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■娘たちの努力の日々(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-10-23
 
1月5日。
 
V高校の宿舎を借りるのは今日まで(正確には明日の朝まで)になっている。
 
「じゃN高校さんは東京合宿は今日までなのね?」
「P高校さんも今日帰るんでしょ?」
「私たちは10日の決勝戦まで残るよ」
 
などとジャブをかわしながら、この日も朝食前に練習試合をした後、N高校は午前中みっちりと練習、P高校は休憩とした。
 
早めのお昼を食べてから代々木に行く。N高校のメンツは第1試合を見ていたが、P高校のメンツは各自軽いシュート練習などをしたり、仮眠したりして時を過ごした。
 
15時からP高校の試合が始まる。今日の相手はWリーグ1位のブリッツ・レインディアである。
 
P高校のメンバーは全力で戦った。
 
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純子がどんどん中に進入してゴールを奪い、秋子はスリーを頑張って撃つ。猪瀬も小平も歌枕も、並木も工藤も頑張った。
 
結果は94-48。完敗であった。
 

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試合終了後、純子は相手チームのフォワードの人から称賛されるかのように数回背中を叩かれたものの、軽く会釈しただけで、半分意識が飛んでいるかのような顔でベンチに戻り、そのまま倒れたので慌ててみんなで介抱していた。
 
それを客席で見ていた絵津子がつぶやいた。
 
「なんで私あそこに居ないんだろう」
 
それで千里は言った。
 
「今年のインターハイでは優勝して、あそこに行きなよ」
 
「はい」
と絵津子は力強く答えた。
 

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この日の結果。
 
エレクトロウィッカ○−×ビューティーマジック
ブリッツレインディア○−×札幌P高校
 
この結果9日の準決勝は、サンドベージュvsレッドインパルス、エレクトロウィッカvsブリッツレインディアで行われることになった。
 
P高校はN高校と一緒に今日で帰ることになる。
 
「N高校さんは冬休み後半、どこで合宿するの?」
と十勝さんが宇田さんに尋ねた。
 
「どこも空いてなかったので、結局校内の研修施設を使います。お風呂もあるし、体育館は朱雀をまるごと使えるし」
と宇田先生は答える。
 
「うちに来ません?こちらも研修施設が使えるし、うちの体育館“光”も24時間使えますよ」
「いいですね!」
 
そういうわけで、冬休みの後半の合宿はP高校の施設を使って、またN高校とP高校が合同ですることになった。
 
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V高校に戻ってから、N高校・P高校のOGがやってくる。坂本さんが提唱していた「リベンジ」のためのOG対決である。前回とは少し顔ぶれが変わっている。
 
N高校 PG.海原敦子(神奈川J大学) SG.村山千里(Rocutes)白浜夏恋(東京LA大学)SF.麻野春恵(KQ鉄道)宮原和希(1000カラバッシュ)
PF.若生暢子(H教育大旭川校)佐々木川南(千葉K大学)歌子薫(Rocutes)山口宏歌(AS製薬)富士涼花(BC運輸)C.花和留実子(H教育大旭川校)
 
P高校  PG.田宮寛香(サンドベージュ)森原絵奈(レピス)SG.石川里夏(NF商事)SF.佐藤玲央美(JI信金)片山瑠衣(神奈川J大学)岡田琴音(赤城鐵道)PF.宮野聖子(千葉K大学)長井浩水(BC運輸)坂本加奈(レピス)
堀江希優(KL銀行)赤川佐恵(Y大学)C.堀江多恵(MS銀行)本郷充子(C大学)
 
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N高校側では睦子は年内で北海道に戻っており、田崎舞は卒業準備のため不参加。しかし1996年にN高校がインターハイ・ウィンターカップに出場した時の中心選手であった富士・宮原のコンビが参加した。富士はP高校の長井浩水のチームメイトで「あんたたち何面白いことやってんのさ?」と言って、親友の宮原を誘っての参加である。
 
P高校側では竹内・徳寺・河口の北海道組が札幌に戻っているが、リベンジ宣言をした坂本が同僚の森原絵奈を連れてきて、森原ひとりではガードが足りないので関東周辺に住んでいる田宮寛香に声を掛けた。また堀江希優も妹から話を聞き「出る出る出る」と言って出てきた。彼女はローキューツの創立者だが、現在はKL銀行で熊野サクラの同僚になっている。来春からは銀行合併により佐藤玲央美のチームメイトになる予定だ。
 
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「田宮さん、チームの方はいいんですか?」
とみんなが彼女を見てびっくりしている。彼女は昨日のオールジャパン準々決勝で勝ち残ったサンドベージュの選手である。
 
「今日は試合無かったしね。実戦やった方がいい練習になるから許可取って出てきた」
と彼女は言っている。
 
「村中さん、私の作ったチームを盛り上げてくれているみたい」
と言って堀江希優が千里に声を掛けてきた。
 
「どうも。でも関東総合は準決勝で岡田さんたちのチームに負けてオールジャパン出場を逃してしまいました。ついでに村山です」
 
「あ、ごめんごめん。私、固有名詞覚えるのが苦手なのよ。でもあのチームも結果的には今年が結成1年目みたいなものみたいだし。それで関東ベスト4は充分凄いと思うよ」
 
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「そうですね。これまでは大会当日5人揃わなくて不戦敗みたいなのが多かったみたいなのが、それだけは無くなったから。でも私は不良部員なんですよ。結構練習サボってるし。一所懸命やってるのはL女子校出身の溝口麻依子で。でも堀江さんがKL銀行に入ったってサクラから聞いた時はびっくりしました」
 
「私も実は練習が嫌いなんだけど、Wリーグは練習自体もお仕事だから、いくら試合で活躍しても練習サボってばかりいて遅刻も多い私は評価低くて、結果的に解雇されたから、マイペースで練習できるようにとローザと2人でローキューツ作ったんだけど、お金は別途稼がないといけないから、チンパンジー並みの知能と言われた私でもできる仕事を探して運送会社に入ったら、そこの仕事が忙しくて忙しくて、今度は練習サボるんじゃなくて物理的に練習にも試合にも出て行けなくなっちゃってさ」
 
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センテンスの長い人だなと千里は思った。
 
ローキューツ最古参の浩子から聞いたところでは、堀江希優は運送会社で最初荷下ろしなどの単純作業ということで雇われたものの、
 
「運転免許持ってんの?だったら市街地配達・集荷の2トントラック運転してよ」
と言われ、そのうち
 
「大型免許を取らない?」
と言われて、大型を取ったら即、全国を走り回る仕事に投入されてしまったらしい。
 
ちなみに長距離に投入されてからしばらくして、新人で入って来た女性ドライバーが可愛いフリルのついたブラウスにオーバースカート付きパンツを穿いているので
 
「あ、その制服可愛い。私も着たい」
と言ったら
「男がフリルのついた服とかスカートは穿かんだろ?」
と所長から言われたらしい。
 
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それでふと自分の健康保険証を見てみたら性別・男と印刷されていたとか。
 
「希優さん、いつの間に性転換したんです?」
と浩子が訊くと
「自分でも手術を受けた覚えは無いんだけど、男の方が給料いいみたいだったから、そのまま男で通していた」
などと希優は言っていたらしい。
 
「女子トイレ使って悲鳴あげられたりは?」
「それはない。どうも男装女子と思い込んでいた人もあるみたいで」
「希優さん、男装いけますよ」
「あまり唆さないで」
 
などといった会話をしたと浩子から千里は聞いていた。
 

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「まあ、ふつうの会社に勤めていたらそうなりますよ。日本の会社って24時間365日勤務を要求する所多いし。でも春からはそのローキューツ共同設立者のローザさんとまたチームメイトになるんですね」
と千里。
 
「うん。だから来年春からのうちとローキューツさんは親族チームみたいなもんだね」
と希優は言った。
 
来年春ではなく今年の春なのだが、まあ年明け早々はこの程度の混乱はありがちである。
 
「ええ。社会人選手権で会いましょう」
「うん。山村さんも頑張ってね」
「すみません。村山です」
「ごめーん」
 
しかしこれだけ固有名詞を覚えきれないのに、よく宅配とかの仕事が務まったものである。でも、免許が取れたということは、さすがにチンパンジー並みの知能ということはないであろう。
 
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ともかくもそれで千里は希優と力強い握手をしてから、試合を始めた。
 

前回は20分で打ち切ったが、今回は40分やることにする。ただし1人の選手を2ピリオドを越えては使わないようにしようということにした。それで千里は2,4ピリオドに出て、1,3ピリオドのSGは夏恋が務めた。ポイントガードも敦子と宮原さんが交代で務めた。
 
敦子は高校時代はスモールフォワードだったのだが、J大学でポイントガードとしての才能が開花したようである。関東一部のJ大学で1年生ながらロースターの末席を占めている。
 
試合は白熱した。聖子からのロングパスを玲央美がアリウープでゴールに叩き込むようなスーパープレイを見せると、千里も暢子とのコンビネーションで鮮やかに得点を奪う。この2人のプレイは暢子のシュートになる場合は近くから、千里のシュートになる場合は遠くからなので、P高校は守りにくい。オールジャパンで純子・秋子が見せたコンビネーションに似ているが、この遠近両用作戦自体については暢子・千里の方が格上で、これを研究していたはずの聖子たちが停めきれない。
 
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2時間近い熱戦の末、最後は暢子が残り時間1秒でゴールを決めて70-71でN高校が辛勝した。
 
「あんたたち無茶苦茶強いな」
とサンドベージュの田宮さんが言う。
 
「P高校の合宿は何日まで?」
「1月17日までです。18日から授業再開です」
「じゃ17日に再試合」
と坂本加奈が言うが
 
「入れ替え戦があるから無理」
「こちらカップ戦に出る」
「うちは公式戦開始」
 
などといった声が出て、どうも参加者の確保が難しいようである。
 
「ナカちゃん、無理せず今度は夏に再戦しようよ」
と田宮さんが笑いながら言っている。
 
「じゃ、それまでに各自鍛錬を積んで、今度はダブルスコアでN高校を倒そう」
と坂本は言った。
 

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「ところでナカちゃんは女をやめると言っていたけど、いつ性転換手術を受けるの?」
などと山口宏歌が言う。
 
「男になるのは構わないけど、女子の試合に出られなくなるからなあ」
「P高校伝統の『女装』写真を撮るというのは?」
と田宮さん。
 
「いやだ。あの格好は嫌だ」
 
『女装』を知らない、N高校のメンツが顔を見合わせる。N高校で『女装』の真相を知っているのは千里くらいである。
 
「じゃ代わりに金太郎の格好の写真を撮るといいうことで」
「う、負けたし、そのくらいは頑張ろうか」
 
坂本加奈の『金太郎』写真は、プリントしたものを『撮影禁止』ということでN高校のメンツにも閲覧されたが、みんな大笑いしていた。
 
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「しかしやばいな。次負けたら、私が金太郎にならんといかん」
と山口宏歌は言っていた。
 

試合後、夕食を取ってから、みんなで一緒にきれいに体育館や宿舎の掃除をした。
 
でもその後も純子や希望、絵津子や久美子などが練習していた!
 
「あんたら、もう掃除したんだけど?」
「この練習終わったら、また掃除します」
 
翌朝、各部屋の掃除をして朝御飯を食べた後、最終的な片付けをし終わったのがもう8時半である。みんなでお世話になったV高校の職員室に行き、挨拶をした。
 
そのあと羽田に向かい、取り敢えずN高校は旭川行き、P高校は札幌行きに乗る。N高校のメンバーは学校にウィンターカップの結果を報告してこなければならない。
 
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娘たちの努力の日々(9)

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