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■娘たちの再訓練(7)

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U19日本代表の第1次合宿は7月6日に終了した。次の合宿は7月16日から三重県で行われる。この日から月末までWリーグのサマーリーグが行われるので、U19日本代表はこれの最初の3日に特別参加するのである。
 
なお、それに先行して片平コーチ(愛知J学園高校)が主宰して7月14-15日にJ学園大学との合同ミニ合宿を同大のスポーツ研修施設を使って行うことになっていて、任意参加ということにしたのだが、12人全員が参加を希望した。
 
また、しばらくバスケから離れていて完全に勘が戻りきっていないサクラと華香については、その高田コーチが
 
「少し基礎を鍛え直そう」
と言って、U19合宿の終わった翌7日から片平コーチ主宰の合宿が始まる前日の13日までの7日間、関東近郊で「秘密の特訓」をすると言っていた。
 
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その2人以外の多くのメンバーは13日までは各自のチームに戻って練習をするようであったが、千里と玲央美は行き先が無い。
 
千里はローキューツがあるものの、正直まともに練習相手になるのは麻依子くらいだし、そもそもそちらには元の時間の流れの自分が居る。玲央美はまだミリオンゴールド加入前である。
 
また王子も自分のチームはアメリカなので「自分のチームに戻って練習」というのができない。それで、どうしようか、などと言っていたら山形D銀行所属の早苗が
 
「適当な練習場所無いんだったら、うちに来る?」
と誘ってくれたので、
「行く行く」
と言って、そちらの練習に参加させてもらうことにして、インプレッサはNTCにそのまま置きっ放しにして(世界選手権終了まで置いておいてもいいよとNTCの事務の人に言ってもらった)、新幹線で早苗と一緒に山形に向かった。(王子の新幹線代は千里が出してあげた)
 
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早苗が話してくれて、山形滞在中はD銀行の女子独身寮の空き部屋に泊めてもらえることになった。寝具もその間レンタルする。
 
「でもよく空きがあったね」
と千里が言った。4人は新幹線を山形駅で降りて、タクシーの相乗りでそちらの寮に向かうところであった。
 
「空いてるのは築65年のいちばん古い寮だから」
「65年!?」
「戦後間もない時期に建てられたものでさ。トイレ・流しが共同だし、お風呂は無いから銭湯に行かないといけないし」
「なるほどー。それで人気が無い訳か」
「あとね」
 
「ん?」
「出るという噂があるから、入居者が居着かないんだよ」
と早苗が言うと
 
「出るって、水牛とか熊とかですか?」
と王子が訊く。
 
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「何かアメリカ的な発想だ」
と玲央美。
「まあ日本人ならキツネとかタヌキですか?と訊く所かな」
と千里。
 
「いや、出ると言ったらお化けとか幽霊とかだよ」
と早苗が言う。
 
「そういうのが出るんだ?」
「目撃したという例は後を絶たない」
「ふむふむ」
 
「でも一週間くらいなら何とかなるでしょう」
「そうだねー」
 

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やがてタクシーがその寮に着く。
 
「わぁ・・・・」
と言って千里はその寮を見つめた。ふと隣を見ると玲央美が嫌そうな顔をして見ている。ああ、やはりレオちゃんって霊感あるよね?と思う。
 
「私たちが泊まる部屋って、どこ?」
「3階の左端、301-303を使ってということ」
「なるほどー」
 
と言ってから千里は《こうちゃん》に頼む。
『ね、聞いた?301-303だって。ちょっと《お掃除》してくれない?』
 
『いいけど。大漁だな。青龍、玄武、お前らも手伝ってくれ』
『よっしゃ』
 
それで3人は飛んで行って「処分」を開始した。3人が飛んで行くのを玲央美は目で追うようにしていた。
 
入口の所で寮母さんに声を掛ける。
 
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「はいはい。佐藤さん、村山さん、高梁さんですね」
と寮母さんは言ってから
 
「あれ?女の子3人と聞いてたから許可したんだけど、男性は困るんですけど」
などと言う。
 
「ん?」
と言って3人はお互いの顔を見合わせる。
 
「えっと、おばさん、誰が男性に見えます?」
「男の人じゃないの?」
 
「ここにいる4人は全員女ですが」
「ホントに!?」
 
「男、男と15年言われ続けてましたが、取り敢えず高校は女子制服で通いました。村山です」
「しばしばオカマさんかと思われている気もしますが、出生届けは女で出ていたようです。佐藤です」
「男子と平気でオナニーの話はするけど、残念ながらちんちんを持ってないので実践してみることができません。高梁です」
 
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「ごめんなさい!」
 
玲央美の提案で、左端の301号を玲央美、302を王子、そして他の寮居住者との境界になる303を千里が使うことにした。
 
「たぶんこれが平和的・・・だよね?」
と玲央美。
「うん。みんなが安眠できるようにするから任せといて」
と千里。
 
「えっと、玲央美さんと千里さんの間にはさまれるって、私、監視されるのかな」
と王子は不安そうだが
 
「王子ちゃんの安全のためだよ」
と玲央美は言った。
 

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鍵を預かり、とりあえず各自荷物を置いてくる。それで日用品や着替えなどを買いに出ることにするが、玄関の所で集合すると玲央美が
 
「きれいになってた。ありがとう」
と千里に言った。
 
お店なども分からないだろうということで早苗が案内して街に出る。王子は寝てるという話だったので、千里は念のため《げんちゃん》を彼女の守りに付けておいた。でも「何か欲しいものがあったらついでに買って来てあげるよ」と言ったら「じゃ、これとこれと・・・」と言って結構大量のリクエストがあった。
 
「すみません。代金もちょっと貸しててください」
「うん。それはOK。気にしないで」
「王子ちゃん。あまり現金持ってないなら取り敢えず10万くらい貸しておこうか?」
「いや、私、目の前にあるお金は全部使ってしまう性格だから、もしよかったら必要な時に貸してください」
「なるほどー。じゃ要る時は遠慮無く言ってね」
「はい、すみません」
 
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千里にしても玲央美にしても、偶然手に入った遠征用のバッグを先の合宿中は使っていたものの、やはり衣類が不足するので海外旅行することを想定したバッグとともに買い求めた。他に非常食、筆記用具、携帯の充電用の装備、衛生用品、そのほか洗濯物を干すタコ足や傘、食器など、一週間ここで生活するのに必要な細々としたものである。
 
「ふーん。千里もナプキン買うんだ?」
と玲央美が言う。
「まあ1ヶ月あれば、たいていの子が途中で生理来るよね」
と早苗。
 
「次の生理は下旬くらいに来そうなんだよね
と千里は言う。
「それ選手権にぶつからない?」
「どうかな?」
と言って千里は《いんちゃん》の方に意識をやった。
 
「あ、調整するから、選手権の直前に来るみたい」
と千里。
「ああ。ピルか何かで調整するの?」
と早苗が言うので
「まあ似たようなものかな」
と千里は答える。
 
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「ふむふむ」
と玲央美はどうも分からんという顔で聞いている。実際には《いんちゃん》がこの日、7月7日に強制排卵を起こしてくれたので千里の生理は7月21日に来ることになる。
 
「でも終わった後はこの手の荷物、どうすればいいんだろう?」
「NTCにそのまま駐めさせてもらってる私のインプレッサに放り込めば一緒に《元の所》に持って行ける気がする」
「なるほど、そうさせてもらおう」
 

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玲央美が「予備のバッシュを買っておきたい」と言うので、千里も付き合ってもう1足買っておくことにした。早苗も自分は買わないけど見るだけと言ってお店まで付き合ってくれた。
 
「え〜? 千里って1つのバッシュでずっと通してたんだ?」
と玲央美と早苗が驚く。
 
「玲央美は同じもの2〜3足を日々履き換えてたのか?」
と千里も驚く。
 
「うちの三山さんも玲央美と同じように2足を1日交代で使ってたよ。私は練習用と試合用を分けていた」
と早苗が言う。
 
「うん、そういう人も多い」
と玲央美。
「練習には耐久性のよい人口皮革のもの、試合には性能の良い天然皮革のもの」
と早苗。
 
「バッシュって痛みやすいから。特にナイキは痛みやすい」
と玲央美。
 
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「あ、それはちょっと感じてた」
と千里。
 
「NBAプレイヤーで愛用者が多いけど、NBAの人たちって1試合で1足使い潰すらしいね」
と早苗。
 
「うっそー!」
と千里は驚く。
 
千里が中学3年間で1足、高校1年春から3年夏まで1足で間に合わせていたと言うと、玲央美も早苗も
「うっそー!!」
と言っていた。
 
「千里、アジア選手権とウィンターカップの成績がそれまでより上がったのは、新しいバッシュを使ったせいもある」
と玲央美が言う。
 
「あ、それは感じた。あのバッシュ、凄くクッション性が良かったのよね」
「いや、それより古いバッシュがかなり性能劣化していたと思う」
「う・・・」
 
「そんなに使ってたらインソールも痛んでいるし、靴底の凹凸も取れてしまっていたのでは?」
「千里滑ったりしてなかった?」
「うーん。氷の上を歩くのと同じ要領で足をまっすぐ着地すればそんなに滑るもんじゃないんだよね。よく滑ってたのはむしろ暢子だな」
「ああ、暢子ちゃんの滑りは試合の勝負所で出たね」
 
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「でも普通の部活している子でも半年か1年、トッププレイヤーは3ヶ月で交換するのが常識だよ」
「そうだったのか」
 
それで結局玲央美のお気に入りというアシックスの製品から玲央美はクッション性重視のタイプ、千里は動き重視のものを選んだ。玲央美と早苗に勧められて千里も同じ物を2足買った。
 
「私、今年の春にはアシックスの****を買ったのよね〜」
「うん。それもシューターには良いと思うよ。日本人女性の足の形を研究して作られているから足にも優しいし。でもこちらの方がよりグリップ性がいいから、両方履き心地を比較してみるといいよ」
 
と早苗は言っていた。
 

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寮に戻ると《げんちゃん》が千里の所に戻って来るが
 
『ここはとっても食べ甲斐がある』
などと言っている。
 
『お留守番、ありがとね』
『取り敢えずこの3部屋のメンテだけしてた。どんどん妖怪が流れて来る』
と《げんちゃん》。
 
『この町自体が奥羽山脈と朝日山地に挟まれた盆地にあるから色々なものが流れて来やすい。特にここは周囲より低いし川のカーブの内側だから集まりやすい』
と《とうちゃん》が言う。
 
『川のカーブの外側が凶というのはみんな意見が一致するけど内側は意見が別れるよね』
『良い気も悪い気も集まりやすい。商売やるなら何とかなるけど住宅としては微妙だと思う』
 
『霊道とかも通ってるの?』
『通ってるけど、この西側3部屋にはあまり関係無い。東側の方の住人は幽霊で悩むだろうな』
『ふむふむ』
『こちらの西側の方に寄ってくる奴は脅かしたりして悪戯する程度の小物だから住んでても命には別状無い』
『でも安眠できなかったりして』
『ああ、疲れやすいかもね』
 
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実際あとで寮母さんに尋ねてみたら2階と3階の東側3部屋にはもう5年くらい人を入れていないという話であった。
 
「私もあのあたり掃除してて幽霊見たことあるんですよ」
と寮母さん。
 
「あそこ霊道が通ってるから絶対人を入居させちゃいけませんよ。自殺者が出ますよ」
と玲央美が言った。
 
「あら、あなたそういうの分かるの?」
「私、小さい頃は霊感少女だったんですよ。思春期過ぎるとさすがにあまり見えなくなりましたけど、あれだけ強烈なのは分かりますよ」
と玲央美が言っている。
 
「じゃ、やはりあそこには人を入れない方がいいんだね」
「ですです」
「実は6年前と10年くらい前にも自殺した子がいたのよ。その6年前の事件の時に、葬儀をしてくれたお坊さんから、この6部屋には人を住まわせてはいけないと言われて」
 
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「なるほど、なるほど」
 
「ある程度霊感のある人なら、3日で退去すると思うけど、そういう勘が無い子だと、気づかない間に取り憑かれてってのがあるよね」
と千里も言う。
 
「うん、それが怖い」
と玲央美は言った。
 
「私、幽霊なんて見たことないなあ」
と王子が言うが
 
「うん、王子ちゃんみたいな子がいちばん危ない」
と玲央美は言った。
 

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