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■娘たちの危ない生活(8)

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初期段階で向こうがこちらについて何も情報を持っていなかったのは明白であった。何と言っても長身の誠美に2人付いて、いかにも大したこと無さそうに見える千里は放置された。
 
楽々とスリーを決める。
 
しかし最初はそんなのまぐれだろうと思ったようである。
 
ところが2発続けてスリーを入れられると、相手は少し警戒して、千里にも1人付いて岬が放置される。
 
岬が美しくレイアップシュートを決める。
 
やばいかもというので麻依子に付いていた人が岬に付く。
 
麻依子が楽々とレイアップシュートを決める。
 
凪子を放置して麻依子に付く。
 
凪子がレイアップシュートを決める。
 
向こうはタイムを取った。
 

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結局相手はゾーンを敷いた。
 
ところが単純なゾーンはスリーの餌食である。千里がいとも簡単にスリーを決める。
 
向こうのキャプテンがコート上で指示を出し、向こうのスモールフォワードと思われる人が千里に付くダイヤモンド1のゾーンに切り替える。
 
誠美の強引な突破を防げない。
 
とうとう前半2度目のタイムアウトを取る。
 
(2004年春以降、タイムアウトは前半2回、後半3回取れることになった。但し2011年春以降は後半最後の2分には2回までしか取れなくなる)
 

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結局向こうはマッチアップゾーンを敷いた。ボールマンに1人付き、他の4人でゾーンを組む方法である。ボールがパスされた場合は新たなボールマンの近くにいる人がその相手に付き、他の4人でゾーンを組み直す。
 
ところがローキューツの、少なくとも千里・麻依子・誠美・岬・国香・薫といったメンツの間のパス回しは速い。相手のマッチアップゾーンはこの速いアクションに翻弄される。ボールの移動速度に守備体制の再編成が追いつかないのである。結果的に向こうの守備体制はメチャクチャになってしまう。ほとんど無防備に近い状態になり、こちらの得点をどんどん許す。
 
結果的に第1ピリオドは10-28という酷いスコアになった。しかも相手キャプテンはこのピリオドだけで3ファウルとなり、審判から注意される羽目になる。
 
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第2ピリオドで、相手チームはマンツーマンに戻してしまった。結局千里のような優秀なシューターのいるチームにゾーンは無力であると悟ったようである。しかし、ひとりひとりの能力では、千里や誠美を押さえることはできない。どんどんシュートされる。この2人に気を取られる過ぎると、薫や国香にもゴールを奪われる。このピリオドも14-24と圧倒的な差が出る。
 
点差が開いているので第3ピリオドでは千里と誠美を下げる。相手はここぞとばかりに猛攻を掛けてくるが、こちらは気にせずマイペースでプレイを続ける。結局26-18と相手が8点リードして、ここまでの累計は50-70である。
 
第4ピリオド、千里と誠美はやはり休んでいる。相手は必死に攻撃してくるもさすがにみんな疲れが出てくる。プレイが雑になりシュートの精度も落ちる。リバウンドはほとんど桃子が取ってしまう。
 
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結局第4ピリオドは22-24で、合計72-94でローキューツが勝った。
 

汗を掻いた服を着替え、軽食を取ってから、出場時間の長かった岬や薫が仮眠する。千里や麻依子などは仮眠まではしないものの横になって身体を休めていた。
 
そして12:10の予定だったが時間がずれ込んで12:20、決勝戦に臨む両チームのメンバーがAコートに並ぶ。隣のBコートでは同時に3位決定戦が行われる。
 
決勝戦の相手は江戸娘である。この時期の江戸娘は創立者の秋葉夕子を中心に神田リリム、上野万智子、大塚アリス、目黒奈美絵という“山手線五人組”が強烈な破壊力を持っていた“第1次黄金期”の時代である。
 
このチームとは2009年8月のシェルカップ準決勝、9月の関東クラブ選抜準決勝、昨年の関東クラブ選手権決勝と3回対戦しており、最初の2回はローキューツの勝ち、3回目は江戸娘の勝ちであった。勝敗は付いているものの、全て接戦で、両者の力はほぼ同じである。今回は結局1年前のこの大会決勝と同じ組合せということになる。
 
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ローキューツは
 
国香/千里/薫/麻依子/誠美
 
というメンツで始めた。向こうも秋葉・神田・上野の3人がスターターに顔を揃えており、最初から全力勝負である。
 

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相手はごく標準的なマンツーマンで来た。千里には秋葉、誠美には神田がマッチアップする。お互いに相手のプレイスタイルはだいたい分かっており、パワーとスピードがあふれる激しい試合展開となった。
 
どちらも全く溜めを作らず、ひたすら走ってひたすら攻める。客席から「何だ、こいつら?まるで男子の試合だ」という声があがっていた。
 
選手は疲れが溜まらないように、適宜交替させていく。岬、聡美、桃子、夢香、といった所を投入していく。ポイントガードは1,3ピリオドを国香、2,4ピリオドを凪子で行った。千里と誠美は短時間の休憩をはさんで全体の90%くらい出ている感じであった。
 
試合は最後までもつれにもつれる。
 
残り1分になった所で江戸娘が3点リードしていたが、誠美のシュートを神田がブロックしたのがファウルを取られフリースローとなる(誠美のシュートをブロックできる所が凄い)。誠美が1本決めて2点差。江戸娘の攻撃で上野のシュートがリングの端で跳ね上がって外れる(残り51秒)。リバウンドを誠美が取り、速攻から麻依子がシュートするが、神田がまたブロック(残り43秒)。しかしこぼれ玉を麻依子が取って今度は決めて同点!(残り40秒)。
 
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江戸娘も速攻して秋葉が2点取ってまた突き放す(残り32秒)。ローキューツも速攻で応酬し、麻依子がまた決めて同点(残り25秒)。ここで江戸娘はゆっくりと慎重に攻め上がった。次の攻撃時間をできるだけローキューツに残さないためである。神田のシュートを誠美がブロックするも、こぼれ球を大塚が拾って決めて、残り5秒で2点差となる。
 
ローキューツは凪子のロングスローインを千里がフロントコードで受け取る。しかしそこに秋葉が来ていて2人の一瞬のマッチアップ。
 
わずか1.5秒の心理戦で千里が秋葉を抜く。スリーポイントラインの所から美しくシュート。
 
シュートした次の瞬間に試合終了のブザーが鳴る。
 
千里が放ったボールはダイレクトにゴールに飛び込み、土壇場で逆転!
 
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千葉ローキューツが昨年の雪辱を果たし、関東クラブ選手権を初制覇した瞬間であった。
 

試合終了後、神田や秋葉が「くっそー!」という顔で首を振っている。
 
両者整列する。
 
「83-82で千葉ローキューツの勝ち」
「ありがとうございました」
 
お互いに握手したりハグしたりして健闘を称え合った。
 
少し置いて表彰式になる。
 
優勝の賞状をキャプテンの浩子が受け取り、笑顔で会場に向けて手を振った。準優勝の江戸娘、3位のサザン・ウェイブスと表彰された。
 

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千里たちが関東クラブバスケット選手権を戦っていた、2月5-6日、旭川では今年の新人戦北海道大会が開かれていた。各地区大会で上位に入った32校が出場している。
 
会場となったのは旭川市総合体育館である。
 
実はこの大会までは旧コートレイアウトで行われるのだが、旭川N高校、札幌P高校の2校は既に新コートレイアウトに変更しており、旭川L女子校や札幌D学園はこの新人大会の間に工事を行う予定である。4月からの新しいコートに身体を慣らしていっている所で、N高校とP高校は若干の感覚の狂いはあったようだが、すぐに元の感覚を取り戻して、ふつうに得点を挙げていた。何よりもこの2チームは実力が飛び抜けているので、順調に勝ち上がっていく。結局この2チームで決勝となった。
 
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そして決勝戦では6点差で札幌P高校が勝った。
 
負けたN高校の松崎由実が悔しそうにしていた。
 

大会が終わった後「興味のある人だけどうぞ」と案内されて、舞台を旭川N高校に移して、札幌P高校と旭川N高校の「1年生チーム」同士で練習試合が行われた。新しいコートレイアウトをみんなに見てもらうためである。実際には参加していたほとんどの高校関係者が(男子も含めて)これを見に来た。
 
試合開始前に見に来た人たち全員に開放して自由にプレイしてもらったのだが、やはりレイアップシュートを入れきれないし、シューター組もスリーが届かなかったり、力を入れすぎてバックボードで跳ね返ったりして、なかなか入らない。みんなこれは大変だぞ、と思ったようであった。
 
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「うちは1年くらい様子見てもいいんじゃない?と校長に言われていたんだけど、これは絶対ダメです。早く新しいレイアウトに慣れさせないと、下手したら得点が半分に減る。再度校長に強く言いますよ」
と釧路Z高校の尾白監督が言っていた。
 
実際の練習試合は次のレギュラー枠を狙う1年生同士がお互いかなり頑張り、白熱した試合となる。結果はN高校が2点差で勝った。
 

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千里の大学の後期試験は10日で終了した。千里は無事全部60点以上でひとつも落とさなかったが、桃香は3つも落として「追試だぁ!」と言って騒いでいた。
 
桃香は結局レポートを提出することになったようで、11-13日の連休には必死でレポートを書いていたようである。
 
一方、この連休、千里は千葉県冬季クラブ選手権に出ていた。
 
昨年は7チームが参加したため、変則的な方式で実施されたのだが、今年は1チーム減って6チームなのでわりと普通の形で行われた。
 
3チームずつで予選をやって上位で決勝トーナメントを行う方式である。
 
A組 ローキューツ(選手権1位)、フェアリードラコン(選抜2位)、暴走ギャルズ
B組 サザン・ウェイブス(選手権2位)、サクラニャン(選抜1位)、フドウ・レディース
 
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千葉には女子のクラブチームは現在11チーム登録されているのだが、他の5チームは諸事情で参加を見送ったようである。昨年この大会に参加していたブレッドマーガリンは親会社の経営状況が厳しく、実質休部状態になっているらしい。ホワイト・ブリーズは現在部員が4人しかおらず参加できなかったという。しかし何とか人数を増やして春の大会には出たいと言っているしい。このあたりの情報はけっこう浩子がつかんでいる。
 
「ホワイト・ブリーズは実は1人男子が混じっていたのがバレたらしい」
「うっそー!?」
「という噂もあるのだけど、真相は分からない」
「うーん。。。冗談なのか、本当なのか」
「あっても不思議で無い気もするしなあ」
 
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男子は16チームあるので11日から試合があっていたのだが、女子はチーム数が少ないので12日からである。この日は予選リーグの6試合が行われた。
 
ローキューツは「私たちが出なくても2連敗することはあるまい」ということで、千里・誠美・麻依子・薫の4人は12日は出なかったのだが、フェアリードラコンには勝ったものの、暴走ギャルズにブザービーターを入れられて1点差で負けてしまった。国香が「ごめーん」と言っていたが、主力を出さない判断をしたのは千里と麻依子なので、国香には責任は無い。しかし向こうは物凄い喜びようであった。そういう訳で決勝トーナメントはこのようになった。
 
A1暴走ギャルズ━━┓
B2サクラニャン━━┻┓
A2ローキューツ━━┓┣
B1サザンウェイブス┻┛
 
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13日の午前中の準決勝でサザンウェイブスのベンチから「せっかく予選1位になったのに、なんで準決勝でここと当たるのよ?」という声が聞こえた。
 
ローキューツは昨日主力を出さずに負けているので今日はちゃんと全員出る。それで20点差で圧勝して、決勝トーナメントに進出する。
 
もうひとつの準決勝を勝ちあがったのはサクラニャンであった。結果的に今年の冬季クラブ選手権は、予選リーグ2位のチームがどちらも準決勝で勝つという結果になった。
 
そして決勝戦にも最初から主力を投入したら、前半でダブルスコアになってしまった。そこで後半は主力がベンチに下がって様子を見るが、向こうも前半で疲れてしまったようで、後半は更に点差が開き、32-78で決着した。
 
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