 
しかしいかにも「大したこと無さそう」に見える千里にはほとんど無警戒である。麻依子と薫にはまあまあの注意を払っている感じだ。千里がいきなりスリーを入れたものの、スリーなんてそう入るもんではないと思っている雰囲気である。
 
こちらがマンツーマンで守っているので、相手は容易に潰せそうと思ったようであるが、実際には全然潰れない。初期段階で、みんな結構中に通したので、簡単に中に進入できるように向こうは思ったようであるが、実は通したのは全部トラップで、実際にはほとんどシュートできなかった。
 
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それであっという間に4-12などというスコアになる。
 
この1回戦はタイムアウトも認められていない。
 
向こうの選手が薫のシュートにわざとファウルをしてこちらにフリースローを与え、そのタイミングで選手交代して顔を見ただけでも強そうな選手が3人入って来た。
 
向こうのキャプテンが大声でメンバーに指示を出している。相手の顔色が変わっている。ここまでやられた段階でこちらがとんでもない強敵だということに気づいたのである。
 
相手も安易に進入したりせず、スクリーンなどのコンビネーションプレイで点を取りに来る。また、こちらが千里や麻依子など足の速い選手を使って速攻をするので、相手は攻撃の時も誰かが浅い位置に居て、すぐ戻れるようにする。
 
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しかし近くからのシュートが得意な麻依子と遠くからのシュートが得意な千里の両方に備えるのはなかなか難しい。しかしファーストブレイクを防いでも、長身の誠美を使った攻撃は簡単に停められない。
 
結局前半は8-21という大差で終わった。
 

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インターバルの2分間も向こうは激しい議論をしていたようであった。そして向こうは最強布陣という感じで出てきて、なんとゾーンを敷いた。
 
しかしゾーンを展開していても、千里のスリーはゾーンと無関係に遠くから飛び込む。後半開始早々2発入れられた段階で、一番強そうな人が千里のマーカーになるボックス1に切り替えた。
 
しかし千里はそのマーカーを簡単に振り切ってスリーを撃つ。途中で別の人にマーカーは交代したが、全然千里を停めきれない。
 
最後はとうとう2人千里にマーカーが付いたが、当然他の部分の守りが弱くなる。そこに麻依子や来夢が容赦無く進入してはゴールを奪う。それでそちらを気にすると千里のスリーが入る。
 
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結局この試合は20-45という大差でローキューツが勝った。
 

試合終了後、向こうのメンバーが天を仰いだり、首を振ったりしていた。
 
「ちょっと鍛え直すぞ」
「今年の春休みは地獄の合宿」
 
などという声が聞こえていた。
 

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娘たちの転換準備(3)

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