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■娘たちの危ない生活(4)

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「まあ今回の大会で分かったことは1つ」
と表彰式が終わってから練習場に戻る途中で玲央美は言った。
 
「王子たち3人抜きでは私たちは世界水準には全く手が届かない」
 
「正直昨年のU20アジア選手権でも、中国に勝てたのは偶然と幸運が半分だったと思う。あの戦力は辛かったよ」
と千里も言う。
 
「ところで世界選手権は何位くらいまで行けると思う?」
「レオはどう思う?」
「じゃ紙に書いて見せ合いっこ」
「OK」
 
それで2人が書いて見せ合った数値は一致していた。
 
「まあそうなるといいね」
「本当はこの1つ上を狙いたいね」
「まあさすがにそこまではまだ無理だろうね」
 

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24-26日の3日間はエクソン・プロヴァンスで合宿を続ける。ここで地元の女子大生チームが練習相手になってくれることになっていたのだが、ここに先日のリーグ戦で対戦したリトアニアチーム(ほぼユニバーシアード代表候補)から、非公開の練習試合がしたいという申し出があった。それで両チーム代表で協議し、日本のバスケ協会の強化部とも連絡を取った結果、24-26日の3日間、毎日非公開の練習試合をすることで同意した。撮影も禁止とする。
 
この練習試合は毎日午前9時から行うことになったので、日本チームは朝食前に基礎練習を行い、朝食後に軽くウォーミングアップ程度の練習をしてからリトアニアとの試合に臨んだ。
 
U19世界選手権で対戦したジェーマンタウスカイテ、ランカイテ、シェイトらの顔も見える。そのU19で日本と対戦した選手がいるからだろう。この練習試合では、千里や玲央美、王子などの中核選手に対する「対策」を試してきた。そして、日本はリトアニアが「非公開試合」を提案した理由(わけ)が分かった。
 
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やはり、リトアニアも先のリーグ戦では本気では無かったのである。
 
日本もU21世界選手権の前に手の内を全部は見せたくなかったが、リトアニアもやはりユニバーシアードを控えている時期に戦力を全部オープンにするのは避けたかったのだろう。
 
24日の試合はお互いにマジ100%の試合となり、最終的には68-70で日本が勝ったものの、かなり死力を尽くした試合になった。
 

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練習試合が終わった後は少し休憩してから昼食に行く。そして午後から、現地女子大生チームとの合同練習となる。
 
「でもジュンたちも、これだけ滞在すると、フランスの軽い朝御飯にも慣れてきたでしょ?」
 
「はい。朝御飯でお肉を食べるには、前日の内にウィンナーとかコンフィとかを確保してホテルの部屋の冷蔵庫に入れておき、それを持ち込んで食べるしかないということが分かりました」
 
「なるほどねー」
 
フランスのカフェとかレストランは割と持ち込みOKの所が多い。パン屋さんで焼きたてのパンを買ってからカフェに入り、カフェオレを注文して買ってきたパンをそのカフェオレを飲みながら食べるというのは、フランスでは割と一般的な外食の仕方である。早苗とか百合絵が「ホテルのパンは作り置きで美味しくない」と言って、早朝からパン屋さんに出かけて行って焼きたてのパンを買ってきて食べたりしていた。
 
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なお、コンフィというのはアヒルやガチョウの肉を低温の動物性の油で長時間加熱した上で、そのまま冷まし、固まった油脂の中に埋もれさせることで保存性を高めたもので、南フランスではとても一般的な食材である。再加熱を繰り返すことで数ヶ月保存を続けることもできる。
 
特に今回の合宿の前半の地であるトゥールーズ付近がコンフィの本場であった。
 

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女子大生チームとの合同練習は、実力的にはこちらが上回るものの、向こうがかなり必死で対抗してくるので特に向こうの中核選手はこちらの選手たちと随分良い勝負をした。
 
フランス語が分かるのは千里、玲央美、彰恵などごく一部の選手ではあるが、王子などは言葉が通じなくても、視線と身振りで相手選手と会話している感じであった。
 
例によって王子は「やはりあの人、男の子だったのを手術して女の子になったんですか?」などと訊かれていた、が本人はそんなこと言われているとは気付いていない(もっとも気付いても今更なので全く気にしない)。
 
「このチームの練習ってU18の時からそうだったからあまり気にしてなかったけど、去年フル代表の活動にも入って分かった。練習相手が必ず確保されているって凄いよね」
と千里は休憩時間に言った。
 
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「高田コーチの人脈がハンパ無いみたいね。高田さん、若い頃アメリカの大学に留学していて、短期間だけどCBAにも入っていたし、そこに集まってきていた世界各国の選手達と交流しているし。あとは、どうも藍川真璃子さんも1枚噛んでいるっぽい」
と玲央美。
 
「ほほぉ!」
 
「高田さんと藍川さんはU19世界選手権前の“鬼ごっこ”の時以来、ずっと交流を持っているみたいで。藍川さんがまた世界中の女子バスケット界に通じているんだよ」
と玲央美。
 
「藍川さんは、あれ思うけど、日本より海外での評価が高いみたい」
と彰恵。
 
「うん。台湾のナショナルチームを指導していた時期もあったからね」
「その前に、ギリシャのプロチームの指導をしていた時期もある」
「ただ、ここ10年くらいはずっと国内にいるみたいね」
「やはり若い内はあちこち飛び出して行くけど、ある程度の年齢になると、日本に居たいのかもね」
 
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「それであちこちの高校のコーチに入ったりして、倉敷K高校でのトラブルを機に自分のチームを作る気になったんだと思う」
 
千里は、藍川さんがあまり外国に行かなくなったのは、“死んでしまった”からだろうなと思った。幽霊になってしまい、いつ消滅するか知れないという状態で、何とかして自分の“遺伝子”を国内に残したいのだろう。
 
藍川さんは「あと10年この世に留まることができたら、母賀ローザか伊藤寿恵子あたりに後事を託せるのだけど、自分にどのくらい時間が残されているかは分からない」などとも千里に言っていた。藍川さんは万一の時にために公正証書の遺言書を残しているらしいが、その内容は分からない。ただ藍川さんは肉体が既に消滅しているのであらためて「遺体を残して」死ぬことができない。突然消滅してしまった場合の、遺書の取り扱いはどうなるか不明だ。
 
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リトアニアとの練習試合は25日はリトアニアの勝ち、26日は日本の勝ちだった。お互いにかなり充実した練習試合となった。今U21にいる子の幾人かはU24(Univ)に加えられるだろうから、深圳(シェンチェン)で再会することになるだろう。
 
26日のお昼は、日本チームとリトアニアチーム合同の食事会をして交流を深めた。またずっと練習相手になってくれた女子大生チームとも26日夕方、日本側が彼女たちを招待する形での食事会をして、交歓をした。
 

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「アキちゃん」
という常連のおばちゃんの声に厨房に居た亜記宏はギクッとした。
 
「何ですか?赤岩さん」
「あのね。昨日稚内に行ったら、ユアーズでワゴンセールやっててさ、可愛い服があったから、アキちゃんに似合うんじゃないかと思って買ってきちゃった」
 
と言って見せるのはとっても可愛い、女子大生でも着るのではという感じのマリンルックのワンピースである。
 
「それ誰が着るんですか〜?」
「もちろんアキちゃんよ」
「勘弁してください。それ20年前なら着れたかも知れないけど、38にもなってこんな可愛い服着れませんよ」
と亜記宏は抵抗する。
 
「あら、そんなこと無いわよ。アキちゃん、見た目はまだ20代に見えるもん。充分行けるって」
「だいたい、僕女物の服を着る趣味は無いんですけど」
 
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「アキちゃん、もっと自分に正直になった方がいいよ」
と赤岩さんは楽しそうに言った。
 

フランス遠征をしていた千里たちは、1月27日は午前中が束の間の自由時間(但し3名以上で行動)となり、マルセイユに移動して市内のスーパーやデパートなどでお土産などを買った。まだ高校生の王子たち3人以外は、ほとんどの子が20歳以上なので、その3人以外は初めてアルコール類の購入も解禁である。19歳の千里についても、高居代表は「自分で飲むのでなければOK」と言ってくれたので、貴司と雨宮先生・新島さんに持って行くシャンパン、桃香や実家に持って行くワインと買った。そのほかフランスのお菓子を色々買った。
 
マルセイユ・プロヴァンス空港に移動して、国内便でパリに移動する。そしてシャルルドゴール空港で出国手続きをし、日本行きの飛行機に搭乗した。
 
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1/27 MRS 1330(AF7665 A319)1500 CDG 1805(JL406 B773) 1/28(Fri) 1405 NRT
 
日本に到着後はいったん北区のNTCに入り、そこで解散式をした。空港で解散してもいいのだが、ほとんどの子がNTCに私物を置いているので、いったんNTCまで行ったほうが好都合なのである。
 
解散後ロッカーから私物を取り、千里は玲央美を杉並区のマンションまで送ってから千葉市の自分のアパートに戻ろうとして、玲央美と2人で宿泊棟を出ようとしていた。そこに、見覚えのある男性2人が入ってくる所と遭遇する。
 
「村山君と佐藤君だよね?」
「はい。U24監督の東海さんと、U24(Univ)監督の須崎さん?」
「君たち、U21が終わったら、U24に佐藤君、U24(Univ)に村山君を召集するからよろしくね」
 
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「はい。でも22-24歳の世代にもたくさん優秀な選手がいるのに」
「君たちについてはあまり負荷がかかりすぎないようにという上からのお達しがあったから、U21の日程が終わるまでは遠慮しているんだよ。U21世界選手権が終わったら、フル代表とU24とで頑張ってもらうから」
 
「フル代表もですか!?」
「君たち2人は当然召集されると思うよ。むろん高梁君もね」
 
東海さんと須崎さんは
「じゃ、よろしくね〜」
と言って、中に入っていった。
 
千里と玲央美は顔を見合わせた。
「今年も無茶苦茶忙しくなりそうね」
「千里、そのユニバが終わったら大学やめてWリーグに行ったら?千里を欲しがるチームはたくさんあるよ」
「その言葉はそのままレオにも返したい」
 
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玲央美を杉並区のマンション前で降ろしてから、千葉に戻り、自分のアパート近くの月極駐車場に駐める。そして荷物を持ってアパートまで戻ったところで
 
・・・・唖然とした。
 
「何これ〜?」
と声を挙げる。
 
そこには瓦礫の山があったのである。
 
 
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