広告:性転換―53歳で女性になった大学教授-文春文庫-ディアドラ・N-マクロスキー
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■娘たちの衣裳準備(11)

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千里が付き添い、信子母娘が病院を訪れ、診察を受ける。
 
「ほんとにあなた、11月中旬まで男の子だったの?」
と泌尿器科医の前川先生から言われた。
 
信子には男の子だったような痕跡が全く存在しないのである。どこをどう見ても女の子の身体であった。卵巣や子宮も普通に存在しているという話に信子は「やはり」と思ったが、母は超絶驚いていた。
 
MRIで検査しても完全に女性器が存在している。但し性染色体はXYであった。信子は精神科の鞠村医師から尋ねられた。
 
「あなた自身は男に戻りたいの?このまま女として生きたいの?」
 
信子は答えた。
 
「私は小さい頃から、女の子だったらよかったのにと思っていました。ですから今は天国の気分です。このまま女の子として生きて行きたいです」
 
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彼女なりにこの1ヶ月半悩んだのだろうが、こういう結論に達したのだろう。
 
信子の母も、病気であれば仕方ないし、本人が女として生きていきたいというのであれば、それをできるだけ支援したいと、信子に理解を示してくれた。
 
「でしたら、半陰陽だが医学的な性別は女であるという診断書を書きますよ」
「お願いします」
 
そこで医師の診断書をもとに性別の訂正+名前の変更を家庭裁判所に申告することにし、その作業を弁護士に依頼することにした。
 

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信子と母は高岡市内のホテルに1泊し、1月7日に東京・長岡に帰っていった。千里と桃香も10日(金)には千葉に戻った。
 
高岡8:44-10:54越後湯沢11:04-12:20東京12:36-13:13稲毛13:22-13:24西千葉
 
それで千里と桃香が取り敢えずアパートに戻ると、アパートの2階通路にドーンと大量の荷物が積み上げられており、そこに暖かそうなダウンコートを着て毛糸の帽子にマフラーをした女性が段ボール箱の上に座っている。
 
「これは・・・・」
と桃香が戸惑うように声をあげる。
 
「暢子、今日着いたんだ!」
と千里が笑顔で言う。
 
「私自身は、はまなすと新幹線を乗り継いで11時前にここに着いた。荷物は1時頃受け取った」
と暢子は言っている。
 
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札幌22:00-5:39青森5:43-5:48新青森6:17-9:23東京9:43-10:19稲毛10:32-10:34西千葉
 
「わあ。だいぶ待たせたね」
「いや万が一にも私が着く前に荷物が着たら受け取れないから余裕を持ってたんだよ」
「なるほどー」
 
「えっと・・・。千里、この人はどなた?」
と桃香が尋ねる。
 
「高校時代の友だちなんだよ。アパートが見つかるまで泊めてあげることにしたから」
と千里は頭を掻きながら答えた。
 
千里もまさか暢子がこんなに大量に荷物を持ってくるとは思いも寄らなかった!
 
「あ、よろしくお願いします。若生暢子です。性別自己認識は女性、肉体的な性別は女性、戸籍上も女性で、恋愛対象は男性ですから、夜中に襲ったりすることはないと思いますので、よろしくお願いします」
と暢子。
 
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「うーん。。。私もよくガールフレンド連れ込んでるから、文句言えん」
と桃香は言った。
 

「ところで千里、頼みがある」
と暢子は言った。
 
「なあに?」
「トイレ貸してくれ」
「それは早く使って!」
 
暢子は賢明にもドアの前には荷物が置かれないようにしていたので、簡単にドアを開けることができて、暢子はとりあえずトイレに駆け込んだ。
 
その後、荷物を中に運び込んだが、桃香が
「これは男手で無いと無理かも」
と言ったのに対して、千里と暢子が
「大丈夫、大丈夫」
と言って重たそうなスティールラックとかも2人で持って搬入したので、桃香は驚いていた。
 
結局2時間ほどで荷物を運び入れ、そのあと3人でファミレスに行った。
 
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「でも4畳半の部屋が荷物で埋まったな」
と桃香。
「だったら6畳の方に布団3つ敷く?」
と暢子。
 
「でも桃香は真利奈ちゃん所で寝るよね?」
と千里。
「まあその方が多い」
「私も某所で寝ることが多い」
「なるほど」
 
「だから、暢子、6畳の部屋のど真ん中に寝てていいよ」
「ほほお。では遠慮無く」
 
「千里が最近泊まっている所って彼氏の所?」
と桃香が訊く。
 
「私はもう1年半以上セックスしてないけど」
と千里が言うが
 
「それ絶対嘘だ」
と桃香は言った。暢子も腕を組んでいた。
 

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夕飯は千里も桃香も“都合があるので”と言って離脱していったので暢子は取り敢えずスーパーでお総菜を買ってきて、のんびりと夕食を取り、6畳の真ん中に布団(自分の荷物からは出て来ないので千里のを借りる)を敷いてぐっすりと眠った。
 
桃香はこの日は実は季里子の家に行っていた。季里子の両親が熱海まで1泊旅行に行っているので、その隙に堂々と泊まり込み、季里子の子供・来紗ちゃんとも遊んでいた。実を言うと、桃香はここ1年ほど月1回くらい季里子と会っていた。但し季里子が妊娠・出産としていたのでセックスは自粛してしていない。
 
「この子にあんたのパパは桃香だって教え込んじゃおうかな」
「歓迎、歓迎。自分の子供と思って可愛がるよ」
 
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と言って桃香は来紗ちゃんの頭を撫でていたが、ふと気付いたように言った。
 
「養育費、取り敢えず月1万でもいい?」
 
「就職するまではそれでいいよ」
と季里子。
「済まん!」
と桃香。
 
「でもその指輪、つけててくれているのね?」
と季里子は桃香の右手薬指の指輪を見て言った。
 
「あ、えっと・・・」
 
「私、もらったルビーの指輪、こないだつけてみようとしたけど、妊娠出産したせいか入らないんだよ」
 
「じゃ、今妊娠中の子供が産まれて少し落ち着いた所で指輪調整しない?」
「それもいいね。じゃ桃香に返した結婚指輪も一緒に調整で」
 
「そうだね」
と言いながら桃香は焦っていた。その返してもらった指輪は融かして千里への指輪に再利用してしまったのである。
 
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同じデザインの指輪をもう一度、作らなきゃ!
 

季里子は2012年6月に桃香と別れさせられた後、お見合いをして9月に結婚。すぐに人工授精して妊娠。2013年6月に来紗を産んだ。更に昨年11月に2度目の人工授精をして現在妊娠中である。しかし彼とは妊娠成功が確定した所で円満離婚してしまった。
 
結局彼は季里子が男性とのセックスを好まないことから、
「だったら僕の種だけ使うといいよ」
 
と言って、季里子とは1度もセックスしなかったのである。初期の頃何度か同衾はしたが、キスはしたものの季里子の身体には手を付けなかった。正確には乳首は舐めてあげたものの、性器には触らなかったし、季里子が男性そのものに嫌悪感を持っていることに配慮し、彼女の前では自慰もしなかったし、男性器も見せなかった。
 
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なお、子供の養育費については、彼はちゃんと毎月送金すると言ったのだが、季里子が断った。
 
「これはAID(非配偶者間人工授精)みたいなものだから、夏樹君には責任は無いよ。お父ちゃんが未婚のまま子供産むこと許してくれなかったし、病院も未婚のままでは人工授精してくれないから便宜上結婚したようなものだもん。将来夏樹君が結婚する時に離婚歴があるの?と言われたら、ただの契約結婚だっことを私が証言する」
 
「うん。いいけど、ボクは季里子ちゃんのことが好きだよ」
と言って彼は季里子にキスをした。
 
「ありがとう。私も夏樹君がもし女の子だったら好きになっていたかも」
 
それでふたりは笑顔で手を振って離婚したのである。なお、出産までの病院代や出産費用は自分が出させてくれと夏樹が言ったので、季里子もそれは言葉に甘えることにした。
 
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一方千里のほうは10日夕方、新横浜駅で大阪から新幹線で移動してきた貴司を迎えた。その日はそのままホテルアソシアで一緒に泊まり、11日は一緒にオールジャパンの準決勝を観戦した。
 
「ジョイフルゴールドは凄いな。社会人から準決勝まで上がってくるなんて」
「だてに日本代表を2人も出してないよ」
「高梁さんは多分今日本のバスケット女子でいちばんの実力者では?」
「かもね。今はアメリカの大学に在学中だけど、大学を出たらWNBAにという話になるだろうね」
「その場合、こちらとはどうするんだろう?」
「たぶん兼任。日本の試合はオールジャパンだけに出る」
「それも凄いな」
 
今年はジョイフルゴールドは実力のサンドベージュとの激しい戦いの末、僅差で破れた。
 
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千里と貴司はその日も新横浜のホテルアソシアに泊まったが、千里は貴司が寝ている最中の深夜1:00、《すーちゃん》と入れ替わりでスペインに行き、今年最初の試合(日本時間の1/12 2:00-4:00)に出場した。終わった後は日本に戻り、ホテルの部屋のシャワーで汗を流し、裸のままベッドの中に潜り込み、貴司のそばで寝たので、朝起きた時、貴司がびっくりしていた。
 
「何で裸なの?やっちゃいたくなっちゃう」
と貴司は戸惑いながら言う。
 
「30秒間だけ私の身体を自由にしていいよ」
「自由にしてもいいならセックスしてもいい?」
「30秒以内に出して抜く自信があったら」
「挑戦してみようかな」
「挑戦して30秒で終わらなかったら、おちんちん切断ね」
「やめて〜」
 
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貴司はまだちんちんは無くしたくないということで、挑戦を断念したものの30秒間クンニをしてくれた。千里は久しぶりの快感に脳逝きしてしまった。凄く気持ち良かったので、貴司も手で逝かせてあげた。
 

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12日はお昼頃まで部屋の中でイチャイチャし続けた。その後、一緒にお昼を食べてから代々木に移動し、オールジャパンの女子決勝戦を見た。
 
その後はふたりでインプレッサに乗って常総ラボに移動した。
 
「今日は誰も来てないみたいね」
などと言いながらふたりで夜遅くまで練習した。
 
「貴司なまってる」
「ごめーん。年末年始全然練習できなかったから」
「就職活動で?」
「**と**を訪問してみたんだけどいい返事もらえなかった」
「**は****を取ることになっているんだよ。だからスモール・フォワードは要らない」
「そうだったのか!」
「貴司、情報網が弱すぎる」
「うむむむ」
「貴司、来週くらいに**に行ってみない?」
「**?でもあそこは***さんがいるし」
「引退するみたいだよ」
「マジ?」
 
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それで貴司は行ってみようと思ったのだが、またまた海外出張が入ってしまい、貴司は訪問することができなかった。その間にユニバーシアード日本代表経験もある選手の入団が決まり、貴司はそこにも入ることができなかった。
 

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千里と貴司は1月12日はそのまま常総ラボに泊まり、13日はお昼くらいに常総を出て代々木に行ってオールジャパンの男子決勝戦を見た。
 
その後、都内のレストランで夕食を一緒に取ったのだが、その時、貴司に電話があった。千里に聞かれたくないようで、貴司はレストランの外で相手と話していたようであった。電話の後貴司は少し考え込んでいたようだった。千里は敢えて内容は尋ねなかった。
 
夕食後は一緒にインプレッサに乗って、大阪に向かった。貴司は明日は会社があるのだが、朝までに大阪に到着すればよい。
 
「さっきの電話だけどさ」
と貴司は千里のインプレッサを自ら運転しながら話し始めた。
 
「無理に私は聞かないけど」
と千里。
 
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「阿倍子は今回の人工授精でも着床しなかったよ」
「でも人工授精で成功する確率は低かったんでしょ?」
「うん。だから僕も阿倍子もここまでは想定範囲と思っている」
「じゃ次回からは体外受精?」
「そうしようと医者とは話した」
「ああ、さっきの電話はお医者さんと話したんだ?」
 
「うん。でも体外受精でもうまく行かない気がしている」
「ふーん。でも京平の身体を作ってもらわないと困るんだけど」
 
「医者と話したんだけどさ、もし僕と阿倍子の生殖細胞で受精卵が育たなかった場合、生殖細胞を借りることも検討しようと言った」
 
「借りる?」
「医者は阿倍子の卵子がほんとうに弱いのを懸念している。それと僕の精子もあまり活動性がよくないし、僕の男性ホルモン濃度も普通の男より低いらしい」
 
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それは1年間睾丸の無い状態だった後遺症かも知れないなと千里は思った。たぶん最近浮気してないのも、そのせいかも知れない。
 
「だったら、阿倍子さんの姉妹か誰かの卵子を使うの?」
「あの子は姉妹とか従姉妹とか居ないんだよ」
「ふーん。そういえばそもそも親戚が少ないって言ってたね」
 
「阿倍子のお母さんの卵子も使ってみようと言っている」
「何歳だっけ?」
「確か65歳か66歳か」
「無理でしょ?」
「だと思う。あと僕の従兄の精子を使ってみる手もあるかと思っている」
「ふーん・・・」
 
千里は京平の身体を作るのに卵子はどうでもいいが、精子は貴司のでなかったら嫌だなと思った。
 
いっそ私の精子を使っちゃおうかな!?
 
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ふたりはあちこちのPAで休みながら明け方大阪に到着した。貴司を会社のそばで下ろし、千里は途中のPAで夕方くらいまで眠った後、スペインに行って練習をし、その後、15日の朝こちらに戻って、インプレッサを運転して東京に帰還した。
 

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暢子の方は11日にバイトを紹介する会社に行き、
 
「平日に働いて土日は休みたいんです。身体は丈夫だから深夜労働は平気です」
と言って、都内のソフトウェア制作会社の事務の仕事を紹介してもらった。
 
「ああ。バスケット選手なんですか?」
「ええ。それで土日に試合があるんで、土日は休みたいんですよ」
「そういうことでしたか」
「平日は木曜日以外は残業、深夜作業OKですから」
「木曜日は何か?」
「夕方からチーム練習があるんです」
「なるほどー」
 
「簿記は分かりますか?」
「一応日商簿記の2級を持ってます」
「それは心強い。英語は?」
「一応STEPの準一級を取りました」
「凄いじゃないですか。エクセルとかワードはできますか?」
「できます」
 
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「ちなみにプログラム経験は?」
「センス無いと言われました」
「あはは。いいですよ」
 
(実際には暢子は結構PHPやPerlを書くものの、プログラムができるなんて言ったらソフト制作部門に投入されるのが目に見えているのでできないことにした)
 
それで月曜から金曜まで週5日勤務、9時から5時まで、基本は残業無しだが忙しい時は頼むかも知れないものの、木曜日はできるだけ避けるという口約束で話を決めた。仮採用3ヶ月で問題無ければ本採用に移行する。給料は試用期間中は月16万である。
 

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娘たちの衣裳準備(11)

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